【ライヴレポート】ACIDMAN、ツアー<INNOCENCE>「運命は考えることで決まる。だからポジティヴに」
12枚目のアルバム『INNOCENCE』を携えた全9公演の全国ツアー<ACIDMAN LIVE TOUR “INNOCENCE”>が7月3日の新潟・NIIGATA LOTSにて大盛況のうちに幕を閉じた。その6公演目となる6月3日、東京・Zepp DiverCity公演のレポートをお届けしたい。同ツアーの東京公演としては初日3月5日のLINE CUBE SHIBUYAに続いて二度目となる。
◆ACIDMAN 画像
よくライヴに足を運んでる人なら分かると思う。ニューアルバムを携えてのツアーの初日の、あの緊張感を孕んだ感じ。あるいはそのツアー後半の、同じ曲をやってもよりほぐれてきた感じを。
ところが今回のACIDMANのツアーはどれも当てはまらなかった。3月5日の東京・LINE CUBE SHIBUYAからして初日の空気ではなく、強いていえばツアー終盤の爆発した雰囲気。そしてあれから3ヶ月後の東京・Zepp DiverCityは、さらに新たなツアーぐらいのこなれ方だったのだ。
なぜか? これはやはり、新作リリース前にすでにプレリリースツアーをやっていた、ということが大きいのではないか? 加えて、今回のツアー中にコロナに対する状況が好転し、DiverCityではスタンディングのお客さんを前に演ることができたこともパフォーマンスの後押しになっていたような気がする。そんなことを、ライヴの最初のブロックで思った。「Visitor」と「歪んだ光」というミドルテンポのナンバーですでに深く没入しているバンドを前にして。最初のMC。呼吸を整えながら大木伸夫(Vo, G)が言った。
「どんどんライヴが戻ってきているのを実感しています。こんな(スタンディングの)景色がまた見られるとは(少し前までは)思えなかった。最高の気分です!」──大木伸夫
続くブロックは「Rebith」「スロウレイン」「O (オー)」「Ride the wave」。つまり新作収録曲、代表曲、めったにライヴで披露されない2曲、という流れだった。それがまったく同列な感覚で披露された上に、彼らの斬新な一面であるヒップホップのトラックのようなミニマル感を、改めてたっぷりと味わうことが出来た。2度目のMC。大木はスタンディングの情景をさらに味わうように照明を明るくすることを求めた上で口にした。
「「Ride the wave」は10年ぶり。「O (オー)」をやるのは19年ぶり。クラクラする(笑)。でも宇宙の歴史は138億年なので、ついこの間のことです(笑)。こんなに時が経ってもライブをやれるのもバンドを続けてこられたのもみなさんのおかげです。結成25周年、メジャーデビュー20周年。誇らしい気持ちで迎えられています。本当にありがとうございます。」──大木伸夫
それから「この曲がコロナ禍の自分に力をくれた」といった紹介で「灰色の街」へ。プレリリースツアーの時点でも一頭身抜けていた同曲は、ここへきてさらにパワーアップ。儚さと力強さの両立がより際立っていた。
続いて一悟(Dr / 浦山一悟)のフィンガースナップが手だれ、サトマ(B / 佐藤雅俊)も加わったリラックスナンバー「素晴らしき世界」。もはやギターからキーボードへという大木のチェンジが自然すぎるインスト「Link」。そして11曲目「ALE」では3人の歌のハモリが新たな世界を響かせていた。
MCは一悟コーナーへ。例によってギャクを連発したあと、「自分にしては珍しく」と前置きしてマジな話へ。
「今年は<ARABAKI ROCK FEST.>に出させてもらい、<VIVA LA ROCK>にも行き、僕はMAN WITH A MISSIONの特番にも出て。今までは毎年どっかで会ってた仲間と久々に会えて嬉しかった。これまで以上にロック界、音楽界を盛り上げていかなきゃって思いました。みんなもいろんなライヴに行って一緒に盛り上げてほしい」──浦山一悟
対して大木は2022年11月26日から27日の2日間にわたってさいたまスーパーアリーナで行われるACIDMAN主催フェス<SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI” 2022>のことに触れた。
「音楽は不要不急じゃないことを示すためにも、いま第2回をやるべきだと判断した」──大木伸夫
改めて出演者の名前を挙げたあと「<SAI>の成功を祈願して」という前振りで、大作「彩-SAI-」の前編・後編を一挙披露へ。3rdアルバム収録の楽曲だが、当時の重い雰囲気ではなかった。カラフルな照明と同様、より躍動感を感じさせる演奏。ミドルテンポなのにサトマの体が爆速ナンバーのように動いていた。さらに「2145年」。冒頭、音の調子が悪かったようで「大事な曲なんで」と仕切り直した大木。その展開ですらごく自然だった。4度目のMCは“思考は実現する”という有名なセオリーに触れた内容だった。
「僕らがやんなくちゃいけないことはイメージすることだと思います。運命は考えることで決まる。だからポジティヴに考える」──大木伸夫
畳み込むように熱弁した大木。途中「変な人だと思わないでね。道で会っても“よお!”って言ってね」と笑わせつつ。そして「真っ暗な中でも生き抜いていこう。次はそんな歌」と紹介して後半のピークが始まった。
