【インタビュー】minori、瑞々しくも熱く力強いバンドサウンドで心を撃ち抜く1stミニアルバム『光ある街に背を向けて』

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■「minori聴いて頑張ろうかな」って思えるような優しい曲を作りたい
■そばにいてあげられような思いをアルバムに落とし込んだ感じです


──ミニアルバムには「エバーグリーン」という楽曲が収録されていますが、この曲だけじゃなく、どの曲からも瑞々しさを強く感じました。

齋藤:自分が高校生のときにバンドを組んでから、何回もやめたいなと思ったことがあって。そのときにkoboreのライヴをバンドマンの立場で観て、なんでこんなかっこ良いライヴをしているのに、俺たちはこんなにダメなんだろうって、逆に勇気をもらう感じだったんですよ。今minoriを聴いてくれている人たちは、自分よりも年齢が低かったり、同世代だったり、20代前半ぐらいの人たちが多い感じがするんですけど、お客さんを自分の立場に置き換えて考えたときに、きっとつらい思いをしていると思うんですよね。ずっとラクな人なんてマジでいないと思うんで。だから、そういう気持ちでいる人たちの背中を押せるような感じでライヴをしているんですけど。でも、ライヴでしか直接歌えないから、「明日学校だ」「仕事だ」っていうときに、CDとかサブスクで「minori聴いて頑張ろうかな」って思えるような、側にいてあげられるような優しい曲を作りたくて、今回のアルバムに落とし込んだ感じですね。

──新しく作った曲の中では、リード曲の「流星群」は幻想的な空気感があって、これまでの雰囲気とはまた違いますね。

齋藤:この曲、最初は超速い曲にしようと思っていたんですよ。「流星群」っていうタイトルから疾走感はあるんだろうなと思いつつ、でも、夜だし、恋愛の曲にしてみようと思ったら、歌詞を書いていくうちにどんどんテンポが下がっていって。でも、自分が書いてきた恋愛の曲の中で、ドラムが跳ねている曲はなかったから、新しいことをやってみようかなって。意外とどのパートも跳ねているんですけど、歌詞は別れた相手のことがずっと忘れられないっていうメンヘラみたいな感じというか(笑)。だから、楽器隊は明るく、歌詞は切なさを残しつつ、みたいな感じで中和していこうっていう感じでした。



──歌詞は恋愛だけじゃなくて、もう少し広い捉え方もできますよね。たとえば、バンドとリスナーとか。

齋藤:歌詞としては、昔付き合っていたけど、仕事があったり、他の事情があったりで、離れてしまって。でも、結局まだ……みたいな感じではあるんですけど、そういうことって実際に多いと思うんです。自分の好きなものとか、昔好きだったものとかって、どれだけ忙しくなっても、頭のどこかにあるのかなと思っていて。だから、そういう面では恋愛以外としてもいろいろな解釈をしてくれているかもしれないですね。恋愛ソングなだけじゃなくて、応援ソングでもあるのかなって。解釈は無限にあるので、そこは想像にお任せします。

──坪山さんと鈴木さんは、この曲に対してどう臨みました? ギターの音がそれこそ幻想的ですけども。

坪山:持ってきた弾き語りを聴いたときに、「星」とか「夜」っていうワードが浮かんできたんですよ。自分はシューゲイザーとかも好きなんで、リードフレーズのリバーブの感じとかは、エンジニアさんと話し合って、こういうふうにしてくださいって要望していて。リードギターとしてはあそこが一番の推しというか。


▲齋藤伶

──確かに「流星群」というワードにすごくハマっていますね。

坪山:使ってるプラグインの名前が「ブラックホール」っていう名前なんですよ(笑)。そういうところもあったりとか。あと、ファズの音作りもすごくこだわりましたし、ボーカルのサビのメロディをなぞって、聴きやすくなるように、耳に残るといいなと思いながら弾いていました。耳に残りやすくて聴きやすいリードギターにするっていうのは、常に心がけていることでもあるので。

鈴木:この曲はコード進行がわりと一定で、イントロとサビは同じフレーズなんですけど、音の繋げ方とかは結構気にしてました。

──個人的に、「ビューティフルデイズ」のアウトロで、ベースが動き回っているところがよかったです。

鈴木:あれは、伶に「ベースめっちゃ弾いてよ」って言われたので弾きました(笑)。

齋藤:アウトロが長い曲ってこれまでなくて。このコード進行も初めて使ったんですけど、なんか、不思議な感じがあるというか。で、リードギターがずっと同じフレーズを弾いているんですけど、それがめちゃめちゃ良いんですよ。そこをとにかくめっちゃ聴かせたかったから、そのためには長さが必要だなと思って、ただ長くしただけではあるんですけど(笑)。でも、イヤホンから聴くのと、ライヴで聴くのって絶対に印象が違うし、こういう曲だなって想像していても、ライヴで聴いたらすごいロックじゃんみたいな感じを狙いたかったので、アウトロはみんなで魂込めてがっちりやってますね。


