【インタビュー】Bialystocksの世界観

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■夢には始まりと終わりがちゃんとある
■現実の生死に近いものがある


──「All Too Soon」では“夢の続きを教えて”という歌詞がありますし、今回の「日々の手触り」でも“夢はあなたと 少しでも一緒にいることさ”と歌っています。甫木元さんの中で“夢”は一つのキーワードなのでしょうか。

甫木元:そうかもしれないです。映画のタイトルも『はだかのゆめ』ですし。夢には始まりと終わりがちゃんとある。突然バツっと切れるし、いつまでも伸ばせるわけじゃなくて、現実の生死に近いものがあるなと。死生観が作品に反映されることが多かったんで、ある意味、夢に逃げていたかもしれないです。願望というか。

──なるほど。

甫木元:今見ている風景や風習もなくなるかもしれない。移住した日に隣の人が亡くなって、遺体を移動させるところから僕の高知生活が始まってるので、生死と関わることが多くて。そういう体験の中で高知生活自体が夢なんじゃないかとも思っています。

──『はだかのゆめ』にもそういう死生観や夢の感覚、高知の状況が反映されていると思いますが、甫木元さんのパーソナルな面が強く出た映画なのでしょうか?

甫木元:脚本は、おじいちゃんが話す家族のことや土地の歴史をメモするところから始まりました。でも、その話が本当かどうかはわからないんですよ。もう90歳なので。50年前、60年前の記録や写真もあるけど、おじいちゃんが亡くなったら写真に映っている人については誰も話せなくなる。自分の住んでいるところは、高知県のなかでもそれくらい過疎が進んでいるところなんです。そういう消えつつある存在を感じながら、見聞きしたものを反映しています。だから、自分のことだけでなく、いろんな人に教えてもらったことが複合的に入っている感じですね。



──『はだかのゆめ』の内容は現実と夢が曖昧になっていますが、それだけでなく、シーンの編集の仕方もバチっと切れる部分が多くて、さきほどの夢の感覚と似ていると思いました。

甫木元:そうですね。さっき言った夢のような感じを編集で出したくて、編集点をものが完結したところであまり切らずに、どこか途中で切れるようにしてみようかなと。その上でノスタルジーだったり、病気ものみたいな作品から離れるにはどうしたらいいかと、撮っているときから考えていました。

──ベタっとした余韻を残さない編集の仕方ですよね。この映画の音についてもお聞きしたいです。現場録音を川上拓也さんが担当していますが、虫の鳴き声や水の音も印象的でした。お二人が担当した音楽も鳴っているなか、それ以上に雄弁に周りの自然音が聞こえてきました。

甫木元:虫が生の象徴というか、周りの音の方が人間より雄弁に喋る感覚です。讃美歌じゃないですけど、この映画は弔いの映画でもあって。音響設計の菊池信之さんが、お葬式に行った際、鳴いていたセミの音に生命力を感じたそうです。その対比じゃないですけど、これから消えゆく人たちが画面上で動くなか、音では生き生きとした自然があるというのが弔いになると思いました。

──とはいえ、要所要所の音楽も重要だと思います。今回、映画に音楽をつけてみていかがでしたか?

菊池:いわゆる劇伴のようにあらゆるシーンで盛り上げるというよりも、音楽が局所的に聞こえてくる入れ方でした。感覚的には、普段歌ものを作るときと変わらなかったです。

──さきほど自然音の話がありましたが、音楽とのバランスはどのように考えましたか?

甫木元:菊池に映画を見せたら「別に音楽いらないんじゃないの」って言われて(笑)。いくらでも音楽で誘導できちゃう映画なので、その感覚は面白いと思いました。そういう誘導ではなく、意外なところと、逆に超ベタなところにあえてつけるようにしました。


──強い意味づけのために音楽を使うのとは別のやり方ですよね。

甫木元:そうですね。なるべくシンプルにする。編曲も大変だったと思います(笑)。どこまで盛り上げて、どこまで引いたらいいのか。

──そこは苦労した部分ですか?

