【インタビュー】UNCHAINが選んだ、進化への道
■3人でも全然大丈夫だなと思った
──『Animal Effect』は皆さんがあげてくださった曲以外にも注目といえる曲が沢山あって、たとえばどこかポストロックの匂いがある「Dive Into Deep」はアルバムのいいフックになっています。
谷川:この曲を今のアレンジをする前に僕がやろうとしていたことは、それこそポストロックっぽいことだったかもしれない。そういう匂いを持った原曲を、完全に振りきった方向でアレンジしたんです。元々音数を少なくしようと思っていたけど、“3人ならでは感”を出すために、極端に音数を少なくしてみたんですよね。まず、ギターはもう弾かない。本当に最後の最後しかギターは弾いていなくて、どこまでベースで聴かせられるかということに挑戦しました。
谷:それで、ベースにディレイを掛けることになったんです。普段僕はエフェクターは一切使わないので、ディレイは後掛けしたんですよ。最初にエンジニアさんに掛けてもらったときは、聴き慣れていないからすごく違和感がありましたね。頭がグラグラして“ベース酔い”してしまう感じがしたのでちょっと弱めてもらって、いい感じになったなと思います。
吉田:「Dive Into Deep」は、ドラムも打ち込みと生が混ざっています。スネアも両方鳴っているのかな。
谷川:鳴っている。ハイハットは生だけど、ディレイで飛ばしているし。
吉田:そう。だから、独特なドラムになっていますよね。本当に、生と打ち込みの中間というか。僕はそういうアプローチも好きで、曲が呼んでいれば生ドラムを打ち込みっぽい音にすることがよくあるんです。だから、この曲も違和感はなかったです。
──「Dive Into Deep」は夢幻的な世界観にマッチした、夢を見ているような感覚の歌詞も注目です。
谷川:この曲の詩は僕のネガティブなのか、ポジティブなのかわからない性格に起因しているんです。昔からそうですけど、僕はなにをするにしても最悪の状態を想定するんですよ。これをやるとなると、きっとこういうことが起こって自分は死ぬな……みたいな。イメージの中では、僕は何度も死んでいるという(笑)。だからこそ最悪を回避できている部分もあるのかなと思うけど、常に最悪を想定してしまう性格なんです。「Dive Into Deep」は、そこからのイメージで書きました。ただ、歌詞として表現するときに“最悪”ということをどう表現しようかなと思って。重た過ぎる感じにはしたくなくて、夢の中の話みたいにすることと、はっきり言わないということを意識しましたね。聴いてくれた人のイメージに任せるというところに落とし込みました。
──やりますね。もう1曲、吉田さんと谷川さんが共作されて、吉田さんが歌詞を書かれた「Roar」についても話していただけますか。
吉田:これは前作の『LIBYAN GLASS』(2018年9月)に入っていた「Libyan Glass」という曲と同時期に作った曲です。結構前のことなのであまり覚えていないけど、『ハリー・ポッター』を観て作った記憶がある(笑)。だから、“ポッター”という仮タイトルだったんです(笑)。「Roar」はサンバが香る、爽やかな曲に仕上がって気に入っています。歌詞はこの曲が今回のアルバムに入れることが決まった時点で書いて、“アニマル”ということをめちゃめちゃ意識しました(笑)。
谷川:“Animal Effect”というアルバムタイトルが先に決まったんだよね?
