【インタビュー】POETASTER、困難を超えてまばゆい力を贈るロックAL『The Gift of Sound e.p.』

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次々と襲いかかる困難をはねのけ、音楽という武器を増やし、仲間と共に経験値を上げながら栄光のゴールを目指す。筋書きのないRPGのようなロックバンド・ライフを地でいくバンド、それがPOETASTER(ポエテイスター)。kobore、Dear Chambers、the paddlesなどを擁する気鋭のレーベル・Paddy fieldからの2作目となる新作『The Gift of Sound e.p.』は、これまで以上にストレートにリスナーの心に訴えかける、ポジティブなメッセージ性溢れるロックアルバムに仕上がった。

東京・八王子で結成されてから8年、昨年のメンバー脱退を経て二人組になったPOETASTERだが、サポートを加えたバンドサウンドは吹っ切れたようにパワーアップし、キャッチーなメロディの魅力も明らかに増した。今バンドに何が起きているのか、これからどこへ向かうのか、ボーカル&ギターの高橋大樹(ひろき)に話を訊いた。

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■聴いてくれる人に向けて、
■もっとストレートに突き刺すような歌詞や曲を


──振り返ると、2020年にPaddy fieldに加わったのは、バンドにとって大きなターニングポイントだったんじゃないかと思います。

高橋大樹:そうですね。今元気でバンドをやれているのは、Paddy fieldのおかげ感はあります。もともと八王子MatchVox/RIPS店長の奥さん、TSUTAYA O-Crest店長の室さん、Paddy fieldとは、何かあると連絡しちゃうくらい仲が良くて、今後のことを相談するのはいつもこの人たちだったんですよ。で、koboreのツアーに出させてもらった時に「先々のことを迷ってるんですよね」という話をPaddy fieldにしたら、「いつでも力を貸すから」と言ってくれて、そこからですね。その当時のレーベルの社長にも話せないようなことも、何でも話してましたし、入った後もかなり自由にやらせてくれて、助かりましたね。

──その、「先々のことを迷っている」というのは、どんな状態だったんですか。

高橋:僕はライブで汗をかきたい派なんですけど、当時のレーベルの社長は「もっとクールに」という内容のことを言う方で、意図することはわかるんですけど、僕はもともとメロコアバンドをやっていたので、戸惑いもあったし、心が不健康というか「これで人気が出てもつらくなるんじゃないか」と思っていて。ちょうどその頃にメンバーが一人、急に抜けちゃって、そのタイミングでPaddy fieldに出会ったんですよ。その前に出会ってはいたんですけど、そこでさらに連絡を取り合うようになったという感じです。

──いいタイミングでいい人に出会えている。そういう経験を経て、「経験値上がってきたぞ」という自覚はありますか。

高橋:そうですね。無駄な経験もあったと思いますけど(笑)。ここまで泥水すすってるバンドはいるんかな? と思うんですけど、メンバー脱退も、アルバムを出せなくなったことも2回あったし、そのおかげというか、ちょっとのことでは倒れなくなっているとは思います。だから今回、自分たちもコロナにかかっちゃって(※8月にボーカル高橋が、続いてドラムのFuma-Zが新型コロナ陽性)、ライブをキャンセルしているのが悔しいです。今までだったらなんとかしてライブをやろうとしたと思うんですけど、こういう状況なので、しょうがないなという感じですけど。

──Paddy fieldからの第一弾、前作の『Imagination World』は、今思うと、どんな作品だったと思います?

高橋:あれを作る前に、Paddy fieldに相談してみたんですよ、「どういう作品にしたらいいと思いますか?」って。前の事務所にいた時には、「こういう曲を作って、こういうアルバムにして」という話し合いがけっこうあったので、「どういうのがいいですかね?」って聞いたら、「何でもいいから好きにやっちゃって」と言われて、そんなこと言われたことないからびっくりしたけど、じゃあ好きにやらせてもらおうと思って、その時やりたかったことをやった感じです。『Imagination World』の曲を作っていたのが、1stフルアルバム『romance』(2019年)のツアー中で、まだコロナもなくて、初めて渋谷O-Crestをいっぱいにできて、モッシュとダイブが勝手に起きてて、僕はずっとそういうライブがやりたかったので、「最高だったな」という思いを糧に曲を作りました。だからそういう曲が多くなったし、いい意味でも悪い意味でも統一感がないというか、お気に入りではあるんですけど、それとは違うものにしようということは、今回の曲作りをしている時にずっと頭にありましたね。前作はちょっと間口が広すぎたというか、「もっと特定の誰かを指す曲もあっていいかな」と思ってましたね。「この人、自分に向けて歌ってるんだな」って思わせてあげたいから。

