【速レポ】<SAI 2022>DAY1、氣志團「俺たちが、どれだけACIDMANか証明してやる」
真っ赤な照明が赤色灯のようにステージを照らし、「BE MY BABY」をSEに登場したのは、氣志團。真っ白な学ランは日の丸となっており、それが6人揃うと圧巻だ。そして早速スタートしたのは、氣志團のニューアンセム「房総魂」である。
◆氣志團 ライブ写真
アコースティックギターに乗せて、切なくも力強いコーラスをリフレインするシンガロングチューン──本来ならはここは観客ともに高らかに歌い上げたいところだが、音楽コンサートのガイドラインは更新されたものの、まだまだ大声での大合唱はできない現在。その分、バンドの後ろの大型モニターにはバンドの熱い想いが込められた歌詞が映し出され、観客はその言葉を噛みしめるように手拍子をし、またサビではバンドと一緒の振付けをする。
綾小路 翔(Vo,MC&G)はとにかくエネルギッシュにステージを駆け巡り、時にコケ、そして歌う。早乙女 光(DANCE&SCREAM)は大きな太鼓を抱え打ち鳴らし、白鳥松竹梅(B)とサポートドラムの叶 亜樹良によるダイナミックなビートに、星グランマニエと西園寺 瞳のツインギターがその歌をエモーショナルに彩っていく。美しいはじまりだ。
もはやきれいな夕日でも見えてくるんじゃないかっていう冒頭から、続いての曲はオカルティックで荘厳なギターリフによるスピードメタル「NIGHT THE KNIGHTS」での爆走を繰り広げる。早乙女 光含め大きな旗を持った4人が豪快に旗をなびかせ、綾小路 翔は生き急ぐようなボーカルでまくし立て、ツインギターの速弾きと砂埃を巻き上げてドライブするようなビートが、会場に爆音を轟かせた。ビシッと決めたラストに、大きな拍手が沸き起こる。
「オーライ、俺たちがお前らの運命の相手、氣志團です。あまりおしゃべりが得意じゃないから、ロックンロールを」──綾小路 翔
そう言ってスタートしたのはおなじみ、「One Night Carnival」だ。ちなみに氣志團もACIDMAN同様に今年結成25周年を迎えた。同時にこの「One Night Carnival」発売からは20年を迎える。よってその振付けも説明いらずで、あのリフに合わせフロアが一体となって踊る。
氣志團としては、綾小路 翔の声帯炎の治療とリハビリのため2023年1月3日の武道館GIGで一旦、コンサート活動を休止する。このステージでも時折ハスキーになる場面もあり満身創痍な感じもあるが、そのパフォーマンスの馬力は凄まじいの一言であり、また“おしゃべりは苦手”とは言いつつ、「One Night Carnival」の途中、大合唱パートでは音を止めイヤモニを外し、「本当なら次のサビをみんなでアカペラで一緒に大合唱するところで。俺は本当にこの瞬間がいちばん好きで。みんなと一緒に俺らの曲を、同じメロディを同じ歌詞で一緒に歌って、これがひとつになるってことなのかなって体感できるのが大好きです。でも2年半以上、ここでみんなの声を聞いてません」と語りはじめる。
「しょうがないよね、このご時世。マスクしなきゃなんねえとか、暴れちゃなんねえとか、距離取らなきゃいけないとかさ。一番やばいときはライブハウスに3分の1以下しか入れちゃいけねえとか。人生で初めてめげたし、しょげた。みんなもそうだったと思う。毎日毎日しんどくて。それを乗り越えるために、たまの休みに自分の好きに触れて、また明日から頑張ろうかなって、そうやってみんな生きてきたのに、それも全部取り上げられて。それに対して俺たち何にもできなくて、情けねえなって思ったけど。じゃあ、それを誰にぶつければいいんだろうって。いいかい、みんなにこれだけは伝えておくぜ。みんなが本当に困った時、助けを求めていいのは……先輩だ!」。そしてここから、このエモい話が急転直下する、綾小路 翔の、氣志團の真骨頂である。
「いいか、お前らが実際いくつだか知らないし、いくつと名乗ってるかも知らねえ。でも、氣志團のギグにきたら誰もが俺らの2こ下だ、OK? お前らみんな俺のかわいい後輩よ。俺らは永遠の16歳、つまりお前らは14ちゃい、思春期真っ只中だ。よその国は知らないけど、後輩が困ってたらこの国は先輩が助けるって決まってるんだよ! お前ら先輩を信じられるか。俺はお前らの先輩だから、お前らの困ってること悩んでいること、そしてお前らが疑問に思ってることを答えてやる。今、お前らが全員思ってること、俺は知ってんだよ。だから答えるよ。“この2日間の中で、なんで氣志團なん?”“そもそも氣志團ってACIDMANと関係あるん?”──あるわ!」。
という壮大な前振りから、氣志團とACIDMANは1997年結成の同期の桜であること。さらにACIDは直訳すれば酸だと言って、メンバーに「お前ら、脇を嗅いでみろ」「うーん、酸っぱい」とオチた?ところで、「俺たちが、どれだけACIDMANか証明してやる、氣志團改めACIDDAN、新曲“One Night Carnival 2022 〜造花が踊る〜”、聞いてください」とはじまったのは、ACIDMANの「造花が笑う」と「One Night Carnival」のじつに見事なマッシュアップ。
ベクトルのちがう名曲が、ここまで一体化するとは。しかも、いい曲。こういうところ、しっかりがっちり作り上げて盛り上げてくれるバンドである、氣志團は。しかも早乙女 光は手作り感溢れるフラワーロックになってゆらゆらと踊っているという、ファニーさも忘れない。
観客は、感動と歓喜と、笑いと驚きとで感情がぐるぐるになった状態だが、そこに「落陽」の哀愁たっぷりの歌心がトドメのように効いてくる。綾小路 翔はピンスポットの中、アカペラでたっぷりと歌い上げ、ゆったりとしたギターの音色やマレットでプレイする柔らかに響くドラムがドラマを描く。ともに過ごす時間を愛おしむような瞬間だ。そこから間髪入れずに、「MY WAY」へとなだれ込んで、ショーは大団円を迎えた。「ありがとうACIDMAN、ありがとうみんな!」(綾小路 翔)と言って、最後はメンバー6人が並んで右に左にと挨拶をし、せーのの合図で「やったー!」と締めくくったステージ。ハケる時まで音楽に乗ってコミカルに帰っていった、喜怒哀楽満載のさすがのエンターテインメントショーだった。
取材・文◎吉羽さおり
撮影◎石井麻木
セットリスト
2. NIGHT THE KNIGHTS
3. One Night Carnival
4. One Night Carnival 2022 〜造花が踊る〜
5. 落陽
6. MY WAY
■<ACIDMAN presents「SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI” 2022」>
2022年11月27日(日) さいたまスーパーアリーナ
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