【インタビュー】lyrical schoolから届いた、『Wonderland』への入場券

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5人組ガールズ・ラップ・ユニットのlyrical schoolが、ニューアルバム『Wonderland』を完成させた。コロナ禍のYouTube配信などでそれぞれの個性をさらに磨き上げ、豪華クリエイター陣からの愛溢れる楽曲に全力で向き合い、生き甲斐としてきたライブに対する渇望を爆発させながらレコーディングに挑んだという本作。一瞬にも永遠にも思える多幸感が味わえるアミューズメント・パークへワープするような、興奮と、未知なる感覚への驚きが押し寄せるアルバムだ。今回はメンバーを代表して、risanoとhinakoに話を聞いた。

  ◆  ◆  ◆

■信頼し合うしかない

──前回取材させていただいたのは去年の3月。あれから1年経ちましたが、この間はどんな思いで過ごしていましたか?

risano:それまで毎週末、当たり前のようにライブをやっていたんですね。土日でオフの日ってないくらいやっていたから、最初の1〜2週間は新鮮だったんですよ。家族と一緒にいられるし、「これが土日かぁ」なんて思いながら(笑)。

hinako:週末にゆっくり家にいるとか、なかったからね。

risano:でもしばらくすると、とにかく仕事をくれと(笑)。なんでもいいから、何かやりたい。だけど人前にも立てないし、もうどうすればいいの!?って、不安でしかなかったですよね。

hinako:次のライブの予定が立てられないし、自粛期間の終わりも見えないし。

risano:そう。最初はこの期間を使って歌とかダンスとかもっと上手くなってやろう!みたいな感じでモチベーションも上がっていたんだけど、いやいや、ずっとひとりでは無理だと(笑)。状況がなかなか良くならなかったから、もしかしたらこれはこのまま元には戻らないってこともあるのかなと思ったら、やる気も失せちゃって。

──そんな時に始まったのが<REMOTE FREE LIVE>。メンバーの元気な姿を見られて、ちょっと泣きました(笑)。

risano:嬉しい!

hinako:ありがとうございます!あの頃は私たちだけじゃなくてみんなお家時間を過ごしていたから、みんながそれぞれの思いで過ごしている中で、どういう風にエンターテインメントを届けるかみたいなことはすごく考えましたね。メンバーもスタッフも迷いながらだったけど、ああいう風に、リモートだけどライブができる、発信していけるっていうことになって、改めて、お家にいてもエンターテインメントはなくてはならないものだなって思ってもらえるきっかけにはなったかなと思いました。




risano:収録は大変だったけどね(笑)。

hinako:うん。メンバー全員揃って、リハーサルして、お客さんの前に立ってライブをするのとは大変さが違ってた(笑)。

risano:ありがたみを痛感しましたね。お客さんの前でライブをするっていうことの。

hinako:息を合わせるとか、タイミング見るとか、歌えない子がいたらカバーするとか。そういうこともメンバーが隣にいるからこそ出来ていたことなんだなって思った。あとはお客さんのリアクション!

risano:本当にそれ!やるからには無観客にも慣れないといけないんだけど、やっぱりお客さんの顔を見て伝わるものがあってこそ、やり甲斐とか生き甲斐を感じてたからね。

hinako:お客さんがいるライブって、あっという間に感じるんですよ。楽しいから。でも配信のためのカメラに向かってひとりでだと、こんなにも長く感じるんだなっていうのはありましたね。

──じゃあ8月にやった、上野恩賜公園野外ステージでのファンクラブ限定ライブは…。

risano:最高でした!すごかった!生き甲斐が戻ってきた!って、1曲目から泣きそうでしたから。お客さんも声は出せないんだけど、その声以上の感動の拍手みたいなものが沸き起こって。

hinako:一体感がすごかったよね。

risano:初心を忘れちゃいけないなっていうことも感じた、いい経験でした。



──そのライブに合わせる形で配信限定EP続編『PLAYBACK SUMMER ver.1.1』がリリースされたりもしましたが、スケジュール的には、今回のアルバムの作業もそれくらいからスタートしたんですか?

