【プロミュージシャンのスペシャル楽器が見たい】NEMOPHILA 葉月、見た目も重視して選んだアイバニーズの7弦ギター
テクニカルでトリッキー、ヘヴィメタルらしいプレイスタイルが持ち味のギタリスト葉月は、多くのプロジェクトや他アーティストのサポートをこなしながら、NEMOPHILAではSAKIとともにツインギターの一翼を担っている。そんな葉月が使うのは、やはりヘヴィメタルらしいイメージの強いアイバニーズの7弦ギターだ。ルックスも気に入っているというメインとサブの2本のギター、そしてアンプやエフェクターについて、葉月に語ってもらった。
――葉月さんの現在のメインギターは?
葉月:アイバニーズのj.customシリーズRG8527Zです。普通に市販されているモデルで、今年の5月くらいからメインのギターとして使っています。j.customシリーズは、前に6弦のモデルを持っていたんですが、手放してしまってすごく後悔していたんです。このシリーズはすごく好きだったし、その6弦のモデルも良いギターだなと思っていたので。
――気に入っていたのはどんなところですか?
葉月:とくに尖った音が出るというようなギターではなく、どちらかといえばフラットなタイプで、色々なジャンルに合う音が出せるギターなんです。どんな曲を弾いても音の抜けが良かったし、ネックも私にすごく合っていました。普通より平べったいタイプのネックが私の手には馴染んでいて、そのグリップ感も好きだったんです。
――そのj.customシリーズの中で、このモデルを選んだ決め手は?
葉月:大きかったのは、Edge-Zeroというトレモロブリッジがついていることですね。ゼロ・ポイント・システムといって、アームダウンのときに伸びるスプリングのほかに、アップに対応するスプリングもあって、両方でバランスを取っているのでチューニングがとても安定しているんです。それと、とくに魅力だったのがスプリングのテンションを簡単に調整できることです。普通はドライバーでネジを回してテンションを調整するんですけど、これは指で回せるノブがついているので、手軽に調整できるんです。あとは先ほども言ったネックですね。アイバニーズらしく平べったいネックで、弦を移動するような速いフレーズもスムーズにできますし、チョーキングも親指に無駄に力を入れずにできるので楽ですね。
――アームを使う頻度は高いですよね。
葉月:はい。よく使います。アップもダウンもやります。ただ、アームのセッティングについてはまだ模索中という感じですね。今は、アームアップするときにもっと音が伸びるようにしたい、と思って色々と試しています。
――このギター、ルックスも印象的ですね。
葉月:指板に入っているツリーのインレイとか、トップに貼られているフレイム・メイプルのブルーの塗装とか、見た目的にもとてもかわいいのが気に入っています。青は好きな色なので、これを持っているとステージでも気持ちが上がりますね。
――ボディはマホガニーなんですね。
葉月:そうです。マホガニーのギターは好きなんです。詰まった感じで重く聴こえる音だと思います。前に使っていたギターはトゲトゲしいというか、どちらかというとエッジの効いた音で、ローもすごくよく出るギターだったんです。でもこのギターはハイがよく抜けますね。出すぎかもと思うくらいハイが出ます(笑)。だから普通にリフを弾いていても、6弦や7弦といった低音弦の音もよく抜けてくれます。
――ピックアップは?
葉月:7弦仕様のディマジオPAFです。以前使っていた6弦のj.customにはディマジオのTONE ZONEが載っていて、クラシックな雰囲気の音だったんですが、それに比べるとトレブリーでハイ抜けが良い音です。歪み方は、それほどエッジがあるようなタイプではなくて、わりとフラット。だから使いやすいです。ピックアップのセレクターは5ポジションで、色々な組み合わせができるようになっているんですけど、使うのはほとんどリアかフロント。リフやソロを弾くのはリアで、スウィープやアルペジオではフロントも使う、という感じですね。センターは、ほかのプロジェクトでは使うこともありますが、NEMOPHILAの曲では使っていないです。
――このギターで出したいのはどんな音ですか?
