【レポート】SUGIZO、自身二度目の配信ライヴ<VOICE OF LEMURIA>で「明けない夜はない」

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SUGIZOが4月20日(火)、自身二度目となる配信ライヴ<SUGIZO LIVE STREAMING FROM TOKYO EPISODE II ~VOICE OF LEMURIA~>をstudio W(WOMB LIVE)にて開催、生配信した。本来ならば1月の実施を予定していたのだが、新型コロナウイルスの感染拡大状況を鑑みてやむなく延期に。2020年12月にリリースした最新オリジナルアルバム『愛と調和』からの楽曲を今回、満を持してライヴ初披露した。

◆SUGIZO 画像

本公演の基本編成は2020年10月に開催した初配信ライヴ同様、COSMIC DANCE QUARTET。MaZDA (マニピュレーター、シンセサイザー)、よしうらけんじ(パーカッション)、ZAKROCK (VJ)に加え、スペシャルゲストとして鬼才トランぺッターの類家心平、妖艶かつ神秘的なベリーダンサーNourahが加わった布陣だ。音楽のみならず映像・照明が重要な役割を果たすのがかねてからのSUGIZOライヴだが、こと配信ライヴでは、画面上で魅力が最大化するよう計算し尽くした撮影・スイッチング・映像加工を行っている。また、オンライン用ミックスはSUGIZOが、“サウンドアルケミスト”と呼び敬愛するDub Master Xが務め、最高水準の音質で届けられた。



ライヴの幕開けは、ヒーリング音楽作品としての『愛と調和』を象徴する1曲「Nova Terra」。アルバムのインスピレーション源となった屋久島の森の緑、差し込む光、生命力に満ちた水を音楽・映像・照明の三位一体で神秘的に表現していく。真っ赤なライトに切り替わり「FINAL OF THE MESSIAH」が始まると、スクリーンにはライヴタイトルが大写しに。そこには、1曲目とは別人のようなロックスターのオーラをまとったSUGIZOの姿があり、画面越しのオーディエンスを挑発的に手招きしていた。SUGIZOのギターと類家のトランペットは共に狂騒的で、木霊のように響き渡った。「NO MORE NUKES PLAY THE GUITER」を続けて放ち、“NO NUKES”の文字を背に、「NO MORE!」とシャウトする幕切れは圧巻。反戦のメッセージを熱烈に示した後は、青い光に包まれた静けさの中、ドイツの現代音楽家シュトックハウゼンの影響で生まれた電子音楽「Raummusic」へ。アタック感を完全に消し去ったかのような柔らかいタッチで、コードを繰り返し爪弾くSUGIZO。よしうらは金属の鎖をスネアに叩きつけて鈍い音を鳴らし、最初は穏やかだった類家のトランペットも次第に高揚。すると、映像表現も連動して内なる世界から雄大な自然へと変化していく。

次曲「FATIMA」はSUGIZOのライヴに欠かせない曲で、かねてから海とベリーダンサーのモチーフが映像で繰り返し表現されてきたのだが、今回は生身のベリーダンサーNourahが登場。画面から飛び出して来たような彼女が白い衣装とヴェールをなびかせ、レーザー光線に照らされて舞い踊る情景は、幻想美の極み。更に、配信画面上では海の映像などがオーバーラップされ、奥行きのある美しさを立ち上げていた。ヒジャブをまとい祈る女性の映像から始まった「ENOLA GAY RELOADED」では再び、深紅の世界をバックに激情を放出するSUGIZO。その殆どがインストゥルメンタルであり言葉を介さないSGZ MUSICだが、核実験のキノコ雲、原発の脅威をモチーフとした映像がオーディエンスに問い掛けるものは大きい。“NO NUKES”のメッセージを刻んだ大きなフラッグを振り、その同じ手でギターを握れば、迸る強い念そのもののような艶やかな音色を響かせる。SUGIZOにとって社会問題に向き合うことも音楽を奏でることも地続きで同義なのだ、と痛感する曲である。曲調の切り替わりと完璧に連動した照明、ズームを駆使した鮮やかなカメラワークも相まって、画面越しであっても臨場感とダイナミズムが伝わったことだろう。



