【ライブレポート】悠介(lynch.) × 松本明人(真空ホロウ)による新ユニット健康、<健診 chapter #0>で「今回は健康サンプル」
8月に始動が発表された悠介(lynch.)と松本明人(真空ホロウ)の新ユニット、健康。その多くが謎に包まれているユニットのお披露目といえる配信ライブ<1st Live Streaming『健診 chapter #0』>が、9月19日に開催された。
◆健康 画像 / 動画
それぞれ十分なキャリアを持つふたりとはいえ、発表されているのは健康という想像をかきたてるユニット名と揃いの白衣に身を包んだアーティスト写真。肝心の音楽は約2分のティーザーのみ、という状況でのライブはかなり挑戦的だ。さらに、音源はCD付チケットを購入した人に、あとから発送されるだけだという。情報速度が速まり続ける今、ほとんど手がかりのないままにライブを観せるということ自体が、健康が提示するひとつのエンタメなのかもしれない。
18:00ジャストに始まった配信は、上映開始のブザーを思わせる音からカウントダウンがスタート。1曲目「健康」のイントロとともに映し出されたのは、大きなビジョンを背景に、たくさんの機材に囲まれて立つ松本明人と悠介の姿だった。アーティスト写真と同じ白衣を纏い、ヘッドホンを着けたふたりが薄暗い空間にいると、なんだか怪しげな実験施設のようにも見える。
パッドを叩くスティックを指揮棒のように構え、艶やかな歌声を聞かせる松本。そして、インダストリアルなサウンドの中、時にノイジーに、時に澄んだギターの音で彩る悠介。打ち込みの音をベースに、あくまでふたりだけで音とメロディを重ねていく。作り込まれた重層的な音像が空間を満たしていた。
2曲目の「理由」では、イントロから悠介が鍵盤を弾き、松本はベースを担当。ギターやボーカルというパートにこだわらず、曲によってさまざまな楽器を操るのが健康のスタイルのようだ。アップテンポなリズムに身を委ねていると、楽曲はワンコーラスで終了してしまった。のちに明かされることになるが、今できている状態の楽曲を、これからの変化を前提として披露したとのこと。どう進化していくか、その可能性をふたり自身も楽しみにしていることが伝わってくる。どこまでも自由で、実験的なユニットだ。
続く「水槽」は、“♪僕らはまるで水槽のクラゲ”という歌詞のとおり浮遊感溢れるメロディとザラついたギターのアルペジオが印象的な1曲。神経がざわざわするようなスリリングさがあり、こちらもワンコーラスで終わってしまうのが非常にもどかしい。まんまとふたりの意図に弄ばれている気分になる。
「初めて聴いてもらってるわけじゃないですか。で、僕らも初めてやってるわけじゃないですか。どう? 楽しい?」とMCで松本が問いかけると、「楽しいよ」と返す悠介。そこから「お元気ですか」とつぶやく悠介に「(井上)陽水さん(笑)?」と松本がツッコむなど、緊迫感のある楽曲とは裏腹に、ゆるい会話が繰り広げられた。ふたりの間に流れる穏やかな空気が、相性の良さを物語っている。このギャップも、今後、健康の魅力のひとつになっていくに違いない。
松本のファルセットコーラスから始まったのは、悠介が写真展用に書いたインスト曲を元に生まれた「除獣」。万華鏡のようにサイケデリックな映像とともに、抑圧の苦しみを松本が切なく歌い上げる。オートチューンのかかったボーカルでまた一風変わった世界観を描く「運命」では、悠介がギターを置いて鍵盤のみという新鮮なアプローチ。一方で、悠介が奏でるピアノのイントロが柔らかな情景を描く「月光」は、松本が楽器を置いてマイクを握り、繊細な歌声を響かせる壮大なバラードだ。1本の映画がモチーフになっているという健康のコンセプトの中で、これだけ多彩なテイストと表現を取り入れた楽曲が生まれているのがおもしろい。
6曲披露したところで、「今回は、サンプルみたいなものですから。“健康サンプル”」と悠介。ふたりの笑顔から、まだまだ未完成形だという緊張感と、無事スタートを切った達成感が伝わってくる。
「最後の曲です」と披露された「未来」は、4つ打ちのビートに合わせて悠介がギターをかき鳴らし、松本がハンドマイクで歌声を乗せていくポジティブな楽曲。まさに健康の未来と無限の可能性を示すように、晴れやかなメロディが響き渡った。「終わり!」という松本の言葉を残してふたりは退場。超濃密ながら、あっという間の初ライブが終了した。
名残惜しく見ていると、エンドロールが終わったところで映像が巻き戻しになり、再び健康ロゴが映し出された画面の前には、座って映像を見上げる松本と悠介の姿が。実は、ライブとアフタートークの二部構成だったのだ。最後までサプライズを仕込むふたりに脱帽である。
ライブ中のMCよりもさらにゆるいムードのアフタートークでは、ふたりの出会いから健康結成のいきさつ、楽曲についてや将来のビジョンまで、さまざまな話題が飛び出した。視聴者コメントを拾いながら、ハッシュタグは“#健康KENKO”にしようと決めたり、松本がリアルタイムでTwitterを更新したり、約1時間に及んだレアなトークタイム。その話によると、ふたりきりでのライブ形式はこの配信限りになる予定とのこと。あらゆる意味で貴重な初ライブは9月26日までアーカイブとして観られるので、まだ観ていない人はぜひチェックしてみてほしい。
まさに動き出したばかりの健康。ここからどんな作品を生み出していくのか、どんな形で届けてくれるのか、期待に胸が高まる。
取材・文◎後藤寛子
■初配信ライブ<1st Live Streaming『健診 chapter #0』>2021年9月19日@元映画館 セットリスト
2. 理由
3. 水槽
4. 除獣
5. 運命
6. 月光
7. 未来
〜Talk Time〜
■初配信ライブ<1st Live Streaming『健診 chapter #0』>アーカイブ情報
アーカイブ:2021年9月26日(日)23:59まで
▼通常視聴チケット:2,300円(TAX IN)
販売期間:8月20日(金)18:00~9月25日(土)23:59
▼CD付チケット:3,500円(TAX IN) ※販売終了
内容:CD『健音#0』、オリジナルクリアファイル(A5サイズ)、ピクチャーチケット
販売期間:8月20日(金)18:00~9月10日(金)16:59
※CDは9/20以降のお届けとなります
イープラス:https://eplus.jp/kenkou0919st/
楽天チケット:http://r-t.jp/kenko_st (国内配信)/http://r-t.jp/kenko_en (国外配信)
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