【インタビュー】ammo、日常の情景をリアルに浮かび上がらせ爪痕を残す2nd EP『灰汁とAct EP』
■似たような曲調ではなく全然違うタイプの曲が混ざっている
■混沌とぐちゃぐちゃしているという意味の灰汁なんです
――では、新作『灰汁とAct EP』について聞きたいのですが、収録されているのはライブで演奏している曲が中心ですか? それとも書き下ろしですか?
岡本:全部、新曲です。最近、ライブでやり始めた曲もあります。
――タイトルは後から付けたんでしょうか?
岡本:昨年の6月に1st EP『奇文気分 EP』をリリースしたんですけど、その時から2nd EPは『灰汁とAct EP』にしたいと思ってたんです。同じ発音で言葉遊びをしているタイトルにしたくて、曲は後から作りました。
――“灰汁”と付けたのはammoの音楽にアクがあるから?
岡本:というよりも似たような曲調ではなく全然違うタイプの曲が混ざっているので、混沌とぐちゃぐちゃしているという意味の灰汁ですね。
――なるほど。1曲「CAUTION」では“身体に閃光猛スピード走る衝動 忘れられないんだ”と歌っていますが、ロックを聴いて揺さぶられた時の体験のことを歌っているのかなと思いました。
岡本:その通りですね。音楽を聴いて電撃が走る感じ。あの衝動を今度は僕たちが伝えたいという想いもあります。
――メロディと歌詞は同時に出てくるんですか?
岡本:普段はそんなことないんですが、「CAUTION」は同時に出てきました。
――雷のことを“シャッターが切られた様だった”と形容していたり、いきなり“缶コーヒーの色はゴールド”という描写が出てくる。感性が鋭いなと感じました。
岡本:嬉しいです。普段から思いついた言葉をメモしているんですが、曲を作る時に言葉のストックを見返すこともあって、バラバラの言葉をつなぎ合わせていったりもするので。
――言葉の断片をパズルみたいに組み合わせていく。
岡本:はい。いきなりって表現してくれましたけど、“缶コーヒーはゴールド”っていう言葉をメロディに乗せた時に語感も含めて気持ちいいかどうか。繋がりがないとか違和感を感じることが悪い方向には行ってないから、そういう印象になるんだと思います。「この言葉入れたい!」と思って感覚的に入れるので。
――川原さんは初めて聴いた時、どんな印象を受けました?
川原:いつも通り、すごいなぁと思いました。期待している分、優星に対するハードルは高いんですけど、毎回、超えてきてくれるんですよね。アレンジに関してはいつも形にする時って聴いた瞬間に「ドラムはこんな感じでベースはこういうフレーズ」ってすぐに出てくるんですよ。歌詞がこうだから、こういうパターンにしようとか考えたことないんです。
――頭で考えていないっていうことですよね。
川原:そうですね。それを打ち込むこともあるし。
岡本:大まかにこんな感じとか。
川原:スタジオに入ってドラマーに「こんな感じで叩いてほしい」って言う時もあるし。優星の意図に添えているのかどうかはわからないけれど、「これどう?」って投げかけると「いいんじゃない」って。
岡本:あかんって言ったことないと思う。任せてますね。
――音楽を通して強い信頼関係で結ばれているんですね。「CAUTION」と「不気味ちゃん」はMVがアップされていますが、「CAUTION」ではダイナミックなパフォーマンスも楽しめますね。
岡本:そうですね。ライブの雰囲気は伝わると思います。
――アンプはマーシャルでディストーションかけてジャーンって弾きたい?
岡本:(笑)そうですね。ザ・ロックバンドなMVになっているので見たことがない人にも伝わりやすいんじゃないかなと。
――「不気味ちゃん」はショートムービーみたいな映像でお二人は登場しないですよね。
岡本:そうですね。純粋に曲がいいし、どちらかというとアダルトでライブハウスよりクラブっぽいノリが出せる曲なので。ロックバンドであることは大事にしつつ、その枠から飛び出したい部分もあるので、曲が伝わりやすいように日常の世界観を切り取ったら面白いかなと思ってシュールで面白いMVを作ってもらいました。
――イントロのリヴァーヴがかかったギターのフレーズから世界に引き込まれる曲です。
岡本:「不気味ちゃん」は珍しくギターのイントロから思いついて、そこから広げて言った曲なんです。普段はスタジオでギターをマーシャルのアンプにつないで曲を作っているんですけど、ちょっと行き詰まってジャズコーラスのアンプに変えてみたら、リヴァーヴの揺れる感じがよくて、フレーズを弾いたらすごく不気味な感じになったんです(笑)。どこにたどり着くのかわからない浮遊感のあるイントロを思いついたので、これをベースに曲を作ろうって。
――恋愛をきれいに脚色するのではなく生々しい描写が出てきますよね。横にいる女のコのことを“君が不気味に見えちゃった”って、思いついてもなかなか書かないんじゃないかと。
岡本:(笑)。心が動いた時に言葉を書き留めるので、恥ずかしがらずにイキきるみたいなところはありますね。
川原:歌詞にはだいぶ鍛えられましたね(笑)。
岡本:ははは。気持ち悪いも褒め言葉だと思ってます。
川原:最高ですよね。ベースはかなり頑張りました。
岡本:よりアダルトにしてくれましたね。
川原:不気味なベースが弾けたかなって。
――独特なフレーズで押し引きがありますね。
川原:めっちゃ嬉しいです。ここはあえて外してみたら、不気味になるかなってフィーリングで弾いているので。自信作ですね。
――今作で今までのammoになかった曲、チャレンジした曲は?
