【メテオラ徹底解説】楽器店が語る、フェンダーPlayer Plusシリーズの魅力とメテオラの可能性

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フェンダーPlayer Plusシリーズ メテオラ

2022年3月16日、フェンダー・メテオラがPlayer Plusシリーズの通常ラインアップで発売となった。ストラトやテレ、ジャガー、ジャズマスターなどフェンダーを牽引する代表的なギター陣に仲間入りを果たしたという、記念すべき一歩でもある。

メテオラは、「もし並行宇宙が存在したら…」というコンセプトのもとで企画・開発されるパラレル・ユニバース・シリーズの第8弾として2018年に発表されたモデルだった。そのコンセプトの性質上「フェンダーのDNAをぐちゃぐちゃにかき回すとどんなギターが生まれるだろうか」という発想に近く、多分に遊び心を持ったモデルが続々と登場した。テレボディにストラトアッセンブリーが載ったり、ストラトボディにジャガーパーツが搭載されたりと、ギターマニアであれば思わず目をみはる魅惑のギターが発売され、少数の限定発売ながら大きな話題を牽引してきた話題のシリーズとなった。

そんな中でもひときわ異端なオーラを発していたのがメテオラだった。なぜなら、テレのアッセンブリーを乗せた「全く新しいボディシェイプを持ったギター」だったからだ。既存のモデルのキメラではなく既視感のないシェイプ。でもフェンダーDNAの香りが色濃く立ち上る…そんなギターとして世に姿を現した。

▲PARALLEL UNIVERSE 2018 Limited Edition Meteora

その後、2019年には裏通し&アジャストマチック・ブリッジに2ハム仕様という新たなスペックでオルタネイト・レアリティ・シリーズからメテオラHHが発表されたものの、こちらも入手困難な限定モデルにとどまった。そして今回、さらなる3年の月日を経て、満を持してのレギュラーライン化というわけである。


▲Alternate Reality Meteora HH

世界中で高評価を受けるPlayer Plusシリーズにラインナップされたメテオラは、いかなるギターなのか。

メテオラを中心にPlayer Plusシリーズの真相に迫るべく、その魅力とポイントを紐解いてみた。協力を仰いだのは、ギタープラネット吉岡氏と柳津氏、イケベ楽器の西岡氏というフェンダーギターを熟知する見識人3名である。


──3月16日に発表とともに発売開始となりましたが、店頭での反響はいかがですか?

吉岡:まず「これなんですか?」ですね。

柳津:びっくりですよね。「この形なんだろう、どういう音が出るんですか」って。

西岡:変形ギターの感じなので、目立つ場所やお店に入ったときに見える場所に置いています。色に関しても印象が強いので、目に入るギターですよね。

──満を持しての登場ですから、どういう人に向けて設計されたのかが気になるところですね。

西岡:もともと2018年の<NAMM SHOW>(註:毎年アメリカのアナハイムで行われる世界最大の楽器イベント)でPARALLEL UNIVERSEというシリーズが発表されたんですが、そこに明らかに違うギターがあったわけですよ。僕は<NAMM SHOW>の会場で初めて見たときに、発表された12種類の中でも一発目に目に入っちゃったんですよね。「これかっこいい」みたいな。「絶対好きな人いるぞ」と思ったので、今回Player Plusシリーズで発表されて「きたー!」と思ってます。


ギタープラネット吉岡氏

──2018年に初めて発表されたときとは、スペックが変わっていますが、その点はどう見ていますか?

吉岡:2018年当時は、フェンダーやギブソンの雰囲気をミクスチャーしたようなギターが流行していた時期だと思うんです。「テレキャスターのアッシー(アッセンブリー)を違うギターに入れる」みたいな。色んなブランドからそういうギターが登場していた中で、フェンダー自身がそういうことをやっちゃうよみたいなものがパラレル・ユニバース・シリーズだったんですよね。12回にわたって12モデルが発表されたんですが、メテオラがその大トリでした。一番トラッドであるフェンダーのレガシーのバタースコッチ&ブラックガード・スタイルを、シンプルに使った点がすごくショッキングだったと思うんです。ただ、シェイプ的にはモダン系に向いていますし、ハイポジションへのアクセスもいいから、今回は現代的な設計になったんでしょうね。

──写真ではボディが大きいなと思っていたんですが、実物はそうでもないんですね。

吉岡:そうそう、意外と大きくない。女性が持っても全然大丈夫なんですよね。



柳津:女性がこういうカッコいい変形ギターを持っているといいですよね。ストラトと比べると右側がちょっとはみ出しているデザインですけど、そんなに大きいとも思わないです。

──これも変形になるのかな?

