【対談】川崎鷹也×武井壮、歩みを止めないためのタッグ
■逆境に追い込まれている時ほど、胸を張って
──取材日はちょうどリリース直後です。楽曲が世に出て、感覚としてはいかがでしょうか?
川崎:武井さんが“川崎鷹也に曲を頼んでよかったな”ともっと強く思ってもらえる存在にならなきゃなとあらためて思いましたね。「ひとりの戦士」をきっかけにK-1の武尊さんがフォローしてくれたり、いろんなつながりが増えたんです。だから僕はこれから先しょうもない人生なんか送れないなって……。
武井:(笑)。
川崎:今回のプロジェクトでご一緒した方々に“あいつと一緒にやったの恥ずいわ~”と思われたくないなと(笑)。“あの時に川崎鷹也と一緒に歌ったんだよ”と誇ってもらえるように、もっともっと大きくなれるように頑張ろうと、あらためて気が引き締まったし、もう1ランク上の覚悟が決まりました。ここから僕ら以外の人が歌ってくださったり、僕らの手を離れて広がっていくとうれしいですね。
──「ひとりの戦士」で発信するスタンスやメッセージにつながってきますね。
武井:ひとりだけで進んでいくことは、世の中に対する力試しでしかないから、案外つまらないんですよ。そこに面白さを与えてくれるのが仲間たちの存在ですよね。僕がいいなと思ったアーティストが、僕のマネージャーの知り合いがマネジメントをしているアーティストだったなんて、まさしくそれで。コラボレーションする必然性を感じたし、その必然性に価値を見出さなければいけないし……そうすると自分ひとりでは出せないパワーが出てくるんですよね。
川崎:うん、本当に。プラスのプレッシャーがはたらきます。
──前回のインタビューで川崎さんがおっしゃっていた“新曲を待ち望んでいる方々の声が原動力になっている”という言葉を思い出しました。
武井:僕も川崎くんと同じですね。それがなかったら頑張れない。実際に陸上をやっていた頃、日本選手権や国際大会みたいな、真横にお客さんがいる試合だったら自己ベストを出せるんだけど、観客の少ない試合では全然記録を出せなくて(苦笑)。見られているからこそ出せる力があるんですよね。ひとりで生きていくことは自分の力を身に着けていくことにおいてはプラスなんだけど、大切に磨き上げたそれは見せる場所がなかったらなんの価値を持たない。
──ひとりでも多くの人に受け取ってもらうことで、初めて意味のあるものになるということですね。
武井:でも川崎くんが“目の前のひとりを幸せにできたのだから、その曲には価値がある”ということもすごくわかるんですよ。だから「ひとりの戦士」はひとりを幸せにすることも意味があるし、ひとりがもっと増えていけばもっと価値のあるものになる──ふたりの価値観を刺激し合って作れたらいいなと思ったんです。目の前のひとりを幸せにする川崎くんを僕が引きずりだして、“もうちょっと多くの人を幸せにしようぜ”って縄をつけてアスリートたちのもとへと引っ張り回して(笑)。
川崎:はははは。そうですね。
武井:ラグビーの山田章仁やゴルファーの宮里優作くんも“ええ~! 歌苦手っすよ!”と言いながらも協力してくれて。その結果、ふだん僕が自分だけでやるよりも大きな輪になったことを実感しているんです。
──アスリートの方々の歌声にはしっかりとぶれない芯があって。それはアスリート人生のなかで培ってきた人間としての強度なのだろうなと感じました。
川崎:本当にそうですよね。レコーディングしたアスリートのみなさんの歌を聴いて、それぞれの根底にある芯や意思、考え方が出ているなと感じたんです。それぞれの人生のなかで導いた正解を、歌として表現してくれている。なにより楽しんでくれてるなと感じましたね。一人ひとりが本気で前に進んでいて、全員が同じ方向を向いている感じがして、ぐっときました。みなさんと一緒に作ったからこそ意味のあるものになりましたね。
武井:……ただね、川崎くんひとりヴァージョンの「ひとりの戦士」、めちゃくちゃいいんですよ(笑)。
川崎:あはははは。
武井:川崎鷹也&武井壮 with TEAM ATHLETEの「ひとりの戦士」は、川崎くんがAメロを歌っていい感じだな~と思っているところに、Bメロで俺が濁すから(笑)。
川崎:なに言ってるんですか(笑)。爽やかな歌で、めちゃくちゃいいですよ。
