【インタビュー】MUCC、新体制による初音源完成「行き着いたのは“自分とどう向き合うか？”」

■SATOちがいなくなったことを感じていい
■同じぐらい新体制に感じる強いものがある

──3曲目の「XYZ.」は軽やかな跳ねるリズムが心地よい曲です。逹瑯さんによる作詞作曲ですが、いつ頃作られた曲ですか？

逹瑯：これも同じタイミングで曲出ししたんですけど、コロナのこの感じとか、自分の中から自然に出てくるものじゃないところに影響されて、無理矢理引っ張り出されるように曲を書くのが、すごく嫌だったんですよ。でも、やっぱりどうしてもそこを避けて通れなかったので、「WORLD」を作った。であればもう1曲は、“どんな時代だろうが全く関係ないよ”っていうコロナに全く影響されていない曲も作りたいなと思ってできた曲です。

──ご自身の嗜好性の中から自然と生まれてくる曲という感じでしょうか。YUKKEさんの弾むようなベースラインも気持ち良かったです。

YUKKE：「GONER」「WORLD」という2曲の表題曲に対して、いい意味で“MUCCのカップリング枠”にぴったりハマッた曲だなと。で、「ベースラインが気持ちいい」と言ってもらえるのはすごくうれしいです（笑）。生のライヴでも聴く人にそう思ってもらえるように、もっと精進します。


──いえいえ（笑）。3曲目に「XYZ.」を入れようというチョイスについて、ミヤさんはいかがですか？

ミヤ：この曲が表題だったらビックリだと思うんですよ。“あぁ、MUCCもコロナで変なふうになっちゃったな”って感じになると思うんですけど（一同笑）。でもやっぱり、いろんな曲を聴きたい気分の時ってあるじゃないですか？ 激しい曲を聴きたい時もあれば、「WORLD」みたいな曲を聴きたい時もあるし、そのどちらでもないスーッと流れてくれるような曲を聴きたい気分の時もあるわけで。この曲は、聴き流せるというか、ユラユラしていたいというか、そういう曲調だなと思っていて。今、コロナだから逆に、どれだけ上手く息抜きできるかというのも、人間にとってすごく大事だなと思っていて。

──大事ですね。それは身に染みています。

ミヤ：ずっと頭で考えているだけだと、視野が狭まっていくから。生きていく上で何を楽しみにするかとか、どこで力を入れてどこで力を抜くかというのは、結局、自分の匙加減じゃないですか？ 音楽を奏でる側として“こういう気分の時もある”って提示したかったという。こういうビートに揺られて、のほほんとしたいなっていう気分の日もあるよっていうことですね。MUCCにいろんな曲調があるというのは、今まで散々やってきたことだし、ひとつの特徴だと思うんですよね。だから、「GONER」を作った時と全く同じベクトルというか。やっぱりこの現状を曲にしたということで。

──さて、3人の新体制始動ツアーが11月4日からスタートしますので、意気込みを聞かせてください。YUKKEさんは楽しみな気持ちと不安な気持ち、バランス的にはどうですか？

YUKKE：不安はなくて、新しいMUCCを早く見せたいという、ワクワクが今はありますね。だから、早くツアーに出たいんです。メンバーがひとり抜けているので、見え方的にはすごく変わると思うんですよ。けど、決してパワーダウンしたとは感じさせたくない。その分、自分が担う部分も増えている気はしていますね。後ろを向いたり下を向いたりするより、楽しい気持ちを持って前を向いていないと、たぶんそれが周りを感化するから。サポートドラマーも結構緊張しぃだから、そのへんは引っ張ってあげたいし。以前よりも堂々とできている自分でありたいと思っていますね。

──逹瑯さんはいかがですか？　

逹瑯：うーん、結構フラットかな？ やっぱりどうしてもいろいろ変わるだろうし、それは20数年一緒にやってきたメンバーがひとりいなくなるわけだから、当たり前だし。既にリハーサルをやっているんだけど、音的なところも、自分のモチベーションというか“こういうふうにやっていこう”という精神的なところも変わってきているんですよ。サポートドラマーもめちゃくちゃいいやつで、超真面目だし、すごく責任感を持ってやってくれていて、MUCCのメンバーともすごく馴染んでいるんですね。頑張ってくれているから、「SATOちの再現をしようとか、音源をそのまま再現しようと思って叩かなくていいよ？」って言ってて。っていうか、その部分はもう結構できてるから、今よりもさらにMUCCの曲のクオリティーを上げるには、自分の曲だと思って叩いてくれるのが一番なんですよ。間違えないようにちゃんと再現する、と思って叩いていると、どうしてもエモっていう部分が乗らないから。