吉岡:フェンダーだとオフセットと言いますね。フェンダー・ファミリーのジャクソンとかシャーベルじゃなくて、フェンダー本家でこういうシェイプがきたっていうのは新しいですよ。

西岡:ちょっとビザールっぽい。


Player Plusストラトキャスターとメテオラ

──Player Plusシリーズから登場してきた点はどう評価しますか?

西岡:今回のモデルが発表される前に、2ハムバッカーのメテオラが出ているんですよね(2019年に発表されたオルタネイト・レアリティ・シリーズのメテオラHH)。トレモロレスで裏通しで3色のカラバリで限定だったんですけど、その時は「メテオラがメイド・イン・メキシコの手の届きやすい価格帯で出たぞ」っていうのがあったんです。今回のスペックを見ると、Playerシリーズの上位となるPlayer Plusシリーズでラインナップされたので、これが完成形なのかと思っています。すごく調整されてきましたよね。

──Playerシリーズではなく、Player Plusシリーズである点もポイントなんですね。

西岡:もともとPlayerシリーズ自体、初めてのギター/1本目のギターに最適という位置付けのシリーズだったんです。

──価格的にも抑えられて、手に取りやすいシリーズで。

西岡:そうです。なのでお店でも、例えば「フェンダーで初めての1本」といったときは、まずPlayerシリーズを紹介するんですけど、Player Plusシリーズになると、ギターも2~3本目で、ある程度弾けるようになってきた人の即戦力になるスペックになります。さらに改造を施したようなギターというか。

──必要にして十分、ライブでもレコーディングでも対応できるクオリティですもんね。

吉岡:Player Plusってロックチューナーがついていたり、指板のふちのエッジを丸めたロールド・エッジになっていたりして、従来のモデルよりも格段に弾きやすくなっているんです。購入後に「ロックチューナーにしたいな」とか、ユーザーが手を入れそうなところをはじめからメーカーでやってくれているのが魅力だと思うんですよね。エントリーラインの中でもその上位モデルがPlayer Plusで、メキシコファクトリーで作られているんですけど、日本製のものを北米に持っていくと高くなっちゃうんで、北米でのエントリーラインはメキシコにあるフェンダー自社工場で作っているんです。それがメキシコ製モデルの位置付けです。


ロックチューナー


ロールド・エッジ

──手の届く価格で品質に妥協しないシリーズに乗せたということは、フェンダーも本気ということですね。

吉岡:これを普及させたいってことだと思いますね。

──実際に手にしていて、どんな印象を持ちましたか?

西岡:試した感じは、ファイヤーボール・ハムバッキングというハムバッカーで、ワイドレンジと呼ばれる1970年代のタイプのデザインを模したピックアップなんですけど、通常のハムバッカーと同じサイズに収まっているんです。本来テレキャスターカスタムとかに使われているワイドレンジPUはもっと大きいんですけど、それがサイズダウンしていて出力もそんなに強すぎなかったので、わりと扱いやすいんです。パワーが強そうな印象ですけど、どんな音でも対応できそうなサウンドだなっていう印象です。

──カラーバリエーションは…

吉岡:ギターとベース各4色ですね。フェンダーってトラディショナルなカラーを提案してくるので、このシェイプでもサンバーストがあります。そういうトラッドなものがいいなという方もいらっしゃるでしょうし、広告とかで起用されているメテオラのイチオシのカラーはシルバーバーストになっていますね。


▲Player Plus Meteora HH


▲Player Plus Active Meteora Bass

──この色も新しいですよね。最先端のトレンドを意識させるカラーで。弾いてみた感じはどうですか?