武井:あらためてその道のプロはちゃんと技術があるなと痛感しましたね。だから「ひとりの戦士」では、川崎くんの素晴らしさはもちろん、我々アスリートの足りない技術でなんとか立ち向かう姿を見ていただきたい。そこには足りないものを違うなにかで埋めようとする努力があるんです。川崎鷹也&武井壮 with TEAM ATHLETEの「ひとりの戦士」の重要な場所はそこだと思うんですよね。
川崎:うん。そうですね。
武井:新しいことを始める時は、いつも自分がいちばんの後輩で、いちばん足りてない存在なんですよね。足りてない技術で、誰かと競わなきゃいけない。そこに立ち向かっていくために、これまでに培ってきた武器を使う。それがあるから違うフィールドに恐怖感なく飛び込めるんですよね。
──ああ、なるほど。これまでの経験のなかで自分の武器を見つけたからこそ、新しいことにもチャレンジできると。
武井:それを持たずに新しいチャレンジをすることは、ただのギャンブルになっちゃう。今回声を掛けたアスリートは、みんなド素人の状態から日本一、世界一になっている人たち。自分たちなりの戦い方で勝ち抜いてきた最高の達人たちを揃えたんです。彼らの歌から、不完全ながらになにか違うエネルギーを感じてほしいですね。
──下積み時代の川崎さんの姿とも重なりますね。
川崎:ぼくはただただひとりで戦ってましたね(笑)。ひとりでも聴いてくれる人がいたら、そこが僕にとっての武道館だと思って、30人でぱんぱんになるようなライヴハウスで歌ってました。その頃の自分を思い返しながら書いた曲でもあります。こうやって武井さんとコラボレーションをしたり、取材を受けさせてもらうなんて、当時の僕では考えつかなかった(笑)。そんな僕が必死にギターをかき鳴らしてたらここまで来れて……本当にありがたいです。
武井:川崎くんの“どこも武道館だと思って歌ってた”というのはすごく真実味がありますね。川崎くんと初めて会ったとき、武道館をやってそうな雰囲気があったんですよ。
川崎:へえ~!
武井:どんな場所でも武道館のつもりで歌っていたことが彼なりの戦い方で、そのなかで彼の武器が作れたんでしょうね。僕にそういうふうに感じさせたことも、彼の戦いの証だと思う。初対面の時、川崎くんは緊張していても腹が座っているような感覚があって。それは新しい状況に対する準備ができているということだと思うんですよね。だからお会いしたあと、正式なオファーをさせてもらったんです。
川崎:うれしい~! 初耳!(笑)。
──武井さんが「ひとりの戦士」で特に気に入った箇所とは?
武井:最後の一文の、《強く強く生きること》ですね。僕はなんの力もなくて、お金もなくて、家族もいなくて、寂しさを抱えながら“誰か見てくれないかな。誰か褒めてくれないかな”と願うという少年時代を過ごしていて。そんな弱い存在から、強くなりたくてスポーツを始めたんです。結果日本一にはなったけど、それでも弱くて。でもさんざんもがいて頑張ってたら、だんだん周りにスターが現れるようになったんです。すごい弱い自分をなんとかするために鍛えて、勉強して、戦っていた日々だった。
──川崎さんがお客さんの少ないライヴハウスで歌っていた時期のような。
武井:同じだと思います。弱い自分なんていちばん自分がよく知ってるし、自分自身に価値があるわけではないこともよくわかってる。それをたくさんの人に見せて、知らせて、応援してもらって初めて価値が生まれる。どんな弱くても、そこに向かっていく気持ちだけは強く持っていたんです。それが唯一の支えだったし、そのおかげでここに来れた。だから《強く強く生きること》と歌うときに魂を込めたんですよね。本当は川崎くんで〆る予定だったのが、僕のテイクを使ってもらったのは、それが伝わったからなのかな(笑)。
川崎:うん。めっちゃいいテイクでした。
武井:川崎くんがどういう気持ちで《強く強く生きること》と書いたのかはわからないけれど、僕は“強く生きる”と“強く強く生きる”は意味が違うと感じたんですよね。“強く生きる”というのは強い人が強く生きている印象があって。でも“強く強く生きる”には、“弱い存在だけど憧れてきた強い人たちのように強く生きよう”というニュアンスが感じられたし、その想いが僕の出発点でもあるんです。……川崎くんはどんな気持ちであの歌詞を書いたの?
