【ライブレポート】Official髭男dism、「この暗闇をちゃんと照らせるような音楽をこれからも歌っていく」
アルバム『Editorial』をひっさげてのロングツアー<Official髭男dism one - man tour 2021-2022 - Editorial ->で全国を駆け巡ったOfficial髭男dism。本ツアーは2021年9月より7ヶ月間、さいたまスーパーアリーナ、横浜アリーナ、大阪城ホールなど全48公演開催され、全公演の総動員数が約30万人となった。その追加公演として、3月19~21日に初のさいたまスーパーアリーナ3days公演が開催された。
“初”にして3daysという規模が物語っているが、コロナ禍がなければ、もっと早くにこのステージに立っていたはず、という見方もある。しかし、2020年のアリーナツアー中止以降もヒゲダンはあらゆる方法で音楽を届け続け、逆境の中でその力はどんどん拡がっていった。決して足踏みの2年間ではなく、この2年間があったからこそ今のヒゲダンがあり、傑作アルバム『Editorial』が生まれ、彼らの音楽が繋いだ絆は強くなったに違いない──その想いが確信に変わったさいたまスーパーアリーナ公演最終日のレポートをお送りする。
◆ライブ写真
一人称視点で誰かのルーティーンを追うオープニングムービーが流れ、その主人公がピアノを奏で始めると同時に「UNIVERSE」のイントロが響き渡る。メンバー4人にホーン隊などのサポートを加えた10人編成で、いきなり華やかなサウンドが解き放たれた。ビジョンに映し出されるメンバーの表情は笑顔で、さっそく藤原聡(Vo)に楢﨑誠(B)が絡みに行くなど、1曲目にして和やかなムードだ。オーディエンスも手拍子で加わり、広い会場中が一気にヒゲダンの世界に包まれていく。そのまま松浦匡希(Dr)の力強いドラムが牽引する「HELLO」、小笹大輔(G)がギターソロで魅せる「宿命」とヒット曲を惜しみなく披露し、序盤からクライマックスのような盛り上がり。もはやファミリーと言っていい10人が生み出す極上のグルーヴは、アリーナという会場で威力を増し、その中で珠玉のメロディやのびやかなロングトーンを聴かせる藤原の歌声に圧倒された。
「このバンドとしてもずっと立ちたかったさいたまスーパーアリーナ。何度も自分の憧れのミュージシャンのステージを見て心を躍らせてきたこの会場でライブができることをすごく嬉しく思ってます」と会場への想いを語り、「みんなで、今日だけの、今日という日を一緒に楽しみましょう。とにかく一拍、一小節、ひとこと、伝え漏れのないようにしっかりやっていきます!」と気迫を伝える藤原。
広いアリーナをそのテクニックと音圧で満たして制圧するだけなら、今のOfficial髭男dismにとって難しいことではないだろう。なんなら、序盤の4曲で完全に成し遂げてしまっていた。そのうえで彼らが目指したのは、会場全体ではなく一人ひとりに、さらに配信でいつか観るその先のひとりにさえも音楽を届けること。
ピアノの弾き語りでしっとりと始まった「115万キロのフィルム」を経て、『Editorial』の楽曲を中心としたゾーンでは、そんな想いを持った新たなヒゲダンの表情を目撃することになった。
フロント3人が椅子に座り、ドラムのカウントでスタートしたのは『Editorial』からの「Shower」。それまでの豪華なアンサンブルから一転、やわらかいアコースティックの音色が響き、“変わらないままで 変わったままで 暮らしていこうよ”と日常の尊さを歌う切ないメロディが心に沁みる。楢﨑が「僕の住んでいる街の小さな商店街が舞台の歌」と紹介した「みどりの雨避け」では、小笹がクラシックギターでカントリー調のフレーズを弾き、ノスタルジックな情景を描いていく。そこからムーディな「Bedroom Talk」に繋ぎ、アリーナにいることを忘れてしまうくらい距離の近い音楽に酔い痴れた。
心地よいパーソナルな空間から一歩踏み出すような「Laughter」、躍動的な四つ打ちビートの「フィラメント」を挟み、ライブ当時の最新曲「Anarchy」へ。