西岡:メテオラって1VOL、2TONEなんですよ。フロントだけ絞ってウォームなトーンでリズムを、リアはフルでソロを弾くみたいな事がすぐできる。

──ボリュームノブはS1スイッチ付きでコイルタップもできますし、音のバリエーションは必要にして十分ですね。

西岡:シングルコイルにタップしておけばテレキャスの感じにもなるし、すごく幅広いです。

──メテオラは、どんな音楽性にベストマッチするでしょうか。

西岡:皆さんそれぞれ演奏したい音楽ってあるでしょうから、これを基に自分好みにカスタマイズしたらすごくおもしろいギターになると思うんですよね。

──ピックアップが通常サイズというのがなにより嬉しいです。

吉岡:簡単に交換できますからね。

西岡:しかもこれ、エスカッションマウントなんですよ。ブリッジ側ならまだしも、ピックガードがここまであればフロントはピックガードマウントでいいんじゃないって思うんですが、ピックガードが彫り込まれてエスカッションがボディーマウントされているという。これもこだわりなのかなと思います。

──デザインのみならずサウンド的にも考えていそうですね。

西岡:ハムバッカーは三点止めで角度も調整できるので、内側をちょっと高くすると音が鋭くなったり調整できますね。セットアップにこだわる方にも対応できるわけです。

──エスカッションはすごく薄いですね。エッジに丁寧なRが付いていて独特な艶感がありますよ。

西岡:ちょっと丸いんですよね。僕もあんまり見たことない。3点のエスカッションなんて、普通の市販のギターではあまりないので。


──細かく見ていくと、相当な気合が入っていることがよくわかりますね。

吉岡:そうなんですよ。自分たちでパーツを作れるっていうのも強いですよね。

西岡:このギター、実は拡張性もすごく高いんです。僕、ピックガードを開けてみたんですけど、キャビティのザグリがピックガード下辺のギリギリまで来ているんですよね。「ここにアクティブ回路入れられるじゃん」みたいな(笑)。

──電池を入れるスペースもあるのか。


西岡:もしかしたら、その後また違うバリエーションが出てくるのかな。

吉岡:フェンダーってネジでできているから「最後のピースを自分ではめる」みたいなことができる点がいいですよね。自分でいろいろいじくって、これだったら1ボリュームにしたっていいですし、ノブ1個足したっていいし、2トーンいらないから2ボリュームにしたりとか、キルスイッチつけたりとか。

──拡張性が高いのはワクワクするなあ。

西岡:Player Plusシリーズって特徴的なポイントがあるのですが、指板が9.5"Rではなくて、よりフラットな12"Rなんです。これ新しいですよね。ヴィンテージが丸みがきつい7.25"Rで、9.5"Rでわりとフラットになったことで、テクニカルなフレーズだったりローアクションでも音詰まりが軽減できたりしたわけですけど、さらにフラットな12"Rですから、よりスムースな横移動というか、テクニカルなフレーズにも対応できますし、弦高をベタベタに低くすることもやりやすいですよね。



──フレットの高さは?

吉岡:ミディアムジャンボフレットですね。フェンダーじゃないギターを使っている方が持ち替えても違和感がないです。

柳津:ネックシェイプもちょっと薄めですよね? サテン仕上げで。

──サテン(艶消し)はいいなあ。

吉岡:そうですね。ネックはサテンが人気ですが、ヘッドトップはグロス(艶あり)なんですよ。2012~2013年からメキシコ製のモデルはこうなりました。かっこいいですよね。

柳津:ヘッドグロスは高級感がありますよね。

西岡:アメリカンスタンダードなどUS製がそうしたことで、メキシコ製もそうなりました。10年くらい前ですよね。

──抱えた時のバランスや重量はどうでしょう。

西岡:ウエスト部分が細いので、コンパクトな感じですね。おしりのほうが大きいんで滑り落ちそうな気がしますけど、全然そんなことないです。

柳津:重量バランスはすごくいいです。ヘッドとかもジャズマスター系のヘッドですけど、全然落ちない。

吉岡:ボディもリア側は大きいですけど、フロント側はムスタングのようなコンパクトですよね。


──角も張ってないから柔らかいイメージだ。

吉岡:こういうのを作ってくるところがフェンダーのいいところですよね。保守的にならないで攻めてくる。

柳津:自由な発想がすごく好きですね。

──パラレル・ユニバース・シリーズを発表している時点で、保守的でいるつもりはないだろうけど(笑)。

吉岡:このメテオラのデザインは、何年か前から開発部の人のスケッチにあったらしいんですよ。まだ名前もなく、どうやって発表するか、US製なのかメキシコ製なのかスクワイヤーとして出すのか…と思い悩んでいたところに、パラレル・ユニバース・シリーズ企画が出てきて「今しかない」みたいな感じだったらしいです。

