【コラム】ポルノグラフィティの『Visual Album“暁”』は、もはや映画と言っていい
ポルノグラフィティがとてつもないことをやってのけた。およそ5年振り12枚目のニューアルバム『暁』と連動した作品『Visual Album“暁”』の制作と、それを映画館で上映するという一大イベントだ。Visual Albumとは何か?というと、アルバム全曲のミュージックビデオと、そのストーリーを紡ぐショートフィルムとで構成された映像作品で、全編通しておよそ90分。質も量も含めてこれはもう映画だと言っていい。
作品全体の監督を務めるのは、世界が注目するクリエイティブ集団・kidzfrmnowhereの創設者であるYUANNだ。彼の総指揮のもと、世界中の様々な地域から集まったクリエイター、ダンサー、アクター達が入り混じり、豊かな個性を競い合う。これはトップアーティストでありながら常に挑戦と前進を忘れないポルノグラフィティならではの、前代未聞のスケールを誇る企画だ。
中身を紹介していこう。そもそもアルバムの全15曲すべてにMVが作られることが極めて異例だが、1本1本がまったく違ったアプローチで凝りまくった世界観を見せてくれるのだから贅沢極まりない。1曲目を飾る「ブレス」はスタジオで演奏する岡野昭仁と新藤晴一の周りに、可愛らしい子供たちが集まって楽しく遊ぶ。なんとカメラを撮るのも子供たちという、無垢と純真を映像化したほのぼのとした味わいだが、一転して「Zombies are standing out」では、モデルの立花恵理をはじめゾンビメイクのダンサーやバンドメンバーが騒ぎ狂う、サイケデリックでホラーな世界が展開する。なんという落差。
メンバーが必ずしも登場しないMVもあるのが、映像作品としての独立性の高さをより強調する。フランスの舞台芸術家・振付家として活躍する振付師マノン・ブーケとコラボレーションし、パリを舞台にダンサーの群舞だけで世界観を表現しきる「証言」。中国を舞台にした劇的な男女のラブストーリーを、中国のファッション界で活躍するジャマール・ハオ監督が見事に映像化した「クラウド」。アントニー・ヤノ・ヘイズを監督に迎え、不器用な恋人同士の放浪の旅をカリフォルニアの砂漠地帯で撮影した「ナンバー」。その芸術性とメッセージ性の高さについては、一つの作品に映画1本ぶんの解説が必要で、とてもここでは書き尽くせない。
もちろん、ポルノグラフィティのメンバーが登場するストレートなミュージックビデオ作品もちゃんとある。下北沢の街を歩く二人の素の姿が楽しめる「VS」や、高層ホテルのスイートルームで演奏する二人のアダルトなムードをとらえた「カメレオン・レンズ」。二人の演奏シーンを中心としながらも、日々仕事に忙しい人々の日常の姿を映し出しながら元気と幸福のメッセージを伝える「テーマソング」。岡野昭仁の自撮りシーンや新藤の珍しい歌唱シーンをはじめ、ロンドン、パリ、ブリスベン、ジャカルタなど各地で撮影された市井の人々の心からの笑顔が印象的な「ジルダ」。そしてYUANN自ら監督し、国内外で活躍するコレオグラファー・Seishiroが手掛けるダンサーたちの群舞と、ポルノグラフィティのメンバーのライヴパフォーマンスがまばゆいシルエットの中で溶け合う「暁」。イメージがとめどなく湧いてきて、それ以上の解説はやはりここでは書ききれない。
それら15本のMVをつなぐショートフィルムは、母、父、娘の3人暮らしの日常を中心に、過去と現実が、リアルと空想が交錯し、時に悲しく切なく、時にユーモラスでハッピーに、このショートフィルムのパートだけでも一つの世界観をしっかりと作り上げている。そしてポルノグラフィティの熱烈なファンである3人が迎えるラストシーンとは? それはいつかどこかでこの作品を見た時のためのお楽しみとしておこう。
この作品は8月6、7日の2日間限定で全国91か所の映画館で上映され、大きな反響を巻き起こした。それは映像作品としての娯楽性と芸術性、完成度の高さに加えて、ポルノグラフィティならではのメッセージ性の高い歌詞からクリエイターがインスピレーションを受け映像制作した、その表現の幅の広さにもあるだろう。今回の映像作品の中にはこれまでのポルノグラフィティのMVとは一線を画す内容のものもある。しかしそこにはコロナ禍の不安から希望の未来へ、率先して一歩を踏み出すアーティストのプライドと責任感も同時に感じ取れる。ポルノグラフィティは前進している。
