【インタビュー】Lucie,Too「いま、いろんな恋愛をしているみたいな感じなのかもしれない（笑）」

■私が作ればLucie,Tooの曲なんだとも思ったりして
■「シワの種」で新たなLucie,Tooっぽさが確立できたかな

──今回はかなり男前なサウンドに仕上がっていて新たな魅力がしっかり打ち出されているなという印象を受けましたが、レコーディングなど制作過程はどうでした？

Chisa：コロナ禍というのもあったから、まずは私がパソコンでひたすらドラムを打ち込んでベースを入れて…みたいな作り方をしたんです。今まではスタジオに入ってみんなで合わせてってやっていたけど、そういう新たな曲の作り方になりましたね。エンジニアさんは前作と同じ(横山令)で、ドラマーは2人の方(まえのほのか(たんこぶちん)、TK (CALENDARS))にお願いしました。

ヒカリ：最初にドラムを録ってからベースを入れるんですが、それぞれ個性があるから、合わせるのが難しいなと思う部分もありました。でもいろんなドラマーの方とやってみたいという気持ちはもともとあったので、新たな発見も結構あった気がします。自分にとっても、バンドとしても。

Chisa：私も1人の人しか知らなかったから、他の人とやってみて「こんなに変わるんだ！」って正直感動しました。その一方で、私は未練がましいタイプだからだと思うんですが、ナホちゃんってこんなに難しいことやっていたんだとか、良い意味で変なフレーズだなあとか、そういうことも思ったりして（笑）。


──初恋の人しか知らなかったのに、新しい恋人ができて世界が広がった人の話みたいに聞こえます（笑）。

ヒカリ：（笑）。

Chisa：そうそうそう（笑）！その感じです！だから今、いろんな男の人と恋愛しているみたいな感じなのかもしれない（笑）。

──音楽の視野が広がっているとか、共鳴できる人が増えているとか、そういうことですよね（笑）。

Chisa：そうです、そうです（笑）。自分の考え方も変わりますよね。なるほどこういうドラムを叩くのか、だったらこうしようとか。音作りから何から変わっている気がします。

──ドラムに限らず、これまでになかった部分が出ているのは例えばどういう曲ですか？

Chisa：これまでと違うなと思うのは「シワの種」。それこそナホちゃんに「辞める」と言われた後、超ネガティブだった時に作りました。基本ネガティブな歌詞なんですが（笑）、さらにダイレクトな歌詞を書くのも歌うのもすごく恥ずかしいというのがあったんですね。『LUCKY』を作っていた時も、「好き」という言葉を絶対に入れないとか思って書いていたんですけど…。



──今回の『Fool』では「大切なあなたを守りたいの」なんて歌詞もあったりして、かなりダイレクトな表現が増えている気がします。

Chisa：それも変化の一環だと思います。「シワの種」はもともとボツにしていたんですよ。アルバムに入る予定じゃなかったんです。でも今回サポートでドラムを叩いてくれた方がこの曲を聴いて、俺がドラムのアレンジをし直すから絶対に入れたほうがいいと。1回ライブでやったんだよね、ナホちゃんと一緒の時に。

ヒカリ：はい、やりましたね。

Chisa：(この曲を入れるのは)しんどいなって思っちゃったり、やっぱり違うかなとか、Lucie,Tooには合わないかなって思ったりもしていたんですが、結果的にはLucie,Tooっぽさというものをちょっと裏返したような曲でもあるのかなって。まぁ、そもそもLucie,Tooっぽさってなんなんだっていうのはずっとあるんですが、私が作ればLucie,Tooの曲なんだとも思ったりして。でもこの曲で、新たなLucie,Tooっぽさが確立できたかなと思いますね。


──今作からのMVは、この「シワの種」だけですか？

Chisa：「トキメキ」はもう撮っていて、「Fool」と「幻の恋人0」も作る予定です。

──「幻の恋人0」ですが、『LUCKY』の中に「幻の恋人」という楽曲がありましたよね。

Chisa：あの「幻の恋人」の前の話、つまりエピソードゼロみたいな感じになっています。他にも、1曲目の「first song」が「リプレイ」と同じコード進行になっていたりして、『LUCKY』を聴いた後にこの『Fool』を聴くとさらに楽しめるようになっているんです。違いを楽しんだり、新たに進化したぞってところを感じたりしながら是非聴いてみてください。

