【インタビュー】Reol、『第六感』を切り拓いた「いちばん大きな交差点に出るということ」
現在、YouTube登録者数は143万人を突破、総再生回数は7億回を超えるなど、国内外から注目を集めているシンガーソングライターであり、自身のアーティスト活動全般をセルフプロデュースするマルチクリエイターが、Reolだ。前アルバム『金字塔』から1年11ヵ月ぶりの2ndミニアルバム『第六感』には、その間にデジタルリリースされた『BOAT RACE 2020』イメージソング「第六感」、TVアニメ『デジモンアドベンチャー:』エンディング主題歌「Q?」、スマホアプリゲーム『白夜極光』テーマソング「白夜」など全7曲が収録された。
◆Reol 画像 / 動画
限りない完成度に達した上で、自身の美学とキャッチーさを両立させるセルフプロデュース力の高さは前述したとおり。自らの内面へ向かうラジカルなサウンド構築と、その幅を広げるべく他者との関わりを重視したという作品コンセプトは、結果、自身の可能性をより大きく切り拓くことになったようだ。『第六感』に思い描いたもの、制作面での変化、各曲のサウンド&アレンジ方法、ポピュラリティということについて、じっくりと話を訊いたロングインタビューをお届けしたい。
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■ここからここまでが美しくて
■自分がやるべきことだっていう感覚
──ミニアルバム『第六感』は、2020年のフルアルバム『金字塔』とはまた違った雰囲気で。よりEDMやエレクトロサウンドが突き詰められた感じがありますね。
Reol:アルバムは毎回、コンセプチュアルに作るほうで。シングルコレクションのようなアルバムは世代じゃないというか、私はアルバムアーティストで育ってきたので、自分もそういうものを作りたいという感覚が強いんです。
──では、『第六感』にはどういったコンセプトを立てましたか?
Reol:『金字塔』というアルバムが、ソロアーティストとしてどういう音楽性でどういう世界観でやっていくかという基盤作りだとしたら、今回の作品はもっと開けたものを目指したというか。作品としてよりキャッチーな……キャッチーというのもすごく難しい言葉だと思うんですけど、他者との関わりをもう少し広げることがコンセプトになっています。
──その他者はリスナーとの関係も含めですか?
Reol:リスナーともそうですし、私自身の作品の作り方の部分からもですね。
──これまで共に曲やアレンジでタッグを組んできたGigaさんに加え、今回初めて組んだクリエイターの方もいますね。
Reol:そうです。トラックメイカーと国境を超えてご一緒したり、そういうことも含めていちばん大きな交差点に出るということが、今回のアルバムのコンセプトです。
──新たな人と組んで、制作面での変化はありましたか?
Reol:『金字塔』からじわじわといろんな方に入っていただいてはいたんですけど、今回も初めてご一緒するトラックメーカーが2人います。なので、人が変わったことで変化した部分はあると思う。でも必然的にこうなったという感じなんです。3作目がこうなるだろうなということは『金字塔』のときから想定していました。
──こういうことをやりたい、というのが先にあったんですね。
Reol:そうです。全部つながりで作っている感覚があるので、1枚作り終わったら、次の作品のことを考えているという感じなんです。『金字塔』を作り終えたときには、次のアルバムはもう少し時間的余裕を持って作りたいというのが大前提としてありました。『金字塔』までは、1年間に2作品くらい出していて、その間にツアーもありましたし、単純に駆け足でやりすぎたというか、身体的に無理をしていたので。そういう部分で、ちゃんとインプットしながら制作したいなと思っていたんです。その矢先に新型コロナウイルスの影響があって、これは、タイミング的にも世の中がそう言っているんだなと感じたので、今回はじっくり作る、ということに向かいました。
──時間がある中で、曲をたくさん作っていた感じですか?
Reol:もちろん作ったんですけど、このアルバムには採用しなかった曲も無限にあるという感じですね。ストックを作っておいてそれを使うことは、私はあまり好きじゃないんです。
──それは、リアルタイム感が欲しいから?
