【インタビュー】Q.A.S.B.「自分がやりたい曲をやりたいようにやれば、自然にそのときの……今で言うなら2020年~2021年のエッセンスが盛り込まれるんじゃないか」
Q.A.S.B.が2021年4月28日(水)、5枚目となるフルアルバム『Candy Dream』をリリースする。「1970年代を中心としたソウル/ファンク、レアグルーヴを、その後のダンスミュージックシーンを通過したメンバーによる解釈のもと現代に蘇らせ、後世に伝えることを目指した“現行”のソウル/ファンクバンド」を体現する彼ら。本作でも“いつもと変わらぬ”、エヴァーグリーンな独自の音世界を披露している。リーダーの石川雅道に話を聞く。
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■ライブができないということに関して
■むしろ制作ができるのでプラスに考えている
──Q.A.S.B.としては、このコロナ禍ではどんな生活をしていましたか?
石川雅道(以下、石川) ひたすら制作ですね。一昨年、つまり2019年12月に最後のライブをやって以来まったくやってないんです。1年半近く。
──アコースティックセット的なものも含めてまったくやってない?
石川 ライブは何もやってないです。といいつつも、この間配信用のライブを収録しました。5月に、アルバムに収められてる楽曲をほぼ全曲演奏した配信を予定しています(※5月中に所属レーベル Soul Garden Records のYouTube チャンネルhttps://www.youtube.com/channel/UCTUdZ36v7c_DsTEyicZef9wから配信される予定)。
──1年半ぶりにライブパフォーマンスをしたということですね。
石川 そうですね。リアルなライブではないですけど、一応ライブとして演奏した形ですね。
──それはブランクみたいなものを感じましたか?
石川 ブランクというより、配信自体が初めてなので、勝手が違うというか……。ライブしている体でやったのですが、「こんにちわ、Q.A.S.B.です!」というところから入ってMCもぎこちない感じで(笑)。
──プレイ面に関してはどうでした? ぎこちなかったりとか……。
石川 Q.A.S.B.のパーカッションはゲスト扱いで、アルバムには入っているストリングスも生では再現不可能なので、レコーディングしたソースを使って、それ以外の音を生で演奏した形なんです。なので、全体的に普段とは勝手が違う感じで、ぎこちないも何も……という感じでしたね。とはいえ、1年半ぶりのライブとしてはキチンとパフォーマンスできたと言えると思います。
──ライブバンドが、ライブができないということで、バンドの在り方とか考えたり、そういいうことはなかったですか?
石川 バンドメンバーそれぞれの立場が違うし、ライブに対する感覚も違うと思いますが、僕個人としては制作してモノが作ることができればバンドとして継続できると思っています。ライブができないということに関して、僕は、むしろ制作ができるのでプラスに考えていますね。もしかしたらライブやりたくてしょうがない!というメンバーもいるかと思いますが。そういう人は別のバンドでセッションしてたりするので。Q.A.S.B.としての活動に関してはみんなポジティブに捉えていると思っています。
──アルバムをあえて今出す理由はありますか?
石川 前作(CD)が2018年12月、LPが2019年3月に出ました。タイミングとしては2年くらいで、これくらいの間隔でいい感じかなと。曲も溜まってコンスタントに7インチも出して、自然にそうなった感じです。
──いつもはライブをして、7インチを出して、アルバムという流れでした。今回はライブができなくて、制作してアルバム。
石川 ファンの中には違和感を感じている方もいるかもしれないですね。ライブをやらないでいきなりレコーディング。初めての感覚ですが、致し方ないというか……(笑)。
──曲作りに影響はありましたか?
石川 ないですね。いつも通りのQ.A.S.B.。僕なり、北野くん(Yuzo “Uzo” Kitano / Sax)がトラックを作ってデモを作って、それをリハーサルでこなしてライブをやって、レコーディングという流れの中で、ライブがなくなっただけ。
──通常運営のQ.A.S.B.?
石川 そうですね。あまり変わらなかったですね。
──本作は、相変わらずエヴァーグリーンな、いい意味で新しくも古くもない、5年後に聞いても10年後に聞いても変わらぬいい作品だと思います。そんな中で、Q.A.S.B.の2020年~2021年っぽさはどういうところだと自分では思いますか?