──デビューチャンスを伺っていたわけだ。

吉岡:メテオラって名前がいいですよね。宇宙っぽくて。

──イタリア語で「流星」だとか。

吉岡:ストラトキャスターという名前も、ストラトスフィア(成層圏)が名前のもとになっていますから、宇宙開発が盛んだったアポロ計画で「アメリカの人宇宙行けちゃうんじゃないの」みたいな世界の中で、フェンダーがカルチャーを作ってきた。それが2010~2020年代になってこういう提案をしてくるのって良いですよね。


──とはいえ、フェンダーの歴史をよく知るシニア層こそ、メキシコ製は「安かろう悪かろう」のイメージを持っている人がまだまだ多いと思うのですが、この点はどう考えますか?

吉岡:僕、リバースヘッドストックのフェンダー・ジミ・ヘンドリックス・ストラトキャスターを買ったことあるんですよ。それがメキシコ製で、指板のふちの仕上げが角張っていてちょっと気に入らなかったんですね。メキシコ製って音は良いんです。アメリカっぽいラフでロッキッシュな雰囲気があってすごくいいんですけど、こういう細やかなディテールの仕上げは日本製のほうがきれいだなって思ってたんです。そんなところにこのPlayer Plusシリーズが出てきて、ここがもうメチャクチャ良くなったので、すごくいいですよ。

西岡:アメリカでやったことやノウハウをメキシコに伝える流れができているので、まずUS製モデルでみんながすごいねって言ったものはどんどん手の届きやすい価格帯に落としていってくれるんです。US製シリーズのアメリカン・ウルトラなどで出してきたものは、Player Plusで手の届きやすい価格帯のシリーズにそのまま落とし込んでいくんですね。

──メキシコを侮るなかれ、ですね。

西岡:2004~2005年くらい、その当時のメキシコ製って個体差も大きかったんです。同じモデルを並べてもグリップシェイプやウエイトに結構な違いがあったりして。

──それはギターショップとしては困りますね。

西岡:なので、在庫があれば裏からありったけ出してきて「お好きなの選んでください」って、個体差を見てもらって販売するっていうことも多かったんです。ただ、2010年前後くらいにマーク・ケンドリックという元マスタービルダーの人がメキシコの生産ラインをガバッと変えて、そこでカラーもUS製モデルと合わせたりして色も綺麗になったんです。

吉岡:あの時、ネックシェイプも新しくなりましたよね。

西岡:そこで個体差があまり感じられなくなって、今あるもので安心して使ってくださいって言えるほど、品質が安定したんです。あの時は変わりましたよね。それが今につながっているので、さらにカスタマイズされたギターが登場してきても安心して紹介できるんですよ。

──昔のイメージは刷新されないと、我々も損するなぁ。

西岡:ひと昔前のメキシコ製のものを触って印象を持っていらっしゃる方が新しいモデルをお試しになると、全く雰囲気が違うなって思われると思います。


イケベ楽器 西岡氏

──ふらっとお店に来て「エレキギターが欲しい」っていう方がいらしたとき、メテオラを薦めるのはどんな場合でしょう。

吉岡:目立ちたい人(笑)。

──そうか、<NAMM SHOW>で一番目を引くほどのインパクトがあったんですもんね。

吉岡:これを使っている人はまだ少ないわけですから、ってことはちょっと目立ったことをしたら、このギターですぐ有名になれるというか。「メテオラと言えばあの人」みたいな。

──なるほど、それはおいしい。

西岡:まだ「メテオラからイメージされる音楽」も確立されてないじゃないですか。ストラトやテレキャスであればこういうイメージというものがないので、「新しいことをしたい」「新しい音楽を作りたい」という人は、この形から入っていくのもひとつですね。

──せっかくのこのタイミング、見逃せないですね。

西岡:これで音楽が生まれて、将来メテオラがフラッグシップモデルになっちゃったりして。ありえますよ。

柳津:ストラト、テレキャスター、ジャズマスター、メテオラみたいな。


ギタープラネット柳津氏

吉岡:チャンスですよ、大チャンス。

──フェンダーとしては、どんなプレイヤーに使ってほしいのかな。

吉岡:やはりショーマン、変わったものが好きな人、ライブする人…。

──やっぱりこれをカッコよく抱えて欲しい、というところか。

西岡:2ハムバッカー&トレモロ付きって、最近では意外と少なかった気もするんです。ハードロックではなくて2ハムバッカーでトレモロが付いていて扱いやすいデザインや印象を持てるものって、意外とないのかなという意味では、変形とは言われますけど、可愛さがあるというかイヤじゃないですよね。

