【ライブレポート】THE PRIMALS、『FFXIV』の世界を体現した4年振りの単独公演
『ファイナルファンタジーXIV(以下、『FFXIV』)』のオフィシャルバンド・THE PRIMALSが6月4日(土)、5日(日)に幕張メッセイベントホールにて<THE PRIMALS Live in Japan ‒ Beyond the Shadow>を開催した。
◆ライブ写真
THE PRIMALSは、『FFXIV』のサウンドディレクターである祖堅正慶を中心に、GUNN(G)、イワイエイキチ(G/チリヌルヲワカ)、たちばなテツヤ(Dr/SPARKS GOGO)、マイケル・クリストファー・コージ・フォックス(Vo/SQUARE ENIX 所属)の5人で結成。
2014年の結成以降、アレンジアルバムへの参加や、国内外で開催された『FFXIV』ファンフェスティバルでのライヴパフォーマンスが支持を集め、単独アルバムの発売やワンマンツアーを開催するなど、精力的な活動を繰り広げている。
コロナ禍になってからも、『FFXIV』のオンラインイベントでライヴを配信することはあったが、単独公演としては、2018年に国内4都市を廻ったZeppツアー以来、実に約4年振りの開催となった。待望の有観客公演ということもあり、チケットは両日ともに即完売。THE PRIMALS史上最大規模キャパとなる会場に集結した光の戦士達(『FFXIV』プレイヤーの呼称)と、『FFXIV』の楽曲群を力強く轟かせた。このレポートでは2日目の模様をお届けする。
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開演5分前、『FFXIV』の登場キャラクターであるエメトセルクの場内アナウンスに、客席から大きな拍手が巻き起こると、会場が暗転。最新拡張パッケージ『暁月のフィナーレ』の主題歌「ENDWALKER」で、ライヴはスタートした。ステージ全体にかけられた紗幕にゲームの名シーンが映し出される中、幕の裏側から力強いバンドサウンドを放つメンバー達。
エモーショナルな演奏で一気に客席を『FFXIV』の世界に引きずり込むと、フィードバックノイズとデジタルビートが鳴り響き、そのまま「輝ける蒼 〜希望の園エデン:覚醒編〜」へ。レーザービームが乱れ飛ぶ中、祖堅ががなり気味に歌い上げると、「究極幻想」では大量のCO2が吹き上がる中、コージが登場。ハードかつシンフォニックなロックサウンドと、息もつかせぬ展開で会場を盛り上げていく。今回のライヴは感染拡大対策のため、オーディエンスは声が出せない状況だったのだが、光の戦士達は、大音量の拍手を送ったり、サイリウムの色を曲ごとに切り替えたりと、各々の形でライヴを楽しんでいた。
熱狂のパフォーマンスを繰り広げながらも、MCは比較的緩め。様々なエピソードを挟みながら、客席に和やかに話しかけていく。また、メンバー紹介もユニークで、GUNNは、感染症対策のため、自分の呼びかけに“イエーイ!”と叫び返せない光の戦士達のために、スクリーンに「家」という文字を大きく映し出せば、イワイとたちばなは熟練したプレイで魅了。コージは力強いロングトーンを轟かせると、祖堅は、バトル勝利後に流れるファンファーレをギターで高鳴らし、大きな拍手が巻き起こった。
ライヴ中盤、メンバー達がステージから一旦離れると、エメトセルクの声が再び場内に響き渡る。「永い時の中で、ふと、懐かしいメロディを耳にすることがある」「その始まりを知っているか?」──すると、ステージ後方に設置されていたスクリーンが上昇していき、仮面と黒いローブ姿という『FFXIV』に登場する古代人の服装をした人物が姿を現した。シンセサイザーとラップトップPCを操り、「悠久の風」を柔らかく奏でると、フードを脱いだその人は、なんと作曲家の植松伸夫。
『FF』シリーズはもちろんのこと、ゲーム音楽の礎を築いたレジェンドのサプライズ登場に沸く光の戦士達。そのまま氏は「メイン・テーマ〜マトーヤの洞窟メドレー」、さらには「ビッグブリッヂの死闘」と、新アレンジを施した『FF』シリーズの歴代名曲群を立て続けに披露すると、客席から驚きと喜びの拍手が巻き起こっていた。
演奏後、祖堅に呼び込まれた植松は、2人で昔話に花を咲かせつつ、この日披露した楽曲は、2022年11月9日発売予定の『Modulation - FINAL FANTASY Arrangement Album』に収録されることを発表した。同作には、氏自身が『FF』シリーズの原曲音源をサンプリングし、現代的に再構築した楽曲が収録されるとのこと。この日演奏された楽曲も、懐かしい8bit音が耳に残る形になっていながらも、楽曲によってはアッパーなダンスミュージック仕様になっていたりと、かなり興味深いものになっていた。現在、その他の楽曲も鋭意制作中とのことで、続報を楽しみに待ちたい。
サプライズゲスト含め、とにかく内容盛りだくさんだったこの日のライヴ。前述の特効群はもちろん、重厚な音の塊が押し寄せてくる「貪欲」や、ディレイギターが幻想的な空間を作り出した「To the Edge」では、『FFXIV』プレイヤーから募ったゲームのプレイ動画に合わせてTHE PRIMALSが演奏=ユーザーとの共演を果たすという試みも。