石川 おっしゃる通りで……当初Q.A.S.B.を始めた頃は、昔のソウル/ファンクをなぞっているような感じで、これってやっている意味があるのかと思ったことがあるんです。あるときにファースト・アルバムを出したとき、僕は古臭い感じで大丈夫?と思ってたんですけど、当時のディストリビューターさんから「ちょっとだけ新しいね」と言われたんですよ(笑)。それで、ああ、そうかと。古いとか新しいとか気にすることないんだなと吹っ切れた。あえて革新的なことをやろうとか、そういう野心は捨てて、自分がやりたい曲をやりたいようにやれば、自然にそのときの……今で言うなら2020年~2021年のエッセンスが盛り込まれるんじゃないか。もちろん僕らのベースにあるソウル/ファンクは40~50年の歴史がありますが、60年代の曲も、80年代の曲、2000年代の曲も、今の僕らにとっては俯瞰して捉えることができる。だから2021年の今だからこそ、そういうものをうまく融合した形を自然に実現できると思うんです。
──これまでの歴史は通過していて、今やることが“少し新しい”と?
石川 そうですね。それと、今回のアルバムにはひとつ大きな違いがあります。今まで英語の曲が多く、前作は2曲だけ日本語。今回は一曲除いてすべて日本語になりました。そこが一番変わった点ですね。
──そこはバンド内で協議はありましたか?
石川 いろいろありました。今回は特に、ボーカリストと話し合った結果ですね。前のボーカルAmy Aのときは、ファンクのリズムは英語が基本ということで、英語に拘っていた部分がありましたが、今のayumiは、ファンクだけじゃなくポップミュージックのシンガーとして活躍できる要素を持っている。それに英語か日本語かは曲によって決めればいいじゃないかと。もうひとつ言うと、東京をベースに活動をしているQ.A.S.B.が、英語の歌詞でどれくらいの人を惹きつけられるのか、そういう葛藤みたいなものもあります。一応しゃべれますけど、僕自身も英語が得意なわけじゃないし、聞き取りもままならない。英語歌詞が(頭に)入ってこないというか……そこも含めるとせっかく東京でやってるわけだし。日本語でやってみよう、挑戦してみようという気持ちになれたというか。あとは前作を出したときにピチカート・ファイヴの小西(康晴)さんから高評価を頂いて、日本語の曲をやらないの?と(笑)。その影響もかなりありますね。
──それもあってか、前作よりボーカルが立っている印象を受けました。
石川 もしかしたらayumiのコーラスパートが多いせいもありますね。常にコーラスを重ねたので。それプラス日本語だから、かもしれませんね。言葉がより入ってきやすい。
──ayumiさんがバンドに加入し年月が経って、ayumiさんの声がバンドにマッチしてきたというか……。
石川 最後の曲の「Escape」は、彼女自身の曲でそういうところもあるかも。
■メンバーが変わっても全体のサウンドからすると
■何をやってもQ.A.S.B.
──「Thank You」「Can't You See Me」と2曲のカバーが収録されていますが、カバーは重要な楽曲でしょうか?
石川 カバーを入れるのはBabe Ruth「The Mexican」以来ですが、選曲しているときは拘っているわけじゃなかったんです。ただ多くなっても嫌だなと。2曲くらいは許容範囲かと。
──やはりオリジナル曲を聴いてもらいたい?
石川 ですね。アルバムではカバーが後ろの方に入ってます。最終的に曲順を並び替えたのですが、無意識にこういう曲順にしていて、オリジナルを聴いてもらいたいという思いが曲順に反映され得たのかもしれない(笑)。
──カバーは聴く前にある種の“フィルター”が入りますもんね。
石川 ピチカートもロイ・エアーズも名曲ですし。それはあると思います。
──5月の配信ライブは今作がマルッと聴けるわけですね?
石川 そうですね。最後にシークレットな曲も用意してます。編集した映像をまだ見てないのですが、いつも通りのQ.A.S.B.の姿をお見せできるかと。良くも悪くも自然体。あまり奇をてらったことはしないバンドなので、5年後でも10年後でも聴ける、長く聴かれるバンドになりたいんです。
──現時点でバンドとしては完成形ですか?
石川 前作から、ベース(Shiori “Shelly” Tabata)とトランペット(Echigo)のメンバーが二人入れ替わっていて……。入れ替わって3年経ちますが、バンドとして熟してきたかなという気持ちはあります。メンバーが変わっても全体のサウンドからすると、何をやってもQ.A.S.B.。いい意味で不器用なのかな(笑)? 特にベースってバンドにとって大事なパートだと思いますが、入った時よりはだいぶ小慣れて、相当助かってますね。ちなみに新しいトランペッターは先生をやっていてどんなジャンルでもイケちゃう、抜群の安定感があります。
──Q.A.S.B.としての次なる目標は?