葉月:アイバニーズのギターを使っている人で有名なのはスティーヴ・ヴァイですよね。ヴァイの音はけっこう好きな音なので、ああいう音を出したいなと思って研究したりしています。ヴァイも同じj.customを使っていたので、もっと似たような音にできるとは思うんですが、ピックアップも違うのでなかなか難しいです。まだ色々と研究中ですね(笑)。
――このギターを使うようになって、なにか変わったことはありますか?
葉月:以前と大きく違うのは、弾くのが楽になったことですね。このギターはレギュラースケールなんですけど、その前まではエクストラロングとか、長いスケールのギターを使っていたんです。このレギュラースケールのギターに変えたら、もちろん最初は違和感があったんですが、すぐに手に馴染むようになって、今はこのほうが弾きやすいんです。もともと、自分にはレギュラーのほうが合っていたのかな、と思いました。前より少し弦高も下げたので、速弾きも楽にできるようになりました。
――長いスケールのギターを使っていたのはどうして?
葉月:試奏するときにどれが手になじむか色々試していたら、たまたま弾きやすいなと思ったギターがエクストラロングだったんです。そのスケール感に近いものをアイバニーズで探して、ロングスケールのものを見つけたんです。それが以前使っていたモデルです。でもやっぱり今になって考えると、レギュラーのほうが合っていたんだなと(笑)。それと、ロングスケールのギターだと、どうしても親指を大きく開いて弾くことになるんですが、それで左手の親指が腱鞘炎になってしまったことがあるんです。私の親指はもともと二重関節で、逆にもすごく曲がるし、ときどき関節が外れたりすることもあるんです。ロングスケールを使うのは指には悪かったのかもしれませんね。
――今、指の具合は?
葉月:腱鞘炎は治っていますけど、今もギターを弾いているとたまに関節が外れたりしますね。もうすっかり慣れちゃっています。先日のライブでも一瞬外れたけど、すぐに戻りました(笑)。
――ではサブのギターを。こちらはつや消しのブラックがカッコいいモデルですね。
葉月:マホガニーのボディで、トップにリッチライトが貼ってあります。このマット塗装、かわいいですよね。このトップのラインや輪郭はRGDシリーズの特徴なんですが、ここもすごくカッコいいと思って惹かれたところです。ギターは見た目も大事ですよね。見た目が気に入らないとテンションが上がらないですから。このギターは今はサブで、チューニングが違う曲をやるときに使っています。もともと、ダウンチューニングで弾くように作られたギターなんです。
――メインのギターとの大きな違いは?
葉月:同じマホガニーですが、こっちはすごく重いんです。レスポール並みに重いですね。でもそのぶん音も重くて、いわゆるヘヴィメタル向きの音がします。ピックアップはディマジオのFusion Edgeで、ハイの抜けは良いほうなんですけど、メインのj.customに比べれば少し控えめです。どちらかというと低音のエッジが立つ感じで、ゴリゴリ刻むのに向いているギターですね。それでいて24フレットまであってハイポジションのソロも弾きやすい。だからオールマイティに使えるギターだと思います。
――コントロールはシンプルな構成ですね。
葉月:3ポジションのピックアップセレクターとマスターボリュームだけです。メインのj.customでもそうなんですが、私はトーンをまったくいじらないんです。だからボリュームだけでまったく問題ないですね。ピックアップについても、このギターでも使うのはほとんどフロントかリアです。スウィープをするときはだいたいフロントですが、それ以外についてはどちらを使うか、あまり決めていないです。
――葉月さんのようなテクニカルなメタル系ギタリスト向き、というイメージのギターですね。
葉月:アイバニーズって、テクニカルなギタリストがよく使っているイメージがあるし、このギターも、メタル向きのスタンダードなギターという感じですね。でもホントは、私はフライングVを使いたいと思っていたんです。私はアーチ・エネミーが好きで、ギタリストのマイケル・アモットを尊敬しているんです。あと、アレキシ・ライホも好きで、彼もVを使っていますよね。彼らに憧れてVを持ってみたことがあるんですが、やはりヘッド落ちするので、どう持っていいのかよくわからなくて(笑)。結局一度もVを使ったことはないですね。
――音作りについては誰かに影響を受けましたか?
