【インタビュー】佐藤タイジ、開催目前の<THE SOLAR BUDOKAN>を語る「フェスという文化を守りたい。開拓者でありたい」
佐藤タイジがオーガナイザーを務めるロックフェス<THE SOLAR BUDOKAN>が9月25日(土)および26日(日)、<THE SOLAR BUDOKAN 2021 ONLINE>として開催される。初日25日(土)は事前収録と生による配信のみ。2日目26日(日)はZepp Hanedaでの人数制限による有観客ライブに加え、事前収録と生配信のハイブリッドで実施される。当初は富士急ハイランド・コニファーフォレストでの有観客開催が予定されていた同フェスだが、オンラインフェスへの移行がアナウンスされたのが開催約2週間前のこと。決して中止にはしないという心意気がフェス実現へと導いた。
◆佐藤タイジ 画像
2020年は無観客生配信および事前収録配信を融合したハイブリッド型オンラインフェス<THE SOLAR BUDOKAN 2020>として、4DAYSにわたり開催。生配信と事前収録配信、野外と屋内を巧みに織り交ぜた映像美は、コロナ禍の憂鬱を吹き飛ばし、未来への揺るぎない意志を新たな方法論で提示することに成功した。そして今年、例年の中津川公園がワクチン接種会場として使用されるため、前述したように富士急ハイランド・コニファーフォレストへ場所を移して開催される予定だった。結果、オンラインフェスへの移行は、緊急事態宣言の延長をはじめ、フェスを取り巻くネガティヴな空気、シアターブルックのエマーソン北村のコロナ感染など、様々なファクターが重なり合ったことによるものだという。そして不可能とも思えたオンライン開催への急激な方向転換を実現させたのは、昨年の成功体験が大きい。「今年できたこと/できなかったことが未来の指標になる」とは、昨年の佐藤タイジインタビューでの発言だが、まさにそれが具現化された形だ。
BARKSでは今年も佐藤タイジの緊急インタビューを実施した。開催への道のり、中止にはしないという揺るぎない決意、コロナ禍の現状とフェスシーンの立ち位置、オンラインフェスのメリット、“HAPPINESS”というテーマの真意、そして<THE SOLAR BUDOKAN 2021 ONLINE>への予感について、じっくりと訊いたロングインタビューをお届けしたい。太陽光発電のエネルギーを活用した<THE SOLAR BUDOKAN>は2012年の初開催から10回目のアニバーサリーを迎える。今年も灼熱の太陽のような純度の高いパフォーマンスが2日間にわたって繰り広げられるはずだ。
◆ ◆ ◆
■スタッフ全員の共通認識として
■必ず開催するというものがあった
──まず最初に、<THE SOLAR BUDOKAN 2021>開催発表から現在までの道のりについてお訊きしたいと思います。昨年は有観客事前収録、無観客生配信、無観客事前収録のハイブリッド型オンラインフェスとして4DAYSにわたって実施されました。そして今年、例年の会場である中津川公園がワクチン接種会場として使用されるということで、富士急ハイランド・コニファーフォレストに場所を移しての開催が発表されたのが、7月30日のことでした。
佐藤:今年の早い段階から“中津川公園がワクチン接種会場になる”という情報は入っていて、「会場を変えないとね」という話はしていたんです。たしか、富士急ハイランド・コニファーフォレストでやれそうだということになったのが今年6月中旬くらいだったかな。下見に行ったのが7月前半だったと思う。実際に会場を見てみたらイメージが膨らんでね。例年とは違う場所だけど、中止するより場所を変えてでも実施するほうがいいと思っていたので、スタッフと相談しながら「ここで開催しましょう」ということになったんです。
▲佐藤タイジ(シアターブルック) in <THE SOLAR BUDOKAN 2020>9.26@中津川公園
──実際、6月頃は富士急ハイランド・コニファーフォレストで実施された野外フェスが成功してましたし。
佐藤:そうですよね。僕らもステージをどうするとか、エントランスやデコレーションをどうするとか、開催へ向けてのいろいろな下準備を進めていたんです。緊急事態宣言は出てましたけど夏時点で解除されるだろうという予測情報もあった。ところが、段々と雲行きが怪しくなって、逆にまた感染者数が増えていって。
──変異株の拡大による緊急事態宣言の延長など、8月以降、いろいろな判断が難しくなりました。
佐藤:今思えば、“有観客でやれること”と“無観客でやれること”の2Wayの議論を最初から同時進行しておくべきだったんです。たぶん大丈夫だろうというところで有観客のことしか考えていなかったんですね。
──とはいえ、自治体や地域住民の賛同を得られる有観客会場を確保しつつ、初めての会場だからこそゼロから作り上げなければならない部分も多かったでしょうし。なにより8月後半からの感染者数増大は急激なものでしたから。あらかじめ2Wayで考えることは、なかなか難しい状況だったはずですよね。