──試奏して感じましたが、2ハムですけど、ボリュームを絞ってもヌケが悪くならないのが秀逸。

吉岡:クリーンになるのがいいですよね。

──全然モコッたりしない。

吉岡:分離がいいですよね。どうしてもオフセットシェイプのものって音色がちょっと偏ったりしますけど、ちゃんと考えられているなって感じがします。

──重量はいかがですか?

吉岡:普通です。手を放してもすっぽりはまる感じは考えられていますよね。

──これは、楽器店で実機を触ったほうがいいですね。トーンの効きの気持ちよさやサウンドバリエーションがとても広いのは、音を出せばすぐ分かりますから。

吉岡:第一印象はハードな音楽やヘヴィな感じが似合うのかなと思ったんですけど、フェンダーもそこは決め付けていないんですよね。もちろん自由に使ってカントリーを演ってもいいでしょうし、J-POPに使ってもいいし、ヘヴィなロックに使ってもいい。そういう拡張性の高さみたいなものは感じます。



柳津:私、シングルコイルのサウンドが大好きなので、ハムバッカーのギターは持ったことないんです。けれど、これだったら持ってもいいなと思いました。ワイドレンジ・ハムバッカーじゃないので、わりと落ち着いた太いサウンドですし、S1スイッチのタップでシングルの音も出せてかなり幅広くていいですよね。シングルコイルのギターで「もうちょっと音が太ければいいな」と思う時がやっぱりあるので、そういう時にこういうギターがあったらいいな。

西岡:僕はわりとハードな音楽が好きなので、2ハムバッカー&トレモロ付きというそのままの印象で触ったんですけど、アンプに通したらクリーンな音も出ちゃうので、ボーカルの人が持つのにもかっこいいなと思いました。僕、ロック式トレモロ大好きなので、フロイドローズを載せたらカッコいいなとか。

──それもいいなあ。

西岡:指板のラジアスが12Rなのでフロイドローズをそのままつけられちゃうんですよ。そのぐらい拡張性を持ちながら完成されているので、新しいものを探している方がいらっしゃったら、まず「今これですよ」「これが出たんですよ」って紹介したい。

──ここはイマイチだな、ってポイントは?

西岡:Playerシリーズってわりとトラディショナルなカラーだったんですけど、Player Plusシリーズではちょっと飛んだ色もあるので、もうちょっとトラディショナルな色があったほうがいろんなお客様には紹介しやすいんですよね。個人的には白でべっ甲、パーフェロー指板が欲しい。

──わがままだな(笑)。

西岡:皆さん「好きだよね」っていう色とピックカードはありますから(笑)。フェンダーはピックカードとボディのカラーで組み合わせがいくらでもあるので、そこのバリエーションが増えてくれたらいいなと思います。

柳津:個人的にはシルバーバーストがすごく好きなので、このバースト系のメタリックカラーでブルー系とか他の色があったらいいな。

──女の子ならパステルカラーもカワイイ。

柳津:そうですね。でもこういう音質だったら、可愛い系よりもちょっとダークな色の方がカッコいいと思うんです。それこそ黒のピックガードとか西岡さんがおっしゃっていたべっ甲とか絶対合うと思います。

吉岡:流線形なんで、きっと車っぽい色とか似合いますよね。メタリックもそうですしソニックブルーとかそういう系の色。

──では一般読者からの質問が来ていますので、そちらをご紹介します。

●横浜ボーイ(神奈川県)/30代男性
「ギター未経験者です。ずばり「フェンダー Meteora/Player Plusシリーズ」は初心者向けでしょうか?」

吉岡:これで始められたらめちゃくちゃいいですね。

西岡:羨ましいくらい。十分すぎる機能が備わっているので。

柳津:上達するのもたぶんこれ早いですよ。

西岡:弾きやすいよね。

──ということは?初心者向け?

