【コラム】ポルノグラフィティ、ともに夜明けを目指すアルバム『暁』
ポルノグラフィティが12作目となるオリジナルアルバム『暁』をリリースした。
前作『BUTTERFLY EFFECT』以来、約5年ぶりのアルバムには、その間にリリースされた「カメレオン・レンズ」「ブレス」「Zombies are standing out」「フラワー」「VS」「テーマソング」といったシングル曲もすべて収録。また、新たな取り組みとして、以前から執筆活動にも前向きな姿勢を見せていた新藤晴一(G)が全曲の作詞を担当した。
さらに、クリエイティブ集団・kidzfrmnowhereの創設者であるYUANNを監督に迎え、日本やアメリカ、韓国、フランスなどのクリエイターとともにすべての楽曲のMV、そのストーリーを紡ぐショートフィルムで構成された映像作品を制作し、『Visual Album“暁”』として、8月6日(土)、7日(日)に全国各地の映画館で限定上映するという、まさに5年分の想いを乗せた、意欲的かつボリューム満点の全15曲入りとなっている。
アルバムは表題曲の「暁」でスタート。《あゝ 大地に膝ついたままで天を仰ぎ 弱き者よ どれほど待っている? 暁》と、冒頭から強い言葉と鬼気迫るテンションが怒涛の如く押し寄せ、聴き始めた途端に早くも度肝を抜かれてしまった。ここまで高低差のある難易度Sのメロディを澱みなく歌ってのける岡野昭仁(Vo)のボーカル、負けじと応える新藤のヘヴィで火を吹くようなギター、そして激情的なストリングスが絡み合うロックチューンが放つエネルギーは凄まじく、それは今なお最高の更新に挑むポルノグラフィティの熱量そのものと言っていい。
続く「カメレオン・レンズ」がマイナー調で打ち込み主体のアプローチというのもあって、アルバムの序盤はそこはかとなく不穏なムードが漂う。基本的には雨空のイメージ。そんな中で雲間から差す微かな光のように「テーマソング」が訪れるのは、今現在の不安定で険しい世相を反映したゆえの並びかもしれない。
聴き手の背中を押してくれる素晴らしい応援歌によって顔を上げられたのも束の間、ダークファンタジー的な「悪霊少女」で再び暗雲が立ち込める。少女の苦悩を追った物語調のリリックにおいても《不気味な雷鳴が轟く》と歌われていて、ヒリヒリとした緊迫はそのまま「Zombies are standing out」へと持続。悪霊とゾンビが連なる物々しいコンボを通して、急速に膨らむ嘆きのトーンと荒々しいサウンドをもって、喪失感や諦念に抗うメッセージが打ち出されていく。フィクションをベースにした切り口ながらも、《この街をべったりと覆いつくす 無感覚と無関心が混じる大気汚染》といったラインなどはドキッとするほど現実味を帯びていたり、絶妙に生々しく響いてくる楽曲が味わい深い。
そして、またガラリと雰囲気が変わる中盤。「ナンバー」は一転、「暁」「悪霊少女」で鳴っていた激しいノリとは対極にあるやさしいストリングスの音色、動物や虫たちが出てくる穏やかな目線の歌詞、マイルドな曲調にホッとする。「バトロワ・ゲームズ」では、電脳と現実の境い目が曖昧になるほどサバイバルゲームに激ハマリした主人公の感情を、カラフルなシンセをフィーチャーしつつ妖しく表現。アコギの温かなサウンドに乗せてひらがなの多い歌詞を用いながらも、《こわれてしまった すきだったんだけど》と只ならぬ喪失感が狂気的に渦巻く「メビウス」。大切な人を失う前の世界に戻ったかのような甘美さで脳内が心地よく揺さぶられる「You are my Queen」と、進化が止まらないポルノグラフィティの振り幅に圧倒されてしまう。
《そこに咲いてるだけで こんなにも美しい 弱さと強さを持つ花よ》と歌われる「フラワー」など、アルバムの後半はより言葉がしみじみと胸に残る。「ブレス」の《少年には遠回りする時間が与えられ 老人には近道を知る知恵が授けられて どちらかを笑うことなかれ 羨むことなかれ それぞれの道がある 誰も君の道は行けない》も、「クラウド」の若かりし頃の記憶をビタースウィートに思い返す描写も、今の彼らだからこその豊かな表現に感じられる。自分の手のひらや足元をジッと見つめて想いを新たにする、そんなタイミングで映えそうな楽曲が並ぶ。
ラグジュアリーな空気を纏ったラブソング「ジルダ」に甘く浸り、この感じのままエンディングを迎えるのかと思いきや、クライマックスに置かれた「証言」でまたも描かれる愛の喪失。そんな起伏の激しいアルバムの展開からは、山あり谷ありの人生模様、日々に一喜一憂しながらも強く生きる現代人の姿が浮かぶ。本当に泣いているかのような岡野の歌い回しも、言葉にしたくてもできないやり切れなさが滲む新藤のギターソロも、溢れ出す心の叫びも、真に迫るものがあってたまらなくリアルだ。
再び立ち向かっていく覚悟を覗かせる「VS」で希望を残し、アルバムは幕を閉じる。どんなにつらいことが起こっても人生は続く、と言わんばかりに。そういえば、「ナンバー」にも《Life goes on》と歌っている箇所があった。節々で容赦ないほどの起伏を作りながら、ポルノグラフィティが目指したのは、この苛烈な世界を生きる中で活力やヒントになるような、本当の意味でリスナーと生々しく共鳴し合える楽曲だったのではないだろうか。だから、今作では不安定な感情をあえて包み隠さず、人間らしい生き様として泥臭く全面に出したのだと思う。