吉田:そう。今の世の中の状況と自分もそうですけど、言いたいことが言えないという人は多いんだろうなと思って。それをテーマにしつつアニマルの雄たけびと組み合わせて書きました。それで、“Roar=咆哮”というタイトルにしたんです。
谷川:なんか、最近はもう音楽の中でしか言いたいことは言えないみたいな感じになってきていますよね。音楽が唯一思いを言える場所になっているので、僕らは言いたいことをどんどん曲にしていこうと思っています。
──それがリスナーの心を救うことにつながると思います。救うといえば『Animal Effect』の全編で聴ける谷川さんのよりエモーショナルかつ熱い歌も、気持ちを引き上げる力に溢れていますね。
谷川:歌に関しては、僕的には逆に冷静に歌ったつもりです。すごく最近の話ですけど、歌で表現するにあたって自分を乗せすぎてしまうと、逆に届かないんじゃないかなと思ったんです。たとえば、すごく熱くなって“ガァーッ!”と歌っている姿を見て、押しつけられているように感じてしまうことがたまにあって。自分の歌もそういうところが結構あるんじゃないかなと思って、今回はできるだけ冷静に、抑揚もつけずに……ということを意識しました。
──ということは、冷静に歌った歌が熱く聴こえるということになりますね。
谷川:そう、そういうことだと思います。これも知り合いの受け売りですけど、言葉というのは言葉自体が力を持っているので、そこに自分の気持ちをつけ加える必要はない。逆に、つけ加えると歪んでしまうということを言っている人がいて。あと、僕は去年の12月に舞台音楽というお仕事をいただいたんですけど、僕は加藤拓也君という演出/脚本を手掛けている人と数年前から一緒にやらせてもらっているんです。その加藤君が俳優さんによく言うのが、たとえば、「ありがとう」と言うときに、“ありがとう”と思わんといてと。たしかに、実際人が誰かになにか言うときというのは、絶対頭の中には別のことが浮かんでいると思う。歌の表現でも同じようなことが起きているんじゃないかなと気づいて、冷静に歌う、感情を乗せすぎないということを意識するようになったんです。
▲UNCHAIN/『Animal Effect』
──その結果、“熱い”といっても暑苦しかったり、鬱陶しい歌ではなくて、力や躍動などを感じさせる歌になっています。さて、UNCHAINは昨年メンバー脱退とコロナ禍という2つの危機を同時に迎えましたが、『Animal Effect』はバンドの明るい未来を感じさせる一作になりました。新体制のアルバムリリースに加えて、4月18日に行うオンラインライブも楽しみです。
谷川:『Animal Effect』をお披露目する場を作りたくて、配信ライブをすることにしました。未だに配信ライブというのは不思議なものだなと思っているところもありますけどね。どういうテンションで演奏したらいいのか、わからないんですよ。
吉田:MCが一番大変そうだね。
谷川:うん、ツラい(笑)。それも含めて、これはライブなのか、ライブじゃないのか……みたいに思ってしまう。
谷:僕は苦にならないですね。去年の9月に初めて配信ライブをすることになって、やる前は変な感じがするだろうなと思っていたんですよ。でも、いざやってみたら意外と楽しくて、配信ライブも悪くないなと思いました。4月はさらにいい感じでいけると思うので、楽しみにしています。
吉田:谷君は、ラップもやるしね(笑)。
谷:ラップ……やるのかな?
一同:やるでしょう!(笑)
谷:そうだね。ラップもする……と思います(笑)。
谷川:アハハ(笑)。あとは、去年の9月もそうだったけど、4月のライブはサポートメンバーは入れずに3人だけでやろうと思っているんです。それがどうなるのかというところは、ひとつ楽しみにしていてほしいですね。
吉田:そうだね。9月に配信ライブをしたときはライブ自体が久しぶりだったし、初めて3人だけということで不安がいっぱいあったんですよ。でも、ライブをして3人でも全然大丈夫だなと思ったんです。今度のライブでも4人だった頃とはまた違うUNCHAINのよさを味わってもらえると思うので、期待していてください。
谷川:配信ライブは変な感じがするけど、東京にいながら全世界に自分達の音楽を届けられるから、そこはいい部分ですよね。なので、4月18日はカメラの向こうで観てくれている世界中の人達に思いを馳せながらライブをしようと思っています。でも、やっぱり早くまた観客を入れてライブができるようになってほしい。ライブというのはお客さんと同じ空間を共有して、みんなでひとつになることが醍醐味だから。コロナが収束して有観客でライブができるようになったら、もうガンガンやっていこうと思っています。
谷:今年はツアーを、まわりたいですね。会場にきてくれた人達に最高の時間を過ごしてもらえる自信はあるんですよ。もう少し我慢したらその日がやってくると思うので、それまではCDを聴いて予習していてほしいです。
吉田:今年できるかわからないけど、僕の中には4人でのラストライブをやって、ちゃんと区切りをつけたいという気持ちがあるんです。そうじゃないと、本当の意味で先へ進んでいけない気がするから。だから、3人編成の今後のライブ展開を考えつつ、4人のラストライブも実現させたいですね。あとは、今後は谷君にどんどん歌ってほしいなと思っています(笑)。
谷:……はい、わかりました(笑)。
取材・文◎村上孝之
New Album『Animal Effect』
CRCP-40624 / ¥3,000+tax / CROWN STONES
[CD]
1.Elephant Ship
2.Choices
3.Wait For The Sun
4.Touch My Soul
5.Not Too Late
6.Like A Star
7.Roar
8.Dark Horse
9.Dear Jay
10.Dive Into Deep
11.Stay Broken
12.deracine(※「e」の上に「'」が付きます)
※法人別オリジナル特典あり。詳細はUNCHAINオフィシャルサイトを参照。
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