宮本典子、1978年に発表したソウル/ジャズの逸品と言えるデビュー作『Push』リイシュー
BBE Musicは、「J Jazz Masterclass」シリーズの最新作として、今や亡き日本のジャズ界のレジェンド“鈴木勲”が手がけた女性シンガー、宮本典子の、1978年に発表したソウル/ジャズの逸品と言えるデビュー作『Push』をリイシューした。
◆宮本典子 関連画像
本作は、同年に笠井紀美子、阿川泰子を筆頭する女性ジャズ・シンガーのブームが起き、ポップス市場にもクロスオーヴァーしている最中に、今はなきユピテル・レコードから本作が発売されたもの。その後、この人気作は国内では何度か再発されるが、近年世界的な日本の古い音楽への関心の高まりと共に、中古市場ではオリジナル盤の価格が高騰している中、今回の久々の本作のリイシューは待ち望まれていた。本作のアナログ盤は、2枚組として発売される。
ソウルとディスコを愛する宮本典子は、R&Bが日本で主流になるずっと前に、東京の伝説的なディスコ「MUGEN」でダンサーとして働いていたときに、同会場でライヴを行ったティナ・ターナーのパフォーマンスに感化され、ソウル・シンガーを目指すことを決意する。1977年に日本のジャズ界のレジェンド、鈴木勲にスカウトされ、彼のバンド「ソウル・ファミリー」に参加、その後に彼らのバックアップの下に、本作『Push』を制作。本作は、ジャジーでソウルフルな彼女のボーカルと、当時若くて、勢いのある鈴木のアコースティック・ベースとバック・バンドによる、早熟な演奏が絶妙に組み合わされた傑作と言える。
渡辺貞夫、日野皓正、菊池雅章、ジョージ大塚らと共にベーシスト、チェリスト、マルチ・インストゥルメンタリスト、作曲家、編曲家、プロデューサー、バンドリーダーとして日本のジャズの歴史に最も影響を与えた一人であり、「オウマさん」と呼ばれ親しまれた鈴木勲は、若い才能を育てたことで知られている。キーボード奏者の笹路正徳(後に清水靖晃のバックで活躍)、ギタリストの秋山和慶(日本のジャズ界の大御所と数多く共演)など、後に有名になるミュージシャンたちが本作に参加。オーソドックスなジャズと、当時流行っていたクロスオーヴァーやフュージョンをミックスした新しいサウンドが、本作で見事に結実したのである、と宮本嬢は言う。
本作で鈴木は、当時の日本の音楽界では珍しく、英語で歌を歌うという宮本嬢のユニークな才能に注目し、ジャズ・スタンダード「Everything I Have Is Yours」と「Stella By Starlight」の2曲を彼女に英語で歌わせた。また、鈴木作のインストゥルメンタル「キャデラック・ウーマン」と、笠井紀美子のために作曲した「マイ・ライフ」(『東京スペシャル』で日本語で歌う)の英語詞を彼女が訳し、英語で歌わせた。
1990年に渡米し、グラハム・セントラル・ステーション、ブラザーズ・ジョンソン、サイド・エフェクトやエディ・マーフィーのバンドなど、数々の一流ソウル/ファンク・バンドに参加し、念願のソウル・シンガーになる夢を叶ったが、彼女自身のキャリアを切り開いた本作の世界初のリイシューで、多くの新しいリスナーの心をつかむことを期待したい。残念なことに、本作のプロデューサーである鈴木勲が先日89歳で亡くなり、今回の彼自身が手がけた宮本典子のデビュー盤の念願の世界リイシューを見届けらなかったのは無念だろう。
『Push』
BBE Music
フォーマット: 2xLP/ CD BBE695ALP/ BBE695ACD
■Tracklist
DISC 1
SIDE A
1. Monologue - Noriko Miyamoto, Isao Suzuki
2. Everything I Have Is Yours - Noriko Miyamoto, Isao Suzuki
SIDE B
1. Push - Noriko Miyamoto, Isao Suzuki
2. My Life - Noriko Miyamoto, Isao Suzuki
DISC 2
SIDE C
1. Stella by Starlight (Instrumental) - Noriko Miyamoto, Isao Suzuki
SIDE D
1. Cadillac Woman - Noriko Miyamoto, Isao Suzuki
◆BBE Music オフィシャルサイト