葉月:好きな音は色々と変わってきていますね。以前はアーチ・エネミーとかのヘヴィメタルをすごくよく聴いていて、ああいう音を出したいと思っていた時期もありました。最近ではニューメタルとかジェントとか。そういう音もいいなと思っています。でも、自分が作る音についてはあまり変わっていないですね。好きな音があっても、自分がやる曲にそれが合うとは限らないですから。
――現在はメインもサブも7弦ギターですが、そもそも7弦ギターを使い始めたきっかけは?
葉月:使い始めたのはNEMOPHILAを始めたとき。だから2年前です。ラウドな曲をやろうと思うと、やはり低音というイメージがありますよね、低音のリフで“ズクズク……”っていう。だから低音の音域を広げたいということもあったし、ボーカルのmayuちゃんのシャウトに合わせてリフを刻むとなると、高い音で弾いていると浮いちゃうところがあるんです。なので、ロー感のある7弦のほうが曲に合うだろうと。
――7弦ギターにはすぐに慣れましたか?
葉月:最初はけっこう戸惑ったような気もしますね。一番苦労したのはミュートです。抱え込むようにするミュートはそんなに難しくなかったんですけど、握りこんで、左手の親指を回り込ませるミュートはすごく難しくて、かなり苦戦しました。でも今は逆に6弦のギターのほうがうまく弾けないかも(笑)。ポジションの感覚がもう7弦に慣れてしまったので、6弦ギターを弾いていると、あ、弦が足りない、って(笑)。
――アンプはどんなものを使っているんですか?
葉月:アンプはKemperです。あるアーティストさんのサポートライブでツアーをまわることになったときに導入しました。色々なところへ行くので、場所によって音が変わってしまうのを避けたかったので選びました。最初はアナログのアンプにしようと思っていたんですが、Kemperなら環境が変わっても色々と対応できそうだったので。
――Kemperではどういう音作りを?
葉月:バッキングやソロでは、いつもBognerのHELIOSのモデリングを使っています。いわゆる改造マーシャル系の音ですね。やはりマーシャルの音は好きですから。j.customはローとかミッドがそんなに強くない感じなので、EQで補正しています。ローを出すというよりは、ハイを削る感じですね。そのほかはクリーンな音に空間系のエフェクトを足すとか。結局、比較的シンプルな音作りばかりしているので、今後はチューブアンプのヘッドだけ、みたいなシンプルな構成にすることも考えています。
――なにか狙っているチューブアンプがあるんですか?
葉月:FRIEDMANですね。これもHELIOSと同じ改造マーシャル系です。NEMOPHILAといえばやはりリフが命なので、ローが出すぎるとつぶれちゃうし、ハイ抜けしすぎするとキンキンしてうるさいかなと思うので、シンプルな構成でミドル感を重視した音を作れるといいなと思っています。
――アンプがKemperだと、エフェクターはあまり使わない?
葉月:そうですね。アンプだけでほとんど音を作れますから、エフェクターボードの中身はシンプルです。というか、エフェクターはできるだけシンプルにしたいと思っています。
――音に関わるものはDROPとワウペダルくらい。ホントにシンプルですね。
葉月:そうですね。DROPは、ワーミーペダルのピッチを下げる機能だけを取り出したようなエフェクターです。NEMOPHILAだと、たとえば「OIRAN」という曲は半音下げるダウンチューニングなので、これでピッチを半音落として弾いています。ワウペダルは、MORLEYの光学式です。踏み込むとオンになって、足を離すとオフになるところが便利ですね。これはとくにソロで使います。ちゃっきー(SAKI)さんはワウペダルの踏み加減を調節してトーンを作るようなこともしていますが、私は動かして使っています。
――エフェクターの中でこだわっているところは?
葉月:こだわって使っているものとしては、MIDIフットコントローラーのローランドのGFC-50ですね。アンプとMIDIでつながっていて、このスイッチでアンプのチャンネルを切り替えたりしています。普通のエフェクターによくある、小さくて丸いスイッチ、あれを踏むのが私はちょっと苦手なんです。とくにライブだと、安全に確実に踏める感じがしないとイヤなので、こういう、スイッチが大きくて確実に踏めるコントローラーを使っています。
――NEMOPHILAには2人のギタリストがいますが、その中でいつもどんな音作りを考えていますか?