risano:そうですね。でもいつもとは録り方も違って、メンバーに会えなかったんですよ。スタジオの換気が必要だから、順番をしっかり決めて入れ替わりでやったんです。だからもう、信頼し合うしかないんですよね。「きっとこう歌っただろうな」って察して、自分も歌うみたいな。

hinako:会えないから、いつもみたいな会話もあまり出来ないままだったからね。

risano:だから変な話、出来上がったものを聴いて「こういう風にバース歌ってたんだ!」「これ何、かっこいい!」って知ることも多くて(笑)。逆に新鮮でした。

▲risano

──そういう過程を経て完成したのが、ビクター移籍第2弾のアルバム『Wonderland』。コンセプトやテーマなど、ある程度固めた上で制作を始めたんですか?

risano:いや、今回はプロデューサーからは詳しい話を聞かずに始めました。PESさんが作ってくださった(先行1st配信シングルである)「Bright Ride」と、valkneeさんがリリックを書いてくださった(先行2nd配信シングルの)「FIVE SHOOTERS」、この2曲を最初に録りました。今回はとにかくどの曲もバリエーション豊富で、クレイジーでポップで、それぞれにカラーのあるものばかりだったから、そういうアルバムになるんだろうなと(笑)。「今回のコンセプトはこうなんです!」ではなく、自分としてはすごく好きなように1曲1曲に向き合っていったって感じでしたね。



hinako:曲ごとのイメージはすごくしやすかったけど、その分難しいなって思ってた(笑)。かっこいい!とか楽しい!だけじゃなくて、そのひとつひとつがまた振り切ってるから(笑)。今回、例えば「TIME MACHINE」で私はとても低い声で歌ったりしているんですが、声にどんな表情をつけて歌えばいいかなど、すごく考えながらレコーディングに挑んだんですよね。私、本当に英語が苦手なんですよ。(この曲を録ったときは緊急事態宣言が明けていたので)メンバーに助けてもらいながら、ずっと練習しました。あ、英検は持ってるんですけどね(笑)。

risano:へー!

hinako:筆記はいいんだけど発音が一切ダメだから、本当に挑戦でした。でもminanちゃんとかスタッフさんが「hinakoが低音を出すのはすごく新鮮だし、一番合ってると思うよ」って声掛けてくれたりして、結果的に自分の新しい一面を知ることが出来たんですよね。(今までのように)私は「かわいい」に全部振らなくてもやれるんだって、気づけたアルバムでもあります。

risano:この「TIME MACHINE」はKMさんとLil' Leise But Goldさんの楽曲なんですけど、まさかご一緒できるとは思っていなかったから本当に嬉しくて。

hinako:メンバーみんな喜んでたね。



risano:あと、配信ライブでもご一緒できたKick a Showさんが、今回もSam is Ohmさんと「Danger Treasure」を作ってくださったのも嬉しかった。ALI-KICKさんの「MONEY CASH CASH CASH」を聴いた時は、「え?これ、うちらの曲?」「これ歌っていいの!?」って思うくらい驚きましたけど。

hinako:あれは挑戦だった(笑)。

──いい意味でこれまでのlyrical schoolのイメージを裏切っているから、私もプレイボタン押し間違えたかと思って画面のアーティスト名を見直しました(笑)。

risano:それそれ(笑)!このアルバムを聴く方には、まさにそのリアクションをやってほしいんです(笑)。「これ誰!?」って、思わず二度見するみたいな。

hinako:それくらいの感じ、絶対あるよね。

risano:ちなみにこの曲、ディレクションもすごかったんですよ。ガヤで、アイドルが出しちゃいけないようなクレイジーな声を求められたり(笑)、minanちゃんとhimeに対して「もっとrisanoみたいに!バカになって!」とかオーダーしてたり(笑)。