佐藤:それでもあらゆる状況に対応するべく、やっぱり2Wayで考えておくことが必要だったんです。結果的に、9月頭から無観客配信にシフトして準備を始めたんですけど、もっと早い段階から出来たことですから。これは今後に向けての反省材料として、すでにあります。もちろん開催まで1ヵ月を切ったところで、有観客から無観客配信への切り替えを整えた<THE SOLAR BUDOKAN>スタッフのスピード感や確実な動きは、あっぱれとしか言いようがないです。
──9月10日に無観客配信フェスとして実施する旨のオフィシャル発表があって、4日後の14日には無観客配信に加えてZepp Hanedaでの有観客および配信実施という形を提示したという対応はあまりにも迅速でした。
佐藤:まずスタッフ全員の共通認識として、中止にはしない、いかなる形であっても必ず開催するというものがあったんです。その共通認識を強く持てていたことが、このスピード感につながっていると思います。
──さまざまなフェスが中止を余儀なくされている現在、中止にしないという思いが揺らぐこともあったかと思うのですが。
佐藤:いや。今、ミュージシャンが演奏する機会って、明らかにこれまでの半分以下でしょ。演奏する機会を俺が減らしてしまうようなことだけは絶対にイヤだと思ってたんです。それが配信だろうと何だろうと。おっしゃるとおり、今、ものすごい勢いで、フェスやイベントが中止になっているじゃないですか。俺自身、テレビとかはあまり見ないんですけど、ここ最近の野外フェスに対する攻撃ぶりはなんとなく感じていて。
──安心安全な開催へ向けて感染防止対策が徹底されているイベントと、そうでないものが同列で語られてしまう論調もあります。
佐藤:野外フェスのすべてを感染源認定して攻撃するというのは、完全にお門違いで。ストレスのあまり、何かを攻撃しないといられないみたいな気持ちは理解できるんです。だけど、それによって明らかに影響を被る業界が実際にあるわけで。それがだいたい音楽なんですよね。なぜ音楽の現場がやり玉にあげられるのか。音楽業界はこの国の経済の中ではとても弱い立場なんだということや、自分たちを守る術をまだ持てていないんだということを痛感しました。
──中止にはしないという決意が気付かせてくれてものもありますか?
佐藤:あらかじめ無観客配信を選択肢に入れた場合の事前準備っていうものがあるんです。というのも、配信になるとDJやカバーに権利関係のリミッターがかかるんですね。例えば文化庁やJASRACほか著作権管理団体と交渉をして、このフェスだけはOKという取り決めをすることはできる。それをやっている諸先輩方も実際にいますからね。配信ライブという方法は今後も絶対なくならなし、配信というテクノロジーはありだと思っているので。
──配信だからこそのメリットも可能性も確実にありますし。
佐藤:そう。音楽が好きだけど、すごく遠くに住んでいるから距離や時間的な問題でライブ会場に行けない方や、療養中で身体を動かすことができない方にも観てもらえる。それは、ものすごく大切で大事なことやと思うんです。配信という技術があってはじめて届けられるものってあるんですよね。俺らは、カバー曲であれDJであれ、ミュージシャンが何のリミッターもかけずに自由にプレイができる環境を作らなあかん。<THE SOLAR BUDOKAN>というテリトリーだけは、自由に音楽を共有できるスペースとしてネット上に確保したいんです。今年の俺の反省点として、これがすでに暗躍しつつある(笑)。
──配信によるフェス開催にあたって、タイジさん自身が発表したメッセージの中で、“私たちはオーディエンスひっくるめ今、開拓者なのです”という言い方をされていたことがとても印象的でした。
佐藤:配信疲れとか飽和状態とか、配信に対するネガティヴなワードが出回っていますけど、まだネガティヴになる段階ではないですからね。配信はまだ全然始まったばかり。何を言ってんのやと思うわけです。そこに理解のあるお役所の方々もいるんですよ。音楽で人を癒したり、鼓舞したり、勇気を与えたり、ひいては日本経済を上げるためにやっているんだということを共有したい。だから今、みんなが開拓者なんです。
──分断が生まれがちなコロナ禍に、共有というのは素晴らしいキーワードで。音楽だからできることかもしれません。
佐藤:<THE SOLAR BUDOKAN>は自分にとってライフワークなので、全部をみんなと共有したいんです。主催者に失敗があれば、それを教訓として共有して、次に結びつければいい。いわゆる異常事態下では何が起きるかわからないので、荒れる可能性も常にテーブルの上に乗っけて、みんなと議論しないといけない。そこに壁があれば、風穴を開けられる人を探すんです。
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