【インタビュー】竹内唯人、踏み出す新しい一歩「歌を始める前から、『誰かが喜んでくれること』が好きなんです」
2019年、ABEMAのオリジナル恋愛リアリティーショー『オオカミちゃんには騙されない』に出演。その後、数々の有名アーティストの楽曲を手がけるUTAを始めMatt Cab,BBY NABEらの洗練されたプロデューサーとタッグを組み、アーティスト活動をスタートさせ、洋楽っぽさをまといながらも日本人でもなじみやすい音楽でZ世代を中心に人気を集めてきた竹内唯人(読み:たけうちゆいと)がメジャーに活動の場所を移し、7月2日にメジャー1stデジタルシングル「After the rain」をリリースする。これまでの竹内の活動を振り返りながら、再びUTAを迎えて制作した今作について話を聞きながら、アーティスト竹内唯人の芯にある人間性を探ってみた。
◆ ◆ ◆
■また新たなスタートラインに立つ
──メジャーデビューを目前に控え、いまはどんな心境ですか。
竹内唯人(以下、竹内):ただただ嬉しいです。でも、めっちゃ頑張んないといけないなとも思ってます。アーティストとして今後どんどん上を目指すために。
──竹内さんは2019年10月29日に「Only Me」でアーティストデビューして以降、すごく速いペースで作品をリリースし続けてきましたが、なにか意図があったんですか?
竹内:ライブをする予定だったんです。その頃はまだコロナも流行ってなかったので、ワンマンライブをする気満々だったから、そのために曲をたくさん作ってたんです。
──そうでしたか。その間に作った作品のなかで、いまの自分を形成する起点となった作品をあげるとしたら?
竹内:「ニビイロ」という楽曲です。このとき初めてUTAさんと出会って。そこで歌い方とか、言葉の語尾の伸ばし方とか。いろいろ発見があったんですよ。
──この曲はドラマ『鈍色の箱の中で』(テレ朝系)の主題歌に起用されたんですよね。
竹内:ドラマの主題歌だからバーンって行くだろうなって思ってたんですよ。だけど、自分が想像していたほどは行かなかったですね。主題歌をやるのはこれが初めてだし、めちゃくちゃデカイことだったんで、想像を大きく広げすぎちゃいました。
──ちなみに、どのくらいの規模のヒットを想像してたんですか?
竹内:そのときは「これがバーンっていったら一生食ってけるだろう」って思ってました(笑)。だけど、そんな甘くはなかったですね。普通にヒットしたぐらいで。
──でもこのヒットで竹内唯人のバラードが好きというファンが定着したと思うんです。
竹内:そうですね。「Only Me」を出すとき、これからどういう曲を作っていこうかというのは自分も交えて制作スタッフと話をしてて。そのときに「バラードがいいんじゃないか」という話も出てたんです。だけど『オオカミちゃんには騙されない』に出た後だから、若い世代が聴きやすいポップな曲にしようというので「Only Me」、「CINDERELLA」を出して。「CINDERELLA」はバラード寄りの曲調だけど、しっかりバラードとして歌あげる感じではなかったから、自分のなかには正直モヤモヤした気持ちが残ってたんですね。そのタイミングでドラマの主題歌の話がきて。ここでUTAさんと初めて出会うんですよ。それで、上がってきた「ニビイロ」を聴いたら自分にドンピシャな曲で。
──曲調もバラードで、自分好みだったと。
竹内:ええ。「なんだこの人は」と思っていろいろ話を聞いたら、「ヤバい。そんなスゴい人とやれるんだ」ってところで自分はめっちゃ気合いが入って。レコーディング当日は緊張しちゃったのか、激しく腹を下しちゃって(笑)。でも気合いで乗り越えて。だから、よく聴くとちょっと声に元気ないところがあるんです。でも、それが逆にいい味になってるんですよね。
──あのバラードにそんな裏話があったとは(微笑)。
竹内:それで「ニビイロ」のあと、UTAさんとは「Silence」も一緒にやっていて。
──「Silence」、いいですよね。低音からファルセット、張った声まで竹内さんのいろんな声の魅力が1曲につまっていて。
竹内:ありがとうございます。僕も「Silence」の声、好きなんですよね。元々はキーを2つ下げて歌う予定だったんです。だけど、オリジナルのキーで入ってた歌が本当に綺麗で、俺はどうしてもそのキーで歌いたくてファルセットも張る声も、このときめちゃくちゃ練習したんですよ。そうしたらいままで出なかったキーが出るようになって、UTAさんやスタッフもビックリしてたんですね。だから「ニビイロ」も「Silence」もですけど、UTAさんとやると自分がいままで出せていなかった声や歌い方を引き出してくれるんです。だから、今回(「After the rain」)もUTAさんにお願いしようと思いました。
──自分で書きたいというこだわりは?