──(笑)。hinakoさんの「次の一万円札の絵柄は アタシだっ!」というフレーズがある「Fantasy」もインパクトありましたね。

hinako:(笑)。この曲、MVもすごく見応えがあるんですよ。出来上がるまで、自分たちも何がどうなっているのかわからない状態で撮影しました。美術や小道具とかもすごく拘ってるから、細かいところまで何回も見てほしいです。



risano:この曲はchelmicoのRachelさんが手掛けてくださったんですけど、メンバーのこともよく知ってくださっているから、今のこの状況もそうだし、きっと私たち自身のことも踏まえて書いてくださったんだと思うんですよね。だから歌いながらめちゃくちゃテンション上がるし、「そうそう!確かに!」「なんてファンタジー!これこそファンタジー!」っていつも思う(笑)。すごく私たちにマッチしてると思っています。

──今お名前が上がったchelmicoのRachelさん、「TIME MACHINE」のLil' Leise But Goldさん、そして前回も参加されていたvalkneeさんが「SHARK FIN SOUP」と「FIVE SHOOTERS」を手がけるなど、女性アーティストの方が参加されているのも今作のトピックですね。

hinako:そうなんです。前作の時にvalkneeさんが「HOMETENOBIRU」という曲のリリックを書いてくださったのが初めてだったんですが、やっぱり共感しやすい部分は多いですね。

risano:Lil' Leise(But Gold)さんは初めてだったんですが、ご本人の仮歌がもうめちゃくちゃカッコ良くて。だから、私すっごく苦戦しました。

hinako:苦戦してたね(笑)。

risano:「どうしてもLil' Leiseさんになりたい!」って思ったくらい。味があって、それがすごくカッコ良くて、だからこそ難しかったです。

──valkneeさんの「FIVE SHOOTERS」あたりからの後半戦は、気持ちがググッと高揚していって、感動すら覚えるエンディングだったなと思いました。

risano:嬉しい!でも確かにそうだね。

hinako:うん。最初から最後までマルッと聴いてもらうためのアルバムだから、そういうところを感じてもらえると嬉しいです。でも本当に感動するよね。

risano:最後の「SEE THE LIGHT」なんて、「ゴスペルじゃないか!」って思った(笑)。「私たち、こういうのも歌っていいんだ!」って思ったし、完成して自分たちの声が合わさった時は本当に感動しました。涙、出そうになった。

hinako:嬉しかったよね。世界規模でいろんなことが制限されている時期に、新たな自分を発見できたり、いろんなことに挑戦させてもらえるアルバムを作れたってことにも感動したし、曲を作ってくださった皆さんも、スタッフさんもメンバーも含めて、やっぱりlyrical schoolだよねって思った。みんなでがんばってよかったなって、すごいそういう気持ちがウワッと溢れました。

▲hinako

risano:メンバーのリアルなエモさも、この「SEE THE LIGHT」には反映されていると思う。コロナ禍で会えなかった分、さらにね。

hinako:うん。この時期、ファンのみんなにも会えなくて、でもみんながいてくれるから私たちはlyrical schoolで居られるので。「歌わせてくれてありがとう」、「聴いてくれてありがとう」って思いを込めて歌いました。

──13曲目の「Curtain Fall」もアルバムの締めとして成立する曲だなと思いましたが、「SEE THE LIGHT」があることで、めちゃくちゃ楽しく過ごした“ワンダーランド”での1日の余韻みたいなものが生まれている気がしました。

risano:これは後でプロデューサーに聞いたんですが、本当は「Curtain Fall」で終わろうとしていたそうなんです。でも作っていくうちにもうひとつ最後にリアルなエモさみたいなものを入れたいということで、「SEE THE LIGHT」を持ってきたみたいです。いやぁ、作家陣の皆さんに本当に感謝です。

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