【対談】Tetsu (D’ERLANGER) × 逹瑯 (MUCC)が語る<V系って知ってる?>、「歴史やラインがあることが素晴らしい」
■お立ち台、女の子のヘドバン
■僕らからすると新しい文化──Tetsu
──先ほど逹瑯さんから「ヴィジュアル系って言葉が出てくるようになったのは、LUNA SEAや黒夢以降」というお話がありましたが、彼らが出てきた1990年代というのは一つの分岐点かもしれないですね。
Tetsu:1980年代はそんなジャンルなかったですからね。僕らの世代や先輩は、KISSを意識している方が多かったと思うんですよ。聖飢魔IIもそうだろうし、お化粧してた人達も最初はそうだったと思うし。BUCK-TICKはどう思ってるんですかね? 自分たちで。
──以前、ヤガミ・トールさんとそういうお話をしたことがあるんですが、BUCK-TICKはレコード会社から「ヴィジュアルアーティストとして売り出す」と言われて、メジャーデビュー作がビデオだったというところから、ヴィジュアル=映像にこだわる“ヴィジュアルアーティスト”っていう言葉があったそうで。だけど、ヴィジュアル系ではない、とおっしゃっていました。
Tetsu:なるほど。それいいですね。俺も次の取材から“ヴィジュアルアーティスト”って言います(笑)。そうやってまた新たな言葉が出てくるんですかね?
逹瑯:V系に変わるバンドのジャンルでですか? 出てくるんでしょうね。ヴィジュアル系っていう言葉が出来て定着していったように。もともとなかった言葉で言うと、ここ数年で言ったら“地下アイドル”とかもそうじゃないですか。
Tetsu:ああ、そうだね。
逹瑯:あれは新しく出来た言葉じゃないですか。「地下アイドルやってます」って聞くと、地下アイドルって地下に行けば行くほど偉いのか? 地上に行くほど偉いのか? どっちなんだ?って思いますよね。地上に近いほうが偉いとなると、メジャーアイドルに最初から負けを認めているようなもんじゃないですか。“地下アイドルやる”って始めてたんだったら、やっぱり潜っていってるほうが偉いんですかね。その定義を誰か教えてほしいですよね。
▲逹瑯 (MUCC)/撮影◎冨田味我
Tetsu:確かにな。時代が進化したのか、逹瑯はライヴでお立ち台みたいな台に登って歌ったことある?
逹瑯:台ですか? 自分の持ってますよ。
Tetsu:あ、逹瑯もやったことあるんだ?
逹瑯:俺が立つと、超でっかいですよ。
Tetsu:へぇ。あれもすごく新しい文化なんですよ、僕らからすると。
逹瑯:あれはたぶんマリリン・マンソンからですよね。それをイベントで対バンした日本のバンドが採り入れて、そこからヴィジュアルシーンに広まったという。
Tetsu:マリリン・マンソンだって、でかいよね(笑)。あれも新しい文化だし、女の子が髪の毛をバッサバッサさせながらヘドバンするのも、僕らからすると新しい文化なんですよ。あれって男の子は出来ないじゃないですか、短髪だと。あとV系って“一見さんお断り”みたいなところもありますよね。まずは後ろのほうで振りとか動きとか練習しないと、みたいな。あれも新しい文化だと思う。
逹瑯:<ROCK IN JAPAN>とかロックフェス出演して、客席を見て思ったのは、ヴィジュアル系の子たちの決まったフリと同じように、フェスバンドのキッズたちにも、“このノリの曲だとこういう動きをするよね”って決まった動きがあって。やってる動きが違うだけで、結局楽しみ方は一緒なんだよなって思ったんですよ。
Tetsu:コロナ禍で、ヴィジュアル系の振り付け動画っていうのをYouTubeか何かで出してた人いたよね。
──0.1gの誤算ですね。
Tetsu:知らないバンドだったけど、そういうことでニュースになったり注目されるって、素晴らしいなと思って。なんでもありなんだから、そうやっていろいろなことを考え付くっていいなと思いましたよ。
▲Tetsu (D’ERLANGER)/撮影◎Takeshi”Guts”Nakatani
逹瑯:そういう新しいものが出てきた時、素直に受け入れられますか?
Tetsu:新しいものを何とするか、ではあるけど、さっき言ったように新しい時代だなって思えることは受け入れるよね。受け入れるというか、すごいなって思う。
逹瑯:それこそすごい。俺は最初一回、どっかで否定したくなっちゃうんですよ。
Tetsu:あー、それはまだ40代だからかな、若い(笑)。
逹瑯:そうそう、30代の頃なんか特に。40代になって、“これはよくないな”っていうモードに入って、やっぱり否定したくなっちゃうんだけど、“これはなんで否定したくなっちゃうのかな”って考えたんですよ。たぶん新しいものが出てきた時に、それを素直に認めることが、自分を否定することに繋がるんだなと思って。
Tetsu:それはやっぱりまだ若いな。
逹瑯:ちゃんといいものはいいんだって、みんながいいって言ってるものには理由があるんだから、それをちゃんと理解して受け入れようと。そういう柔らかい脳みそを作らないと、どんどんつまんない人間になっちゃうなと思ってるんですけど。でも、それを受け入れると自分が今やってることを否定することになるから、新しいものが受け入れられない。これを今どうにかしたいんです。一番カッコ悪いのは、「そんなんじゃダメでしょ。そんなんじゃ通用しないでしょ」って言い出すことで。そんなことを言い出すと、こっちがもう通用しないってことになる。歳を取れば取るほど自分が変わっていかないと、ただの老害になってしまうんですよ。
Tetsu:そこまで分かってるんだったらさ……だけど悔しいんだ?
逹瑯:うん(爆笑)。
Tetsu:なんでそういうふうに考え方が変わっていったの?
逹瑯:俺も、人のことを見ていろいろ分析するのが好きなんですよ。“どういう思考のもとにこの発言をしているのかな?”とか、“この発言をすることに対する反対の気持ちが絶対にあるんだろうな?”とか。そういうことを考えるのが好きなんで、それを客観的に自分に当てはめてみると、そういうことなんだろうなと。
Tetsu:でも俺も、若い頃はそれしかなかったけどね。それでみんなバチバチきてるのが最高に楽しかったというか。
逹瑯:その力押しが出来なくなってくる時があるじゃないですか、絶対に。
Tetsu:そうなると考え方はやっぱり変わっていくよな。
逹瑯:結局いろいろと難しいことを考えつつ、最終的には得意なことをやっていくしかないんだよな、ってところに行き着くんですよ。
Tetsu:でも、“MUCCはこの道だ”みたいなものがあるわけでしょ。葛藤はあるとは思うけど、“MUCCはこうなんです”っていうものが、もうあらかた出来上がっているだろうし。
逹瑯:“出来上がった”っていう言い方なのか、“出来上がっちゃった”っていう言い方なのか、それでもちょっと変わってくるんですよね。そういう難しいことを考えつつも、ふと先輩を見ると、D‘ERLANGERもそうだし、L’Arc-en-Cielのメンバーもそうだし、BUCK-TICKもcali≠gariもそうだけど、すごく刺激をくれる先輩たちがいるので、その先輩たちの歳になるのが楽しみだなって、そう思える先輩がいるからいいかなと思ったり。
Tetsu:そうだね。MUCCもその域に入ってきたよね。
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