【インタビュー】ZIGZO、櫻澤泰徳×大西啓之×吉田トオルが語るアルバムとミックス「5人での集大成にして新機軸」

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■そこに鍵盤が入ってくることによって
■リズム形態の新たな扉も開いたかな

──リテイクシリーズの作業をする中で、アルバムをどう仕上げればいいのか見えてきた部分も?

大西:個人的には、2020年のリテイクシリーズは配信で聴いてもらうためのミックスをしたんですよ。一度、Spotifyなどのサブスクで、ZIGZOと一緒にお薦めで出てくる他のアーティストの曲と比べてみて、リテイクシリーズはちょっと音圧を強めに出していたり。他の若いバンドたちとの並びで曲がきたときに、ZIGZOの音が古臭くならないようにミックスしましたね。それで、今回アルバムを作るにあたって、ZIGZOの立ち位置はどこだろうと。CDというリリース形態なので、ZIGZOのコアなお客さんやZIGZOを聴きなれた人たちも納得する音を作りたいなって考えはあったかも。ただ、僕は新しいプラグインなど積極的に試すほうなんで、それも混ぜてみたりして。それに気づいて、「定位はこうしたほうがおもしろいよ」とか言うのが吉田トオルちゃんなんです(笑)。

櫻澤:トオル、俺には一言もそういうこと言ってくれたことない……。

吉田:いやいや(笑)。言っても、「任せておけ」でだいたい話が終わるから(笑)。

櫻澤:確かに(笑)。俺の中では、トオルも加わったZIGZOが、今年4月20日にリリースした「衝動」のミックスで完成したなと思っている。それをひとつの基準値として、今回のアルバムのミックスに取り組んだ感じはあるかも。

大西:SAKURAの安定感あるミックスと比べると、僕のミックスは手探りのことも多くて、初めて使うプラグインとか試して、ぶっ飛んだところに音があったりする。

吉田:二者二様のミックスは、すごく素敵ですよ。

──バンド内にエンジニアが二人いるってのは、曲の全体を俯瞰するという意味でも、仕上がりを良くするという意味でも、すごく強味ですよね。

大西:贅沢といえば贅沢ですよね。

櫻澤:ドラムサウンドはロックバンドにおいて、音源の音像を決定付ける大きな要素なんですよ。そういったところで、レコーディングするスタジオの音を熟知しているのも強味かなと思う。どんな曲調でも、ドラムのチューニングを変えても、トータルとしての音像はほぼ一緒のものって感じになるから。それを確認して、ベースの音はこういう感じにして、ギターの音はこうだろうと。一本、スジがあるから、レコーディングやミックスも進めやすいのかなと思う。

大西:確かにそれはある。

▲大西啓之 [B]

──このまま話を進めると、レコーディングエンジニアの話だけになってしまいそうなんで、ここからはZIGZOのミュージシャンとしての話に移します(笑)。書き下ろしの新曲によるニューアルバムは7年ぶりになります。全体の構想をまずどう考えました?

櫻澤:「“2021年6月20日=21620”という数字が“ZIGZO”にも見えるから、その日にニューアルバムを出そうよ」って哲が言い出して、「うん、分かった」と(笑)。まずそこから始まったんですよ。個人的には、今までお蔵入りになった曲もあるから、それもリアレンジするのもありかなとか、要するに集大成的な意味合いも考えたんです。でも最終的には全曲、新曲になって。

大西:哲が曲作りに入る寸前の時期、「今回はド派手なものにしたい」と言ってたんだよね。それはミックス的にというより、演奏隊のフレーズとかを指しているんだろうなと。その時点で、トオルちゃんに加わってもらうのも、哲の頭の中にあったと思う。ともかく7年前のアルバムより派手にしたいという意思は伝わってきたんで、ベーシストしては少々逸脱していても、おもしろフレーズが多いほうがいいのかなとか。ちょっと違ったところにいったほうが派手さは出るのかなってことは考えていました。

──吉田トオルさんは、アルバムのオープニングナンバーである「Humor,Rumor」を作曲していますが、哲さんから作ってよという問いかけがあったんですか?