二人はこのあと、<18thライヴサーキット“暁”>と題した全国25か所29公演に及ぶ大ツアーに出る。キックオフは9月22日の神奈川、ファイナルは2023年1月23,24日の日本武道館だ。アルバム『暁』で表現した音楽的新境地、『Visual Album“暁”』で見せた映像的新境地は、きっとライヴでも生かされるだろう。デビューから23年を経て今なお挑戦を続ける二人の姿に拍手を。お楽しみはまだまだこれからだ。
文◎宮本英夫
■『Visual Album“暁”』特設サイトURL
https://www.pornograffitti.jp/akatsuki-visual-album/
▲『暁』初回生産限定盤
▲『暁』通常盤
ニューアルバム『暁』
初回生産限定盤A(CD+BD) SECL-2773~2774:¥5,500(税込)
初回生産限定盤B(CD+DVD) SECL-2775~2776:¥5,000(税込)
通常盤SECL-2777:¥3,300(税込)
収録楽曲:
1.暁
2.カメレオン・レンズ
3.テーマソング
4.悪霊少女
5.Zombies are standing out
6.ナンバー
7.バトロワ・ゲームズ
8.メビウス
9.You are my Queen
10.フラワー
11.ブレス
12.クラウド
13.ジルダ
14.証言
15.VS
<映像特典> ※初回盤A・B共通
●STUDIO SESSION 〜稀・ポルノグラフィティ〜
これまでライヴで演奏したことがない楽曲から、厳選した数曲をスタジオセッションして収録(「Stnad for one’s wish」「むかいあわせ」「オニオンスープ」「サマーページ」)
●Video Clips(「ブレス」「Zombies are standing out」「フラワー」「テーマソング」)
<全国ツアー18thライヴサーキット“暁”>
9月22日(木)神奈川 よこすか芸術劇場
9月27日(火)群馬 高崎芸術劇場 大劇場
10月1日(土)和歌山 和歌山県民文化会館
10月3日(月)静岡 富士市文化会館 ロゼシアター 大ホール
10月10日(月・祝)福井 フェニックス・プラザ
10月17日(月)大阪 オリックス劇場
10月18日(火)大阪 オリックス劇場
10月23日(日)広島 広島文化学園HBGホール
10月25日(火)愛媛 松山市民会館
10月28日(金)大分 iichikoグランシアタ
11月4日(金)新潟 新潟県民会館
11月7日(月)京都 ロームシアター京都
11月9日(水)兵庫 神戸国際会館こくさいホール
11月16日(水)北海道 函館市民会館 大ホール
11月18日(金)北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
11月22日(火)岡山 倉敷市民会館
11月24日(木)三重 三重県総合文化センター
11月28日(月)熊本 熊本城ホール メインホール
11月30日(水)福岡 福岡サンパレス ホテル&ホール
12月5日(月)愛知 名古屋国際会議場 センチュリーホール
12月6日(火)愛知 名古屋国際会議場 センチュリーホール
12月9日(金)高知 高知県立県民文化ホール
12月16日(金)千葉 森のホール21(松戸)
12月19日(月)宮城 仙台サンプラザホール
12月21日(水)福島 會津風雅堂
12月26日(月)東京 TOKYO DOME CITY HALL
12月27日(火)東京 TOKYO DOME CITY HALL
2023年
1月23日(月)東京 日本武道館
1月24日(火)東京 日本武道館
◆チケット
価格:9,900円(税込)
※お一人様1公演につき4枚まで/4歳未満入場不可・4歳以上要チケット
※電子チケットでの販売・お受け取りとなります。
※各公演問い合わせ先、一般発売日等詳細は"暁"特設サイトにてご確認ください。
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