【インタビュー】DEZERT、『RAINBOW』に滾る7つの衝動「シンプルにいい曲を、もっと遠くへ」
■“昔っぽい曲があって嬉しい”とか正直うざい
■ここ数年の議題は“どうやって前に進むか”
──“ストレートに楽曲を作った”っていう意味でも象徴的だなと思ったのは、1曲目の「デザートの楽しいマーチ」が“まず初めに僕が言いたいことは”から始まるんですよね。しかもメロディにも乗せずに言葉そのものを叩きつけるという。ここまで明確に意思表示したのには、どういう意図があったんでしょうか?
千秋:まず、“最近、僕のMCが長い”という空気を周りからふんわり感じてまして。ライヴでは言いたいことを準備しないで、思ったことをその場で言葉にしていくんですけど、そうすると相手に伝えるために結構喋れるんです。じゃあ、それを曲でやったらええやんっていう。だから、来年とか再来年、どういうことを思ってるかわからないですけど、現在俺はこう思っている、このバンドはこう思っているというもの。で、つれづれと歌詞を書いたらすごく長くなったので、1曲に収まるようにしようと思うと、こういう入れ方しかなかった。
──いわゆるポエトリーリーディング的といいますか。
千秋:ところが、これがなかなか難しいんです。この小節数にこの言葉を入れようと思いながら歌うわけですけど、言葉を速く詰め込みすぎたら小節終わりで変な間があくし、遅すぎたら次の小節にかぶっちゃうので、めちゃくちゃレコーディングに時間かかりました。いちばんかかったんじゃないかな?
──Sacchanはどう感じました?
Sacchan:今までのうちらのバンド的にはない雰囲気なので、普通におもしろいなと思いましたね。
──インパクトは強いですよ。この曲も含めて、全体的に激しいサウンドも多い印象ですが?
千秋:別に、そこには重点を置いてないです。トレーラーとかで公開した時に「昔っぽい曲があって嬉しい」とか、インタビューとかで「以前の感じが」っていう意見を聞いて、吐き気がしたというか。まあ、自由に言っていただいていいんですけど、正直そういうのはうざいです。
──俗に言う原点回帰、みたいな?
千秋:ああ、ヤバイっすね。いちばん嫌いなやつですね(笑)。そう言ってるやつと一緒に酒飲めないくらい。困った時は原点回帰とか言い出すの、ロクな奴いないですよ。
Sacchan:原点に戻ると、お客さんいなかったですからね(笑)。
千秋:ここ数年の議題はずっと、どうやって前に進むかっていうものなんですよ。たぶん、これから先もずっとそうなんでしょう。今の場所から、違う場所にどうやって引っ越していくか。音楽に関しては、常に新しいものを作らないと、出す意味がないじゃないですか。変わる必要はないっていうバンドも素晴らしいと思いますけど、僕らは変わりたいし、進まないといけないので。今現時点で、前に進むための──進めるかどうかわからないけど、その意志を持つ楽曲として、こういうサウンドだったっていうだけなんです。昔っぽいとか、そういうのはうざいですね。
──わかります(笑)。曲を作った時に千秋さんの中でアレンジが出来上がってるんですか?
Sacchan:曲によりけりですね。「あなたのそばにいる」は、ギターとかベースのフレーズがガラッと変わりましたし。
千秋:アレンジに関しては、曲を出した時点でもう自分の曲じゃない、曲がよくなればいいんじゃね?って考えにはなってます。でも、「ミザリィレインボウ」とか、「殺されちゃう」「カメレオン」「脳みそが腐る」あたりはほぼほぼ変わってないんじゃないですかね。
──ミディアムチューンの「ミザリィレインボウ」はスタジアムロックと言ってもいいような壮大さで。こういうアレンジが千秋さんの中から出てきたのは意外です。
千秋:最初はちょっと違って、もっとロック寄りで、ちょっと暗い、ライヴハウスっぽい感じだったんですよ。でも、野外のイメージはあったんです。僕的にはシャクに障るけど、この曲って新しいサウンドではないし、どこかで聴いたことのあるようなコード進行だし、耳心地がいい。でも、それでよくて。ずっと遠くのほう、強いていうなら海を越えてもいいくらいのシンプルさがほしかった。脱却じゃないですけど、今いる場所にずっとおっても仕方ないので、自分たちで進まないといけないんです。このバンドは、偶然宝くじが当たるようなことはもうない、コツコツとやるしかないんだと、僕ら自身気づいてると思うんですよ。さっき言った5〜6年前は、“宝くじに当たるんじゃね? なんかあるんじゃね?”って思ってたというか。その根拠のない自信を、僕らはちゃんと噛み砕いてきたバンドなので。
──こういう楽曲をつくることで、バンドのスケールを大きくしていこうっていうことですか?
千秋:いや、スケールを大きくしたいとかはないです。スケールが大きいって言われてしまうとそうかもしれないけど、僕ら的には背伸びしてるつもりもないし。僕らなりの、前への進み方。これが僕らの正しいやり方だって信じて歩くしかない。だから、売れるために考えるんじゃなくて、今、俺たちが人のために何ができるか、自分のために何ができるかっていうのを考えて作ったもの。そういうものって、将来的に失敗だったとしても、自分とまた噛み合うはずなんですよ。今までもたぶんそうで、これからもそうだし、みんなそうだと思うから。こう言ったらなんですけど、全曲ともライヴをやってるイメージでもなくて、歌自体を遠くへ向けて歌いたかった。目の前にファンの子がいようとも、メンバーがいようとも、誰も触れないところでやるべきなんじゃないかって。だから、今はマイクに向かうこともイライラするんですよ。これ要る?くらいの感じ。
──歌詞も、ほんとに広い視野で、広い世界を歌ってますよね。
千秋:まあ、言うのはタダですから。数々の方が同じことを言っていようが、僕はこう思うんですけどねっていう。だから、「ミザリィレインボウ」は、ライヴでどうやって、どういう感情になるのかっていうのがまだわからないです。バンドの羅針盤みたいな曲になるのかな。そのつもりで作ったわけじゃないですけど、そういう感じになっちゃったというのはあります。楽しみですね。
──明らかに一歩進んでるし、本当にいい曲が生まれましたね。
千秋:いい曲ですよね! でも、反応悪いんですよねえ。うーん……めっちゃいい曲だと思うんですけど。みんなちゃんと聴いてる?と思う所存です。世の中にはいろんな音楽があるじゃないですか。それはそれで人の役に立ってるかもしれないですけど、そいつらよりかは、100.5億倍くらいはいいと思う。最近、みんなうちのバンド好きになればいいのにねって思ってます(笑)。
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