仲道郁代、ドビュッシーが心に投影した理想の響きを体現した最新AL『ドビュッシーの見たもの』本日発売
日本で最もアクティブなクラシック・ピアニストの一人、仲道郁代がニュー・レコーディング『ドビュッシーの見たもの』をリリースした。
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19世紀末から20世紀初頭の音楽芸術におけるさまざまな革命の一翼を担ったドビュッシーの最高傑作である「前奏曲集第1巻」、「映像第1集・第2集」、「喜びの島」が収録されている。
仲道にとっては1997年の『アラベスク~ドビュッシー・ソロ・ピアノ作品集』から数えて何と24年ぶりのドビュッシーへの回帰となる。その間、ショパンやシューマンなどのロマン派作品に加えて、ベートーヴェンやモーツァルトのピアノ・ソナタ全曲演奏と録音に取り組むなど、その音楽づくりに深みと幅を加えてきた仲道。四半世紀を経て久しぶりに対峙したドビュッシーのピアノ曲について、こう語っている。
「ドビュッシーは詩的なものを五感へと、そして五感から音という詩的なものへと置き換えていますね。彼はおそらく音に香りも感じていたのではないでしょうか。彼の感覚では、例えば寒い・暑い・柔らかい・硬いといった皮膚感覚や、光、色、見るもの、聞こえるもの、全てが粒子として分解されて捉えられているように思います。曲にするときも、ものを描写するのではなくて、そのものの本質、そのものを作り上げている粒子の本質を捉えて音にして浮かび上がらせているような気がします。見たものが音の空気として浮かび上がるのか、はたまた、見たこともないけれども、感覚の世界で感じることのできる何か、幻影のようなものが音になっていくのか。感覚の狭間への入り口が開く……そんな気がします」。
仲道は、ドビュッシーの楽譜が楽譜に書き込んだ指示の緻密さを、モネの「睡蓮」になぞらえてもいる。「実際にドビュッシーの作品の楽譜を見ると、強弱やスタッカートにテヌートなど、指示が非常に緻密に書き込まれています。それこそモネの「睡蓮」のように、近くで見ると、筆の跡が見えて何が描いてあるのかわからないけれど、遠くから見るとあの独特の世界観が立体的に浮かび上がる、ということと似ている気がします。(・・・)ドビュッシーはピアノという楽器を知り尽くしていると思います。ピアノが出すことのできるありとあらゆるサウンド、それを実現するタッチを知り尽くしている。絵画で例えるとしたら、多種多様な技法と色のパレットを持っていたというような……」 。
今回のアルバムは、2020年10月25日、東京文化会館で開催されたリサイタルのプログラム全曲をライヴ・レコーディングしたもの。仲道が10年がかりで進めている意欲的なリサイタル・シリーズ「Road to 2027」での初のライヴ盤となる。新型コロナウィルス感染防止対策を講じて、収容人数を限定して昼夜2回行われた公演のテイクをメインに編集されており、その過程でも仲道自身がテイクのセレクションを担うなど深くかかわり、アルバムの音楽性を明確にした。聴衆を前にしたライヴ・レコーディングではあるが、ドビュッシーの精緻な音の配置、和声の動きを、手に取るように感得できる音作りを志向してミキシングが行われているのも、仲道の意図である。「耳だけで聴くのではなく、身体の細胞で聴いてくださいーー自分の感覚が冴え渡って、皮膚感覚も開放できるような状態で聴いていただきたいです。それによって、そこに聴こえてくる、立ち昇ってくる世界があるのです」と仲道自身が語る、極めてパーソナルな音世界に触れることができるアルバムに仕上がっている。
『 ドビュッシーの見たもの 前奏曲集I・映像I/II・喜びの島 』
SICC-19053 ■定価¥3,300
仕様 SACDハイブリッド |ハイレゾ配信(2496、DSD)
(株)ソニー・ミュージックレーベルズ
試聴・購買リンク
https://SonyMusicJapan.lnk.to/pu135VJ5z
■収録曲ドビュッシー
前奏曲集 第1巻
1.I. ゆっくりと荘重に(...デルフォイの踊り手)
2.II. 適度な速さで (...帆)
3.III. 生き生きと (...野を渡る風)
4.IV. 適度な速さで(...音と香りは夕暮れの大気に漂う)
5.V. きわめて適度な速さで (...アナカプリの丘)
6.VI. 悲しげにゆっくりと.. (...雪の上の足跡)
7.VII. 熾烈に激しく動いて(...西風の見たもの)
8.VIII. とても静かにやさしく表情豊かに (...亜麻色の髪の乙女)
9.IX. 活発すぎずに(...とだえたセレナード)
10. X. とても静かに (...沈める寺)
11. XI. 気まぐれにそして軽く(...パックの踊り)
12. XII. 適度な速さで(...ミンストレル)
映像 第1集
13.I. 水に映る影 きわめてアンダンティーノで
14.II. ラモーを讃えて ゆっくりと荘重に
15.III. 運動 生き生きと
映像 第2集
16.I. 葉末を渡る鐘 ゆっくりと
17.II. そして月は廃寺に沈む ゆっくりと
18.III. 金色の魚 生き生きと
19.喜びの島
仲道郁代(ピアノ/ヤマハコンサートグランドピアノCFX)
[録音]2020年10月25日、東京文化会館小ホールでのライヴ・レコーディング
◆仲道郁代 オフィシャルサイト