基本的には歌唱もMCも無くノンストップで突き進んでいくSUGIZOのライヴ。終盤を迎えて披露した「Decaying」では、SUGIZOと類家が交互に音を鳴らし、全く展開の読めないインプロビゼーション的プレイバトルを熱く繰り広げた。メンバーのフォーメーションは360度円を描くように内側を向く形で、SUGIZOと類家は対面。距離は離れているが、映像の切り替えによって2人が間近にいるような迫力が感じられた。「禊」ではジャンベを手にセンターへ出て来たよしうらとSUGIZOが向かい合って、剣術の試合をするようなプレイバトルを展開。思わず息を呑むほどにスリリングな2曲だった。野性を解き放って吠えるような激しいプレイと、寸分の狂い無くコントロールされたメンバー間の呼吸。その両極を行き来するエキセントリックな楽曲は、激情と理知を兼ね備えたSUGIZOらしさの表れなのかもしれない。本編ラストは「DO-FUNK DANCE」は極彩色のレーザー光線が飛び交うサイケデリックな空間で、SUGIZOは髪を振り乱しながら、今回は類家に物理的に接近してプレイバトル。音符として譜面に書き表すことができないような息遣いも含めた、エモーショナルな音楽がそこには鳴っていた。

感謝を述べ、メンバーを紹介した後一旦ステージを去ったSUGIZO。ほどなくしてタブレットを手にして戻り、Twitterのハッシュタグで寄せられた視聴者からのコメントを紹介。有観客でもオンラインでも、ファンとの繋がりを常に重視するSUGIZOにとって欠かせない時間である。このライヴが延期を経て実現に漕ぎつけたことを改めて説明し、「開催できてうれしい」と喜びを述べた。英語で寄せられた海外からのメッセージも読み上げたのだが、こういった参加の形は、コロナ禍で定着した配信ライヴがもたらしたメリットの一つと言えるだろう。コロナ禍の経済的、精神的苦痛に心を寄り添わせながら、「まだまだ闇の時間は続きますが、必ず、明けない夜はない」とSUGIZOはファンに力強く語り掛けた。



アンコールとして、「この苦難の時を乗り越えるための祈りとして」(SUGIZO)選んだのは、『愛と調和』から「CHARON~四智梵語~」。静けさを際立たせる虫の音。スクリーンには夕暮れの空、蕾がほころぶ睡蓮、桃色の太陽、樹影、五重塔などのモチーフを投影。僧侶による疫病退散の声明(※声で唱える念仏)が荘厳に響き渡る、摩訶不思議な空間が広がった。SUGIZOの爪弾くアルペジオは一音一音から慈愛が感じられ、類家のトランペットは郷愁を帯びている。アーシーでオーガニックなドレスを身にまとったNourahがここで再び登場。指先のフォルムに至るまですべての動きが美しく、この曲に込められた祈りという本質を全身で表現していた。

静けさの中で曲を届け終えると、改めてメンバー紹介をし、カーテンコール。SUGIZOは左右2人の肩に腕を回し、全員で深く長いお辞儀。約1時間30分があっという間に過ぎ去り、第2回目の配信ライヴは幕を閉じた。ライヴタイトルにあるLEMURIAとはレムリア文明を指し、『愛と調和』の重要なモチーフとなった縄文文明のルーツとの説もある、SUGIZO思想の根幹にある言葉。憎しみではなく愛を、対立ではなく調和を、利己ではなく利他を。音楽ジャンルも国籍も人種も宗教も文化も、あらゆる壁を超え混ざり合う総合芸術を提示した今回のライヴは、SUGIZOが掲げるそんな理想の一つの実証例。コロナ禍において不要不急などと言われ続けてきた音楽、エンターテインメントの力を実感できる意義深いライヴでもあった。配信チケットは4月23日(金)21:00まで受付中で、同日23:59まで視聴することができる。



また、来月5月20日(木)にサイケデリックジャムバンド SHAGの配信公演が、<LIVE STREAMING FROM TOKYO EPISODE III ~THE SHAG STRIKES BACK~>として開催されることが決定した。

取材・文◎大前多恵
撮影◎田辺佳子

■配信ライヴ<SUGIZO LIVE STREAMING FROM TOKYO EPISODE II ~VOICE OF LEMURIA~>

配信:4月20日(火)
※アーカイブ:4月23日(金) 23:59まで
▼チケット
販売受付:4月23日(金)21:00まで
https://sugizo.com/feature/VOICE_OF_LEMURIA

■SHAG<LIVE STREAMING FROM TOKYO EPISODE III ~THE SHAG STRIKES BACK~>

配信:5月20日(木)
※詳細は後日発表

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