【インタビュー】Organic Call、広大なスケール感で輝く『箒星、残像を探して』
■ホールでやっても輝いてくれそうな曲達にしたかった
──今回の楽曲の中で、アレンジに苦戦した曲ってあります?
2人:どれだろう……。
──というか、アレンジっていつも難航します?
2人:します(笑)。
カワカミ:だから、逆にどれだろう……っていう。でも、「夢想家のワルツ」は早かった気がするけど。合宿で作ったから。
平田:ああ。俺は……全部難航した気がする。できては潰して、できては潰して、みたいな感じなので。
──それは、メンバー全員いまいち納得がいっていないのか、それとも誰かが「これは違う」と言い続けるのか。
平田:俺が違うって言い続けてますね(笑)。
カワカミ:なんぼでも「違う」って言われますからね(笑)。
平田:リフだけで100ラリーしたこともあったし。
──エグいですね……(苦笑)。そこは、平田さんの中でイメージが結構しっかり見えているからこそ?
平田:そうですね。最初に弾き語りのものを持っていって、バンドで鳴らすんですけど、なんか変なんですよ。
──変って(苦笑)。
平田:なんか、僕にとっての曲作りって、違和感探しなんですよね。
カワカミ:確かにそれはいつも言ってるな。
平田:最初は違和感の塊になっているから、そこを一個ずつ抜いていくというか。だから、何かをくっつけていくというよりも、変なところを削っていく感覚なんですよね。で、自分が持っていたイメージにできるだけで近づけて、ピカピカにしてあげるっていう。
──Organic Callの曲って普遍性があるというか、どんな時代にも瑞々しく響くアレンジではありますよね。そういったある種オーソドックスなことって本当は一番難しいんだけど、そこに向かっているバンドなのかなという印象もあったんですが。
平田:10年後、20年後に聴いても違和感のない曲にしたいっていうのは、曲を作るときにいつも意識してるんですよ。あの頃にこんな曲を作ったけど、いま聴いてもいいなと思えるものにしたくて。もちろん時代の流れを捉えつつにはなると思うし、気づかないうちに流行を意識してしまうこともあると思うんですけど、あくまでも軸にあるのは、自分が何年後に聴いてもいいと思える曲を作るということですね。
──今回ミュージックビデオを撮影されている「シリウスに誓う」も、そういった瑞々しさがありますよね。
平田:この曲は今回の中で最後にできたんですよ。締切まで1〜2週間前ぐらいだっけ?
カワカミ:うん。なのに、一番時間がかかったんです。時間が迫ってる中で、死ぬほどスタジオに入って、必死こいて作った感じでした。
平田:今回のアルバムは、大きい会場で鳴っているような感じをイメージしてたんですよ。ミニマムなものではなく、何年後かにホールとかでやっても輝いてくれそうな曲達にしたかったので。「シリウスに誓う」は、特にそういうところを強く意識しました。バンドとしてより大きいというか、広いというか、なんかこうドバっとした感じみたいなものを……(笑)。
カワカミ:語彙力がやばい(笑)。イントロは付点八分のディレイを使ったフレーズがいいよねっていう話をして、どういうフレージングにするかは結構考えましたね。そこだけじゃなくて、他の場所にもディレイをちょこちょこ入れていて。そういうのは今までやっていなかったし、そこが軸になっていたところはありますね。
──歌詞はまさに「強い信念を持ち、明日への微かな希望を唄う」というワードそのものですね。生きていくと様々な出来事が起こるけれども、〈再会をシリウスに誓う〉というところとか。
平田:ウチのバンド、〈再会〉が好きなんですよ(笑)。
カワカミ:そうだね(笑)。
平田:やっぱりすべては巡り合わせだと思っていて。バンドをやっていることも、今日誰かと会えたことも。たとえばライヴを観に来てくれた人とも、続けていけばまた会えるかもしれないし、そこに対しての自分たちの手段としては、生き続けること、音楽を続けていくことっていう。でも、それをこの曲で言いたいから書いたというよりも、そこは自分たちの生き方の信念みたいなものだと思います。
──「夢想家のワルツ」は合宿で作ったというお話がありましたね。アコギが印象的で、途中で変拍子を入れたりもしていますけど。
平田:「彗星のよう」が軸みたいなものにはなったんですけど、「夢想家のワルツ」はそれよりもちょっと前にできていたんですよ。2020年の1月ぐらいにバンドで合宿みたいなのをしたんですけど、3泊4日だっけ?
