【インタビュー】MIYAVI、20周年キックオフ「振り返るだけじゃなく、さらに新しいチャレンジをしたい」

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■日本のカルチャーに触れてもらえることは誇らしい
■胸を張って音楽を届けていきたいと感じています

──ではそれぞれの楽曲について駆け足で聞いていきます。まず「Get Wild」では原曲における宇都宮隆さんのロングトーンを排除し、独特な間合いでソリッドなボーカルにまとめていますね。それでいて原曲の持ち味やメロディへのリスペクトは際立っている。非常にユニークかつクレバーなアプローチだと感じられました。

MIYAVI:ありがとうございます。そういう意味で言うと、もしかすると自分のカバーのアプローチは少し徳永英明さんのそれと近いのかもしれない。特にこの曲はそうですね。ちょうど昨日(※本取材の前日)も小室哲哉さんがTwitterで反応してくれて。小室さんとは以前から面識があって、互いに「いつかコラボを」とも話していたんですが、今回、古いライブ映像を何度も見直したけど、TM NETWORKの曲は、パフォーマンスも込みでいま聴いてもカッコいいし、かなりロックでグルーヴィ。「Get Wild」って’87年の曲なんだけど、あの当時の若いオーディエンスがクールに体を横に揺らしてノッてるんですよ。今の若い子よりも大人っぽいと言うか、とっぽい(笑)「銀河鉄道999」のゴダイゴの皆さんもそうですが、日本にもたくさん世界に誇れる素晴らしいバンドがいたんだなあと実感しながら演奏させてもらいました。



──「魂のルフラン」については昨年の10月に「高橋洋子×MIYAVI エヴァ25th記念作品『新世紀エヴァンゲリオン~未来への咆哮~』」編のスペシャルコラボMVで高橋さんと披露されていましたね。

MIYAVI:実は、あのコラボの前に今回のバージョンを作ってあったんです。でも本家の高橋さんが歌うCMのプランが決まって。もちろん僕的にはめちゃめちゃ光栄な機会だったんで、キーを変えてオケを新たに作って、あのMVで歌ってもらいました。でも、このMIYAVIバージョンもよく世界観を構築できていたからいつかリリースしたいなと思っていて。今回のアルバムが決まったことで思いを成就することが出来ました(笑)。原曲とアニメの結びつきが強いですから、楽曲やアニメのファンの皆さんに今回のバージョンも楽しんでもらえたら幸いです。

──「銀河鉄道999」はゴダイゴのミッキー吉野さんが今年リリースされたソロアルバム『Keep On Kickin' It』でもカバーされていました。

MIYAVI:そう。最初にミッキーさんのプロジェクトで亀田誠治さんから声を掛けてもらって参加させてもらいました。今回は、他の楽曲とも音像を合わせて、また新たなバージョンで。これも御存知の通りメロディが爽快でストレートな曲。改めて原曲を聴き直した時、頭の中に浮かんだイメージを元に方向性を突き詰め、最後にツイストさせたという感じですね。この曲のリリックビデオが一番好きかも。歌詞の世界観がうまくアニメーションとリンクしていて、未来が感じられる。


──「ETERNAL WIND〜ほほえみは光る風の中〜」は、平歌の歌詞は歌わずインストのように進行して、サビのみを歌われていますね。

MIYAVI:最初からインストにしようと思っていました。基本的には「Over The Rainbow」に近いアプローチですね。森口(博子)さんの透明感のあるこのメロディの美しさをギターで歌うことで、エレクトリックかつフィーチャリスティックなサウンドにしてみたかった。でも最後のサビだけ歌ってみたらバランスが良かった。

──調べてみると森口博子さんは2003年に出演されたテレビ番組『題名のない音楽会』でこの曲を歌われていて。2001年のアフガン戦争、2003年にイラク戦争から「いま必要な曲なのでは」と語られていたそうです。

MIYAVI:それは知らなかった。今度、彼女にお会いしたらぜひお話ししてみたいエピソードですね。

──MIYAVIは2017年にUNHCR(国連難民高等弁務官事務局)の親善大使に任命され、今日も様々な活動を続けていますが、長期化しているロシアによるウクライナ侵攻についてはどう感じていますか?

