【インタビュー】Lucie,Too「いま、いろんな恋愛をしているみたいな感じなのかもしれない(笑)」
2018年に3人組のガールズバンドとしてインディーズデビューし、海外の名だたるフェスにも出演しながら着実にその名を広めてきたLucie,Too。2020年にベースのかなこが脱退し、Catfood Salmonsのメンバーとしても活動しているヒカリが加入したが、翌年ドラムのシバハラナホが脱退。現在はオリジナルメンバーであり全ての楽曲を手がけるChisa(Vo/G)、そしてシンプルかつダイナミックなプレイで魅了するヒカリ(Ba)の2人で新たな音の景色を描いている。そんな新生Lucie,Tooが2021年12月に1stフルアルバム『Fool』を発表し、現在全国16カ所をまわるリリースツアーを行っている。バンドを取り巻く状況や楽曲に込められた思い、ツアーファイナルに向かう意気込みなどを聞いた。
■私、メンバーは恋人だって思っています
■感情が恋愛と似ているから錯覚しちゃうんですよね
──現在ツアーの真っ最中ということですが、今回は昨年12月に発表した1stフルアルバム『Fool』のリリースツアーですね。
Chisa:はい。オリジナルメンバーが2人抜けたんですが、(その後加入した)ぴーちゃん(ヒカリ/Ba)とここから一緒に頑張っていくんだっていう、その部分もわかってくれているお客さんが多くて。今回のアルバムはこれまでのものと音も曲調的にも違うところが結構あったりするんですが、その違いもちゃんと受け入れてくれているなということもすごく伝わってきます。
──実は今、目の前にちょこんと座っているこの人があのベースを弾いているのか!って、そのギャップに驚いています(笑)。
ヒカリ:(笑)。
──ヒカリさん、普段プレイする楽器はベースだけですか?
ヒカリ:はい。でも今日、ここに来る前の収録で初めて鉄琴を叩きました。
Chisa:アコースティックセットだったからね。今まで3人だったから、そういう時はアコギ、ベース、鉄琴でやっていたんですよ。でも2人になってアコギとベースだけじゃつまらないし、鉄琴が一番おいしいところだったりするから叩いてもらいました(笑)。
ヒカリ:触ったこともないけどやってみます、って(笑)。でも、やってみたら楽しかったです。
▲Chisa
──前回のインタビューではバンドの成り立ちなどを伺っていますが、今回はまずそれぞれの音楽のルーツや共通点、一緒にやることになった経緯などからお聞きしたいと思うのですが。
Chisa:私は昔からJUDY AND MARYやaikoさん、90年代のポップスをよく聴いていて。バンド名はアメリカのNow,Nowというバンドの曲からつけたんですが、洋楽も好きでよく聴いています。ちなみに今回のアルバムに入っている「Bedroom」という曲は、そのNow,Nowへのアンサーソングみたいな感じで書きました。
ヒカリ:私は、ベースを始めたきっかけのバンドとかは特になくて。「ベースやって」って言われて始めたのが高校生で、やっていくうちに、スーパーカーとか聴くようになって好きになりました。洋楽は全然知らなかったけど、Chisaさんや周りの人に教えてもらってだんだん聴くようになりました。
Chisa:もともとぴーちゃんは、府中Flightというライブハウスで育っていて。そこで上の人たちからいろいろ教えてもらったみたいで、私自身も宇都宮Hello Dollyというハコで育っていろんなことを教わっていたから、そういうところも2人合致していたんですよね。あとは、大好きなWeezerのコピバンをしたことがあるとか。スーパーカーも共通だし、女の子のインディー系も好きだよね。
ヒカリ:はい。Soccer Mommy(サッカー・マミー)とかBeabadoobee(ビーバドゥービー)のような、ちょっとマニアックなものとか。邦楽だったら、私はカネコアヤノさんがすごく大好きです。
Chisa:共通する部分があるというのもそうだけど、私、運命っていうものをすごく感じがちなんですね。私がLucie,Tooを始めたくらいの頃だったですが、ぴーちゃんが前やっていたバンドのツアーで宇都宮Hello Dollyに来た時に一度会っていたんですよ。偶然。共通の知り合いもいたりして、感動というか、運命だなって思いました。
▲ヒカリ
──その後お2人はこうして一緒にやることになるわけですが、このアルバムが完成するまでは、コロナ以外にも大変だったようですね。
Chisa:そうです、メンバー脱退とかありましたし(笑)。最初はベースのかなこで、2019年に「CHIME」を出した直後くらいに言われました。発表に関してはしんみりしたムードにしたくなかったから、パペットマペット風の動画で(笑)。私自身はめちゃくちゃ落ち込んだんですが、ナホちゃん(シバハラナホ/Dr)いるし、もう「やるしかない」「やったるぜ!」みたいな前向きな感じでしたね。しばらくは大阪のDIALUCKというバンドのかなたまさんがサポートしてくれて、その間にメンバーを募集しました。
ヒカリ:大学を卒業するくらいのタイミングで、みんなは就職だけど自分的にはやっぱりベースを弾きたいという気持ちがあって。その頃からやっているバンドはあまりガツガツやっていく感じじゃないし、でも自分はもっとやりたいと思っていたタイミングで募集を知ったから、挑戦してみようみたいな感じでした。Lucie,Tooはもともとサーキットとかで見たことがあって、同世代の女の子がすごく頑張っている、自分もそこに携わりたい、やりたいと思ったんです。
Chisa:何人か応募があったんですが、最終的には一緒にライブをやってみて決めたかったんです。でもその矢先にコロナ禍になり、ライブ自体が出来なくなって。自分の中ではぴーちゃんだなと思ってはいたけど、状況的なことも含め、ヤバイなどうしようって感じでした。
──その間も曲作りは続いていたんですか?
