【ライブレポート】Little Black Dress、ゴージャスでプレミアムな一夜

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7月2日に川谷絵音プロデュース楽曲「夏だらけのグライダー」でメジャーデビューを果たしたLittle Black Dress(以下LBD)が、同月15日にビルボードライブ横浜でワンマンライヴ<Little Black Dress ワンマンライブ Special Guest 成田昭次>を開催した。

同公演は今年5月に発表された1stデジタルアルバム『浮世歌』のリリースワンマンの振替公演。日程が後ろ倒しになった結果、リリース記念とメジャーデビュー記念が重なり、非常に祝祭感のあるゴージャスでプレミアムなライヴとなった。

◆ライブ画像

シンボリックな客席上の巨大シャンデリアが収納されると場内は暗転。まずはサポートバンドメンバーである青山英樹(Dr)、Devin Kinoshita(Key)、Ichika Nito(G)、休日課長(B)、えつこ(Key,Cho)がステージに現れる。落ち着いた明るさのなか5人が「Mirror」のイントロを演奏し始めると、黒いジャケットにショートパンツ、キャメルのロングブーツという装いのLBDが手を振りながら登場。ステージのセンターでアコースティックギターを構えると、「ビルボードライブ横浜へようこそ! 楽しんで帰ってください」と軽快に挨拶をし、同曲を歌い出した。美しい起伏のあるメロディを持ち前の歌唱力でもって乗りこなし、バンドメンバーとともにアーバンかつ心地好いグルーヴで会場を包んでいく。
 低音が効果的な「双六」ではクールで堂々としたパフォーマンスを披露し、「野良ニンゲン」ではパワフルかつ明朗に信念を貫いていくようなヒーロー感のある歌声を響かせる。それぞれの楽曲で、その楽曲の主人公の心情をよりダイレクトに伝えていく歌唱もLBDの武器のひとつだ。


この日が振替公演であることに触れた彼女は「開催できて感謝の気持ちでいっぱいです」と喜びを噛みしめ、「お酒が飲めないのが残念。でも配信を観てる人たちは絶対に飲んでるでしょ!(笑)」と視聴者を笑わせる。会場にいる観客だけでなく、カメラの向こうにいる人々ともナチュラルに距離を縮めていくその姿に、新人アーティストと言っていいのか悩んでしまうほどの貫禄を見た。エレキギターに持ち換えて披露した「夏だらけのグライダー」では可憐なヴォーカルで観客を魅せる。無理のないのびのびとしたその声は雄大な青空に羽根を広げる白いグライダーを想起させた。

Devin Kinoshitaによる憂いを帯びたピアノソロの導入で空気は一転。LBDが再びアコギを持ち歌唱した「妖精の詩」では、かすれ声を交えながら歌詞に綴られた切実な思いを声にしていく。「世知辛い浮世に寄り添えるような曲をと思い、10代の頃に疑問形として書いた曲たちが、コロナ禍という状況とリンクすると感じる曲もたくさんあって」というMCのあとの「愛まみれ」では、全身を振り絞って透明感のある甘い歌声を発信。世の中を癒すように、苦しんでいる人がゆっくりと眠りに就けるようにという願いのもと紡がれる子守歌のように、彼女の一言一言が穏やかに客席へと染み込んでいった。


「優しさが棘となる前に」では楽曲の主人公が彼女に乗り移ったのかと思うほどの厳しさを感じさせる歌唱で圧倒。特にアウトロの悲痛な叫びのようなフェイクの気魄は凄まじく、観客たちもじっくりと噛みしめるように聴き入った。

