【コラム】Official髭男dismの「Universe」に込められたタイムレスなパワー

Official髭男dismが『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』の主題歌を担当するというニュース（2020年11月）は、大きな喜びとともに拡散された。

AppleMusicの「2020年トップソング100：日本」では1位の「Pretender」をはじめ、100位以内に何とOfficial髭男dismの楽曲が11曲ランクイン。アジア最大級の音楽授賞式「2020MAMA」で「ベストアジアンアーティストジャパン賞」を受賞するなど、いまや日本を代表するアーティストとなった彼らが、やはり日本を代表するコンテンツである『ドラえもん』の楽曲を担当することは、いわば必然であると同時に、“どんな曲が生れるんだろう”というワクワクするような思いをかきたてたのだ。

果たして主題歌「Universe」は、こちらの期待を軽々と超える素晴らしい楽曲となった。映画のストーリーとリンクしながら、普遍的なメッセージに結びつけた歌詞。古き良き音楽を現代的なポップミュージックに結びつけるサウンドメイク。そして、ソウルフルにしてポップな藤原聡のボーカル。「Universe」は2021年の音楽シーンの新たな潮流を創り出し、Official髭男dismのさらなる未来を切り開く楽曲だと言っていい。

今回の制作のために新たに購入されたというコンソール・ピアノのフレーズから始まる「Universe」。サウンドの基調になっているのは、60〜70年代のソウルミュージックだ。洗練されたブルーノートの感覚、彩り豊かなテンションコードを織り交ぜ、心地よいグルーヴを生み出す藤原のピアノ。くぐもった音質とタイトなアタック感を共存させた松浦匡希のドラム。現代的なファンクネスを体現するような楢﨑誠のベースライン。そして、軽快なカッティングやワウギターなどを交えた小笹大輔のギタープレイ。

さらに華やかなホーンセクションが加わり、温かさ、懐かしさ、新しさをバランスよく描き出しているのだ。古き良き音楽のエッセンスを丁寧に抽出し、現在進行形の音楽的なトレンドを加味した音像は、まさに彼らの真骨頂と言えるだろう。メンバーの演奏の特徴（“クセ”と言ってもいいだろう）も存分に活かされ、“すべての楽器が主役”と称すべきアンサンブルが実現しているのも、この曲の魅力。一聴して“かっこいい！気持ちいい！”という快楽に包まれ、何度リピートしても発見がある、まさにポップスの理想形だと思う。

“未来がどうとか理想がどうとか／ブランコに揺られふと考えてた”というフレーズではじまる歌詞も素晴らしい。この歌の根底に流れているのは、小さい頃からどれだけ考えても答えがでない“自分らしさ”や“人生の在り方”。“自分は〇〇である”“私の人生とは〇〇だ”と明確な答えを得ることもなく、迷いながら悩みながら日々を過ごしているすべての人に対して藤原は、「Universe」という楽曲を通し、“そのままでいい”というメッセージを送っている。

そのことをもっとも端的に示しているのが、最後の転調の後に置かれた“彷徨ってないで　こっちへおいで／今日は帰ろう”というラインだろう。ずっと悩み続けたり、がんばったりしなくていい。今日は家に帰って、また明日がんばろう──この曲を聴けば、そんなホッとするような気持ちに包まれるはず。しっかりと韻が踏まれ、耳に飛び込んできたときの気持ちがあるのもこの歌詞の魅力だ。



1月9日に公開され、680万回以上の再生数を記録しているミュージックビデオについても改めて紹介しておきたい。最初に映し出されるのは、自分の部屋で勉強している女の子。窓の外に不思議な光が映り、カーテンを開けてみると、そこは楽器や録音機材が置かれているコントロールブースが。まるで宇宙船のようなスタジオでは、白い衣装に身を包んだメンバーが、「Universe」を演奏している。

女の子が卓をイジると、赤や緑にスタジオの色が変化。さらに海の中や宇宙空間などにワープし、女の子はその様子を驚きながら、楽しい表情で見つめている。ドラえもんの世界のリンクするような時空を超えた映像を手がけているのは、Official髭男dismのミュージックビデオを数多く手がけている新保拓人だ。

ポップミュージックに対する深い造詣と奔放なトライアルを結び付けながら、新たな代表曲と呼ぶべき楽曲へと昇華された「Universe」。楽曲、ミュージックビデオ、映画を含めて、この楽曲の多彩な魅力とタイムレスな力をたっぷりと体感してほしいと思う。

文◎森朋之