【ライブレポート】GLAY、<FREEDOM ONLY>ツアー完遂「あなたたちがいてくれたことがGLAYの救いになりました」
3か月以上にわたる自由への長い旅が、いよいよフィナーレを迎える。2月5日、<GLAY ARENA TOUR 2022 FREEDOM ONLY>追加公演、さいたまスーパーアリーナ2DAYSの初日。ライブ、エンタテインメントを巡る状況は不透明さを増しているが、GLAYの選択は一つ。安全なライブとファンを守ること。話し声一つしない開演前、満員のオーディエンスの期待感だけが熱になって立ち上る。FREEDOM ONLY、開幕。
◆ライブ写真(23枚)
アルバム『FREEDOM ONLY』のジャケットの、ファンタジックな世界観を具現化したオープニング映像、猛烈な火柱と爆音、HISASHI(G)の強烈なギターリフ、TOSHI(Dr)とJIRO(B)が叩き出す太いビート、回転するミラーボール、そしてTERU(Vo)が叫ぶ、「最高に思い出に残るライブにしようぜ!」。
曲は「GALAXY」から「Hypersonic」、そして「いつか」へと、明快なアップテンポのロックチューンの連打、また連打。前代未聞、キテレツ度ナンバーワンの歌詞を持つ「Hypersonic」のフレーズを“小橋の夢、さいたまスーパーアリーナの一人一人を幸せにすることだ”と歌い替えるTERU。メロディアスな「Winter Moon Winter Stars」の、HISASHIとTAKURO(G)のユニゾンするツインリードがかっこいい。メランコリックな「月に祈る」のイントロ、情感豊かでフリーダムなソロを披露したTAKUROがカメラに向かってほほ笑む顔が、スクリーンに大写しになる。一言で言うと、全員がノッている。
「さいたまスーパーアリーナ、ただいま。たくさんのGLAYERのみなさんに集まってもらって、本当に幸せです。いろんな考え方がありますけど、後悔させないようにするので、GLAYの音楽に寄り添いながら、ルールを守りながら、楽しんでほしいと思います」
ハジメタル(key)の凛としたピアノが導くロックバラード「漂えど沈まず」の哀感。「BAD APPLE」の、エレクトロニックとライブ感との繊細な融合。「Tiny Soldier」の、幻想的なクールネスの中からふつふつと湧き上がる熱情。歌心にあふれたJIROのベースが、もう一つのメロディとしてTERUの歌に寄り添う。「Holy Knight」の、宇宙から響くゴスペルのような壮大な音像と、預言者的な歌詞。やがてリズムが走り出し、ライトが激しく回転する。アルバム『FREEDOM ONLY』の中盤を引き締めるディープな4曲を曲順通り、生々しいライブアレンジと照明や映像の力で何倍もイマジネイティブにする圧巻の演出。音源だけではわからない、これがライブだ。
幾千もの力強い手拍子のリズムを得て、せつなすぎる冬の別れの光景を歌う「シキナ」を境に、ライブは後半へ。「声は出せないけれど、暴れていこうぜ」。ユーモラスな言葉遊びを散りばめたグラマラスなロックチューン「SHINING MAN」は、TOSHIのドラムに合わせたまるで太鼓の達人な手拍子ゲーム、JIROとTAKUROのベース×ギターバトルなど、見どころ満載で突っ走る。さらにスピードを上げて「Runaway Runaway」へ、ミラーボールの光降り注ぐ中での強力なギターソロ、「コロナ禍の闇を切り裂け、ギターHISASHI!」というTERUの紹介がいかしてる。ライブは一気に終盤へと突入する。
「今、ライブやってて思ったよ。みんな、笑顔を忘れちゃいけないよね。声出せなくてもいいから、たくさん笑顔をちょうだい。行くぜ!」
JIROの言葉を合図にした、曲はもちろん「SHUTTER SPEEDSのテーマ」。「佐久間さんも見ててくれよ」、8年前の1月に世を去ったプロデューサー・佐久間正英に向けた空への叫びが胸に響く。二番を受け継いだTERUがステージを左右に激しく動き回る。そしてGLAYの原点の一つ「彼女の“Modern・・・”」は、何年経っても何回聴いてもみずみずしく若いパンクチューンだ。「心の中で大丈夫だよ」と、いつもの合唱パートを前に優しく呼びかけるTERU。声はなくとも一体感はある、これが2022年のGLAYのライブ。
「ステージで演奏できることが何よりも幸せで、その尊さを感じながら今ここに立たせてもらってます。これからも出来る限り、みんなに音楽を届けて、また集まれる機会を作って、次こそは声を出して一緒に歌える日が来ることを信じて、歩んでいきましょう」