また、今年5月に発表された最新アレンジミニアルバム『THE PRIMALS – Beyond the Shadow』の収録曲も披露された。「知恵の巻貝 〜オールド・シャーレアン:夜〜 (Acoustic Version)」では、祖堅がキーボード、GUNNとイワイがアコースティックギター、たちばながボンゴやシェイカーを手に、流麗で温かみのある演奏を繰り広げると、『FFXIV』の名シーンを再びスクリーンに投影しながら、「Close in the Distance」「Flow Together」といったドラマティックなスロウナンバーで胸の奥底を震わせる。これまでの激しいサウンドで押していく構成とは異なる、円熟味のある演奏を客席に届けていた。
同じく、同作収録の「此処に獅子あり 〜万魔殿パンデモニウム:辺獄編〜」を皮切りに、ライヴはクライマックスへ突入。「ロンクグフォール 〜異界遺構 シルクス・ツイニング〜」では、黒いローブをまとった4人のダンサーが登場。お馴染みのダンスで客席を盛り上げると、続く「魔神 〜魔神セフィロト討滅戦〜」では、コージのパワフルなシャウトと、超重量級のバンドサウンドで幕張メッセを揺らしていく。そのまま繋げた「過重圧殺! 〜蛮神タイタン討滅戦〜」では、強烈な火柱が何度も激しく立ち上がる中、躍動的なビートの上で、祖堅が客席にいる光の戦士達をアジテート。場内の熱気がピークに到達したところで、それをさらに更新するようになだれ込んだ「エスケープ 〜次元の狭間オメガ:アルファ編〜」で、本編を締め括った。
大音量の拍手で呼び込まれたアンコールも、怒涛の展開で突き進むTHE PRIMALS。祖堅が吹き鳴らすトランペットや、途中に組み込まれていた裏打ちのパートなど、スカ要素が高まった「メタル:ブルートジャスティスモード 〜機工城アレキサンダー:律動編〜」では、ラストで大音量の音玉が炸裂。光の戦士達を驚かせると、続けて披露されたのは「ライズ 〜機工城アレキサンダー:天動編〜」。ミクスチャーロック的な意匠もあるこの曲には、ゲーム内に登場する「時間停止」の演出を組み込んだパフォーマンスがあるのだが、ステージ上のTHE PRIMALSメンバーだけでなく、客席でサイリウムを振っていた光の戦士達も、まるで時が止まったかのように動きが止まる。ライヴ中なのにも関わらず、場内にいるすべての人間がストップするという驚愕の光景を作り出していた。
そして、「ローカス 〜機工城アレキサンダー:起動編〜」で、まばゆい光に包まれるような多幸感ある空間を作り出し、激しい興奮と深い余韻を残したまま、2時間半を超えるステージが終了。祖堅の「次はまた声を出せるときにやろうぜ!」という声に、一際大きな拍手が送られていた。
全曲終了後、「今日のライヴが楽しかった人は、きっと、『XIV』を真剣にやっていた人だ!」と叫んだ祖堅。名シーンを盛り込んだ演出と大迫力の演奏で、ゲームの物語やプレイ体験をフラッシュバックさせるようなステージは、プレイヤーが『FFXIV』に抱く思いをより深く、強くさせるものになっていた。
また、この日の終演後、各メディアに向けた合同インタビューが行なわれたのだが、今後の目標について、メンバーからは国内外問わず様々な音楽フェスに出演してみたいという発言も飛び出していた。ゲームで使用されている原曲の時点で、すでにロック色の強い楽曲群を、よりパワフルなものにビルドアップさせたバンドサウンドと、そのパフォーマンスは、多くのロックファンにも間違いなく響くだろう。
THE PRIMALSが生み出す、一度体験したら間違いなく虜になってしまう強烈なエンターテイメント空間を、ぜひとも多くの人たちに体感していただきたい。尚、<THE PRIMALS Live in Japan ‒ Beyond the Shadow>は、現在、初日公演の模様をアーカイブ配信中。販売期間は6月12日(日)23時59分まで。視聴可能期限は6月13日(月)23時59分までとなっている。
文◎山口哲生
撮影◎西槇太一、MASANORI FUJIKAWA
アーカイブ配信情報
料金:3,500円 (税込)
販売期間:2022年5月23日(月)12:00〜6月12日(日)23:59
アーカイブ視聴可能期限:2022年6月5日(日)22:00〜6月13日(月)23:59
視聴チケット購入先:https://cdn.tixplus.jp/feature/theprimals_202206/
CD『THE PRIMALS – Beyond the Shadow』
価格:¥2,200(税抜価格¥2,000)
品番:SQEX-10939
仕様:CD 1枚
発売元:株式会社スクウェア・エニックス
権利表記:(c)2010 - 2022 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
◆THE PRIMALS オフィシャルサイト
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