【インタビュー】Nothing's Carved In Stone、村松と生形が語る11thアルバム「バンドとして出せる最善の答え」
Nothing's Carved In Stoneが12月1日、11thアルバム『ANSWER』をリリースする。ELLEGARDENの生形真一(G)がストレイテナーの日向秀和(B)に声をかけ、FULLARMORの大喜多崇規(Dr)とABSTRACT MASHの村松拓(Vo)が加入するなど、個々の圧倒的なキャリアの融合が話題になったその結成は2008年。以降、実力と経験を兼ね備えた4人の存在感と個性がぶつかり合うスリリングで緻密なロックを鳴らし続けて13年が経つ。そして、4人はよりシンプルに磨かれたアンサンブルと芳醇なグルーヴ、真っ直ぐなメッセージと歌を鳴らすバンドへと、ひとつずつ鎧を脱ぐように変化してきたのかもしれない。特に2019年に自主レーベルを立ち上げてリリースしたアルバム『By Your Side』以降、自らの道を自らで切り拓く自由なスタンスを確立。コロナ禍においても、初の配信シングルのリリースや配信ライブなど、柔軟な活動を繰り広げてきた。
◆Nothing's Carved In Stone 画像 / 動画
Nothing's Carved In Stoneが2021年の締め括りに放つアルバムが、『ANSWER』だ。ソリッドでヘヴィなギターリフが印象的な「Deeper,Deeper」で幕を開け、ミドルテンポで揺らす「Flame」、跳ねるビートにポップなメロディが映える「No Turning Back」、エモーショナルなバラード「Walk」など、次々と新しい情景が目前に広がる多彩さを持ち、以前より割合を増した日本語詞と感情をなぞる旋律がまっすぐ心に響いてくる。アルバムタイトルが堂々とデザインされたジャケットも含めて、自信と確信が伝わってくる仕上がりだが、余計な装飾を削ぎ落として核を露わにした変化は並大抵ではない。結成から13年を超えて、今なお新しさを追い求める彼らが、どのようにして“ANSWER=答え”に辿り着いたのか。この2年を振り返りつつ、今のリアルな想いを語ってもらった。
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■今回はプログレッシヴなことをしてない
■それよりも1曲ずつにしっかり歌がある
──2020年3月の初配信シングル「NEW HORIZON」から現在まで、5作のデジタルシングルをコンスタントに配信リリースするという、今までないかたちの活動をされてきましたが、振り返っていかがですか?
生形:コロナ禍ということもあって、初めて配信リリースをしてみて。あまり憶えてないけど、最初に出す時は“配信”というかたちに結構抵抗があったと思いますね。でも、挑戦してみたら、曲が完成してからわずか2週間くらいでみんなに聴いてもらえる速さが良かったんです。このアルバムにしても、作り始めたのは去年なわけで、考えると作り始めからリリースまで、タイムラグがすごく生じるんですね。でも、配信だとすぐに聴いてもらえる。つまり新鮮なうちに曲を届けられるし、1曲ごとに作って出すことができるから、その時々の自分たちの流行りだったり、やりたいことを反映できる。逆に、1曲だから怖かったりもするんですけど、今はそういう良さを知って抵抗はだいぶなくなりましたね。
──初配信シングル以降は定期的に配信リリースされてますし。
生形:そうですね。味を占めたかなと(笑)。
▲村松拓(Vo)
──サブスクも作品ごとに解禁していますね。
生形:サブスクについては、もう何回もみんなで話してて、いまだに難しいなと思ってます。まだ、“サブスク、出してみたけど、どうなるのかな?”っていう段階ですね。セルフカバーアルバム『Futures』はCDリリースから1年後ぐらいにサブスクを開始して……たぶん、次はもっと早く出すんだろうなと思いますけど。
村松:やっぱり時代の変化に合わせていかないとってことですよね。CDを作って、ただリリースすることを続けるだけで、本当に人に伝わるんだったらいいんですけど。もっとたくさんの人に聴いてほしいという気持ちが変わらずあるので。
──サブスクをはじめたことで得た反響も?
村松:手応えみたいなものは、正直わからないです。けどまあ、いろんな意見があるので、それをどうチョイスするかっていうことですよね。結局、CDがレコードに取って代わった時みたいに、いつ切り替えるかって話だと思うんですよ。それを自分たちなりにちゃんと選んで結論を出せた。そのことのほうが大事かなという気がします。もしかしたら、そのうちCDを作らなくなるかもしれないし、それ自体にそんな意味は感じてないかな。
──なるほど。曲作りとしては、1曲ごとにリリースしていくことも視野に入れると、作品づくりのペースとかモチベーションとかが変わったりするものでしょうか?
