【インタビュー】OHTORA、EP『Monopolize』に溢れる多面性「音楽が代弁してくれているのかもしれない」
■音楽が代弁してくれているのかもしれない
──今お話に出た「NITICA」は、何か人生観に関わるような出来事を振り返りながら書かれた歌詞のように感じました。
OHTORA:初期のインタビューの時に、(インタビュアーの)山田さんが「もっと自分の中の闇の面を出してもいいんじゃないか」って言ってて、それが結構僕の中で残っていたんですよね。
──そういうお話、しましたね。もっと強い言葉を使うとか、自分の中の闇の部分を出してみるとか、OHTORAさんのそういう面も見てみたいと。
OHTORA:それが直接的なきっかけということではないんですが、こういう結構ドロドロした思いを一度全部曝け出して書くのもたまにはいいんじゃないかなみたいな気持ちでした。歌詞は、1年前くらいにちょこちょこ書きためていたものです。
──書いてみてどうでしたか?
OHTORA:僕の中では、浄化しきったような感覚になったというか。ある出来事を思い出しながら書いたのは書いたんですが、後腐れのある感情ではなく、当時の感情っていう、割り切った感じで歌詞は綴っていったので。でも、関係が終わった後に誰かに向けた歌詞を書くって、ひょっとしたら俺はただ自惚れて書いているだけなんじゃないかなって、そういうもどかしい気持ちもありました。だけど何か形にして、もしこの世にいるのならば聴いてほしいって、今はそういう感情ですね。
──《君の命を背負えないから ただ怖くなって 何も言わず逃げたんだ》や《「向き合う」って言ってごめんね 時間が経てば 許してくれるかな》など、言いたかったけど言えなかった本音みたいなものも書かれていますね。
OHTORA:最初のイメージとして、1番と2番で同じ人が書いていない感を出してみようかなっていうのがあったんです。でも、書いているといつの間にか自分の感情が入り乱れた感じがしてきて。意図せず「あれ、俺違うこと書いてるな」って、自分でも思いながらでした。結果としては、1番のAメロなどはあまり意味を考えず使っている言葉も多いんですが、今言われたような、2番で結構どストレートな歌詞を書いたことによって、逆に1番の歌詞の意味がちょっとわかるような感じに持っていけたかなと思います。
──手紙だと上手く伝えられないけど、歌だとそれができるっていう方も多いみたいですね。
OHTORA:本当にそうなんですよね。それが音楽のいいところだなって、僕は最近つくづく思っています。聴いている人からすれば、誰かに何かを伝えるっていう意図なんてどうでもいいかもしれないですけど。直接こういう言葉を吐露するって僕は今までできなかったけど、音楽が代弁してくれているのかもしれないって思いますよね。この「NITICA」は具体的に書きすぎたところも多いから、枠は狭いかもしれないけど、刺さる人はたぶんものすごく刺さるかなと思うんですね。ひょっとしたら闇に入っちゃう人もいるかもしれないけど、僕の中では、最後に残る感情は爽やかなものだと思っていて。トラックの力もあり、曲としては爽やかな着地点になっているんじゃないかなって思っています。
──最近はコロナ禍ということもあり、自分自身の考え方や音楽との向き合い方が変わったという方もいらっしゃいますが、その点OHTORAさんはどうですか?
OHTORA:特にないですね。今の事務所に所属してライブも1回しかやってないから「ツアーが中止になって…」みたいなこともないし、そもそも僕はコロナ前から自分と向き合うことが多かったので(笑)、そこまで影響もなかったかなと思います。でも「SEASIDE MAGIC」以降、まだ世には出していないんですが、めちゃくちゃ明るめの歌詞ばかり書いているんですよ。自分のライフスタイルの中で起こったことに基づく恋愛観で。だからもう、「NITICA」みたいな曲は書かないかもしれないなって思っているんですけど。
──と言いつつ、その方向性でまたすごい名曲が出来るんですよ(笑)。
OHTORA:(笑)。でも曲は今も引き続き作ってますし、自分の作品はもちろん、作家として提供したり、客演の話があったり、今後もいろんな形でニュースをお届けできると思います。「ANT MILL」のMVもたぶんそろそろ公開になるはずですから、見てもらえると嬉しいです。
取材・文◎山田邦子
EP『Monopolize』
01.SEASIDE MAGIC
02.ANT MILL
03.SENTIMENTAL BOY
04.STARGAZER
05.NITICA
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