菊池:ハリウッド映画とかと全然違って確定している情報が少ないから、映画を壊しかねない怖さはありました。

──ここのシーンではこういう感じの音楽をつけて、というテンプレのシーンがないですもんね。音楽から少し離れますが、これまでのお話を聞いていて、宮沢賢治を想起しました。

甫木元:あー、母親が宮沢賢治作品の語りを子供たちにする活動をやっていて、PAを僕がしてたので、自動的に聞かされていたんですよね(笑)。なので、世界観とか語りのスピードなんかに影響を受けているかもしれません。

──なるほど。先日、大手町三井ホールで行われたワンマンライブについてもお聞きしたいです。ホールで全席着席なのもあって、まるで映画を見てるようでした。映画的ということを意識していたのでしょうか。

菊池:ダラダラとしたMCとか、隙が多かったり無駄な間があるライブはあんまり好きじゃなくて。映画というよりはショーのようにしたいなと常に思っています。

甫木元:演者の緊張感も含めて、ショーだったり舞台に近いというか。


──それもあって、アンコール前までのライブ本編では、MCを徹底的になくしたんですね。

甫木元:MCによって緊張と緩和が生まれるとは思うんですけど、ライブハウスとは違うホールだったし、せっかくの第一回、初のワンマンだったので、演劇や舞台っぽくした方が面白いかなと思いました。

──照明もとにかく印象的でした。最初に真ん中に置かれた、ぼうっと照らすライトの存在感がすごかったです。

甫木元:客入れのときから世界観を作りたくて。そこまで深い意味づけはしてないですけど、灯台だったり灯籠流し的な光、おぼろげな光が、客入れのときにゆっくり点滅している。ライブの最後にカーテンが開くと現実世界が見える。そこまである種の緊張感をもってやりたいなと思いました。

──さきほどの夢の話ともつなげたくなります。アンコールの後、後ろのカーテンが開いて外の景色がバッと見えたときに、夢がさめたというか現実だったんだなと。

甫木元:カーテンを開くのはみんなやっていそうですけどね(笑)。最初に下見に行ったとき、スタッフ含めてあの会場でしかできないことをやりたいという話になりました。あんなに窓ガラスが大きいのは珍しかったんで。それから逆算して、ある程度世界観を作った方が、幕が開けたときの飛躍はあるのかなと。

──なるほど。ライブ中に、メジャーデビューアルバムとライブハウスツアーの発表がありましたが、心境は?

甫木元:メジャーだから頑張るというよりは、今までと地続きにやらせてもらっているので、これまで通りできることをやる感じですね。

──とはいえ、活躍の幅が広がるだろうし、とても楽しみです。

菊池:サポートしてくれる人が増えている実感はあるので、堅実に一歩一歩やっていきたいです。ツアーはライブハウスで、雰囲気もホールとは違うので、ライブ感のあるものでもいいのかなと今は思っています。立って見ていても楽しめるようなものにしたいです。

甫木元:ここで一つの区切りというよりは、変わらずにできることをしていきたいと思っています。そんなに地方に行けているわけじゃないので、今回のツアーでは、どういう人が聴いてくれるのか楽しみです。

取材・文◎島晃一(映画・音楽ライター、DJ)
写真◎野村雄治


「日々の手触り」

2022年10月5日(金)配信スタート
配信リンク:https://lnk.to/hibinotezawari

ライブ配信情報

Bialystocks - 第一回単独公演 於:大手町三井ホール(2022.10.02)

配信日時:10月26日(水) 20:00〜
アーカイブ:なし
視聴券:¥1,000(税込)+システム手数料

■一般発売
https://w.pia.jp/t/bialystocks-pls10/

アルバム情報

「タイトル未定」
2022年11月30日(水)発売
■初回限定盤 [CD+Blu-ray] PCCA-06165 / 4,950円(税込)
■通常盤 [CD ONLY] PCCA-06166 / 2,970円(税込)

【収録内容】
CD 後日発表
Blu-ray ※初回限定盤のみ付属
後日発表

ご予約はこちらから:https://bialystocks.lnk.to/2ndAL_CD
※価格、収録内容共に予告なく変更する事が御座います。

■法人別特典
※特典は先着の付与となりますので、なくなり次第終了となります。予めご了承ください。
※一部店舗に取扱いのない店舗がございますので、ご予約・ご購入時にご確認ください。
※ECサイトでご予約の場合、特典付き商品をご希望の場合は必ず特典付きカートからご注文下さい。
※「音源ダウンロードコード付きポストカード」につきまして、タイプにより表面の絵柄が異なります。ダウンロードできる音源は共通です。
※ダウンロード方法等詳細につきましてはポストカードへ記載いたします。

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<Bialystocks Tour 2023>

2023年1月21日(土)大阪・梅田Shangri-La
2023年1月22日(日)愛知・名古屋TOKUZO
2023年2月18日(土)東京・恵比寿LIQUIDROOM

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