吉田:いや、ないです。2020年の時点で「モノクロック」と「CONTROLL」はもうできていて、そこからプラスαで曲作りプリプロを始めて、6〜7曲目ぐらいに取り掛かったときでした。「どんなフレーズでやろうか」って話になったとき、僕がブラックコンテンポラリーというか、スティーヴィー・ワンダーとかレニー・クラヴィッツみたいなイメージで、「こんなのはどう?」って出したんです。それが「Humor,Rumor」のフレーズ。そのフレーズを哲に教えた瞬間、SAKURAさんがレッド・ツェッペリンみたいなドラムを入れてきて(笑)。

櫻澤:トオルがそのフレーズを弾き出したとき、スティーヴィー・ワンダーの「迷信」のイメージが広がって。でも「迷信」といったら、俺はベック・ボガート&アピスがカバーした「迷信」の感じのほうがZIGZOっぽいなと思った。それでやっていったら、クリームの「クロスロード」っぽいかなと思ったり。サビはいなたくなるからレッド・ツェッペリンの「移民の歌」のほうがいいのかなとか。だからカーマイン・アピスとジョン・ボーナムとジンジャー・ベイカーが、自分の中の引き出しから出てきて(笑)。

吉田:だから、僕のフレーズがモチーフになったけど、結局はみんなでセッションで曲を作る感じなんです。


──ZIGZOの場合、全員で音を鳴らしながらアイデアを膨らませて曲を作るのがほとんどなんですか?

吉田:基本はそうですね。

大西:誰かが1フレーズだけ出してくるとか、サビはどうしようかってなったときに哲が考えていたものを持って来たりね。でも最終的には全員で音で混ざり合いながらで。ところで、今の話を聞いていて、改めてすごいなと思ったのは、二人とも引き出しが多いなと。僕の中の引き出しはシド・ヴィシャスぐらいしかないから(笑)。曲作り中も無理していろいろ弾いてたら、哲から「引き出し少ないんだから、あまり無理しないで」と言われて(笑)。でも今回、トオルちゃんが加わってさらにバンドの引き出しが増えたからね。

吉田:でも、DENさんが弾くと、DENさんだから。曲作り中、コードの解釈の話をよくしましたよね。DENさんがこの音にいくなら、俺はここに上乗せできるし、RYOくんはさらに上にいってくれたらとか、音の積み上げ方を考えたり。そういうやり取りも楽しかった。

大西:ZIGZOのシド・ヴィシャスなりに、僕も考えてみた(笑)。

櫻澤:あと哲がアイデアを持ってくる曲は、だいたい基本の8ビートが多いんですよ。

──弾き語りでも成立できるような原曲が多いですからね。

櫻澤:そうそう、それはそれでいいものもあるんだけど、他のバンドとかでいろんなアプローチしてきた自分からすると、もっといろいろできる余白があるなと思えたんだよね。例えば「Ready to Love」は、ミディアムハイのテンポの8ビートの感じで哲が持ってきたんだ。そういえば、ZIGZOにはモータウンサウンドを連想するような楽曲はないよなぁと思って、セッション中に8ビートをハーフタイムシャッフルに変えてみたんです。トオルには「ポール・マッカートニー的なピアノアプローチやってみて」と言ったんだけど、トオルはそういうのにすぐ対応できちゃうからね。それで「Ready to Love」は、いままでのZIGZO にはありそうでなかった仕上がりになったんだ。そんな感じで、セッション中のやり取りでアレンジの変化が生まれていくことが多々あった。

吉田:アレンジってスピード勝負のところもあるから。「じゃあ、これは?」ってひらめいたら、フレーズを具体的に出し合いながら、アレンジが膨らむことが多かったんですよ。

櫻澤:ベースとギターとドラムで骨太ロックというと、どうしても1グルーヴの8ビートみたいな感じになりがちで。それはそれで良さもあるんだけど、そこに鍵盤が入ってくることによって、リズム形態の新たな扉も開いたかな。

大西:それはある。鍵盤が入ることで和音の広がりが全然違うから。実は鍵盤の音を聴きながら、コード分解してくれるスマホアプリをずっと見つつ、ベースはこっちの音を入れてみるかって試してみたり(笑)。トオルちゃんが鍵盤でおもしろい和音を入れると、やっぱりそれに追従するベースフレーズを考えたくなるんだよね。

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