──ドラムにおいては特に重要ですよね。

逹瑯：エモーショナルな部分を乗せてもらうには、もうそれしかないんですよね。そこまでリハで詰めることができているから、楽しみだなと思いながらも、“どうなるんだろうな？”という気持ちもあって、結構フラットに見てる感じかな。


──ミヤさんはいかがです？

ミヤ：今、思ったんですけど、1999年にYUKKEが加入した時、“新しいことが始まるんだ”ってちょっとワクワクしていたんですよ。その感じにちょっと似てる。

YUKKE：だとすると、初めて出るほうはすげぇ緊張すると思う（笑）。

ミヤ：ははは。前のベースが辞めた理由があまり良くなかったんですよ。ということもあって、新しいベースが入って“やっとバンドがちゃんとできる”みたいにワクワクしてた感じが、今とちょっと似てて。もちろんSATOちは、別に変な感じで辞めたわけではないし、むしろ前向きに辞めているので、よりそこに期待が膨らんでいるというか。楽しみだなという気持ちが、今すごく強いですね。

──リーダーとして、エンジニアまで手掛けるバンマスとして、サポートドラマーに関してはどんな印象ですか？

ミヤ：24年間続いてきたバンドのドラムをサポートするって、相当ハードルが高いんですよ。自分のことに置き換えて考えたら、“よくそんなことできるな”と思う。そんな中だけど、サポートとしてとか仕事としてとか、ドライに依頼している感じでもないというか。過去、一緒に音を出したこともあるし、人間性も分かっているので。さっき逹瑯が言ったように、MUCCの曲を演奏する時に必要なのはやっぱりエモーション、気持ちなんでね。SATOち以上に緊張しぃなので……“なんでそこを引き継いでくるの？”みたいな（笑）。

逹瑯：あはは！

ミヤ：それも含めて、すごくバンドっぽいというかバンド過ぎちゃって、逆に困った部分もありました（笑）。

──仕事として割り切ったサポートでもないという？

ミヤ：まぁでも、割り切れない感じがMUCCらしいかなとは思います。

逹瑯：生のビートって人間が一番出るじゃないですか。その叩き手が変わるわけだから、敏感な人は“サウンド的に変わった”って感じると思うし。SATOちとは違う人が叩くわけだから、やっぱり寂しさは感じると思うんですよ。でも、寂しさを感じたとしても“こうなっちゃったんだ…”というネガティヴな要素はたぶんないと思うし、音的にはとてもカッコいいものに仕上がっているから。うちらはフルスロットルで吹っ切っていくしかないんでね。そこは頑張っていこうかなって感じです。

──最後に一言ずつ伺います。シングルリリースだけでなく、ライヴアルバムや映像作品などリリースも多々控えている年末に向けて、みなさんはどんなふうに駆け抜けていきますか？

逹瑯：年内は結構、探り探りな気がするんだよな（笑）。でも、今までも探り探りで見えないところを搔き分けながら走ってきた20数年だったと思うので。そういう意味で言うと変わらず、続けていくんだろうな。今の状況を最大限楽しみながらやっていこうかな。今って、ちょっとのことでもみんなが敏感に拾ってくれる時期だと思うんですよ。俺らはガラッと環境が変わるわけだから。敏感に拾ってくれるこのタイミングをいい具合に利用できたらなと思います（笑）。

ミヤ：これからまた新しいことが始まるわけで、人生経験として人がしないことをやらせてもらってるなというのがデカいです。そういう機会を与えてもらったんだったら、それを200％しっかりと表現していこうという感じですかね。24年もバンドをやっていることもそうだし、その中で音楽的に新しい景色を見られる人のほうが少ないと思うんですよ。そういった自分が感じていることを音にして、ライヴという形でお客さんにも感じてもらって。なんか……SATOちがいなくなったMUCCを観て、“SATOちがいなくなったということ”を感じていいと思うんですよね。すごく感じると思うし、自分も実感してるし。ただ、それと同じぐらい新体制のMUCCに感じる強いものがあるので、すごくツアーが楽しみです。

YUKKE：やっぱり、これから先のことを見据えていきたいですね。3人になってもこれからのMUCCに自信があるし。もちろん初めて経験することも多くなるんだと思うんですけど、今、個人的には迷いっていう言葉を使いたくなくて。それぐらいの気持ちで前を向いている背中を見せないと、たぶんお客さんって付いてこられないかなって思うから。強い気持ちで引っ張って、これまでのMUCC以上にお客さんを振り回してあげられたらいいかなと思います。

取材・文◎大前多恵







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