【インタビュー】秘めごと、群れも媚びもせず気がつけばそっと寄り添ってくれる最新作「蜃気楼」

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純粋に自分の音楽を、歌を聴いてほしい──。そんな思いから名前や素顔を出さずに楽曲を発表し、SNSを拠点としながら現在着々とリスナーを獲得している“秘めごと”。憂いや儚さの奥に確固たる意志を漲らせた歌声、群れも媚びもしないが気がつけばそっと寄り添ってくれているような歌詞。そんな魅力を封じ込め、聴き手の心と共鳴する瞬間を信じて発信してきた楽曲の最新作「蜃気楼」が、いよいよ10月5日から配信される。今回は秘めごとのプロデューサーでもある木天蓼氏にも同席いただき、現在の心境や楽曲に対する思いを語ってもらった。

■歌声だけでどれだけの人に届くか挑戦したかった
■だから顔も出さないで活動しているんです


──ずいぶんミステリアスなアーティスト名ですね。

秘めごと:たまに「バンドですか?」って聞かれることもあるんですが、私自身も、実態は一人だけど曲を書いてくれる木天蓼さんや楽器を演奏してくれる方、携わってくれる人みんなで「秘めごと」だと思っています。いろんな人の協力があって歌えているので。

──どうして「秘めごと」と名付けたんですか?

秘めごと:文字の意味そのままなんですが、歌や音楽に対して、今まで秘めていたものがあったのでそれを言葉にしました。喋るのは苦手だけど歌うことは好きなので、自分のこの歌声だけでどれだけの人に届くかっていう挑戦をしてみたかったんです。だから、顔も出さないで活動しているんですけど。

──活動を始めて1年。振り返ってみていかがですか?

秘めごと:ちょうど1年前、正体を明かさずに1曲目の「狼と羊」をYouTubeにポンと出したんですね。どれだけ聴いてもらえるんだろうっていう不安もあったんですが、そこから3曲、それぞれいろいろな方がどこかで耳にしてくれて、YouTubeなどに飛んできてくれて、コメントを書いたりしてくれている。ちょっとずつ届いているのかなっていうのは、実感としてすごくあります。

──だからこそ、SNSでいつも「見つけてくれてありがとう」という言葉を残されているんですね。その「狼と羊」をはじめ歌詞はいつもご自身で書かれていますが、以前から音楽活動はされていたんですか?

秘めごと:はい。以前の活動の時も自分で歌詞を書いていましたが、書いてもらった曲に歌詞をつけるという感じでした。今より若かったというのもありますが、学生の頃の恋愛や卒業ソング、ギターも弾いていたので、今とは全然違う感じでした。





──その活動を踏まえて、今回のアーティスト活動をスタートさせたというわけですね。心機一転みたいなお気持ちもあったのでしょうか。

秘めごと:そうですね。以前は自分自身の歌が本当に良いのか、また、自分の歌を好きになってくれているのかっていう部分を疑問に思っていたので、今回は改めて声だけで勝負したい、そういう活動がしてみたいと思って始めたんです。

──決断の仕方がすごく男らしいですね(笑)。

秘めごと:よく言われます(笑)。そもそも自信がなかったりするんですが、曲を出して、聴いてくれた人が「声が良い」とか「歌が良いね」って言ってくれるようになって、やっと自信が持てるようになったというか。これまで「自分の何を好きでいてくれているんだろう?」ということをすごく考えていたけど、曲に対してのコメントがどんどん増えてきているのが今すごく嬉しいんです。私は歌を歌いたいから、この歌を好きになってほしいという思いもさらに強くなっている感じです。

──ちなみに歌詞はどんな風に書くことが多いですか?

秘めごと:映画やテレビ、本から影響されることもあるんですが、そこに実体験も交えて、リアリティーのある感じで書いています。

木天蓼:曲と同時進行で書いていることが多いですね。デモの段階から何パターンも聴いて、その時の感覚で書いているというか。言葉を選んで書くというより、割とその日その日で感じていることをブワーっと書いているタイプだと思います。だから初期段階のものと完成したものとではだいぶ言葉も変わっているし、よりリアルなものを反映している感じですね。僕自身、こういう直感的な人は初めてでした。だから逆に、こちらが導かれることもあります。こういう歌詞になってきたんだ、じゃあこういうアプローチにしてみようって。詞と曲が呼応し合う感じで制作が進むことが多いですね。

秘めごと:だいぶ、ありのままを書けているなと感じています。

──2曲目に出された「漂流者」の、「誰かを染める自分に届かない」という歌詞が印象的だったのですが、ここにはどんな思いが込められているんですか?

秘めごと:自分の声や歌で、誰かの気持ちを動かせているのか──。まだそういう自分には届いていないなっていう気持ちで書いた歌詞です。



──まさに、このアーティスト活動を始めるにあたっての初心のような部分ですね。

秘めごと:はい。この曲は「狼と羊」よりも先、つまり秘めごとを始めようかっていう時期に書いたもので、その頃の自分の音楽や歌に対しての気持ちを込めているんです。

──焦りや葛藤のようなニュアンスも伝わってきます。

秘めごと:そうですね。実際そういう気持ちでもあったし、そういう時に書き留めた言葉も紡いでいたりします。だけど最後は「誰よりも輝いてやれ」というエールみたいな感じで、自分に対してもそうですが、聴いている方にも届いたらいいなって思いながら書いていきました。

──実際に、共感したという言葉もたくさん届いているようですね。

秘めごと:そういうコメントを見るとすごく嬉しいです。「漂流者」は自分の気持ちをつらつらと書いたものですが、そうやって同じような気持ちの人もいるんだなって思うと、届いて嬉しいなって思います。自分でも、その時の気持ちに寄り添ってもらえるような曲を探して聴いたりすることがあるので。

──聴くだけではなく、カラオケで歌ったりもしますか?

秘めごと:カラオケでは、YUIさんの「Namidairo」のような、結構しっとりした曲を歌ったりします。

木天蓼:語弊があるかもしれませんが、カラオケでは割と沈み込むような、ネガティブな曲を歌っていることが多いです(笑)。でもはたから見ていて思うんですが、映画とかそういうところから音楽を見つけるのが好きみたいで。

秘めごと:最近は映画『エルヴィス』とか。(マルーン5のアダム・レヴィーンが出演している)『はじまりのうた』のサントラはずっと聴いています。

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