アルバムの中でも特別にノスタルジックで普遍的なポップネスをたたえた名曲「青春は残酷だ」。歌詞の“花火”に合わせ、スクリーンに映る4人の姿と美しい花火の映像がシンクロする。夢見ることができれば、それは実現できるのさ──。短い映像とナレーションが、フィナーレを盛り上げる。あなたたちがいてくれたことが、GLAYの救いになりました──TERUが一人一人に届けるように言葉をかける。ラストチューンは「祝祭」。スクリーンに映し出される字幕のフォントが、この時だけ手書きの文字に替わる。さぁ共に夢を見るのだ――戦争と平和と世界と人間と命と、FREEDOM ONLYに込めたすべての意味を凝縮したメッセージが心深く沁みとおる。ステージにあかあかと燃えるいくつもの炎が、先が見えないからこそいとおしい未来を静かに照らし出す。FREEDOM ONLY。
「さいたま最高。今日見えてる景色は本当に素晴らしい。感動します」──TOSHI
「とても緊張しましたが、今日ステージに立ててうれしいです。明日も頑張ります」──ハジメタル
「中学生の時の親友に“30歳までに死ぬ”と言われてましたが。俺は生きている!今年の2月を持って、私の年齢は概念とします」──HISASHI
「彼はこうやって元気に生きている。そして俺も元気になりました。俺が陽性になった時、最初に電話をした人は誰でしょう? 正解はJIROです。俺はピンチになったらJIROに電話するんだと思いました」──TAKURO
「さっき、めちゃくちゃ当たり前のMCを言ったよね(照笑)。笑顔が大事だとか。でもね、本当にみんなの笑顔を見て安心した。こんなにたくさんの人が来てくれて、いいパフォーマンスができて、安心しました」──JIRO
「本当に感謝です。不安だらけだったんですけど、みんなの笑顔を見て、やっと安心できました。明日も乗り越えられそうです。ありがとう」──TERU
アンコール。神々しいほどに美しいロックバラード「永遠を名乗る一秒」を歌い終え、リラックスしたメンバーの一言が楽しい。HISASHIの親友は、今どこでどんな人生を歩んでいるのだろうか。
躍動感と叙情を重ねたスロー/ミドルチューン「BETTY BLUE」を照らすライトは、もちろん澄んだブルー。どんな時代にも苦しい時に力を与えてくれる曲です──TERUの言葉通り、「生きてく強さ」は25年以上の時を経た今もそのポジティブパワーを失わず、続く「BEAUTIFUL DREAMERS」も、20年近い時を隔てて強い生命力を感じられるエイトビートチューン。しかしそれらと同じく、ひょっとしてそれ以上に『FREEDOM ONLY』の楽曲は輝いている。命が燃える音がする。ラストチューン「FRIED GREEN TOMATOES」の、あの古い映画のような淡いノスタルジーとせつなさの中に、今を前進する意思を秘めたみずみずしい言葉とメロディと音が体を突き動かす。最新アルバムが最高作だなんて、なんて素晴らしいことだろう。それを証明する140分間のロックショー。FREEDOM ONLY。
エンドロールと共に静かに流れる「桜めぐり」。季節は巡り、闇はいつか明けるだろう。GLAYは新しい曲を作り続け、ステージに立ち続けるだろう。またその場所で、その時に。GLAYを人生のサウンドトラックにした多くの人と共に、自由への長い旅はまだ続くだろう。
取材・文◎宮本英夫
写真◎田辺佳子/岡田裕介(HISASHI)
セットリスト
M2.Hypersonic
M3.いつか
M4.Winter Moon Winter Stars
M5.月に祈る
M6.漂えど沈まず
M7.BAD APPLE
M8.Tiny Soldier
M9.Holy Knight
M10.シキナ
M11.SHINING MAN
M12.Runaway Runaway
M13.SHUTTER SPEEDSのテーマ
M14.彼女の“Modern…”
M15.青春は残酷だ
M16.祝祭
M17.永遠を名乗る一秒
M18.BETTY BLUE
M19.生きてく強さ
M20.BEAUTIFUL DREAMER
M21.FRIED GREEN TOMATOES
◆GLAY オフィシャルサイト
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