その後のMCタイムでは、LBDが屈託のない笑顔を浮かべながらバンドメンバーを一人ひとり紹介。「なんで休日課長っていう名前なんですか?」や「IchikaさんのYouTubeのチャンネル登録者数は154万人」など、細かい情報をシェアしたり笑いを交えたりしながら各メンバーにスポットを当てていく。5人を紹介し終え、彼女が「そしてそしてもうお一方、スペシャルなゲストをお迎えしております! 心の準備はよろしいですか!? 大きな拍手でお迎えください!」とステージに呼び込んだのは元・男闘呼組の成田昭次。トレードマークである黒地に白のドット模様のシャツに、上下黒のシックなスーツに身を包んだ彼は、エレキギターを肩にかけ「Ryoちゃんのメジャーデビュー初ライブに参加できて光栄です」と頭を下げる。


LBDもエレキギターを構え、7人編成となり届けるのはLBDのライヴ恒例の歌謡メドレー。今回はシティポップ編ということで、松原みき「真夜中のドア~Stay With Me」、杏里「悲しみがとまらない」、アン・ルイス「恋のブギ・ウギ・トレイン」の3曲を、ゴージャスかつ洗練されたヴォーカルとサウンドスケープで届ける。途中のソロ回しでは各プレイヤーが持ち前のテクニックを発揮し、会場からは盛大な歓喜の拍手が。興奮が渦巻いた演奏にLBDのボーカルが加わると、場内のグルーヴはさらに高まっていく。LBDと成田が先にステージから去ると、ステージに残ったバンドメンバーは勢いを失わないまま演奏を完遂。華やかでダイナミックな演奏に、会場中が酔いしれた。

アンコールではタイトな黒いスパンコールのスーツに身を包んだLBDが登場。ハンドマイクで披露した「心に棲む鬼」は、泣き叫ぶようなきりきりとした歌唱を轟かせる。右手で胸倉を掴んで情念を吐き出すようなその様は、まさに鬼のような凄みと憎しみに魂を売ってしまう人間の弱さを体現。鬼気迫るパフォーマンスに目を見張った。


再び成田も登場すると、LBDが「最後は楽しく終わりましょう!」と告げ「ちょーかわいい」、成田とのデュエット曲「哀愁のメランコリー」を立て続けに披露する。タイトルのとおりLBDのキュートなヴォーカルが響く前者に、スリリングなヴォーカルの交錯や成田の憂いを帯びた泣きのギターソロといった歌謡曲然とした後者。振れ幅の大きな2曲をスマートにまとめあげてしまうLBDチームの器の大きさは、まるで大輪の花火を見上げているように心を晴れやかにさせた。

LBDは「みなさんの日常に大きな拍手を! ありがとうございました!」と言い、等身大の笑顔でステージを後にする。豪華メンバーとともに隅々まで完璧で煌びやかなショーを届けた彼女の堂々とした佇まいに目を見張った、非常に贅沢な時間だった。

取材・文◎沖さやこ

セットリスト

M1 Mirror
M2 双六
M3 野良ニンゲン
M4 夏だらけのグライダー
M5 妖精の詩
M6 愛まみれ
M7 優しさが刺となる前に
M8 LBD歌謡メドレー〜シティポップ編〜
真夜中のドア~Stay With Me/松原みき
悲しみがとまらない/杏里
メンバー紹介
恋のブギ・ウギ・トレイン/アン・ルイス
曲のラストで Voハケ→バンドのみ残ります

EN1 心に棲む⻤
EN2 ちょーかわいい
EN3 哀愁のメランコリーfeat.成田昭次

アーカイブ情報

公演情報
【Little Black Dress ワンマンライブ Special Guest 成田昭次】
2021年7月15日(木)
神奈川・Billboard Live YOKOHAMA

アーカイブ情報
通常チケット:2,800円(tax in.)
チケット購入URL:https://eplus.jp/lbd-st/
販売期間:7月8日(木)18:00~7月22日(木・祝)21:00
視聴可能期間:7月15日(木)19:30~7月22日(木・祝)23:59

配信リリース情報

「夏だらけのグライダー」
2021年7月2日 配信スタート
配信リンク:https://lnk.to/NatsuDarakenoGlider

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