Chisa:はい。かなこがやめた後から、フルアルバムを作りたいというのは決めていたんです。かなこがいなくてもできるぞっていうことを、証明というか見せたかったから。それでまず、「ハミング」と「Fool」のセッション動画をサポートのかなたまさんと作りました。
──アルバムを完成させるためにも早く新しいベースを決めたいけど、コロナでライブもできないと。
Chisa:そうなんです。でも事務所の人に相談したら、すでに今ある曲で他人のフレーズを弾くよりも、一緒に作って、新しいベースが自分のフレーズを弾いてツアーをしたほうがいいんじゃないかって。私の性格上、試すみたいなことは絶対無理だろうって言われて確かにそうだなと思い、思い切ってぴーちゃんに電話をしたんです。
──さっきの運命の話じゃないですが、恋人に、告白するとかされるみたいな話に聞こえてきました(笑)。
ヒカリ:(笑)。
Chisa:でも本当にその通りなんですよね。私、メンバーは恋人だって思っています。感情が恋愛と似ているから、錯覚しちゃうんですよね。メンバーが脱退するたびに失恋したみたいな気分になるんです。私フラれた、みたいな(笑)。
──連絡が来るまで、待っている方はドキドキですね。
ヒカリ:1回スタジオに入って、ちょこちょこ曲をもらったりしていたけどその後連絡が来なくなったから「あれ?どうなったんだろう」というのはありました。突然電話がかかってきてびっくりしたけど、絶対にやりたいと思っていたから嬉しかったです。
──これでひとつは一件落着したわけですね(笑)。
Chisa:ひとつは(笑)。コロナが一旦収まった時に初めてお披露目ワンマンをしたんですが、本当はその時にアルバムを出したかったんです。でも、まだ違う、こうじゃない、Lucie,Tooはもっといける、曲を書け!ってことになり。その後の曲作りも含めて物事は私の理想どおりに進まず、落ち込んだり、「もう曲なんて書いてられない!」って若干拗ねたりもしていました。
──自暴自棄にもなっちゃいますよね。
Chisa:私自身、ピリピリしていたんですよね。私が曲を書けばいいだけの話なのに、書けないからメンバーを不安にさせていた。2人は2人で、私がそういう状況になっていることもわかっていたから弱音や不安みたいなことも話せない。そういう状況を私が作っていたのかなって、当時を振り返ると思います。
──そんな中で、ドラムのシバハラナホさんが脱退。
Chisa:Lucie,Tooで海外に行ったりしたこともきっかけのひとつになっていたようで、海外に住みたいと。コロナ禍でいろんなことを考えたりする中で、その気持ちが大きくなったみたいなんです。ナホちゃんはバンドで上を目指すことの他に新しい夢ができ、海外に行きたいとずっと思っていたのに言えなかった。私からすれば「言えばいいじゃん!」って思ったけど、言えない状況を私が作っていたんですよね。
──その時はどういうやりとりがあったんですか?
Chisa:私は、海外に行きたいなら行けばいいと思ったんです。Lucie,Tooさえ続けてくれたらいいって。日本に帰ってきた時に叩いてくれる感じでも全然いい、それでも私はナホちゃんとやりたいって伝えたけど頑なで。彼女の中では、気持ちが固まったから私たちに言ったわけですからね。あと、コロナ禍で解散したりメンバーが脱退するバンドがいっぱいいたりして、その流れにも私は乗りたくなかったんですよ。私自身も好きなバンドのメンバーが脱退とかして悲しい気持ちになったことがあるから、少なからずいるLucie,Tooのファンをこういう気持ちにはさせたくなかったんです。
──歌詞や楽曲のムードにも影響しそうな状況だったんですね。
Chisa:そうなんですよ。だから今、曲によっては歌っていてしんどかったりもします。
──でも結果的にはこんなにいいアルバムになったわけで、ものすごくいい方に作用しましたよね。
Chisa:ありがとうございます。でも本当に怖かったんですよ、この曲たちを出す時。賛否両論だろうなって。
──でもこの作品でLucie,Tooを知った人にとっては、過去のポップで明るい一面も、Lucie,Tooの振り幅として捉えますよね。「こんな曲もやってきたバンドなんだ!」って。
Chisa:なるほど!そうですね、確かに。捉え方は、賛否だけじゃないですね。
◆インタビュー(2)へ