15曲目「夜のために」はMCの内容を受けた熱演だった。つい音が鳴るステージばかりを見てしまっていたが、スタンディングの1階もイス席の2階も、声を出していない以外は、すごい盛り上がりになっていた。もうあと一歩、というところまで戻ってきた盛り上がり。曲は「夜のために」と対のような「Stay in my hand」へ。そして「ある証明」へ。たとえ歓声が上げられなくても関係ない。ステージも客席も、身体の動きだけで最高潮が感じられるくらいの爆発ぶりだった。そして本編最後のMC。
「テンション上がったねー。ライヴならではの楽曲だったと思うし。アルバム『INNOCENCE』には純真無垢といった意味がある。僕らは真っ白で生まれたはずなのにどんどん汚れていってしまう。だけど汚れた自分も抱きしめて、いつか真っ白に生まれ変わる。この瞬間が僕らの未来になればいい。最近ACIDMANと出会った人もこの場で出会ったことがすべて。まだまだ“目指せ50周年”とかやっていきますのでよろしく!」──大木伸夫
本編ラストはニューアルバムのタイトル曲「innocence」、そして「ファンファーレ」。どちらも長年やり続けてきたかのようなパフォーマンスだった。後者のラストで、ファンから募集したコーラスだけがリフレインする中、大木は叫んだ。
「この声は、押し潰されそうな時に全国のみんなが送ってくれた声です。この声に支えられました。だからここに立っています。参加できなかった人も本当にありがとう! ACIDMANでした!」──大木伸夫
アンコールは「Your Song」。ここまでの流れを考えればこの詞しかないと思わせる歌で、通常のアルバムツアーのレベルを超えた一夜は終わりを告げた。
7月3日の新潟・NIIGATA LOTS公演をもって全国ツアー<ACIDMAN LIVE TOUR “INNOCENCE”>を完遂した彼らは、結成25周年とメジャーデビュー20周年を記念して、9月より東名阪ツアー<ACIDMAN 25th&20th Anniversary Tour “This is ACIDMAN”>を開催する。そして11月26日および27日には埼玉・さいたまスーパーアリーナにて自身主催<SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI” 2022>を控えている。
取材・文◎今津 甲
撮影◎Victor Nomoto (Metacraft)
■<ACIDMAN LIVE TOUR “INNOCENCE”>6月3日@東京・Zepp DiverCity セットリスト
02. Visitor
03. 歪んだ光
04. Rebirth
05. スロウレイン
06. O(オー)
07. Ride the wave
08. 灰色の街
09. 素晴らしき世界
10. Link
11. ALE
12. 彩-SAI-(前編)
13. 彩-SAI-(後編)
14. 2145年
15. 夜のために
16. Stay in my hand
17. ある証明
18. Innocence
19. ファンファーレ
encore
20. Your Song
■<ACIDMAN 25th&20th Anniversary Tour “This is ACIDMAN”>
2022年9月16日(金) 愛知・Zepp Nagoya
2022年10月5日(水) 大阪・Zepp Osaka Bayside
▼チケット
¥8,000(税込)
※ドリンク代別途必要
※席種は新型コロナウイルスの状況・会場規定に鑑みて、公演2週間前を目安に発表
■<ACIDMAN presents「SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI” 2022」>
11月27日(日) さいたまスーパーアリーナ
▼<DAY1>11月26日 出演アーティスト
ACIDMAN / 氣志團 / SiM / ストレイテナー / 東京スカパラダイスオーケストラ / DOPING PANDA / Dragon Ash / back number / MAN WITH A MISSION / LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS + ※50音順
▼<DAY2>11月27日 出演アーティスト
ACIDMAN / ASIAN KUNG-FU GENERATION / ELLEGARDEN / THE BACK HORN / the band apart / sumika / 10-FEET / BRAHMAN / マキシマム ザ ホルモン / Mr.Children ※50音順
※タイムテーブルは後日発表
※出演アーティストは変更になる場合あり
【チケット】
・アリーナ:15,000円/1DAY
・スタンド席:15,000円/1DAY
・KIDS (スタンド席):半額 7,500円/1DAY ※小学生対象(小学1年生〜6年生)
(問)SOGO TOKYO 03-3405-9999
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