【ライブレポート】coldrain、ツアー<Nonnegative>開幕「みんなが俺らに火をつけてくれた」
coldrainが7月11日、ツアー<“Nonnegative” ONE MAN TOUR 2022>をスタートさせた。7月6日に発売されたニューアルバム『Nonnegative』のリリースツアーとなり、その初日は恵比寿LIQUIDROOM。同公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。
◆coldrain 画像 / 動画
「この夏からいろんなものが動き出すはず。もうルールなんて関係ねえと言うヤツもいるだろうけど、俺達はもっとデカいゴールを見据えてるし、みんなもそうだと思う。まだこのキャパシティの会場ではルールを敷かなければいけないけど、ちゃんと俺達は音楽を守ってきたんだと言えるように、そして溜め込んできたものを10月の横浜アリーナで発散できるように、この曲達を成長させたいと思っています」──Masato
ライヴ後半、Masatoがこう語っていたが、彼らがツアーのキックオフとしてLIQUIDROOM(1000人以下のキャパシティ)という場所を選んだ理由は極めてシンプルなものだったはずだ。“可能な限りゼロ距離で、可能な限りライヴ感溢れる空間を作り出したい”、“未だコロナウイルス感染症対策の規制が完全に取り払えない状況においてもcoldrainが思い描く理想のライヴを浮かび上がらせたい”、という気持ちがこの初日には満ちていたし、もっと言えば、それがこのツアーの最大の燃料なのだと思う。
実際、『Nonnegative』という作品の核にあるのも、アグレッシヴなライブへの執念である。たとえば、今作の冒頭を飾る「Help Me Help You」のBメロ、ギターのループとシャウトの応酬と高速の四つ打ちが絡み合って強烈なトランス感を生み出すセクションほか、「PARADISE (Kill The Silence)」や「Cut Me」でドラムンベースのビートを導入し、モッシュやヘドバンとは異なる持続的なダンスへの接近など。これらはコロナ禍を通過したからこその新たなフックとも言えるが、このライブに一貫していたアッパーさとアグレッションは、これらのアレンジがあくまで“暴発的なテンションを生み出すこと”一点に向けて生まれてきたことを示していた。特にブルータルなリフとドラムンベースが溶け合うことでフロア全体が揺れた「Cut Me」は、新境地であると同時にcoldrainの真髄を感じさせるもので、5人がガシガシと頭を振りながらプレイする姿は、自分達自身が高揚するサウンドに従順なバンドのモードを表していた。
coldrainが頭角を現した2010年代、“ラウドロック”というラベリングを拒み、各々が独立した音楽性であることを誇示するバンドが多かった中で、coldrainは徹底して“ラウドロック”という看板を掲げ続けた。これは、歌謡的な音楽性がメインストリームを占める日本のシーンに対してオルタナティヴな存在であることを認めた上で、それでもメインストリームに食い込むために自分達自身をわかりやすくプレゼンテーションしようという姿勢の表れだった。それと同時に海外も含めたポストハードコアの飽和にも自覚的だった彼らは、ポップミュージックのトレンドを横目に見ながら常に試行錯誤し、新たな音楽性を吸収しながら作品を重ねてきた。その極みが前作『THE SIDE EFFECTS』であり、ラウドでありながらポップでもあるという理想形を追求するからこそ、王道のヘヴィロックをなぞることを自分達に許さず、作品のカラーは時代と共に常に変化してきたのである。しかし『Nonnegative』における重要なポイントは、アッパーかつフィジカルな高揚に対して従順な王道リフ、王道のヘヴィなサウンド、王道の伸びやかなメロディを軸にした上で、これまで培ってきた音楽的な素養が配されているところだ。coldrainのルーツである2000年代のヘヴィロックを裏切らず鳴らした結果、今持っている武器のすべてが各曲で輝いている。それが『Nonnegative』の突き抜け方の肝なのだ。
そのマインドが実際のライブにも表れており、規制の中で自由な踊り方を見せる観客に対し、遠慮なくアグレッシヴなパフォーマンスをぶつけていく姿がこの日のライヴの爽快感に繋がっていた。過去曲から「F.T.T.T」をプレイするなど、モッシュパートの連打もあり。ブレイクダウンの獰猛さもさらに増し、ひたすらcoldrainの音楽を鳴らすことだけに没頭し続ける。たったそれだけだが、Masatoが語ったように「いつか本来のライヴの姿を取り戻せる日」のためにルールを守り続ける観客にとっても、フィジカルな暴発以上に音楽の解放感一発で興奮し続けられるライヴになっていたのが素晴らしかった。