「テーマソング」制作の際に込めた“混沌とした時代の中でプラスもマイナスも受け止めて生きていこう”というメッセージを、さまざまなサウンドアプローチを試みたり、フィクションや比喩を用いたりと工夫を凝らし、より突きつめて形にしたのが今回の『暁』と言ってもよさそうだ。“太陽が昇る前のほの暗い頃”を意味するアルバムタイトルは、夜明けを願う私たちの心情にとてもしっくりくる。
文◎田山雄士
▲『暁』初回生産限定盤
▲『暁』通常盤
ニューアルバム『暁』
初回生産限定盤A(CD+BD) SECL-2773~2774:¥5,500(税込)
初回生産限定盤B(CD+DVD) SECL-2775~2776:¥5,000(税込)
通常盤SECL-2777:¥3,300(税込)
収録楽曲:
1.暁
2.カメレオン・レンズ
3.テーマソング
4.悪霊少女
5.Zombies are standing out
6.ナンバー
7.バトロワ・ゲームズ
8.メビウス
9.You are my Queen
10.フラワー
11.ブレス
12.クラウド
13.ジルダ
14.証言
15.VS
<映像特典> ※初回盤A・B共通
●STUDIO SESSION 〜稀・ポルノグラフィティ〜
これまでライヴで演奏したことがない楽曲から、厳選した数曲をスタジオセッションして収録(「Stnad for one’s wish」「むかいあわせ」「オニオンスープ」「サマーページ」)
●Video Clips(「ブレス」「Zombies are standing out」「フラワー」「テーマソング」)
<対象商品>
2022年8月3日発売 ニューアルバム「暁」
初回生産限定盤A(CD+BD) SECL-2773~2774:¥5,500(税込)
初回生産限定盤B(CD+DVD) SECL-2775~2776:¥5,000(税込)
通常盤SECL-2777:¥3,300(税込)
<CD購入特典>
■Amazon.co.jp
メガジャケ
※特典ご希望の方は特典付き商品をご予約・ご購入頂くようご注意下さい。
※絵柄は各形態のジャケット写真と同じ絵柄になります。
■楽天ブックス
クリアポーチ
※特典ご希望の方は特典付き商品をご予約・ご購入頂くようご注意下さい。
■セブンネットショッピング
モバイルスタンドキーホルダー
※特典ご希望の方は特典付き商品をご予約・ご購入頂くようご注意下さい。
■全国のCDショップ/オンラインショップ
オリジナルステッカー
◎対象店舗はコチラ!
https://www.pornograffitti.jp/shoplist/220803/
ご予約はコチラから
https://pornograffitti.lnk.to/20220803_Album
『Visual Album“暁”』
2022年8月6日(土)19:30 開演
2022年8月7日(日)17:00 開演
会場:
全国各地の映画館
https://liveviewing.jp/pg-akatsuki/
※開場時間は映画館によって異なります。
※大阪府では条例により、16歳未満の方は終映時間が19:00を過ぎる上映には、保護者同伴でないと入場できません。8月7日の上映回は19:00より前に終了予定。
Visual Album‟暁”LIVE VIEWING情報サイト:https://liveviewing.jp/pg-akatsuki/
主催:アミューズ / 配給:ライブ・ビューイング・ジャパン
<全国ツアー18thライヴサーキット“暁”>
9月22日(木)神奈川 よこすか芸術劇場
9月27日(火)群馬 高崎芸術劇場 大劇場
10月1日(土)和歌山 和歌山県民文化会館
10月3日(月)静岡 富士市文化会館 ロゼシアター 大ホール
10月10日(月・祝)福井 フェニックス・プラザ
10月17日(月)大阪 オリックス劇場
10月18日(火)大阪 オリックス劇場
10月23日(日)広島 広島文化学園HBGホール
10月25日(火)愛媛 松山市民会館
10月28日(金)大分 iichikoグランシアタ
11月4日(金)新潟 新潟県民会館
11月7日(月)京都 ロームシアター京都
11月9日(水)兵庫 神戸国際会館こくさいホール
11月16日(水)北海道 函館市民会館 大ホール
11月18日(金)北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
11月22日(火)岡山 倉敷市民会館
11月24日(木)三重 三重県総合文化センター
11月28日(月)熊本 熊本城ホール メインホール
11月30日(水)福岡 福岡サンパレス ホテル&ホール
12月5日(月)愛知 名古屋国際会議場 センチュリーホール
12月6日(火)愛知 名古屋国際会議場 センチュリーホール
12月9日(金)高知 高知県立県民文化ホール
12月16日(金)千葉 森のホール21(松戸)
12月19日(月)宮城 仙台サンプラザホール
12月21日(水)福島 會津風雅堂
12月26日(月)東京 TOKYO DOME CITY HALL
12月27日(火)東京 TOKYO DOME CITY HALL
2023年
1月23日(月)東京 日本武道館
1月24日(火)東京 日本武道館
◆チケット
価格:9,900円(税込)
※お一人様1公演につき4枚まで/4歳未満入場不可・4歳以上要チケット
※電子チケットでの販売・お受け取りとなります。
※各公演問い合わせ先、一般発売日等詳細は"暁"特設サイトにてご確認ください。
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