【インタビュー】the satellites「いつでも帰っておいでというのを、最後の曲で伝えたくて」
■「ツアーとか、今どきそんなにやっても意味ないっすよ」と言われて
■しこたまライヴやってやろうと思って
──先ほど、同期を入れた曲として「生活の全て」を挙げられていましたが、この曲は1曲目の「最近」という弾き語り曲と繋がりがありますよね。「最近」を元にして、「生活の全て」を作ったんですか?
白石:いや、「生活の全て」を元にして、「最近」を作りました。
──へぇー! ビルドアップさせていったんだろうなと勝手に思ってました。
白石:逆なんです。削ぎ落としたんですよ。この2曲の歌詞は対照的なんですけど、1曲目に弾き語りの曲を持っていきたいと思って書き直しました。
──そういう曲でアルバムを始めたいと思った理由というと?
白石:自分が影響を受けたものと関わってくるんですけど、BUMP OF CHICKENの『orbital period』というアルバムに、同じ曲なんだけど、アレンジを変えて収録している曲があって。最初の曲は弾き語りで、最後にその曲をバンド演奏して終わるっていう。それでアルバム全体のまとまりが出るっていう感じなんですけど、いつかあれを絶対にやりたいなと思っていたんですよ。で、フルアルバムで物語性を持たせたいと思ったときに、絶対やってやろうって。
▲『二〇二〇年十三月ヨリ』
──念願叶ってという感じですね。2曲目の「サテライト」は、それこそバンド名に合わせて、自分達のスタンスを改めて曲にしようと?
白石:そうですね。バンドでやりたいことを結構素直に書きました。
──《誰だって持っている他人事の優しさは、冷たさには該当しないと思っていいよ、優しさだ。》という歌詞、めちゃくちゃいいなと思いました。
白石:家でひとりでお酒を飲んでいるときとかに、急に難しいことを考え出したりしちゃうタイプなんですけど。すごい小っ恥ずかしいんですけど(笑)、優しさってなんだろうってめっちゃ考えてたんですよ。ずっと考えて、考えて、ふっとこれが出てきて。
──「サテライト」は、衛星という意味で、歌詞に〈周回軌道〉という言葉も出てきますが、衛星って、付かず離れずの位置にいますよね。近すぎると墜落してしまうし、離れすぎるとそのままどこか遠くへ行ってしまう。そういった良い距離感でいること、そういった優しさを持つことを大事にされているのかなと思ったんですが。
白石:昔から衛星とか星を調べたりするのが好きだったんですけど、今お話ししていたような、めちゃくちゃ良い距離に衛星を打ち上げて、ずっと廻らせるっていうのが、めちゃくちゃいいなってずっと思っているんですよ。だから、誰かにとってのそれに、自分のバンドがなれたらいいなって、すげえ思っていて。それを歌にした感じはありますね。付かず離れずの距離にずっといられるようにっていう願いを込めて。
──そういった自分達の意思だけでなく、別れや悲しみ、喪失感といったものもしっかりと表現した曲もあって。そうやって連れてきたすべての感情を、「after glow」という曲に集約させて爆発させるという、この構成が本当に見事でした。
白石:この曲が最後の最後にできましたね。
──この曲ではポエトリーリーディングをされていますが、これも絶対に入れたいものではありましたか?
白石:そうですね。そういう曲を絶対に作ろうっていうのはレイと話していて。この曲は、ここまでの全曲の歌詞を登場させて、最後のほうに〈2020年13月〉という言葉を出して、次の「2020年13月より」に行く流れにしているんですけど、レコーディング当日の朝まで歌詞ができてなかったんですよ。REC直前でようやく完成して、そのまま録ったんですけど。
レイ:オケもレコーディングの前日に出来上がったので、お互いにやばい……ってなってました(笑)。この曲も2人の力が大きくて。
西岡:最初はベースシンセとかも入れてたんですよ。歌詞がまだなかったので、こういう雰囲気かなって想定しながらやっていたんですけど、最後の最後でこれだ!っていう感じはありましたね。
佐藤:自分もポエトリーリーディングの曲は好きなので、乗り気ではありましたね。で、白石がレコーディングしているときに初めて聴きました。だから、第三者の目線で曲を聴けたところもあって。
──聴いてみていかがでした?