吉岡:はい、そうです。1本目からメテオラなんて最高ですよ。初心者向けというのは、お買い求めいただきやすい価格という意味合いが大きくて、初心者のために弾きやすく作られているということではないんです。

──?

吉岡:例えば、初心者用のスポーツ用品って「球が遠くまで飛ぶ」とか「バランス取りやすいサーフボード」とか、設計思想がイージー・トゥ・プレイじゃないですか。でも楽器ってイージー・トゥ・プレイじゃないんです。チープ・プライスだということに比重が寄っているんです。でもPlayer Plusシリーズはアメリカでも1,200ドルくらいしちゃうので、10代の方がお小遣いでパッと買えるわけじゃないですよね。でもこれをもしお父さんに買ってもらえたとしたら最高ですよね。僕が中学校2年生でこれを持っていたら最高で、プロになっちゃうかもしれない。



●てれらと(東京都)/30代男性
「抱えた感じ、重さ、弾きやすさが知りたいです」

西岡:バランス良くて弾きやすいです。狙ったとおり、ハイポジションのアクセスもよかったです。手の大きさはあるにしても、そんなにストレスはないですよ。

──ストラト、テレキャスと比べてどうですか?

西岡:ストラトやテレキャスよりもハイポジションには指が入ると思いますね。

──弾きやすさと言っても個人差があるので難しいところではありますが。

西岡:みなさん手のサイズが違うとかありますよね。

柳津:ネックが厚い方が好きとか薄い方が好きとかありますしね。


吉岡:いわゆるメジャーなブランドではない安価なエントリーモデルから入ると、そのギター固有のネックシェイプに慣れてしまって次の選択肢が狭まるのが怖いですよね。でもフェンダーって、同じようなネックシェイプがストラトにもテレにもUSAにもあるから、自身のミュージカルジャーニーの発展とともに弾きやすいと思うギターが見つかるのはいいことと思います。これでまず「ギターってこういうネックシェイプなんだな」「自分にとってはちょっと太いけど、これで一生懸命練習してほかの選択肢をゆくゆくは検討してもいいな」と進んでいければ、すごく視野が広がっていいですよね。

●ほし(東京都)/50代男性
「あの形はどのように決まったのですが? 見れるならNGとなったデザインも見たい。」

吉岡:僕も見たいです(笑)。

──それはフェンダーだけが知っていることですね。今度フェンダーに聞いてみましょう。では、次。

●おにぎり(東京都)/20代女性
「ギターのモデルによって弾きたい曲が変わると思うのですが、このメテオラでみなさんはどんな曲が弾きたいですか?」

吉岡:リンキン・パーク『メテオラ』とか(笑)。ちょっとハード系に向いていると思ったんですけど、実際触ってみると、そうじゃないフレーズも出ますよね。ジャズっぽいのもいけるしメロウなトーンも出る。自由度が高いですよね。

──意外な音楽もいいですよね。それこそフライングVでブルースもイケるわけですから、最新のテクニカルプレイから1950年代のベタベタなブルージーなものまで。

吉岡:それこそ僕、高校生のときに2本目に買ったのがフライングVで、文化祭で椎名林檎とかGLAYとか演ったんですけど、その頃にメテオラがあったら買ったでしょうね。東京事変とか演奏したらカッコいいですよ。

●TOKI(神奈川県)/10代男性
「ピックアップのサイズはワイドレンジハムバッカーのサイズなのか、通常のGibson系のハムバッカーのサイズなのか」

吉岡:10代のお客様から「ワイドレンジハムバッカー」って言葉が出るのは素晴らしいですね。そのままでいてください。

──EMGにシャーラー製フロイドローズが載ったJackson starsのKellyを使っていて、マッカーサーエボニーをローズ指板?と言われて、悔しがっている若者みたいです。

吉岡:マッカーサーエボニーって…将来有望ですね。

西岡:Jackson starsの工場がなくなって今では無いですからね。いい楽器ですよ。

吉岡:メテオラのピックアップはレギュラーサイズですね。EMGも付くしセイモア・ダンカンもディマジオもビル・ローレンスも付く。

西岡:エスカッションに穴だけ開けないといけないですね。

吉岡:あー、そうですね。ポン付けできるのはフェンダーのハムだけかな。

──エスカッションごと交換すればいいかな。

西岡:エスカッションがそのままはまれば、エスカッションごとで動かすのがいいですね。

──ピックガードがあるのにエスカッションマウントにするって、マイケル・シェンカーじゃないんだから。

西岡:やっぱり、かっこいいに辿り着きますよ。このデザイン、これがかっこいいということだと思います。僕はわりとポールピースの高さを調節したりとかピックアップのセットアップはこだわるほうなので、そういう意味では3点留めのエスカッションには注目しちゃいますよね。思い切り斜めにしてもいいですし、こういう鳴り方するんだ、って分かりますし。