カワカミ:うん。別のバンドと一緒に。
平田:8人ぐらいで同じ場所に泊まって。
カワカミ:変な話、僕の家にみんなで泊まったんですけどね(笑)。その当時、ボーカル以外の3人で一軒家に住んでいたから、わりとギュウギュウになりながらみんなでやっていて。
──めちゃくちゃ楽しそう。
平田:楽しかったです(笑)。そのときはリリースに追われていなかったのもあって、フラットな状態で、なんとなく鳴らしながら作っていったから、他の曲とはまたちょっと違う1曲になったかなと思いますね。
カワカミ:3泊4日で作れるか?っていうところもあったけど、僕の中ではひとつ変われた感じがあって。イントロのリフの音色とかも新しいものを取り入れられたし、作っていたフレーズもしっくり来たし。そういった面ではひとつのターニングポイントみたいな曲になったかなとは思いますね。あとは、合宿っていう形も引き締るというか。みんなでご飯食べて、夜中から朝までパックでスタジオに入って、帰って寝て、昼ぐらいに起きて……。
平田:銭湯行ったりとかね。
カワカミ:行ったね(笑)。合宿自体嫌いな人はそんなにいないと思うし、そういう面では楽しくやれましたね。あの環境だったからこそ、こういう曲が生まれたのかなって。
平田:合宿の楽しさが出てる?
カワカミ:まあ、ワーイ!って感じの曲ではないけどね(笑)。
──感傷的な雰囲気がありますからね。
平田:この歌詞は自然と出てきたというか、パパっと書いたんですよ。この曲だけ、こういう人に伝わってほしいっていうメッセージがそこまでくっきりとないのかもしれない。言葉もわかりにくいし。
──確かに独り言みたいなニュアンスが強いかも。
平田:それだ! その感じですね。逆に「彗星のように」は、めっちゃ生活感がありますね。歌詞も想像できたりするし。
──「彗星のように」は、締めの〈人間でよかった〉がすごくいいなと思いました。
平田:めっちゃいいっすよね(笑)。これは、僕が好きなハヌマーンの「幸福のしっぽ」っていう曲があって。その曲を考えながら書いたんですよ。
カワカミ:知らんかった、その話(笑)。
平田:言ってなかった(笑)。〈人間でよかった〉と思うことって、普段ほとんどないじゃないですか。でも、そう思えた瞬間って、きっとたぶんそれは素晴らしい瞬間なんですよね。毎日あることじゃないと思うし、もしかしたら1年に1回とか、10年に1回かもしれないし。僕もすごく幸せな思いをしたからこの曲を書いたわけでもないんですけど、いつかはそう思いたいなっていう願望みたいなものですね。
──「かなわない」は〈全てを愛し続け かなえたいことばかりだ〉という一節で曲を締め括っていますけど、この先、バンドで叶えたいものってどんなものがあります?
平田:なんだろう……やっぱり自分達が作りたいと思っている曲を作り続けて、それを世に発信し続けることですかね。ここから続けていく中で、不純物みたいなものが混ざる瞬間ってありそうな気がするんですよ。
カワカミ:まあ、世の中いろいろあるからね。
平田:うん。正直ウザいなって思うこともあるかもしれないけど、そういうものに屈せず、自分達が信じたものをいつまでひたむきに鳴らせられるか?っていう。それを貫き通して、ジジイになっても音楽をやれたらいいなと思ってます。
カワカミ:この前、(平田)真也と同じことを思っていたんですけど、わかりやすく言うと、武道館に立ちたいなと思ったりはするんですよ。僕がお世話になっていた方のライヴを観に行ったこともあるし、音楽を知らない人とか、たとえば家族や地元の友達に対してわかりやすいっていうところも、もしかしたらあるのかもしれないですけど。
平田:自慢したい?(笑)
カワカミ:いや(笑)、自慢っていうか、ずっと音楽をやっていきたいって言ってきたから、それが口だけじゃなかったんだっていうのを証明したい気持ちはある。
平田:まあ、示しをつけたいってことだよね。大きいところに立ちたいっていう気持ちはやっぱりあるし。
カワカミ:うん。そういう場所にこの4人で立ちたいっていう気持ちはあるんだけど、そこに立つためにやるんじゃなくて、それこそ続けてきた上でそれがあるっていうのが大事かなと思ってます。
平田:うん。まあ、やってりゃ出れるよ。
取材・文◎山口哲生
2nd mini album『箒星、残像を探して』
OGCA-0003 / ¥1,980(税抜¥1,800)
発売元:Organic Call 販売元:PCI MUSIC
01.明けない夜はない
02.シリウスに誓う
03.朝焼けに染まった街へ
04.かなわない
05.瞬き
06.夢想家のワルツ
07.彗星のよう
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