岡本:そういう意味でいうと5曲目の「ハニートースト」ですね。初めて家族に向けて書いた曲です。ちょっと丸い感じというか。
――尖っていない?
岡本:尖ってない。母親に向けたわかりやすくテレちゃいそうな曲です。
――甘いハニートーストの匂い=お母さまとの思い出というか。
岡本:この曲は新たな試みですね。そもそも、誰かに向けて曲を書くことってあまりないんですよ。自分のことだったり、恋愛体験を物語として書くパターンが多かったので。
――曲調も明るめで軽快ですね。
岡本:そうですね。ポップな感じです。
――お母さまは聴いて涙されたのでは?
岡本:泣いたって言ってました。すごく喜んでくれましたけどね。
――川原さんのピックアップ曲は?
川原:僕は「それでも変われないでいる」ですね。あんなに速い2ビートの曲は今までやったことがなかったので、2ビートを得意とするいろんなバンドの曲を聴きました。結果、意外とシンプルな方がいいんだなと思って、あまりオカズを入れないように意識して。こんな曲をammoでやるとは思っていなかったんですけど、だからこそ聴いて欲しいです。
――途中から駆け抜けていくスピード感のある曲ですが、岡本さんはこういうテンポの曲になると想定していたんですか?
岡本:これは絶対2ビートにしたいと思ってました。最初はゆったりしたテンポで始まった方が疾走感が出るんじゃないかと。ライブが楽しみですね。
――主人公は過去の恋を忘れられないのか、水に流しているのか、カオスな気持ちなのかなと?
岡本:どちらかというと吹っ切れている感じですね。恋人が洗ってくれたTシャツを返しに行って忘れられないんだけど「もう、どうでもいいや」みたいな気持ちを速いビートに乗せてウワーッて。
――Tシャツだったり、ガムだったり、日常のアイテムの使い方が上手いですよね。映画的というか。
岡本:みんなが知っている日常のものを歌詞に絡めて情景を描く。自然とそういう方向になってますね。
――2月18日からは全国を廻る“儚いツアー”がスタートしますが、お二人にとってライブの魅力とは?
岡本:何本やってもうまくいかないところですね。思い通りにならないからこそ奇跡が起きたり。だから、めっちゃ面白いですね。予定調和がないというか、対バンに酔っても違うし、その日の体調も左右するし、ホントに同じ日がなくて、同じライブハウスでも違う。
川原:だから、慣れたくないですね。常に新鮮でいたいし、もがいていたい。
――“儚いツアー”というタイトルにしたのはライブが儚いものだから?
岡本:これも完全に言葉遊びなんです。前回のツアーが“告白”にかけて“濃く吐く”ツアーだったので、今回は“吐かない”にかけて“儚いツアー”。ライブにいちばん重きを置いているバンドなので、状況であったり体調が落ち着いたらライブハウスにぜひ遊びに来てほしいです。
川原:毎回、違うのでホントは全部来てほしい気持ちなんですけど、ムリはせずに全箇所、来てください(笑)。
取材・文:山本弘子
リリース情報
『灰汁とAct EP』
2022年1月26日発売
OOR-009 1540円(税込)
1. CAUTION
2. それでも変われないでいる
3. 不気味ちゃん
4. (emoji)
5. ハニートースト
ライブ・イベント情報
2.18 大阪 OSAKA MUSE
2.22 渋谷 Spotify O-Crest
2.26 福岡OP’s
2.27 広島ALMIGHTY
3.04 仙台FLYING SON
3.06 札幌PLANT
3.11 名古屋 CLUB QUATTRO
3.23 高松RIZIN'
3.24 京都 KYOTO MUSE
4.03 渋谷 CLUB QUATTRO
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