葉月:NEMOPHILAは2人とも7弦ギターなので、輪郭がつぶれてしまわないように気を付けています。スタジオでもたまに、すごくローが回ってしまうことがあるんです。ローが出すぎるのはバンドとしても良くないので、ただ7弦でゴリゴリ弾くだけではなくて、ちゃんと芯のある音で輪郭をはっきりさせる、そういうことを考えています。以前、ちゃっきーさんといっしょに、ギターの音の帯域を測定してどんな音が出ているかを調べたことがあるんです。そのときに、私はKemperの中の色々な音も試して調整したりしました。その結果、かなりまとまりのある音になりました。自分が良いと思っている音を出すだけではなくて、2人で合わせた音を考えるのが重要なんじゃないかと思います。
――SAKIさんとはフレーズや奏法にも少し違いがあると思いますが、そのあたりについてはどう考えていますか?
葉月:一番自分と違うなと感じるのはピッキングの仕方や握り込みですね。ピッキングの強さやアングルに自分との違いを発見したりするのはとっても楽しい です。ちゃっきーさんは正統派かつメロウな、速弾きも凄いので思う存分ギターソロは弾きまくっていただきたいです!私はトリッキーなフレー ズとか弦移動するようなフレーズとか、弦を飛ばすスキッピングとかも好きなので、ちょっと変わったフレーズを入れていきたいなと思っています。
――では最後に、“ギタリスト女子”に楽器選びのアドバイスを。
葉月:私はけっこう見た目を重視するところがあって、ギターを低く構えるのがカッコいいとか、そういう見た目の部分からギターに入ったところもあるんです。だからこのメインギターのツリーのインレイみたいなかわいいところって、すごく大事なんです。気に入ったギターなら気分も上がるし、やる気も出ますから。見た目から入っても全然かまわないと思うから、どんどんかわいいギター、カッコいいギターを選んでもらいたいです。そして、女の子にも7弦にどんどん挑戦してほしいです。“7弦女子”がもっと増えたらうれしいし、そうなったらメーカーさんも、女子向けのかわいい7弦ギターをもっと作ってくれると思いますから。
▲NEMOPHILA(写真左より:葉月(Gt.)、むらたたむ(Dr.)、ハラグチサン(Ba.)、mayu (Vo)、SAKI(Gt.))
取材・文●田澤仁
ライブ・イベント情報
『REVIVE ~It’s sooooo nice to fnally meet you!!!!!~』
【開催日時】2022年1月9日(日) 17:00開場 / 18:00開演
【会場】LINE CUBE SHIBUYA (渋谷公会堂)
【チケット】 指定席5,000円(税込)
<公演概要>
※未就学児童入場不可
※お一人様4枚まで
★オフィシャル先行(ローソン先着受け)★
<受付期間> 2021年10月17日(日)19:30~10月31日(日)23:59
<販売URL> https://l-tike.com/nemophila/
※予定枚数に達し次第、販売を終了致します
※先行販売で完売した場合、一般発売はございません
※生配信も実施を予定していますが詳細は後日発表
企画/制作:MASTERWORKS/inLYNK/DISK GARAGE
公演に関するお問合せ:DISK GARAGE 050-5533-0888(平日12:00~15:00)
リリース情報
発売日:2021年12月15日(水)
「初回限定盤」 CD+DVD
価格:5,500円(税込)
品番:DDCZ-9073
「通常盤」 CD
価格:3,300円(税込)
品番:DDCZ-2285
■初回限定盤
1.REVIVE
2.DISSENSION
3.鬼灯
4.HYPNOSIS
5.GAME OVER
6.Life REVIVE Ver.
7.SORAI
8.Rollin'Rollin'
9.Change the world
10.雷霆 -RAITEI-
11.OIRAN REVIVE Ver.
[DVD全5曲LIVE映像収録予定]
1.OIRAN
2.雷霆 -RAITEI-
3.SORAI
4.Life
5.DISSENSION
■通常盤
1.REVIVE
2.DISSENSION
3.鬼灯
4.HYPNOSIS
5.GAME OVER
6.Life REVIVE Ver.
7.SORAI
8.Rollin'Rollin'
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10.雷霆 -RAITEI-
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