──前後が可愛らしい世界観の曲なので、すごく際立って聴こえたのかもしれませんが、個人的には「スーパームーン」という曲が印象的でした。とても現実的な心情が描かれていて、聴き終わった後の気持ちをどうしたらいいのかわからなくなったりして。

Chisa：コロナ禍で、周りから結構いなくなっちゃう人もいたんですね。でもそういう人たちに対して、別にいいんじゃないって肯定するような気持ちの曲です。そんな深く考えすぎず、自分の好きにしたらいいんじゃないってラフな感じで。私もどちらかと言えばそうなんですが、考えすぎたり思い詰めちゃうようなところがある人に、もうちょっと軽くなってもらえるようにというか。


──なるほど。ヒカリさんは今回どの曲がお気に入りですか？

ヒカリ：私は「シワの種」です。

Chisa：そうなんだ！

ヒカリ：「シワの種」は結構後半にできた曲ですが、最初にフルアルバムを作ると言われてChisaさんからバーっと送られてきた曲の中で言うと「片思いFire」。これめっちゃ好き、絶対やりたいって思いました。

Chisa：「片思いFire」は、『LUCKY』でいうところの「キミに恋」枠かな。胸キュンな部分も残しつつで書いてみました。

──歌詞を書く時に心掛けていることなどはありますか？

Chisa：歌詞を読んだ時に朗読できるかどうか。そこは心掛けているかもしれません。その上で、1曲1曲を物語として書いているというか。恋愛面の歌詞は、JUDY AND MARYのYUKIちゃんが大好きなのでめちゃくちゃ影響を受けていると思います。

──Chisaさんの言葉の選び方や歌詞としての構成はすごく洋楽寄りだなと感じるのですが、今回のアルバムタイトルの「Fool」にもその要素を強く感じました。

Chisa：このタイトルにしたのは、(楽曲としての)「Fool」が一番キャッチーっていうのもあったんですが、全体的に見て、私ってなんて愚か者なんだろうと（笑）。失ってから気づくじゃないけど、メンバーの脱退とかそういうことがないと私は気づけない愚か者なんですよね。そういう経験を経ていろいろわかっていくわけで、昔の自分を反面教師にしてやっているんですが、今客観視するとやっぱり愚かで、いまだにバカだなと（笑）。

ヒカリ：（笑）。これはChisaさんが以前言っていた言葉なんですが、コロナ禍になって、結構ネットで誹謗中傷があったりして、あまりいい言い方じゃないけど世の中的にもちょっと「Fool」な感じになっているって。このアルバムはそんなコロナ禍で出来上がったものだし、その時期だからこそ出来た作品でもあるから、そういう意味でもこのタイトルはぴったりだなって思います。

Chisa：この『Fool』というアルバムの最後に、「ハミング」という曲が入っています。「ハミング」はかなこがやめた後にできた曲で、ナホちゃんに書いた曲。これからナホちゃんと2人でやっていくぞって気持ちで書き、DIALUCKのかなたまさんとレコーディングして、シングルで出したんですね。でも今回は、ぴーちゃんと再録。前はナホちゃんを思ってでしたが、今回はぴーちゃんと2人で頑張るぞって気持ちで再度録ったものなので、最後に入れようと思ったんですよね。

──そのアルバムを引っ提げて開催中のツアーは、3月13日が渋谷WWW、そして19日の宇都宮Hello Dollyがファイナルです。

ヒカリ：Lucie,Tooに入って初めてのツアー。大阪や名古屋は行ったことがあったけど、今回は初めての場所も多いから楽しみです。私にとっては初めましての挨拶みたいな感じになるんですが、新しいアルバムと一緒に、より知ってもらえるような機会になったらなと思っています。

Chisa：宇都宮も含め地方のライブハウスって本当の音楽好きしか来ないんですよね。そもそも今はレコード屋さんがなかったりするところも多いくらいなので、ライブとなるとさらに本当の音楽好きしか来ない。耳が肥えているから、そこで勝っていかないとダメだよって以前言われたことがあって。まだツアーは始まったばかりですが(※この取材は1/18に行われた)、これからもっと精神的にも演奏面でも力をつけていって、その経験の全部を音で、渋谷WWWと宇都宮Hello Dollyに響かせたいなと思います。

取材・文：山田邦子


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