ちなみに、この日のフロアは開演前から異様な湿気と温度に包まれていた。これは観客のボルテージに寄するところも多分にあったのだろうが、それ以前に空調が効いていなかった。空調の故障かと一瞬疑ったのだが、ライヴ終盤でMasatoが「ライヴ感を出すために、空調を切っていた」と白状する一幕があった。要はモッシュやクラウドサーフが許されていた頃の汗臭いピットを作り出せないかと考えたのだろう。一見笑ってしまうような思考回路だが、しかし彼らは本気でライヴへの渇望をこの日に凝縮していたということだ。モッシュもクラウドサーフもない。歌声も発することができない。それでも、それでも、という心が『Nonnegative』を生み出し、歌と音だけでゼロ距離を生み出すこの日のライヴに繋がった。ロックバンドのチャイルディッシュな部分と、研磨され洗練性を備えている音楽性と。その両方を同等のものとして炸裂させている、不思議なバランス感のバンドである。だからこそ面白いのがcoldrainなのだ。
この日は『Nonnegative』から全曲が演奏された。ステージ上でMasatoが語っていたが、リリースツアーとはいえ新作から全曲を演奏することは珍しいという。今の楽曲に対する自信とも言えるだろうし、初演奏ということにかかわらない即効性があると実感しているのだろうし、何よりも彼ら自身がアグレッシヴなcoldrainの姿を自分達に求めていることの表れなのだろう。
「理想を言えば、このツアー初日にはすべての規制がなくなっていることを願っていた」という言葉もあったし、「俺らは規制の中でライヴなんかできないと思っていた。でも、気持ちを送り続けてくれたみんなが俺らに火をつけてくれた」という言葉もあった。coldrainに限らず多くのロックバンドと多くのロックキッズが個々の意志で守り続けた“場所”があったからこそ生まれた『Nonnegative』と、徐々に戻ってきたライヴの解放感。それらが徹頭徹尾響いてきた、これ以上ない灼熱のツアー初日だった。
取材・文◎矢島大地
撮影◎ヤマダマサヒロ
■7thフルアルバム『Nonnegative』
【通常盤(CD Only)】¥2,860 (税込)
【初回限定盤(CD+Blu-ray)】¥6,050 (税込)
【初回限定盤(CD+DVD)】¥4,950 (税込)
【超初回限定盤 (CD+Blu-ray+INrain Magazine vol.2+オリジナル限定グッズ+直筆サイン付き)】¥8,250 (税込)
【超初回限定盤 (CD+DVD+INrain Magazine vol.2+オリジナル限定グッズ+直筆サイン付き)】¥7,150 (税込)
▼DVD・Blu-ray収録内容 ※初回限定盤・超初回限定盤
「"PARADISE"JAPAN TOUR 2021」 2021.11.16 東京 USEN STUDIO COAST公演
▼収録曲
01. Help Me Help You
02. CALLING
03. Cut Me
04. Before I Go
05. Bloody Power Fame
06. Here With You
07. Boys And Girls
08. PARADISE (Kill The Silence)
09. 2020
10. Rabbit Hole
11. Don't Speak (No Doubt cover)
12. From Today
購入リンク:https://coldrain.lnk.to/Nonnegative
■<“Nonnegative” ONE MAN TOUR 2022>
07月19日 大阪 BIGCAT
07月25日 愛知 DIAMOND HALL
07月28日 福島 郡⼭HIPSHOT JAPAN
08月01日 岩手 盛岡 Club Change WAVE
08月04日 北海道 札幌PENNY LANE24
08月06日 北海道 帯広MEGA STONE
08月10日 新潟 新潟LOTS
08月11日 石川 ⾦沢EIGHT HALL
08月19日 岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
08月22日 愛媛 WstudioRED
08月24日 鹿児島 CAPARVO HALL
08月26日 熊本 B.9 V1
09月06日 岐阜 club-G
09月08日 京都 KYOTO MUSE
09月23日 福岡 Zepp Fukuoka
09月30日 北海道 Zepp Sapporo
10月02日 宮城 SENDAI GIGS
10月06日 Zepp Nagoya
10月07日 Zepp Osaka Bayside
【“Nonnegative"リリース特別先行】
受付期間 : 7月5日(火) 12:00〜7月19日(火) 23:59
https://w.pia.jp/t/coldrain-tour22/
▼対象公演
9月23日(金祝) Zepp Fukuoka~10月7日(金) Zepp Osaka Bayside + 横浜アリーナ公演
■<15th ANNIVERSARY “15 × ( 5 + U )”LIVE AT YOKOHAMA ARENA>
open16:30 / start18:00
【“Nonnegative"リリース特別先行】
受付期間 : 7月5日(火) 12:00〜7月19日(火) 23:59
https://w.pia.jp/t/coldrain-tour22/
▼対象公演
9月23日(金祝) Zepp Fukuoka~10月7日(金) Zepp Osaka Bayside + 横浜アリーナ公演
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