【インタビュー】ハマノヒロチカ「俺は生涯ソングライターとして生きてゆく」

■40代でもう一回でかいことをぶち上げるというのが
■聴いてくれる人の勇気みたいなものになったらいいな

――「サンゴのかけら」も優しい歌ですよね。これは沖縄が舞台ですか。

ハマノ：そうです。沖縄に行って…これもすごく個人的な話になるんですけど、野狐禅の時から何回も沖縄には行っていて、野狐禅でドラムを叩いてた（江川）ゲンタさんが宮古島大好きで、いま宮古島に住んでるんですけど、昔から縁があってよく行っていてたんですよ。そういうところのイベントは凄腕のミュージシャンが集まるし、夜は飲みながらセッションが始まるし、すごく楽しいんですけど、野狐禅という看板があった時はそこに入れたんですけど、一人になると全然歯が立たないなという感覚がずっとあって。ソロになってからも何回か沖縄に行ったんですけど、うまくいかないことが多くて、トラウマみたいになっていたんですね。でも2ndアルバムを出して、コロナの直前に、今だったらちゃんと戦えるんじゃないかと思って、数年振りに沖縄のツアーを組んだら、初めてと言っていいぐらいに良いライブができて、盛り上がって、みんな良かったと言ってくれて、長年のトラウマが溶けたんです。

――ああー。なるほど。

ハマノ：ずっと沖縄が鬼門だったけど、自分が思い込んでいただけで、別に沖縄が悪いわけじゃないということをあらためて思った時に、すーっとする気持ちがあって、いろいろわかったことがあって、ということを思いながら書いたのが「サンゴのかけら」です。昔は自分もトンガってたということもあるし、いろいろうまくいかなかったことに対して、懺悔するような気持ちで書きました。

――それでこんな優しい歌が出来上がる。とはいえ、リード曲の「マイ・バック・ページ」のように、青春がカムバックしたような元気で軽快な曲もあって。

ハマノ：一番馴染みやすい曲だろうというのと、テーマとしては、45歳になってまだまだ行けるぜ俺たちというような、すごく前向きなメッセージもあります。



――同世代を直撃するメッセージですよね。「あの頃よりもずっと若い心がはじけるままに」とか。

ハマノ：それこそ野狐禅の時のほうが、めんどくさいことをいっぱい考えていたような気もするんですよね。今はもうやりたいことをやればいいやという、すごいシンプルになってきています。

――さらに、根本にあり続ける熱さと激しさを前面に打ち出した「古い日記帳」のようなロックチューンもちゃんとある。この歌詞の「古い日記帳の扉を開けるとそこにはま眩いばかりの青年の叫び声が」という、これって本当にあった出来事ですか。

ハマノ：えーと、本当にあったことではないです(笑)。でも僕は昔からミクシィでブログを書き散らかしたり、昔のインタビューが載った雑誌を取っておいたりして、それを読み返すことがけっこうあるんですね。「この時俺はこんなこと考えてたな」とか、当時のことを思い出して悔しい気持ちになったり、逆にちゃんとやってこれたなと確認できたり、いろいろあるんですけど、昔書いたことはちょいちょい見ますね。

――「このまま終わってたまるか」「俺はでかいことをやってやる」という歌詞も、当時言っていたということですか。

ハマノ：言ってましたね。

――その上で、青春続行しようという曲ですよね。青春を振り返って懐かしむだけではなく。

ハマノ：そうですね。そういう側面もあるというか、丸くなった自分も認めつつ、まだまだギラついてはいるんですよね。

――これは1stアルバムの「最後の青春」の、続編の続編という感じがします。アルバムにこういう曲が1曲あるとバランスが良いというか、ライブでも絶対盛り上がる曲として、ここに入っていることに意味があると思います。

ハマノ：ライブで優しい曲ばかりやると、自分もつまらないなと思っちゃうんで、こういう曲があるといいんですよね。CDではバンドですけど、ライブでピアノをガシガシ弾きながら歌うのも、ほかにあまりやってる人がいないので。オリジナリティをちゃんと追及して、変な存在になりたいという気持ちはあります(笑)。


――ハマノさんのスタイルって、何て言ったらいいんでしょうね。ピアノロックともまた違うし。

ハマノ：なんなんでしょうね。ピアノの人はきれいに弾く人が多いけど、コードでバゴーン！って弾くのはあんまりいないですよね。狙ってこうなったわけではないんですけど、こうなっちゃったんで、やってるからにはこれの究極を目指したいなという気持ちはあります。

――ぜひみなさんライブで。ツアーファイナルは12月10日の東京・五反田の「弾き語りbar PISTOL」で。

ハマノ：12月10日にツアーファイナルと言っていて、その翌週に四国に行くんですよ。もう何がなんだかわからない(笑)。どこかで一応は区切りをつけないとなと思って、とりあえず10日をファイナルにしているんですけど、こうやってライブをやって生きていこうと決めたので、ずっと続いていくという感じですね。

――あらためて、ハマノヒロチカの歌を聴きにおいでよと、どんな人に呼び掛けたいですか。

ハマノ：やっぱり、書いてる歌詞がいまの自分の気持ちが反映されているので、同世代が一番共感してもらえるんじゃないかなとは思っているんです。それこそ40代になって、不惑の年を超えて、一つ自分の青春が終わったとまでは言わないですけど、最初の1ターンが終わった感覚は40代特有のものなのかなとも思うし、そこでもう一回でかいことをぶち上げるというのが、聴いてくれる人の勇気みたいなものになったらいいなとは思いますね。「やってみたら意外となんでもできるぜ」というのもあるし、それも伝えられたらいいなと思います。

――素晴らしいです。みなさんぜひライブ会場に足を運んでいただけると。

ハマノ：ツアーファイナルにはたくさん来てほしいですけど、あちこちでライブをやっていますので、タイミングが合う時に来ていただければ。よろしくお願いします。

――そして次はアルバムも、5年も待たないようにしてほしいですね(笑)。

ハマノ：もうちょっとスパンを短くしたいんですけどね(笑)。みんなよく出せるなあと思うんですけど、うらやましいなと思いつつ、自分は自分のペースでやっていきます。ただ、50歳になるまでにはもう1枚ぐらいは出したいですね。

――それ書いておきましょう、ここでの約束として。40歳代にアルバム1枚じゃ寂しいですから。

ハマノ：そうなんですよ。だからここで宣言します。それでも少ないから、そんな胸張って言うことじゃないですけど(笑)。

取材・文：宮本英夫


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