【ライブレポート】ACIDMAN、25周年ツアー東京公演に軌跡と挑戦「音楽を、ライブを愛してくれるみんながいるからこそ」
ACIDMANが東名阪を廻る結成25周年&メジャーデビュー20周年記念ツアー<ACIDMAN 25th&20th Anniversary Tour “This is ACIDMAN”>を開催した。東名阪をまわった同ツアーより、初日9月1日の東京・Zepp Haneda公演のレポートをお届けしたい。
◆ACIDMAN 画像 / 動画
2021年10月29日、結成25周年のアニバーサリーイヤーに突入し、開催されたワンマンライブ<This is ACIDMAN>。これは2022年1月1日に営業を終了したZepp Tokyoで行なわれたもので、1stアルバム『創』から12枚目の最新アルバム『INNOCENCE』の中より選曲し、映像や演出面においてもこれぞACIDMANのオールタイムベストと言える内容で好評を得た。そして、このライブが2022年は東名阪のツアーとなって帰ってきた。さらに今回は、ツアーを前にセットリストを公開するという自身初の試みがなされたもの。2021年の<This is ACIDMAN>のセットリストを軸に、ファン投票による“ライブで聴きたい曲”を加えた内容で、観客はセットリストを見て来場するもよし、見ずに楽しむもよし。とはいえ、セットリスト公開となればつい見たくなるのがファン心だろう。昨年にもまして<This is ACIDMAN>への期待値やライブへのハードルが上がったうえで、3人がどんなステージを見せるのかが肝となる。
満員となったツアー初日の東京・Zepp Haneda公演。SE「最後の国」がボリュームを上げていくと同時に、ブルーのライトがステージからフロアへと広がって、観客の手拍子が重なっていく。浦山一悟(Dr)のアグレッシヴなドラミングで手拍子を熱したところで「to live」の鋭いギターリフがショーのスタートを告げる。ステージの壁一面を使った映像と、スピード感溢れるアンサンブルとシンクロする照明とで、観客の感覚を一気に開かせる迫力だ。
「まだ声は出せないけれど、全身全霊でライブしますので。最高の1日にしましょう」──大木伸夫 (Vo, G)
という大木の声から、「造花が笑う」「FREE STAR」を連投。駆け上がっていくメロディの高揚感とともに、頭上のミラーボールが回ってフロアに星の光が降り注いだ「FREE STAR」はひときわ美しい。
拍手の中、「コロナ禍になってから、この拍手が何倍も沁みます」と改めて挨拶をした大木。また「今回の<This is ACIDMAN>はトライ」だと言い、セットリストを事前公開することで、「例えばミュージカル『レ・ミゼラブル』や歌舞伎のように、筋書きや展開がわかっていてもナマモノなればこその面白さがある演目になれば」と本ライブへの思いを語った。結成25周年、デビュー20周年の間にも様々な形のライブを行なってきたACIDMAN。ファン投票でセットリストを決める<ANTHOLOGY>やデビュー作の再現ツアー<創、再現>、コロナ禍以降も全編インストゥルメンタルによる<This is instrumental>や、アルバムの詳細が発表される以前に行われたニューアルバム配信ライブや、ライブ&視聴会のプレリリースツアーをしたりと、趣向を変えライブを追求してきたACIDMANの新たな試みがこの<This is ACIDMAN>だ。
映像を交えて鮮やかにスタートした序盤を経て、続いたブロックでは3人のアンサンブルが空間を彩る。音の隙間を活かしたギターとドラム、その合間をぬって柔らかに弾む佐藤雅俊(B)によるベースラインが心地いい「リピート」や、はるかな時を美しい物語に封じ込めた「アルケミスト」の繊細なギターアルペジオと大らかなビート。シンプルな照明の演出が、3人の音と演奏の佇まいとを浮かび上がらせ、歌心をまっすぐに伝える。
ここまで昨年の<This is ACIDMAN>と同様の流れだが、今回はそこに「季節の灯」が続いた。“いつの日か私も 君も終わってゆくから 残された日の全て心を 添えておこう”と歌うこの歌は、ACIDMANが奏でる普遍のテーマが情緒的に綴られる。ひとりひとりが限られた時の尊さを思い、同じ時を共有する喜びや美しさを重ねていくことで、世界は豊かに織り上げられる。ACIDMANの音楽、ライブは、追われるような日々の中で、いっときでもそんな純真な思いを巡らせてくれる。
中盤では「彩 -SAI-」「Λ-CDM」といった、ACIDMANに欠かせないインストゥルメンタル曲を演奏。またおなじみ(?)となっている浦山のご当地ダジャレを盛り込んだMCから、後半へと折り返す。その1曲目となったのが、今回ファン投票によって選曲された3rdアルバム『equal』からの曲「降る秋」だ。メンバーもまさかという曲だったようで、浦山調べによるとライブで演奏するのは8年ぶりだという。結成25周年&デビュー20周年、そしてオリジナルアルバムだけで12作品。埋れてしまっているであろう名曲は、まだまだある。<This is ACIDMAN>は、バンドの歴史を改めて丹念に掘り起こしていくシリーズにもなっていきそうだ。
さらに最新作『INNOCENCE』から「夜のために」や、雄大な景色や銀河の映像世界をたゆたいながら旅をする「innocence」へ。重力が失われたような恍惚の中で「世界が終わる夜」の叙情的なアンサンブルがクレシェンドする。ドラム、ベース、ギターといったシンプルな3つの音色、3人の人間のエネルギーが爆発し合うサウンドが圧巻だ。観客がその音の余韻に浸る隙を与えず、「ある証明」でフロアを波立たせ、アグレッシヴな「world symphony」で興奮の真っ只中に飛び込ませる。怒涛の展開だ。