MIYAVI:親善大使として、ひとりのアーティストとして、ひとりの人間としても「決して同じ過ちを繰り返してはいけない」という思いしかないです。どちら側に対してもこれより大きな大戦へと繋がっていってしまうような行為は避けながら、慎重に交渉、対話してほしいと願うばかりです。何でもありで自己の利益を追求していいという世界的な風潮には強い危機感を感じています。アメリカでも日本でも、スポーツや格闘技とは異なるYouTuber同士の戦闘がエンタテインメントとして正当化されているけれど、そこに自分だけの正義さえあれば戦っていい、暴力を正当化してもいいという気運はちょっと気をつけないと、この先、危ないかなと感じています。まあ、もちろん何かがぶつかり合ったりハプニングが起きる時の方が面白いし、実際に活気づくんだけど、モラルとして何を基準に物事を判断していくか、そもそも何のために戦うのか。社会全体としての倫理観がブレはじめると、何かが崩壊してしまう可能性があるかもしれない。世界で起こっている様々な問題や状況に対して無力さを感じる場面も多々あるけど、今後もアーティストとして、音楽やその他の活動を通して、働きかけられることを自分なりに模索していきたいと思っています。

──ありがとうございます。話題を『MIYAVIVERSE - Anima -』に戻します。5曲目の「ブルーバード」の選曲については?

MIYAVI:この楽曲は最後に決まったんだけど、面白いエピソードがあって。アメリカでこのアルバムの制作をしていた時、スタジオまでの移動にUber Taxiに乗っていました。いつも後部座席で歌詞を練ったりメールをしたり仮眠を取ったり出来るから、アメリカでも制作に向かうときはタクシーでの移動が多いんですけど、ある日、がっしりした体つきの黒人のドライバーが、「お前はどこから来たんだ?」、「音楽やってるの?」とすごい勢いで話しかけてきた。その内、話の流れで「日本人ならアニメ好きだろ?」と聞かれたから、「僕がミュージシャンでアニメの曲をやるとしたら何がおすすめ?」と聞いたら、彼が即座に「ブルーバード!NARUTO!メーン!」って(笑)。

──おおー(笑)。

MIYAVI:この曲が1、2を争う人気曲ということを、道中ずっと力説してくれたので、まったく仮眠できませんでした。それでスタジオに着いて、アコギを抱えて歌ってみたら、「あ、いけるな」って。それで決めました。先日(※10月6日)も日米交流の一環でワシントンD.C.の日本大使館の方々とバージニア州にあるセカンダリースクールを訪れたんですが、そこでは250人もの生徒が日本語を学んでいて。最初、難民キャンプのように、3、40人くらいの子供たちの前でアコースティックで演奏するのかなと思ってたら、結局、他の学級の生徒も集まって500人くらいが集まってくれて。いくつか楽曲のパフォーマンスと生徒からの質疑応答をしたんだけど、今後の未来において日本の音楽やカルチャー、スポーツのあり方、平和な社会への貢献の仕方などをお話しさせてもらいました。これまでもファンの方から「MIYAVIの曲で、日本語や日本の文化に興味を持った」という声を聞いてきて。以前、一緒にお仕事させてもらったプロデューサー、ジャム&ルイスのジミー・ジャム、テリー・ルイスとレコーディングした時も、彼らから「高中正義を聴け!」と言われたり。すごいことですよね。MIYAVIの楽曲にしても「ブルーバード」にしても高中さんにしても、そうした入り口から日本のカルチャーに触れてもらえることはとても誇らしいし、そこにもっと胸を張って音楽を届けていきたいと改めて感じています。

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