──今後のメテオラの展開、Player Plusシリーズにも期待したいですね。

吉岡:今のところギターはストラトとテレキャスター、そしてメテオラだけなので、ジャズマスターを出してほしいですね。Player Plusジャズマスター。

西岡:Playerシリーズだと、ジャズマスターってシングルコイルじゃなかったですよね。

柳津:2ハムですね。

西岡:ジャズマスターPUが乗っているリミテッドはあったんですけど、それでもメイン機種ではないので、ジャズマスターそのままの仕様でPlayer Plusで作ってもらえたらいいですね。

──これから魅力的なモデルが出てくる可能性はまだまだ残されているんですね。

柳津:それこそ、アメリカン・ウルトラ・シリーズみたいにPlayer Plusのジャズマスターがノイズレスピックアップだったらいいですね。

──メテオラのバリエーションにも期待したい。

西岡:一番最初にパラレル・ユニバース・シリーズで発表されたときのテレブリッジ&2シングルが出てきたら、今のメテオラと対を成しますね。全く違うものになる。あのときは限定発売だったので、手に入れられなかった人も多いと思うんです。あのモデルをそのままメキシコで作ってくれるだけでも欲しい人たちはすごくいると思います。

──この記事をみたフェンダースタッフが検討してくれたらいいなあ。

吉岡:白&べっ甲で(笑)。



柳津:この形でこのスペック、大成功だと思うんです。12”Rで弾きやすい点、ロックチューナー、タップ付きでサウンドバリエーションもあって、イマイチなところはないですね。トラディショナルだけじゃなく進化系のものを出す新しい発想がフェンダーのいいところで、メテオラも見た目だけでも「おおー」ってモチベーションがあがって弾きたくなります。カラーバリエーションが増えればお客様は選びやすくなるのかなと思いますけれど、本当に十分すぎるくらいだなって思います。

──普及帯のシリーズですから、どこかイマイチなところがあるだろうとうがってみていたのですが、重箱をつついてもほこりが出ないですね。

西岡:そうですね。最初の印象が裏切られると思います。意外とものすごくオールラウンドなギターなので、人を選ばない感じ。こういうタイプやこういう人たちと決め付けることがまったく必要がなさそうなので、形が気に入った人は「絶対いいですよ」っていう感じですね。どうしてもブランドって印象がついてしまいがちですけど、そこがフェンダーの強みですよね。フェンダーだからどんな人たちでも持てる。気になる方は見た目で印象を決め付けないで、ぜひお店で触ってもらいたい。触ると印象も変わるし、思った以上に幅広く使えるギターに仕上がっているので。

──イケベとギタープラネット、どっちに買いに行けばいいですか(笑)?

西岡:是非両方に。

吉岡:ギタープラネットはお茶の水にございます。

西岡:イケベ楽器店は大阪心斎橋と、秋葉原、渋谷、池袋にございます。私は池袋店にいます。

吉岡:実際フェンダーのラインアップって、どれも持っていたいバリエーションですよね。例えばPlayer Plus Nashville Telecasterなんてテレで3ピックアップじゃないですか、バックにコンターもあって1本あったらなんでもできる系。これなんかも魅力ですよね。

──このように改造する人もいますからね。ハーフトーンもいけるテレ。

吉岡:テレキャスターでセンターとハーフトーンが出る。ストラトのセンターのサウンドがすごく大好きなんですけどテレキャスターが欲しいって人は、こういうのいいですよね。


Player Plus Nashville Telecaster

──僕なんかお店に行くと目移りして欲しいものが定まらなくなる。目的あってショップに行ったのに、何を買えばいいか迷いだす僕みたいなお客さん、いませんか(笑)?