「楽しんでもらえましたか。出し切ったね」と一息つくように語る3人。この日何度も、「音楽を、ライブを愛してくれるみんながいるからこそ結成25周年&デビュー20周年を迎えられている」ということを伝えていたが、最後にも改めて、観客の存在が自分たちのエネルギーになっていると告げる。
そして本編の締めくくりはこの曲「廻る、巡る、その核へ」だ。アンコール時に大木は、「この<This is ACIDMAN>は「廻る、巡る、その核へ」をやりたくて作った企画かもしれない」と語った。3rdアルバム『equal』に収録され、約10分にわたり、ほとばしる生命のエネルギーと、その原初的なパワーと静かな営みの壮大な生命の叙事詩をバンドサウンドと歌で描いていく「廻る、巡る、その核へ」。他の曲をも飲み込んでいってしまう強さがあるゆえに、普段のアルバムツアー等には馴染めないこともあって、披露する舞台が限られてしまう曲でもある。
この<This is ACIDMAN>では存分に、この曲が四肢を広げて暴れまわることができる。カラフルでプリミティヴな映像絵巻とともに、ラストの一音まで轟々とうねりながら音を重ねていく迫力に、ただただ圧倒される。はじまりのブルーのライトとは対極の、燃え盛る炎のような赤いライトの下で音に身を委ね立ち尽くしていた観客から、大きな拍手が沸き起こった。
前回同様にアンコールも「OVER」と「Your Song」の2曲。「この新しい試みのライブが、いつか全国でもできたら」と大木は言う。ラストの「Your Song」ではバンドが歩んできた四半世紀の写真、観客と築いてきたライブやアーティスト写真を背に演奏された。振り返れば結構な時間の経過があるが、3人の見た目や佇まいがあまり変わらないことに驚きつつ、時流に染まらず一貫して“ACIDMAN”というバンドを、その音楽を作ってきたことを感じる瞬間だった。
25周年イヤーのはじまりに誕生した<This is ACIDMAN>。バンドとして円熟の域に達した3人が、これから<This is ACIDMAN>という究極の定番、十八番たるライブを、どう育て、またぶっ壊していくのか。その行方が楽しみでならない。
ACIDMANは11月26日と27日、さいたまスーパーアリーナにて自身主催ロックフェスティバル<SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI” 2022>を開催する。<SAI>はバンド結成20周年を迎えた2017年、アニバーサリーイヤーの集大成として初開催されたイベントだ。結成25周年の節目に合わせた2022年は、日程を2日間に拡大、back numberやDragon Ash、Mr.ChildrenやELLEGARDENなど各日10アーティスト計20組による豪華祭典として届けられる。
取材・文◎吉羽さおり
撮影◎Victor Nomoto - Metacraft/Tsukasa Miyoshi (Showcase)
■<ACIDMAN 25th&20th Anniversary Tour “This is ACIDMAN”>2022年9月1日@東京・Zepp Hanedaセットリスト
02. to live
03. 造花が笑う
04. FREE STAR
05. リピート
06. 赤橙
07. Rebirth
08. アルケミスト
09. 季節の灯
10. 彩-SAI-(前編)
11. Λ-CDM
12. ALMA
13. 降る秋
14. 式日
15. 夜のために
16. innocence
17. 世界が終わる夜
18. ある証明
19. world symphony
20. 廻る、巡る、その核へ
encore
en1. OVER
en2. Your Song
▼Spotifyプレイリスト
https://open.spotify.com/playlist/1EuEk1B4yWe1NhMpVwoAKg?si=3546426c9f054b44&pt=cb1b2862ace24699cfd6ace3406308cd
■<ACIDMAN presents「SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI” 2022」>
11月27日(日) さいたまスーパーアリーナ
▼<DAY1>11月26日 出演アーティスト
ACIDMAN / 氣志團 / SiM / ストレイテナー / 東京スカパラダイスオーケストラ / DOPING PANDA / Dragon Ash / back number / MAN WITH A MISSION / LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS + ※50音順
▼<DAY2>11月27日 出演アーティスト
ACIDMAN / ASIAN KUNG-FU GENERATION / ELLEGARDEN / THE BACK HORN / the band apart / sumika / 10-FEET / BRAHMAN / マキシマム ザ ホルモン / Mr.Children ※50音順
※タイムテーブルは後日発表
※出演アーティストは変更になる場合あり
【チケット】
・アリーナ:15,000円/1DAY
・スタンド席:15,000円/1DAY
・KIDS (スタンド席):半額 7,500円/1DAY ※小学生対象(小学1年生〜6年生)
(問)SOGO TOKYO 03-3405-9999
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