──ああー。なるほど。

高橋:「俺に歌ってくれてるわ」みたいな、自分が感動する時もそうなので。経験してきたことは違うだろうけど、その中で自分から聴いてくれる人に向けて、もっとストレートに突き刺すような歌詞や曲を書きたいと思って、今回は臨みましたね。

▲POETASTER/『The Gift of Sound e.p.』

──それは、全曲にはっきりと出ていると思います。「君」という二人称で歌いかけている曲が明らかに多いし、特に1曲目「GIFTSONG」はまさにそうで、これはどんなふうに作った曲ですか。

高橋:「GIFTSONG」は…僕はいつもメロディ先行で歌詞があとなんですけど、書いていてどうしてもしっくりこないと思っていた時に、友達のバンドからメンバーが抜けるという連絡が来たんですね。コロナ禍で、バンドに対しての気持ちが変わってきたという理由で、残されたほうも、やめる選択をして新しい道を選ぶほうも、どっちの気持ちもわかると思ったんですけど…でもこれまで一生懸命頑張ってきた結果を否定しちゃったら、今までの楽しかったことも、出会えて良かったと思う人のことも、全部否定することになっちゃう気がして。そうなってほしくないなという気持ちが芽生えて、歌詞を書き直したんですね。

──今の話を知って、曲を聴くと、歌詞の意味がさらに深くなると思います。

高橋:たぶん、いっぱいいたと思うんです。こういう状況になって、夢を諦めてしまったり、やりたかったことができなくなったり、ライブに来れなくなったり、そういう人たちにも届くようにという気持ちで書きましたね。今の自分が置かれている現状で、一個でも何かを否定しちゃったら、全部否定することになっちゃうなと思って、そうなりたくないなと思って書いた歌詞です。

──逆に言うと、大樹くんが、コロナ禍であろうと、メンバーが抜けようと、バンドがどんな状況になってもやめないというか、ずっと続けていられるモチベーションって、何だったりしますか。

高橋:モチベーションかぁ。何だろう?

──モチベーションか、信念か、根性か、何かはわからないけれど。バンドを続ける理由というのは?

高橋:たぶん音楽以上に、ライブ以上に、情熱を注げるものがないんですね。もともと、僕の両親は教員で、僕も教員免許を持っているんですけど、「俺はバンドを仕事にしたい」と言って、めちゃくちゃ猛反対の中でバンドをやり始めたんですよ。今となっては、音楽が自分の生活の延長線上にあるから、このまま自分の作る音楽がみんなに認められていくのが一番いいんですけど、「何でやってるんだろうな」とか、あんまり深く考えたことはないですね。「つらいな」と思ったことも、あんまりないかもしれない。逆に、これがなくなったら何したらいいんだろう?とは思います。(やめる人が)みんなどんなふうに心の整理をつけてるのか、わかんないって感じです。

──そこで揺るがない芯の強さが、高橋大樹の書く曲の強さだと思います。たとえば4曲目の「望碧(のあ)」という曲も、自分とは違う夢や、違う生活を選んだ人に対しての思いを歌った歌詞だと思うんですけど、君の選択をリスペクトしているからお互いに頑張ろう、俺は俺の夢を目指すから、みたいなメッセージになってますよね。

高橋:そうですね。

──それが、「GIFTSONG」の世界観とも、どこか通じるような気がしたんです。

高橋:その曲を作ったのは、サポートギターの(ナカヤマ)ヨシヒロさんなんですけど、曲がポンと送られてきて「これにメロディつけて」と言われて、30分でメロディをつけて、歌詞も書いて送り返したんですね。最後のシンガロングのところを付け足して、構成もいじらせてもらって。ヨシヒロさんは、高校生の頃から見に行っていたバンドのボーカルで、憧れの方なんですけど、僕なんかよりはるかにたくさんの人と、そういう別れをしてきただろうし、解散も見てきてるだろうし、ということを考えつつ歌詞を書きました。だから、「GIFTSONG」はもう少しいろんな人に当てはまるように書いたんですけど、「望碧」は具体的になりすぎちゃったかな? と思っていて。

──そこがいいんじゃないですか。

高橋:ほんとですか? ちょっと、押しつけがましさがあるかな?と思っちゃうんですけど(笑)。

◆インタビュー(2)
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