石川 実は次のアルバムが全部揃っていて、あとはこの夏にレコーディングするだけなんです。アルバムのリリースは1年くらい空いた方がいいと思うので……来年、再来年くらいに出そうかなと。もちろん7インチのリリースも引き続き続けて行きます。
──7インチはどうしてもこだわり?
石川 レーベルのオーナーとしての意見/エゴですが、7インチをふくめ、いろんな媒体で出しておいた方が、露出/宣伝/プロモーションを考えると、いいと思うんです。いろんな切り口で取り扱ってもらえるという意味で。あまり儲かることはないですが、7インチをコンスタントに出してアルバムを出す、このタームが僕らにとって有効的だと思っています。三ヶ月に一度、定期的に出しちゃってると幾ら好きな人でも買ってもらえないという葛藤もありますが(笑)。
──7インチがコンスタントに出ていると、たとえライブができなくともバンドが動いている感じは受けますね。
石川 そうなんです。そこが一番大きいかもしれないですね。メンバーのホントの気持ちは分からないですけど、Q.A.S.B.が動いているという感覚は持ってくれているかと。
──皆さん社会人で空き時間に集まって活動をしているわけですよね? 土日に作曲して、レコーディングして。
石川 曲はそれぞれで作ってきます。リハーサルは主に日曜日の朝から昼まで。今のところ、元曲の制作は僕と北野君、ayumiがメインですね。ありなしのジャッジは……だれがしてたのかな……(笑)。なんとなく決めてましたね。ただ今までこの曲はQ.A.S.B.としてないな、というのはなかった。
──新曲ができたら集まって合わせて、「この曲、いまいちいじゃない?」ということがなかった?
石川 ないですね。持ってきた本人の思い通りにいかなくて、取り下げますということはあります。メンバーはやってられないと言いつつやってるかもしれませんが(笑)。
──ayumiさんが作詞作曲した「Escape」はどんな形で?
石川 もともと彼女が──歌詞の中にもありますが──19歳の春、ちょうどニューヨークに留学していたときに作ったもの、それをミュージシャンにサポートしてもらって作った原曲がある。あるとき彼女から、特別な企画としてこの曲をライブで歌ってみたいと。で、僕がふと思いついて、*Daytonの「The Sound of Music」みたいにしたら面白いんじゃないかと。それをライブでやったらすごくハマったという経緯があります。ちょうどディスコ/ブギー的な曲が欲しかったせいもあって。ヒップホップ的な遊び心を入れてみた感じです。
*Dayton (デイトン)は、オハイオ州デイトン出身のファンク・バンド。「The Sound of Music」は1983 年にリリースされたアルバム「Feel The Music」に収められている彼らの代表曲。
──原曲はまるで違うんですね?
石川 Q.A.S.B.らしからぬ全く違う曲ですね。彼女はもともと90年代のR&Bが大好きで。
──5曲目「Wolf」はあそこでアルバムのブレイクという意味合いでしょうか?
石川 そうですね。A面B面の仕切り直し的な曲になっています。最初の4曲でワンセット、インストを挟んで後半にもうワンセット。アルバムとしてはリスニングにも向いているような、結果オーライ的な順番にはなりましたね。実は2020年の6月に「Wolf」は7インチを切ってるんです。A面は大阪モノレールの中田さんをフィーチャーした「The Jet Leg」。A面の勢いが凄すぎて、実は裏面もいい曲なんだよ、と(笑)。作った本人(北野)も「(DJの)皆んながプレイしてくれない」と泣き言を言っていて。そこを押したいという意味を込めた選曲でもあります。
──このアルバムを聴くと生でライブを見たくなりますね。
石川 ありがとうございます。今年……どこかでできるといいですけどね!
『Candy Dream』
Soul Garden Records SG-075 2,500円 + 税
■ Track List
1.Candy Dream
2.Shaky Shaky
3.VIVALAVA
4.Baby Soul
5.Wolf (Instrumental)
6.サンキュー
7.The Sun And Moon
8.Can’t You See Me feat. Hiro-a-key
9.Escape
◆Q.A.S.B. オフィシャルサイト
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