【インタビュー】近石涼、変幻自在さに土台あり。「いろんなことがつながって今この場所に立てています」
■いろんな引き出しを見せて
■“こういう曲を歌う人だ”という僕のイメージをぶち壊す
──「兄弟 Ⅱ」は80'sの匂いのするシンセがふんだんに使われたバンドサウンド。展開が多くて、プロデューサーさんも“障害物競走みたいなアレンジにした”とツイートしていました。
近石:この曲は僕がある程度打ち込みとエレキギター、ピアノで作ったデモをお渡しして、僕のやりたいことや、歌いたい歌詞にすごくマッチしたアレンジになって返ってきました。僕としては2番のBメロにジャズっぽいピアノやストリングスを入れたかったんですけど、アレンジャーさんとの折衷案でそれらを2番のAメロに詰め込むことにしましたね。頂いたアレンジに対して“もっとこうしたら面白くないですか?”と提案して、意見交換をしていくなかでどんどんブラッシュアップされていきました。ここまで展開の多いサウンドになったのは予想外でしたけど(笑)、アレンジを組んでいくなかで“どんどん《誰かの中にある自分のイメージを涙と笑顔でぶち壊せ!》という歌詞の意図に合ったサウンドになっていってるな”と感じましたね。こんなにがつがつ来てるのに、1番のサビでテンションが落ちるって!(笑)。でもその感じがすごくしっくりきたんです。
──もともと「兄弟」という曲があって、「兄弟 Ⅱ」はその続編だそうですね。
近石:もともと続編にするつもりはなかったんです。でももともと親友のことを“兄弟”と呼ぶ精神が気に入っているので、歌詞の冒頭にこの言葉が入っちゃって。“この曲も「兄弟」にするしかないな……”と悩んでいた時に出てきた打開策が“Ⅱ”をくっつけることだったんです(笑)。結果論ではあるけれど“遠く離れても忘れないよ”という思いを込めた「兄弟」と、“離れてからしばらく経ったけど、あれから調子はどうだい?”と問いかける「兄弟 Ⅱ」と、時系列があってつながってるなと思ってますね。
──兄弟に問い掛けつつも、ご自身に言い聞かせている側面もあるような。
近石:そうですねー……。離れてからまったく会っていないけど、今の時代はSNSでなんとなく状況がわかりますよね。そういうのを見ると“俺はこいつみたいに頑張れてるのかな”と思ったりもするし、僕のSNSを見た友達から“近石最近頑張ってるみたいやな。元気もらうわ”と言ってもらうこともあって。そういうなかで感じたことをめちゃくちゃ詰め込んだ曲ですね。聴くたびに“いろんな人に助けてもらってるな”と感じます。
──その時その時の大切なものを残すことが、近石さんの音楽制作なのかもしれないなと、お話を聞いていて思いました。
近石:自分のなかから沸き上がってくるものを歌うために音楽活動を始めたので、そういう歌が歌いたいんですよね。「ライブハウスブレイバー」は、僕のお客さんが友達がひとりだった時に書いたもので。その友達はライヴハウスにあんまり来たことなくて、ひとりでとても居づらそうだったんですよね。それから少しずつ関わってくれる人が増えていって、いろんな人の力を借りて音楽を届けられる環境はすごく幸せで。レコーディングも別々の部屋ではあるけど“せーの”でレコーディングして、その時の衝撃がすごくて。半分泣きながらのレコーディングでした。コロナ禍でライヴをする人たちのことを歌った曲ではないんですけど、今歌う意味がすごくあるとも思ってます。
──このインタビューは9月上旬に行っていますが、現在は11月リリース予定のアルバムの制作中だそうですね。どんな作品を目指して制作してらっしゃいますか?
近石:『Chameleon』というタイトルのとおり、いろんな僕の引き出しが開いた1枚になると思います。「ライブハウスブレイバー」、「兄弟 Ⅱ」、「ハンドクラフトラジオ」の3曲の段階で、いろんな人から“こんな面も持ってんねや”とか、“3曲全部違う人みたい”、“こういう歌も歌うんですね”と言ってもらうんです。でも僕はもっと優しい曲も、もっとコードが難解な曲も歌ってきたし。……なんとなくですけど、“この人はこういう曲を歌う人だ”といったイメージがあると思うんですよね。「兄弟 Ⅱ」で歌っているように、僕のイメージをぶち壊すアルバムになっていると思います。
──近石さんの多岐に渡る音楽遍歴が炸裂した1枚ということでしょうか。
近石:僕のなかにはバンドに憧れて培ったものと、アカペラの世界で培ったものがあって。アカペラが好きでないと絶対に出会わないようなスウェーデンのアカペラグループも聴くと泣いてしまうくらい大好きだし、ギターを始める前はEXILEと湘南乃風をよく聴いていた。そういう人間でないと作れない音楽があると思うんです。そういうルーツをガッと詰め込んで、変幻自在な存在になれたらなという思いを込めて作っているところですね。このアルバムをきっかけに、なにかしら広がってくれたらなって。勝負の1枚だと思っています。
──完成を楽しみにしています。16歳でステージに立った近石さんが、26歳になってすぐにワンマンをホームのライヴハウス・神戸VARIT.で行うというのも、素敵な節目だと思います。
近石:ああ、そうですね。長い間神戸で活動してきたんですけど、ひとりで活動している人間がワンマンを打つとなると、気が引けてしまってなかなか踏み出せなかったんです。でもそれが結果的にすごくいいタイミングで行えるなと思っていますね。ずっと神戸で活動してきて成長した姿を見せられたら、神戸に恩返しができたらなと強く思っています。
取材・文◎沖さやこ
リリース情報
2021年10月6日(水)発売
Digital Single「兄弟 II」
2021年9月8日(水)発売
Digital Single「ライブハウスブレイバー」
2021年8月4日(水)発売
初ワンマンライブ開催決定
2022年1月22日(土)神戸VARIT.
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