生形:その時によりますね。これまでもアルバムはリリースを決めてから作ったものが大部分だし。今回の場合でいえば、「Bloom in the Rain」と「Wonderer」は、アルバムリリース決定前に作った楽曲ですけど、アルバムに入れるんだろうなとは思いつつ、去年のうちに録り終わってたから。
──もともと2021年内にアルバムをリリースする計画があったんですね。
生形:そうです。リリース日は結構変わりましたけどね。当初は8月リリースとかの話もあったんだけど、もっと内容を詰めようということで、曲をいっぱい作ったんですよ。それに、レコーディングしても出さずにストックしている曲もあるし。仮タイトルが「おなかグーグードールズ」って曲とか(笑)。
村松:あるね(笑)。
▲生形真一(G)
──その仮タイトルから、いろんなイメージが浮かびますけど(笑)。では、1年掛けてアルバムの完成図みたいなものを探ってきたと。
生形:そうですね。レコーディング自体も3回に分けてるんですよ。「Bloom in the Rain」と「Wonderer」を録ったのが去年で、今年3月くらいに4曲録って、最後に残り4曲。うちの場合、アルバムの全体像が先にあるというよりも、ばーっと曲を作って、「こういう曲が足りないね」っていうトータルバランスをみて、さらに曲を作っていくことが多いかもしれない。たとえばミドルテンポが多かったらアップテンポを新たに作るとか、逆だったらちょっとゆったりした曲を入れるとか、そうやって、全体のバランスみるのはわりと工程の最後かな。
──最初にアルバム全体を聴いた時の印象としては、ポップだと思ったんです。もちろんナッシングスならではのロック感はしっかりあって、その上で歌やメロディが前面に出ている感じがして。日本語詞が多いっていうのもあるとは思いますが、前作『By Your Side』以上にわかりやすくて届きやすいアルバムだと思いました。
生形:そういうふうに思ってくれたのは、たぶんアンサンブルがシンプルだからだと思う。今回明らかに、各楽器のアレンジがストレートになったんですね。それはメンバー間でもそういう共通認識があるので。
──『By Your Side』よりもさらに?
生形:さらにですね。リズムもそうだし、ベースもギターも、あんまり派手じゃないというか。今までのナッシングスっぽいのは「Impermanence」くらいかな。
村松:今回はプログレッシヴなことをしてないよね。それよりも、1曲ずつにしっかり歌があるところを意識したというか。
生形:そこをさらに強調してる。前からそういう曲はあったんですけど、今回、結構増えたと思う。
村松:メロディが際立つアレンジだなと思ったから、作っていて、歌に集中できてる感じがあったんだよね。各々がメロディありきで楽器アレンジしてるのを感じて、歌ってる側としては、そこが気持ちよかったから。
▲11thアルバム『ANSWER』
──そうなっていったのは、作っていく過程で気づいたことですか?
生形:そうですね。示し合わせたとかではなくて、気がついたらそうなってた。「結果、そういう曲が多かったね、今回」みたいな。バンドとして特殊かもしれないですけど、ナッシングスというバンドはむしろ手の込んだことをやるほうが、ある意味簡単なんですよ。曲を作るうえで、演奏でトピックを立てられるから。だから、それをやらなかったのはあえてだったのかなという気もしてます。
──逆に、ナッシングスとして難しいほうへ進んだと。そういうアレンジのほうが気持ちよくなってきたところがあるんですかね。
生形:今はそうなのかもしれないですね。
村松:そもそもの曲の作り方がだいぶ変わったなっていう印象が俺にはあって。これまではまず、デモをかなり詰めて作ってから、その結果、出来たものに反応していくっていうかたちが多かったんです。最近は、ひなっち(日向)がデモを作ってくることも増えたんですけど、特にメロディを練って作ったんだろうなっていう感じが伝わってきたし。やっぱりメロディありきで考えると、曲そのものがよくなるんですよね。メンバー個々のプレイで表現したいことをメインにするんじゃなくて、ちゃんと曲としていいものを書くというか、そういうところへ意識が変わってきたなって感じてます。
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