【インタビュー】元ZIGGYの大山×元WILD STYLEの有待によるShammon、本田兄弟を迎えて22年ぶり新作発表「キャリアを全うして死にたい」

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■亡き前妻に捧げたレクイエム
■それが「ゆりかご」なんだ

──リード曲の「ゆりかご」は作詞/作曲ともに大山さんが手がけたエモーショナルなミディアムチューンです。

大山:「ゆりかご」の原形を作ったのは2002年だから、かなり前なんだ。いろんな意味で記憶に残っている曲だったので、“いつか世に出したいな”とずっと思っていて、今回仕上げることができて良かったと思う。実は「ゆりかご」は俺の亡き前妻(戸川京子)に捧げたレクイエムなんだよね。そこは俺の中でも葛藤があって、公表すると賛否両論あるだろうなと思った。でも生前、前妻といろんな話をしていた中で、彼女は「自分がみんなから忘れられてしまうのが一番怖い」ということをずっと言っていたんだ。それもあって、今回形にして公表するのはいいタイミングかなと思った。今年は亡くなって20年という節目の年だから。こういうことをすると、死人商売とか言うやつが必ずいるじゃん。でも、世間がなにを言ったとしても、そういうことよりも、彼女の“自分は人の記憶に残っていたい”という思いを、俺は元旦那として優先させてもらった。「ゆりかご」はそういう曲なんだ。

有待:「ゆりかご」はデモテープの段階からいい曲だったので、「これをやりましょう」と即答しました。

大山:ただね、当初は「パステルの石畳」がリード曲で、「ゆりかご」がカップリングの予定だったんだ。だけど途中で有待が「「ゆりかご」がリード曲のほうがいいと思う」と言い出した。

有待:曲調的には「パステルの石畳」のほうがリード曲っぽいし、僕もそういう意識で書いたんですよ。でも、制作を進めていく中で、歌詞の世界観も相まって「ゆりかご」のほうが歌っていてグッとくるなと思って、リード曲とカップリングを入れ替えようという提案をしました。

大山:「歌っていてグッとくるんですよね…」みたいなことを有待が言うのを初めて聞いたんだ。歌ものの楽曲だから、歌う人間が思い入れがあるほうがいいんじゃないかなということで、入れ替えることにした。

▲シングル「ゆりかご」

──「ゆりかご」も「パステルの石畳」も上質で両A面シングルのような作品になっています。では、「ゆりかご」のレコーディングはいかがでしたか?

有待:Shammonではデビューしたときから大山さんが歌のディレクションをしていて、今回もそれは変わらなかったんです。20数年ぶりにレコーディングするからちょっと緊張もしていたし、もしかしたら喧々諤々する可能性もあるかなと思っていた。ただ、昔の僕は不真面目だったけど、今回は真面目に準備をしていったんです。ちゃんと練習したし、何パターンか歌い回しも考えていった。だから、大山さんの理想どおりにはいかなかったかもしれないけど、違うパターンを提示できるようになったので、大山さんも納得してくれる歌を唄えたんじゃないかなと思います。

──喧々諤々には……。

有待:ならなかった。朝までかかると思っていたんですけどね。昔は5時間も6時間も歌っていたから。

大山:懐かしい(笑)。今回は2テイクくらいでほぼOKだった。だからすごく早かったね。ドラムも2回しか叩かなかったし。

──早いですね! 大山さんの歌心に溢れたドラムはすごく心地いいですし、有待さんのボーカルは個性があって、響く歌でいながらクドくないというところが魅力的です。

有待:それは自分ではわからない。自分の歌のクセみたいなものはやっぱりあって、それは消していないからあっさりした歌ではないと思う。ただ、クドくならないようにということは、すごく気をつけているんです。昔の僕はしゃくらないと正しいピッチに音を当てられなかったんですよ。それは嫌だったし、英語の歌をいっぱいコピーするようになって真っすぐ音を当てる技術が習得できた。今回、それを活かせたというのはありますね。

▲<Shammon レコ発ワンマンショー in clubasia>

──レコーディングの機会などがなくても、日々シンガーとして鍛錬されていることがわかります。では続いて、カップリングの「パステルの石畳」にいきましょう。

大山:「パステルの石畳」は完全に'90年代へのオマージュというか、俺の中での'90年代ポップスロックとはこういうもので。それを形にしたくてサポートキーボードのTacos Naomi君と思いきり遊ばせてもらった。そうしたら有待が作ったウィンガーみたいなデモからグンと良くなったよね(笑)。

有待:ウィンガーをバカにしたような発言が多いな(笑)。僕が作った曲は毎回大山さんにリアレンジしてもらっているんだけど、それには全く抵抗がないというか、逆に感謝しています。僕が作るデモのコードは“C→Am→G→F”みたいに王道的な感じだから(笑)。大山さんはコードを変えるし、場合によってはメロディーも変えるんですよ。大山さんと僕は作る曲のテイストが全然違うけど、大山さんの色が入るから、並べて聴くとShammonになるんです。

──“Shammonになる”というのは、有待さんの歌も大きいと思います。「パステルの石畳」の歌詞には、想い合っていながら上手くいかない恋が描かれていますね。

大山:キャッチコピーにもあるように、Shammonは“実らぬ恋と満たされぬ愛を歌い続けて25年”というユニットなので(笑)。「パステルの石畳」は、そのド真ん中に位置する歌詞だよね。

──たしかに。「パステルの石畳」の歌詞は、かわいらしさがあったりロマンチックだったりして、年齢を感じさせないことが印象的です。

大山:でしょう? 俺は少年の心を忘れていないから(笑)。“オジサン、恋してるんじゃねぇ?”みたいな(笑)。

有待:大山さんの歌詞の世界観は昔からロマンチックなんですよ。Shammonはどの曲もそう。僕はそういう歌詞を書けないから、もう全部大山さんに任せています。そういう意味では、大山さんが書いた詩を表現するのが難しい場合もある。大山さんが理想としているものとは違う解釈になっている歌もある気はしますね。

大山:でも、すべてが自分の思いどおりにならないと嫌だとしたら、ユニットやバンドをやる意味がないじゃん。俺の中には自分がイメージしていたものとはまた違うものが出てくる楽しさを味わいたいという気持ちもあるんだ。だから、有待に自分のイメージだけを押しつける気はないし、今回彼は「ここはこういうふうに歌いたいです」みたいなサジェスチョンもくれたんだ。それで、「うん、いいんじゃね」みたいな。昔はそういうことはなかったから、今回のレコーディングは今まで以上に楽しかった。

──いいパターンですね。それに「パステルの石畳」のボーカルは、色気と爽やかさ、という相反する要素が同居していて表現力の高さを感じました。

有待:本当ですか? そこは大文字でお願いします(笑)。

大山:ははは! いや、有待もオジサンだけど、少年の心を忘れていないということだと思うよ(笑)。

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