Reol:新鮮なものを出したいというのもそうですし、今作っている作品に入れる必然性がなくなっちゃうというか。ストックしたものを引っ張り出してきても、ほかの曲と並べたときにちぐはぐになってしまう、私の場合はそう感じることが多いので。『第六感』もこの2年間で作った曲だけで構成されているという感じですね。
──それくらいReolさん自身、いろんなものに興味や関心が向くスピード感がある感じでしょうか?
Reol:うーん、どうなんですかね。たぶん私は、いわゆるミーハーではないと思っていて。わりと自分の美学の幅が狭いと思います。ここからここまでが美しくて、自分がやるべきことだっていう感覚がデビュー当時から変わっていないんです。そこから絶対逸れないようにやっているという自覚はあります。
──はい。そこを掘り下げながら、研ぎ澄ましていくという。
Reol:そうですね。ただ、コアなものを作りたいわけではないし、玄人ウケを狙っているわけでもない。そういうものを狙うなら、メジャーでやる意味がなくなってしまうと思うので。自分が求められていることもやるべきだと思うし、求められているなかで自分が作りたいものがどれなのか、それをやるのがプロなのかなと思っています。
──今回、ディープなエレクトロやEDMもあり、またコアな音も聴かせながら、ポップさがど真ん中にあるものになっていると感じました。そのさじ加減は自分でもバランスを計りながら、見極めているんですか?
Reol:たぶん、ライティングする人格とプロデュースする人格が自分の中に同居しているので。頭の中で、相談してもらう感じというか(笑)。
──そこは別人格なんですね。
Reol:ドロップがサビです、みたいな曲を日本でやっても、EDMリスナーにしかわからないと思うし。それに私は、ある特定ジャンルに特化した音楽を作りたいわけではないんですよね。“J-POP”ってすごく都合のいい言葉だなと思うんですけど、いわゆる音楽をカテゴリー分けしない、ライトに音楽を楽しんでいる人たちに聴かれる音楽を作りたいというのがあるので。ニッチなことは、自分がわかる程度にしかまぶさないようにしています。
──ポピュラリティを持ちながら、それをいかに壊したり刺激的にしたりというバランス感ですね。
Reol:私は昔からむちゃくちゃチャートも見るし。その一方で、自分自身がいわゆるJ-POPから連想されるような音楽性でないことはわかっているんです。でもやっぱり、売れている音楽の何がいいと思ってみんなが聴いているのかということは、昔からずっと気になっているんです。だから絶対聴きますね、ヒットチャートの音楽も。
──ヒットチャートを自分で研究する中で、今ってリスナーの耳がこんなふうに変化してきているなと感じる部分というのは?
Reol:音楽をスマホで聴く人ばかりになったし、TikTokとかの流行をみると、わかりやすい音が求められているんだろうなとは思いますね。音ネタとか編曲に耳を傾けてくれるリスナーは、わりとTikTokのおかげで増えたと思うんです。ただ、それをみんな“編曲”だと思って聴いてないじゃないですか。いかにそう考えさせないか、みたいな音楽が大事というか。今はそういうものに親和性があるのかなと思います。だから、インターネットミュージックで生まれたような、私の古巣でもあるニコニコ動画とかで生まれた音楽は、若い子には新鮮に聴こえるんだろうなって思います。
──一方で歌詞を重視して、自分に重ね合わせて聴いているリスナーも多いですよね。そうところでReolさん自身、歌詞にメッセージを忍ばせるということも意識しますか?
Reol:歌詞は大事だと思っているんですけど、自分の中ではメロディのほうがプライオリティが高いですね。言葉をいかにリズムとして聴かせるかということを重視するかもしれない。ちゃんと押韻されていないと嫌だし。海の向こうの人が音として聴いたときにも心地よい言葉でありたいというのもあるんです。それは別に海外を意識しているということではなくて、昔からずっとそうじゃないと気持ちが悪いというのがあるので。私はあまり、一聴したときに歌詞が聴き取れるような歌詞は書かないほうですけど、後から何を歌っているんだろうなって思って歌詞を見てもらったときに、なるほどなってなるような、ハッとするようなものが書けたらいいなと思っています。
──楽曲「第六感」などもそうですね、言葉の区切りや音が重視されている。
Reol:そうですね、どちらかというとリズムに振った曲なので。
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