印象的な楢﨑のベースフレーズに導かれ、サイケデリックな照明に照らされて今度はエフェクトのかかったボーカルで攻撃的な言葉を繰り出す藤原。淡々と刻む機械的なリズムからバンドサウンドに移っていく楽曲に合わせ、オーディエンスも再び加熱。ステップを踏む藤原とともに体を揺らし、挑戦的なアレンジの新曲とは思えないほどのノリを生み出していた『Editorial』からさらに先へと駒を進める1手。新しい楽曲を作るたびに表現の幅を拡げ、それを見事にライブのハイライトシーンに変えてしまうヒゲダンの底力を思い知る。
「ここまでは結構静かに聴いてもらう曲も多かったと思いますが、ここからは一緒にライブでひとつになることを大切にしようかなと思ってます」「最後までとことん楽しみつくしてやろうぜさいたま!」と藤原が煽り、ライブは後半戦へ突入。
バンドアンサアンブルとオーディエンスの手拍子が生み出すグルーヴが圧巻の「Stand By You」、サックスを構えた楢﨑とホーン隊が牽引するファンクナンバー「ペンディング・マシーン」で、ステージも会場もパーティ状態。続く「ブラザーズ」では、ビジョンにアメコミ風のイラストになったメンバーが映し出され、その対戦カードどおりのセッションバトルが繰り広げられた。それぞれが個性的かつ技巧的なプレイで魅了し、そのままなだれこんだ「ノーダウト」の間奏ではレゲエ調のアレンジで遊び心を見せる。
さらに、「今日ここに来るまでの人生の間に抱えた怒り、悲しみ、不安、なんて名前つけていいかわからない感情も、全部ここに置いて帰ってください! 悔いのないように思いっきりいこうぜ!」という藤原の叫びで放たれた「FIRE GROUND」では、藤原のキーボード&小笹のギターがハモるメタリックな速弾きソロが炸裂。プレイヤビリティを堪能する時間はヒゲダンのライブでの欠かせない要素だが、やはりアリーナの規模で観て体感する迫力は格別だ。
そして、LEDビジョンの映像越しに演奏する演出で壮大な世界観を描いた「Cry Baby」で渦巻く熱狂をまるごと飲み込み、暗転。しばしの無音のあと、静かに流れ始めたのはアルバムのタイトル曲「Editorial」だった。ピンスポットライトに照らされた藤原がたったひとり、手紙のような歌を紡ぐ静謐なムードに息を呑む。ベースが加わって「アポトーシス」に繋がると、ゆっくりと色づくような温かなサウンドに乗せ、“終わり”に向き合った歌詞が切なく染み渡っていく。再びピンスポットライトだけに戻り、弾き語りで優しく締め括った藤原に、盛大な拍手が降り注いだ。
「世界はクソみたいな悲しみに溢れてる。ライブが奪われるだけじゃなく、人の命がこの世界中で奪われたりしています。それは今に始まったことじゃないかもしれないけど、何の救いもないんじゃないかと思わないでほしい。いろんなアーティストが、いろんな想いで、大切にしているものを音楽にして届けてるこの世界に、どうか絶望せずにいてほしいなと思います。この暗闇をちゃんと照らせるような音楽をこれからも歌っていくように頑張るから。こんなにも素晴らしい音楽というものが溢れるこの世界で、絶望しながらでも、闇に飲まれながらでも、どうかちゃんと生きてください。そしてまたどこかで会える日を心から楽しみにしています」──藤原聡
そして、本編ラストを飾ったのはアルバムと同じく「Lost In My Room」。ライブの狂騒も、日常の情景をも平等に包み込む、繊細なメロディとシンプルなビート。言葉どおり、まるで祈りのように美しいファルセットとハイトーンが誰しもの心に光を灯す、希望に満ちたエンディングとなった。
アンコールでは、キラーチューン「Pretender」に続き、「たまアリに立ちたいなって思ってた頃からライブハウスとかインストアライブとかで歌ってきた曲」という「異端なスター」、満場の笑顔と手拍子で揺れた「I LOVE...」が贈られた。
鳴り止まない拍手の中、藤原は何度も感謝を告げ、「みんなが前に進む力をくれたので、これかもヒゲダン、驀進いたします!」と宣言。オーディエンスに負けない眩しい笑顔で、4人はステージをあとにした。
このさいたまスーパーアリーナ3daysは彼らにとって通過点であり、さらに上り詰めていくのは誰が見ても明らかだ。しかし、それはバンドが遠い存在になるという意味ではなく、寄り添いながらその世界を拡げていくということ。これからもOfficial髭男dismは、数え切れない「一人ひとり」の手を握り、一歩一歩進んでいくのだ。
取材・文◎後藤寛子
写真◎TAKAHIRO TAKINAMI
