【ライブレポート】トゥエンティ・ワン・パイロッツ、<Takeøver Tour>LA公演で「このステージに立ってるのは、本当に特別なこと」
過去最高にポップな最新アルバム『スケイルド・アンド・アイシー』で新章に突入したトゥエンティ・ワン・パイロッツの<テイクオーバー・ツアー>は、9月21日にコロラド州デンバーからスタートした。地元コロンバスでの2公演以外は、同じ都市で、数百人規模のライブハウス、数千人規模のシアター、数万人収容のアリーナと、ショウが連続する珍しいツアーだ。
◆twenty one pilots 画像
10月2日、ロサンゼルスのザ・フォーラム(約18000人収容)で開催された公演は、ワクチン接種が完了した人、もしくは72時間以内にテストで陰性を確認した人のみが入場できるルールになっていたものの、完全ソールドアウト。“僕の人生初のコンサート”と書いた厚紙を誇らしげに持つ10代やバンドTシャツを着た20代に混ざって30代以上の大人達も結構いて、<FUJI ROCK FESTIVAL 2012>で初来日したトゥエンティ・ワン・パイロッツだが、彼ら自身のみならずファンも共に歳を重ねていることを実感する。
21時過ぎ、フロア後方左右の出入り口から黒いマスクを被った二人が姿を見せ、歓声とスポットライトを浴びながら客席外周を歩いてステージに向かった。タイラーがピアノの前に、ジョシュがドラムセットの前に座り、息を合わせて始めたオープニング曲は、アルバム『スケイルド・アンド・アイシー』からの「グッド・デイ」だ。エルトン・ジョンを彷彿とさせる明るくポップなナンバーに、場内が一気に沸いた。続いて同じくアルバムからの「ノー・チャンセズ」へ。後半でタイラーはマスクを取って顔を見せ、大歓声を浴びた。
全身を使ってアクロバティックにドラムを叩くジョシュ、ステージ上を動き回ってキレのあるラップと鮮やかなボーカルを交互に放つタイラーの動きは常にシンクロしていて、どちらからも目が離せない。代表曲「ストレスド・アウト」のクライマックスでは、ジョシュがピアノに飛び乗りバック転してみせ、タイラーもピアノに駆け上ってジャンプ、場内の興奮を煽った。
セットリストは『スケイルド・アンド・アイシー』収録曲をふんだんに盛り込みつつ、代表曲やヒット曲をバランスよく織り交ぜたもので、「マイグレイン/モーフ/ホールディング・オントゥ・ユー」のメドレーでは大合唱が巻き起こった。ここで初めてタイラーが観客に挨拶。ジョシュに「君は調子どうよ?」と冗談交じりに絡んでから、「俺達、またショウをやってるよ!」と本当に嬉しそうに語った。
中盤からはツアーバンド(ベース、ギター、キーボード、トランペット)が加わり、タイラーがフロア後方のピアノがある小ステージに移動した「マルベリー・ストリート」では、観客を左右に分けてサビを交互に歌わせるなどの試みも。メインステージに戻ってからは、「ジャンプスーツ」「ヘヴィダーティソウル」で客席の熱狂を加速させると、ステージ前方に小さな焚き火が現れた。ここからは全員がその周りに座ってアコースティックパフォーマンスへ。ライブ後半では「レヴェル・オブ・コンサーン」「ライド」と再び熱狂を高めていき、ラストの「カーレディオ」でタイラーがイントロから丸ごと観客にラップさせ、サビで最大級の合唱を巻き起こして本編が終了した。
アンコールの1曲目で、マイ・ケミカル・ロマンスの「アイム・ノット・オーケー」のサビを織り込んだ「シャイ・アウェイ」を披露。その後のMCでタイラーはこう語った。
「今夜、僕達がこのステージに立ってるのは、本当に特別なことだ。前にも言ったけど、僕達はもうステージに戻れないんだって、本気で思ったことがあった。そんな状況から山の頂上に立てたから、この上なくいい気分だよ。ショウに来てくれてありがとう」──タイラー・ジョゼフ
タイラーとジョシュだけに戻ったステージでは『ヴェッセル』収録曲「トゥリーズ」が披露され、タイラーの掛け声で観客全員が一斉に一気にジャンプ。大量の紙吹雪が舞い散る中、二人はステージの下に降り、それぞれが観客に支えられた台の上に乗って、向き合ってドラム合戦をするなど、圧巻の、熱狂のラストでLA公演の幕を閉じた。
トゥエンティ・ワン・パイロッツのショウの一体感は格別だ。彼らが観客を煽らなくても、その一体感が自然発生していた。タイラーが歌を止めれば、観客がそれを引き継ぐように大合唱を始めたほか、フロアのファンはタイラーとジョシュが上に乗る板を体を張って支えたり、メロウな曲では無数の携帯のライトが場内を彩るなど、バンドとオーディエンスが一緒になってショウを進行していく。また、フロアのピット内にグッタリした状態の人がいることに気づいたタイラーは直ちに演奏を止め、その人が安全にフロアのピットから外に出るまで待つ場面も何度かあった。こうした気配りと様々な演出のおかげで、巨大アリーナでのショウにもかかわらず、ライブハウスのような親密さと濃さが場内に生まれていた。
このライブの最後にタイラーは、「僕達は、トゥエンティー・ワン・パイロッツ。そして、君達もだ。また次回会おう!」と叫び、ジョシュと肩を組んで深々とお辞儀をした。現代を代表するライブバンドである二人が提供してくれるのは、最高にエキサイティングで楽しくて刺激的であると同時に、とても温かい空間だ。だからこそ冒頭に記した多様なファン層が、トゥエンティ・ワン・パイロッツを本気で支持し続けているのだと思う。
取材・文◎鈴木美穂
■アルバム 『スケイルド・アンド・アイシー / Scaled And Icy』
WPCR-18423 ¥2,200 (税込)
01. Good Day / グッド・デイ
02. Choker / チョーカー
03. Shy Away / シャイ・アウェイ
04. The Outside / ジ・アウトサイド
05. Saturday / サタデイ
06. Never Take It / ネヴァー・テイク・イット
07. Mulberry Street / マルベリー・ストリート
08. Formidable / フォーミダブル
09. Bounce Man / バウンス・マン
10. No Chances / ノー・チャンセズ
11. Redecorate / リデコレート
▼ダウンロード / ストリーミングURL
https://twentyonepilotsJP.lnk.to/ScaledandIcyPu
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