川崎:武井さんの解釈はまさにそのとおりで。僕はこれまでの人生、無理してかっこつけて意地張ることで歯を食いしばってきたんですよ。武道館と思いながらライヴをしていたのも、必死に意地張って背伸びしてたんです(笑)。でもそこに向かって努力していたら、きっと実現すると信じてただただ愚直に突き進んできた。だから僕自身は強い人間であるように見せたいだけで、強い人間ではないんですよね。だからこそ《強く強く生きること》は、弱いけれど夢に向かって頑張っている人、武井さんがおっしゃったように“この人には適わないなあ”と思うような憧れの人みたいになれるように頑張っている人たちの、“自分はまだまだだけどそこに向かって頑張っていこう”という気持ちを込めました。
▲川崎鷹也、武井壮 with TEAM ATHLETE「ひとりの戦士」
──川崎さんは今回のコラボレーションだからこそ書けた箇所はありますか?
川崎:《武者震いと共に笑え》ですね。アスリートの方々は自分を追い込んだり、逆境に追い込まれている時ほど、胸を張っていける人が上にいけるんだろうな……というイメージがあったんです。そういう緊張する瞬間はアスリートの方々だけでなく、リスナーの方々もふだんの生活のなかであると思うんですよね。大事なプレゼンの前日、受験の直前といった時こそ楽しめる状態でいられたら、きっと人生楽しいだろうなって。自分にとっての座右の銘でもありますね。それが曲のなかで書けたのは、今回のコラボレーションがあったからこそだと思います。
武井:レコーディングも楽しかったね。
川崎:楽しかったですね。メロディや歌詞も“こうしたほうが歌いやすいかな?”と試行錯誤して、自分と聴いてくれる人のことだけじゃなくて、一緒に歌う人たちのことを考えるのは初めての経験でした。また新しい自分にも出会えたし、いままでは想像できなかった考え方や動き方もできたので、だいぶ成長できたなと思います。
──川崎さんの成長も、武井さんの目的のひとつであると。
武井:当然そうですね。タレント業って自分がお金持ちになりたい、有名人になりたいという気持ちだけでは絶対にやっていけない仕事だと思う。誰かに楽しんでもらうことが仕事だし、人のためになることで初めて価値が生まれるんです。そのために毎日勉強して、鍛えて、力を磨いている。
──人のためになることで、人から認めてもらえることで、価値が生まれるということですね。
武井:だから関わってくれる仲間たちにも、見てくれる人たちにも、アスリートの後輩たちにもプラスになることをするべきだと思うんです。初めての試みで、トップアスリートたちを引き連れてくるなんて、スポーツだけをやっていたときの僕ではできなかった。僕にとってもいいプロジェクトになったし、まだまだ小さいけれど新しいなにかを作れたと思っています。それをこれからどんどん広げていきたいですね。
取材・文◎沖さやこ
川崎鷹也、武井壮 with TEAM ATHLETE「ひとりの戦士」
※“#スポーツを止めるな #音楽を止めるな”キャンペーンソング
参加メンバー:
吉田沙保里(レスリング)、宮里優作(ゴルフ、山田章仁(ラグビー)、潮田玲子(バドミントン)、増田明美(陸上)、狩野舞子(バレーボール)、オカダカズチカ(新日本プロレス)、 加藤優(女子野球)、武尊(K1)、武井壮、川崎鷹也
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