竹内:もちろん自分で書きたいなというものは書いてますけど。そこも「ニビイロ」のとき、あのときはまず俺の実体験をUTAさんに伝えて。それを、UTAさんのフィルターを通してメロディーや歌詞にしてもらうという作業が、自分にとってすごいよかったんですね。UTAさんというフィルターを通ることで、2人の意見が混ざり合うから「こんな歌詞の書き方があるんだ」とか「こういうメロディーのもっていきかたがあるんだ」という発見がいろいろあって。そのほうが自分一人でやるよりも、自分の経験値になるじゃないですか。そういうことを「ニビイロ」で初めて経験したとき「なんだ、全部自分で作らなくてもいいんだ」と思ったんですよ。
──それまでは自分で全部やらなきゃと思っていたけど、そこの取り組み方も「ニビイロ」から変わったんですね。
竹内:はい。そこから人に任せてやるようになったんですよね。
──今年はそれらに加えてフィーチャリングのシングル連続リリースもありましたね。「MIRAI(feat.$HOR1 WINBOY)」はTikTokのダンス動画でバズったり。
竹内:いろんな人に聴いてもらえてるようで嬉しいですね。$HOR1くんとはプライベートでも仲いいんで、2人でスタジオに入って、楽しみながらバーッと作ったんですよ。本当に売れるとか売れないとか関係なく、話してる感覚で歌詞も書いていったから。
──それが曲やMVに出ていて、竹内さんの楽曲のなかで、一番等身大の姿が出ているのかなという気がしました。
竹内:そうですね。
▲「After the rain」
──そうして、ここからはメジャーデビューシングル「After the rain」についてお伺いします。
竹内:ヤバいです。これは。セミバラードはこれまでもいろんな曲調がありますけど、その中でもダントツに好きです。
──テーマはなにかあったんですか?
竹内:ここでメジャーデビューすることは決まってたので、ここから新しいはじめの一歩を前に踏み出す気持ちを出したいという話をして。UTAさんに曲を頼むと恋愛っぽい曲になるかなと自分のなかでは思ってて。デビュー曲で恋愛が強くですぎるとちょっと違うなというところがあったので、表と裏のストーリーを同時進行させたいという話をしたんですよ。
──表のテーマと裏のテーマというのは?
竹内:表は、聴く人によって解釈は変わってくると思うんですけども、明るく前に進むポジティブなところ。曲も一聴すると明るい曲なんですが、けれど(歌詞のなかの)“君”とか“あなた”とか“また別の道に進む”という言葉は、彼女に対して歌ってるのかなと思う人もいるだろうし友達に対してと思う人もいるだろうし。いろんな捉え方ができる。この曲には曇り空、霧とか自然界の言葉が入ってるんですけど。曲を発注するときに、君を自然に例えたいという話をしたんですよ。海を彼女だとしたら、雨が振ったら荒れるし、晴れたら綺麗だしという伝え方をしたいとお願いをしたら、こういう風な歌詞があがってきたんで。さすがだなと思いました。
──歌詞のなかで特に竹内さん自身が共感できた部分は?
竹内:歌ってるときは、落ちサビのところとかすごい自分に当てはまるなと思いました。《2人で交わした約束、守り抜くよ また会うまで》のところとか、今までいたところからまた新たなスタートラインに立つ。そこは聴く人それぞれいろんな心境が当てはまると思うんですけど、俺にとってはこれまでやってきたことを守り抜いた上で、また新しくやっていくよという気持ちがすごい歌ってて重なりましたね。
──しかも、そこの“また会うまで”のところで、ポーンと生っぽい声1本になるところがなんともハイライト感があって。
竹内:エモいですよね。あれはUTAさんのセンスです。さすがっすね。こういう風に抜いてくれるところは抜いてくれて、あげるところはあげてくれて。メリハリがついてるから、自分もレコーディングしてて歌いやすかったです。
──この曲はかなり歌が前に出ていて、トラックは余分な音をそぎ落としてる。
竹内:そぎ落としてはいないんですよ。
──え、そうなんですか?
竹内:普通のトラックメーカーの人は、ボーカルを前に出したいときは、いらない音をどんどん消しちゃうんですけど。UTAさんのトラック作りって、まず全部の音を並べて、1つの音のなかに何個も音を重ねていくんですよ。だから“ドンドン”って聴こえる音には高い音も入ってるし低い音も入ってる。それをぎゅっと1つの音に詰め込んでトラックを作ってるんですね。「ニビイロ」も「Silence」もそうですけど、音は3つ、4つしかなくても、1つの音に何10個も音が入ってるから“ズドン”とくるから立体感が出るんですよ。音に。俺はソフトのことはよく分からないですけど、UTAさんが使う音はセンスがあって、綺麗だなと思うんです。綺麗だけどズドンと重い音もくる。なのに、うるさくない。それがUTAさんのすごいところだなと思います。
──なるほど。これ、メインのボーカルはオートチューンをかけてザラザラした感じにしるんですか?
竹内:これは、オートチューンのかけ録りではなくて、俺が歌った声をいまアメリカで流行ってるソフトでゴチャゴチャにしたみたいです。俺も今回初めて知りました。めっちゃカッコいいですよね。
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