西岡:どんな音楽が好きなのか話を聞いたり、試奏してるお客さんの音とかフレーズを聴いたりしていると、「こういうの好きなんだな」とか、逆に「このギターでそのジャンルを弾くんだ」みたいな発見もあるんです。いろんなギターを試奏していても「楽しくなっているとき」があるんですよ。何本も弾き比べていると、段々「このギターのときにはよく弾いているな」ってなっていくんです。そのときには、背中を押してあげます。「聞いていて、すごく楽しそうに弾かれていましたよ、この1本」と言うと「ああ、わかりました」って。やっぱりある程度決まってたけど、まだ迷われているって時にポンと声をかけると「やっぱりそうだった」って。

──なるほど。それは真理ですね。

西岡:聞いてないふりしていても、ものすごく耳を傾けていますから。それはうまいへたじゃなくて、楽しそうかどうかなんです。メテオラはもちろんPlayer Plusシリーズも全部揃っていますから、お店で並べてぜひ弾いてもらえればと思います。

──Player Plusシリーズってなんでこんなに安いんですかね。安いからナメられるんですよ。もっと高くてもいいはずなんだけど。



吉岡:実際のところ、アメリカと日本で金額がほとんど違わないのがすごいですよね。為替を考えるとほぼ一緒なんですよ。これはフェンダーが頑張っているんだと思います。

柳津:そうとしか言えないですよね。

吉岡:実際10万円台前半って、日本製のブランドとかいろんな選択肢があると思うんですけど、フェンダーのデザインは全てフェンダーナイズしてるところがいいんですよね。ヘッドストックももちろんそうですし、ボディのシェイプとかピックアップとか、ハムが載ったストラトだと1980年代のヴァン・ヘイレンみたいな音だなとか、「こうだ」とパッと思いつく。逆に今回発売されたメテオラはそういう先入観がない楽器なので、真っ白なキャンバスみたいで、新しい音楽を自分で作っていきたい人にはぴったりだと思うんです。

──メテオラ猛烈に欲しくなってきた。

吉岡:このクオリティのものがもっと普及したらいいですよね。レンタルスタジオの貸し出しギターとか、ブルースセッションバーに置いてあるギターがこういうグレードだったら楽しいと思いません?

──まさに。10万円台前半で文句なしのクオリティですから、完璧ですね。

西岡:メンテナンスとかもしやすいんですよ。ヘッド側からネック調整できますし、メンテナンスがしやすいという点でも良くできているんです。

──改造しやすいのもフェンダーのいいところですよね。改造というのは品質が悪いから行うのではなく、自分が求めるスペックが変わってきたことの証ですから。

西岡:そういう意味では、幅広く1本でこなしたいというご相談も多いんです。Playerシリーズ自体も幅広く対応していますし、Player Plusシリーズもノイズレスだったりロック式のペグだったりで、安心ですよね。私がハムバッカー好きというのもあって(笑)、ついシン・シン・ハムの魅力を伝えてしまうというか「やっぱりストラトってフロントにシングルがあってリアにハムバッカーが付いていたら、もっと幅広く音楽できますよね」ってお話をお店でもしますよ。

──Player Plusシリーズはカラーリングも攻めているので、そういう魅力もありますし。


Player Plusシリーズ

吉岡:シルバー・スモークのテレキャスターみたいな、こういうフィニッシュって他ブランドにもなかなかないですよね。保守的イメージがあるモデルで時代に合った新しいスタイルの提案っていいです。

西岡:ホームページで見ていると、このカラーがまず目に飛び込むので、通販でポチッと注文がはいってくるのも多いんですよ。オンラインでご注文いただくことも多いかもしれないです。現代的なシリーズはそういうトラディショナルなカラーからちょっと逸らして、今流行りのカラーや色を採り入れている感じもしますね。

──若い層にもアピールしそうですね。

吉岡:人と違うもの欲しいですから。この色にしてもメテオラにしても、一見して只者じゃないってわかるじゃないですか。パーソナリティ出したい年頃にはばっちりですよ。


左から、烏丸哲也(JMN統括編集長)、イケベ楽器西岡氏、ギタープラネット柳津氏・吉岡氏

協力◎イケベ楽器、ギタープラネット
取材・文◎烏丸哲也(JMN統括編集長)

What's Ikebe?

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◆イケベ楽器店オフィシャルサイト


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◆フェンダーPlayer Plusシリーズ/メテオラ オフィシャルサイト






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