▲坪山望

──あと、「シネマ」は齋藤さんが歌を歌ったり、音楽を作る根源的な部分が出ている歌詞なのかなと。

齋藤:いまのバンドって、SNSがあるから、初ライヴですでにソールドしているバンドも結構いたりして。自分からしたら、なぜそういう状況になるのかわからないんですよ。自分の初ライヴのときは人がいなかったし、SNSもやってはいたけど、今みたいにTikTokでバズってみたいなこともなかったから、ただただがむしゃらにライヴをしまくるしかなくて。一応ライヴ動画を上げてみたり、いろいろ頑張ってはいたんですけど、何の反響もなくて、何のためにやってるんだろうって思うこともたくさんあった。だから、サビの歌詞みたいに、自分は映画みたいな人生は歩んでいないけど、歩んでいないからこそできること、歌えることがあるんじゃないかなって。たぶん、実際に俺みたいな人間が歌うほうが、説得力があると思うんです。最初は誰もいないライヴハウスで歌っていた人間が、今歌うことでお客さんにも響くと思うし、そんな俺みたいなダメ人間でも、あなたの足元を照らすことができるかなっていう曲ですね。



──そういった自分を部分を吐き出してみて、気持ちよさがあったのか、それとも、ちょっと照れがあったのか。どちらでした?

齋藤:最初は恥ずかしかったんですけど、今は気持ち良いですね。今はツアー中で、初日が町田CLASSIXだったんですけど、「シネマ」をやったときに正直ウルっときたし、バンドやっててよかったなって思えたので、大事な曲だなって自分でも思っています。

──そういう大事な曲がまたここからも増えていくと思うんですが、今後どういうバンドになっていきたいですか?

齋藤:最近出会ったというか、ずっと昔からいるバンドなんですけど、KAKASHIと何回か一緒にライヴをする機会があって。打ち上げでボーカルの(堀越)颯太さんと話すことがあったんですけど、「ライヴハウスヒーローになりたいんだよね」って言っていたんです。KAKASHIはライヴハウスヒーローですけど、ライヴハウスヒーローになるためにも、俺もずっとライヴハウスでやりたいと思っているんです。別に大きくなるのはいいことだと思うんですけど、自分たちがやってきたライヴハウスという場所は大事にしたくて。お世話になっているし、たくさんの人に見てもらった場所なんで。だから、そういう場所を大事にしつつ、どんどん大きくなって、いつか大きい場所でやりたいなと思ってはいるんですけど、ずっとライヴハウスにはいたいし、そのためにも今後もずっとロックバンドでいたいなって。あまり今とは変わらずにいたいなと思っています。


▲鈴木要輔

──「エバーグリーン」の歌詞に、〈逃げ場はライヴハウス/それでもいいと思ってるんだ〉という一節が出てきますが、育った大事な場所だし、尊い場所でもあるというか。

齋藤:そうですね。自分も、バイトとか学校とかがキツいときがあって。そのときに超つらくても、ライヴハウスに行けば頑張っている人がいるし、自分を応援してくれるっていうか、自分のことを歌っているようなバンドを見てきたので、自分もそういうバンドになりたいですね。誰かが落ち込んでいるときとか、キツい思いをしているときでも、ライヴハウスに行けばちょっと気がラクになるとか。そういうバンドになりたいし、そういう曲にしようと思ってました。

──坪山さんもライヴハウスは大切にしたい?

坪山:そうですね。そこは全員一致していると思うし、その芯の部分は大事にしています。あと、ちょっと一緒になっちゃうんですけど、自分たちのホームの町田CLASSIXには本当にお世話になっていて。すごく大好きな人ばかりだし、そこのライヴハウスに認めてもらいたいっていうのはありますね。まだダメ出しをいただくことも多いので(笑)、そういう大切な人に認めてほしいっていう気持ちでバンドをやっていたりもします。

──鈴木さんも同じ気持ちでいると。

鈴木:さいたまスーパーアリーナとかでもやりたいですけど(笑)、やっぱり根底というか、頑張ってきた場所は、何年経ってもずっと気持ちは変わらず、同じ熱量で接するほうがかっこ良いなと思うので。大事にしたいですね。

取材・文:山口哲生

リリース情報

1st mini album『光ある街に背を向けて』
2022.06.15 (Wed) Release
PSRM-001 / ¥2,000(税抜価格 1,818円)
01.夜道、照らす街灯
02.流星群
03.ビューティフルデイズ
04.夢を見る少年
05.スーパームーン
06.シネマ
07.あなたの事ばかり
08.エバーグリーン
発売元:minori / &PEARS ROOM
販売元: PCI MUSIC

ライブ・イベント情報

<NO LIGHT TOUR 2022>
7月21日(木) 京都 KYOTO MUSE
8月1日(月) 千葉 LOOK
8月6日(土) 八王子 RIPS
8月15日(月) 仙台 MACANA
8月16日(火) 新潟 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
8月17日(水) 金沢 vanvanV4
8月29日(月) 水戸 LIGHT HOUSE
8月30日(火) 宇都宮 HELLO DOLLY
9月2日(金) 甲府 KAZOO HALL
9月3日(土) 静岡 UMBER
9月9日(金) 東京 Spotify O crest

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