【インタビュー】百足、『Episode Ⅲ』は過去の清算か、未来へのスタートラインか?

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「第15回高校生RAP選手権」での優勝という栄冠から2年が経ち、その男は着実にアーティストとして次の栄光への階段を上っているところだ。百足(むかで)の3rdアルバム『Episode Ⅲ』は、クールなトラップビートにオートチューン、メロディアスなラブソングなど得意技を繰り出しつつ、自らの半生を振り返る自伝ストーリーや、ヘイターに向けてメッセージを叩きつける曲など、感情的にも技術的にもより多彩なリリックとラップを駆使して、若きキング候補の風格を見せつける充実の一作。百足にとっての『Episode Ⅲ』は過去の清算か、それとも未来へのスタートラインか? 自信に満ちた最新語録をチェックしてほしい。

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■「百足はやっぱりラッパーなんだ」みたいな入りから、
■最後はみんなが普段聴いてる百足の印象を残して終わる


──アルバム、良かったです。トラックもラップもすごいストイックで、前の作品とはかなり違う印象を受けました。

百足:特に1stの曲はゆったりとした聴きやすさを感じるものが多くて、でも今回はけっこう尖ったリリックを入れたり、ラップを入れたり、いろんなことをやってみたっすね。

▲百足/『Episode Ⅲ』

──ラッパーに向かって言うセリフじゃないけど、今までで一番ラッパーっぽいアルバムだなと。

百足:そうかもしれない(笑)。1曲目のイントロとかは、歌わずに思い切りラップしてて、フックだけ歌ってて。聴いてる人の印象として、「百足はやっぱりラッパーなんだ」みたいな入りにして、でも最後に入ってる韻マンと一緒にやった「一人じゃない」という曲では、みんなが普段聴いてる百足の印象を残して終わる、みたいな。2年くらい音楽をやってきて、アルバムの曲の構成とか、トラックの統一性とかがやっとわかってきた気がします。

──今言った「一人じゃない」と「夢物語」と、韻マンとのコラボ2曲はアルバムの核になっていると思います。

百足:ずっとやろうとは言ってたんですけど、大阪と東京なんで、なかなかタイミングが合わなくて。たまたま韻マンがこっちのスタジオに来るタイミングがあって、そこで「やろう」ということになったんですけど、「一人じゃない」に関しては、もともとソロの曲だったんですよ。それを韻マンに聴かせたら、俺と遊んでる時もご飯喰ってる時も、永遠にこの曲を聴いてるから、「そんなに好きなら入れば?」って、もともとあった2ヴァース目を抜いて韻マンに入ってもらった。最後のところも、韻マンと俺が交互に掛け合いしてます。ずっとこの曲を聴いてたから、愛はあるんだろうなと思ってたんで、韻マンがリリックを書きだした時には何も心配はしてなかったです。


──歌詞に関しては、今回、ストイックに自分を見つめる視点の曲が増えた気がする。

百足:多いですね。逆に言っちゃうと、自分を見つめることしかまだできてないというか、自分のことを歌う曲が一番多いです。その中でラブソングを書いたり、みんなへの曲を書いたり、いろいろやってみました。今回、歌詞にはすごくこだわりましたね。1st、2ndと比べると、書き直しもすごく多い。俺、書き直しがほんと苦手で、「ここを変えてほしい」とか言われたら迷子になっちゃう。歌詞は直感で2〜3時間で全部書いちゃうんで、メロディも「これが完成だから、これ以上崩せない」ってなるんですよ。でも今回は、いろんな第三者の人とか、プロデューサーのタイプライターさんとかに聴いてもらって、「たぶんリスナーの人はこう思うだろうからこう書き直したほうがいい」という意見も聞いて、頑張って書き直して。1曲をひとつの物語にすることが、ちょっとはできるようになったのかなという感じです。

──その中でも、先行で出た「Life is」は、アルバムの核になる曲じゃないですか。

百足:「Life is」は、アルバムで最初にできた曲です。本当は2ndアルバムの締めくくりの曲にするはずだったんですけど、これは3rdのキーにしたほうが次の展開として面白いんじゃないか?と。3rdの1発目として出したほうが、「これが百足の人生です」ということでみんなに届きやすいんじゃないか?ということで、「Life is」をこっちに入れた感じです。


──「Life is」も、けっこう書き直した?

百足:一番書き直しましたね。最初はラッパー用語を散りばめたり、スラングを入れたりしてたんですけど、「Life is」に関してはどの客層も全員納得してもらえる歌詞にしました。ほかの曲には、わかりづらい歌詞もあるんですけど、「Life is」に関しては、誰が聴いても普通に理解できると思います。

──百足の自伝だと思ってじっくり聴きました、ただ、《初めてラップした時の純粋な目の輝きも/都合よく忘れちゃって》は気になるリリックで。そうなのかな?と。

百足:公園にスピーカーを置いて、ただ純粋にラップしていたあの時の輝きはもうなくなってるけど、みたいな感じです。今は今で違う良さがあるけど、という感じです。

──「LINE」はラブソングっぽい。アルバムの中では、この1曲だけかも。

百足:1stアルバムがほとんどラブソングだったんで、その色を1曲は入れておこうという感じです。本当は1曲も入れたくなかったんですけどね。1stで歌いすぎて、今はちょっと恋愛のことを歌うのがこっ恥ずかしくなっちゃってる時期というか、でも1曲は入れておこうかという感じです。やっぱり女の子のファンも多いんで、その子たちに届けばいいかなと思います。

──リスナーのこともちゃんと考えてる。

百足:そうっすね。ただ今回「邪魔しないでよ」という曲があって、今までそういう曲を書いたことがなかったんですよ。みんなの思ってる百足のイメージとして、明るくて元気のいい、みんなを励ます曲を作ってるんだろうなというイメージをぶち壊したくて書いた曲です。これは本当に特定の人に向けて書いた曲なんですけど、こういう闇の部分というか、こういう一面もあるんだということをどうしても見てほしくて、本当はアルバムに入る曲じゃなかったんですけど、タイプさんに「どうしても入れたいんです」とお願いして入れてもらいました。めっちゃサッドな、アコースティックなトラックで、ひたすら「邪魔すんなよ」と歌ってる曲です。

──「それだけ言えるならマイク渡すからやってみなよ」というリリックから想像すると、何か嫌なことを言われたって感じですかね。

百足:そうっすね。それこそラブソングとか、キャッチーな曲をラッパーが歌うとそう言われがちというか。ほかのジャンルのことはわからないけど、ヒップホップでそれをやっちゃうと言われがち、みたいな、そういうことを言う奴らに、「こういう曲も作ってるけど何か?」みたいな感じです。


──この曲を聞くと、ドキッとする奴がどこかにいる。

百足:わかると思いますよ。わかってほしいですね。

──怒ってるわけじゃなくて、「わかれよ」って感じ。

百足:そうなんですよ。怒りじゃないんで。タイトルも「邪魔しないでよ」なんで、俺のことを好きじゃない奴らもそこに引っかかると思うから、早く聴かせたいですね。

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