■Official髭男dism one - man tour 2021-2022 -Editorial- セトリプレイリスト
https://hgdn.lnk.to/Editorial_Setlist
ライブアーカイブ配信情報
アーカイブ(見逃し配信):配信終了後 ~ 5月8日(日)23:59 まで
視聴チケット販売期間:2022年4月17日(日)22:00 ~ 5月8日(日)20:00 まで
視聴チケット:
ファンクラブ W 会員(W会員)特典付 2,000円(税込)
ファンクラブ 年会員または月会員 2,500円(税込)
一般 3,000円(税込)
詳細:https://event.higedan.com/feature/at20_tour2122
<Official髭男dism SHOCKING NUTS TOUR>
9月28日(水)[青森]リンクステーションホール青森(青森市文化会館)
9月29日(木)[青森]リンクステーションホール青森(青森市文化会館)
10月13日(木)[愛知]名古屋国際会議場センチュリーホール
10月14日(金)[愛知]名古屋国際会議場センチュリーホール
10月25日(火)[東京]日本武道館
10月26日(水)[東京]日本武道館
10月29日(土)[東京]日本武道館
10月30日(日)[東京]日本武道館
11月4日(金)[大阪]フェスティバルホール
11月5日(土)[大阪]フェスティバルホール
11月16日(水)[北海道]旭川市民文化会館(大ホール)
11月17日(木)[北海道]札幌文化芸術劇場 hitaru
11月28日(月)[広島]ふくやま芸術文化ホール リーデンローズ 大ホール
11月29日(火)[広島]ふくやま芸術文化ホール リーデンローズ 大ホール
12月6日(火)[福岡]福岡サンパレス
12月7日(水)[福岡]福岡サンパレス
12月13日(火)[富山]オーバード・ホール
12月14日(水)[富山]オーバード・ホール
12月21日(水)[宮城]仙台サンプラザホール
12月22日(木)[宮城]仙台サンプラザホール
指定席:8,800円(税込)
指定親子席:大人8,800円(税込)・こども4,400円(税込)
■注意事項/備考
・3歳以上有料。2歳以下膝上鑑賞無料、お席が必要な場合は有料。
・購入枚数制限 指定席:1人2枚まで/指定親子席:1人4枚まで
・原則として電子チケットの対応となります。
・来場者全員がPlus member IDの取得と年齢登録が必要となります。
・チケットは全て「Official髭男dismアプリ」での発券となります。
・スマートホンをお持ちでないお客様は当日「特別対応窓口」にて身分証確認の上、ご入場いただきます。
※ただし、指定親子席こどものお客様は申込者の端末で同時入場いただけますので身分証確認は行いません。
■「指定親子席」注意事項
・ステージからの近さを保証する席ではございません。
・大人・こどもの組み合わせは自由です(大人のみ不可)。
・こどもチケットの対象は、小学生以下のお子様となります。
・入場時に年齢の判断ができる身分証明証のご提示をお願いする場合がございます。
・係員がご提示を求めた際にお持ちでない場合は、大人料金との差額をお支払いいただきます。
・「指定親子席」はオフィシャル先行までの取り扱いを予定しております。
・予定枚数に達し次第、受付終了とさせて頂きます。予めご了承下さい。
・親子席は着席指定となり、お掛けになったまま公演をご鑑賞いただくお席となります。
■新型コロナウィルス感染症に関する注意事項
・新型コロナウィルス感染症の著しい状況悪化、または行政の指導、規定変更などにより公演開催が困難な場合は止むを得ず公演中止の判断をする場合がございます。
・出演者、スタッフ一同感染症防止に最善を務めると共に、ご来場のお客様へはCOCOAアプリのインストール、不織布マスクの着用、検温、消毒のご協力を頂きます。
・当日の会場での検温結果によりご入場をお断りする場合がございます。
・体調不良、または濃厚接触者の可能性があり来場が困難となった場合、また運営側でご入場不可と判断させて頂いた場合でもチケットの払い戻しは行いません。
・各会場の規定に伴い同行者の方と1席以上開けてのご案内となる場合がございます。
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