佐藤:めっちゃいい!と思いましたね。次の日にレイと「あの曲めっちゃよくね!?」って。
レイ:話したね(笑)。「ヤバいのできちゃったね」って。
──確かにめちゃくちゃヤバいですよね。とてつもなくエモーショナルで。
白石:良いものはできたけど、なんていうか、キツすぎるから、こういう作り方はもうしたくないなって思いました(笑)。
──(笑)。でも、今後もポエトリーリーディングは期待してますよ。そして、アルバムを締めくくるのが「2020年13月より」。この曲の歌詞もグっとくるところが多くて。特に2Aの歌詞が好きでした。音楽が唯一自分を愛すことができる方法だったけれども、《最近おかしいのは、繰り返すだけの毎日の中に楽しさややり甲斐を感じるんだ、それがどうしようもなく怖いんだ。》というくだりが、とにかく生々しくて。
白石:ここは自分でもめちゃくちゃ良い歌詞書いたなと思いました(笑)。俺、「毎日働く」とか絶対無理な人なんですよ。というか、今まではツアーばかりだったんで、そもそも毎日働けなかったんですけど。でも、緊急事態宣言が出て、ツアーが全部中止になってから、毎日フツーにバイトできちゃったんですよ。そのときに、ライヴの感覚がどんどん鈍っていっちゃってるんじゃないかなっていうのをすごく感じちゃって。そのときの心境を歌詞にしました。
──「リィンカーネーション」や「体温」もそうですが、白石さんの歌詞は、過去の出来事とか、一緒にいた存在とか、それにまつわる感情を忘れてしまうことの恐怖や、そこに対して抗うことを書いているものが多い印象もありました。
白石:ああ、そうですね。めちゃくちゃつらいことがあった直後って、バンドマンのみんなは曲が書けるって言うんですけど、俺、何も書けないんですよ。頭が真っ白になるし、それをすぐ曲にできるほど、メンタルも分厚くないし。そこから時間が経って落ち着いた後に、忘れないためにあのときの曲をそろそろ書こうと思って書き出すので、そういったものになるんだと思います。昔を思い出して、どう歩いていくのかを考えながら書くことが多いですね。
──本当に素晴らしい一枚になりましたが、ただ、この曲達をライヴでやるときにどうするのかという話なわけですよ。
白石:いやぁ、どうしようっかなぁ……って(苦笑)。「after glow」とか、ギター弾きながらあんなに歌えないですもん。最近はその心配しかしてなくて。
──でも、<ジ・アース・オブ・サテライツTOUR>と題して、9月から来年2月までかなりの本数のツアーが決定していますよね。
白石:はい。でもなんか……この前、俺が個人的にイラっとしたことなんですけど、自分よりも年下のバンドマンから、「ツアーとか、今どきそんなにやっても意味ないっすよ」って言われて。
──それは、こういうご時世だから、みたいな話で?
白石:いや、なんかよくわかんないなって話を聞きながら思ったんですけど、「サブスクとかMVで勝負したほうがいいっすよ」みたいな。このクソガキが……!と思って。そういうナメた感じのバンドマン、今めっちゃ多いんで、しこたまライヴやってやろうと思って。
──自分達は現場を大事にしたいと。
白石:もちろんです。俺の中で、ライヴハウスというものは、寄り部のない人、生き方が下手くそな人、別に嫌われようと思って嫌われているわけじゃないのに嫌われている人とか、そういう人達にとって最後の最後に受け皿になれる場所だと思っていて。ウチのお客さんってそういう人がわりと多いんですよ。コロナになって、県外に出れなくなって、なかなかthe satellitesを観れなくてつらいですっていうDMをいただいたりもするので、そういう人達に届けたいし、そういう人達が「よかった、ライヴハウスってまだちゃんと生きてる」って安心できるようなツアーにしたいと思ってます。
佐藤:僕もバンドを好きになったきっかけが、ライヴハウスでバンドを観て、かっこいいなと思ったからなので、自分がそう思ったときのようにお客さんにも思って欲しいし、何事もなく無事に最後まで廻れたらいいなと思ってます。
西岡:前回のツアーがほとんど中止になってしまって、期間が空いてしまったり、行けていなかったりする地方も多いので、その分もこの4人でちゃんと廻って、顔を合わせて、ちゃんと伝えて……なんか、温かいって言うと恥ずかしいですけど(笑)、そういうツアーにしたいですね。
レイ:僕も3人と同じですね。ライヴハウスっていう文化が大好きなので、今だからこそガッ!とやりたいです。今発表しているよりもまだちょっと本数が増えるんですけど、頑張っていきたいと思ってます。
レイ:今、機材をGoogleで検索しております(笑)。一応鳴らせる機材は持っているんですけど、いかにライヴでやりやすくできるかを考えたくて。やっぱり曲と曲の繋ぎの部分は、ライヴの醍醐味だと思うので。そこに関しては、このアルバムを出す前のthe satellitesよりも、一段階大きくなったところをこのツアーで見せたいですね。
取材・文◎山口哲生
ニューアルバム『二〇二〇年十三月ヨリ』
NE-1009 ¥2,750
1. 最近
2. サテライト
3. ムーンナイトダイバー
4. リィンカーネーション
5. 体温
6. 不眠症
7. From DEADEND
8. モラトリアム
9. 夜を越えて(album ver.)
10. 生活の全て
11. after glow
12. 2020年13月より
この記事の関連情報
【インタビュー】「DAM CHANNEL」20代目MCに森 香澄、サポートMCにチャンカワイが就任「プライベートな部分も引き出せたら」
2024年3月のDAM HOT!アーティストはアーバンギャルド、フジタカコら4組
【イベントレポート】<ビッグエコー35周年記念カラオケグランプリ>決勝大会が大盛況。応募4,061件の頂点決定
2024年2月のDAM HOT!アーティストはOHTORA、我生ら4組
2024年1月のDAM HOT!アーティストRKID'z、EINSHTEINら3組
2023年12月のDAM HOT!アーティストは学芸大青春、the paddlesら4組
2023年11月のDAM HOT!アーティストはACE COLLECTION、3markets[ ]ら4組
T-BOLANのメンバーと一緒のステージで歌えるチャンス、大好評実施中
2023年10月のDAM HOT!アーティストはNORTH、グラビティら4組