【ライヴレポート】L'Arc-en-Ciel、<L'APPY BIRTHDAY!>に虹の架け橋「みんなで未来をつくっていきましょう」
L'Arc-en-Cielが5月29日および30日の2日間、30周年記念ライヴ<30th L’Anniversary Starting Live “L'APPY BIRTHDAY!”>を千葉 幕張メッセ国際展示場1-3ホールにて開催した。先ごろ公開した同公演のオフィシャルレポートに続いて、オリジナルレポートをお届けしたい。
◆L'Arc-en-Ciel 画像 / 動画
<30th L'Anniversary Starting Live “L'APPY BIRTHDAY!”>は初ライヴから30年を記念して開催されたものであるが、単なるアニバーサリーとは異なる意味合いも持つ。2020年、8年ぶりのアリーナツアーとして実施された<ARENA TOUR MMXX>は、大阪、愛知、埼玉を廻ったあとの横浜と東京公演がコロナの影響で中止に。幸運にも同ツアー初日の大阪城ホールを体験したが、センターステージという距離の近さと、久しぶりのツアーという旅を楽しむメンバーの明るい表情が強く印象に残っているだけに、中断は本当に悔やまれた。しかし、彼らがあのツアーで得たものは間違いなくあったはず。そして、待ちかねたこの二日間。ライヴに懸ける想いは、オーディエンスもさることながら、バンドサイドも限りなく大きかったはずだ。
▲2021.05.29@幕張メッセ国際展示場1-3ホール
メモリアルな5月30日、局所的に雨が降った地域で、雨上がりに虹がかかったという目撃ツイートが相次いだ。まさに天からも祝福を受けた記念日が、2021年5月30日だ。幕張メッセには、グッズのバットマラカスライトや鳴り物など、さまざまな工夫をこらしてこの日を迎えたオーディエンスが集結していた。ステージ上方には“L'Arc-en-Ciel 30th L'APPY BIRTHDAY!”の文字が輝き、早くも祝祭ムードが漂う。期待が高まるなか、暗転とともにスクリーンに流れたのは、インディーズ時代から現在までをライヴ映像やミュージックビデオで辿るムービー。カウントダウンのように“X”の文字が一つずつステージ背景に浮かび上がると、3つの“X”が並んだところで1曲目の「X X X」がスタートした。ローマ数字の“10”であると考えれば、“30”とも読める楽曲がオープニングとは心ニクい演出だ。
yukihiroのタイトなリズムとtetsuyaの躍動するベース、kenが刻むヘヴィなリフとhydeの蠱惑的(こわくてき)なハイトーンボイスが絡み合い、一気にL'Arc-en-Cielのディープな世界が幕を開ける。とはいえ、がっちり作り込んだ堅苦しさや緊張感は感じられない。hydeがL'Arc-en-Cielのライヴとしては珍しくカジュアルなテイストのヘアメイク&衣装なのも象徴的で、これまでのアニバーサリーライヴとはひと味違う空気感もある。ステージ上を縦横無尽に飛び回るドローンカメラがあらゆる方向からメンバーを捉えたドキュメンタリー感のある映像も新鮮だ。
2曲目に軽やかなポップチューン「Caress of Venus」を届け、「ようこそいらっしゃいました! 会いたかった? 俺も会いたかった」とhydeが語りかける。「みんなの声が聞けないのは残念ですけど、そういうプレイも悪くないなと……」といたずらめいた言葉から、スリリングな「CHASE」へなだれこみ、エッジーなバンドサウンドで会場を席巻する。かと思えば、透明感溢れる音像が美しい「winter fall」から、hydeのブルースハープが彩る「flower」と、時代を軽々と越える名曲が並ぶ意外な展開へ。30年で多彩な楽曲を生み出してきたからこそ、組み合わせは無限だ。この日のセットリストは、これまでにない組み合わせによって、楽曲の魅力が新たに開花していたように思う。
▲2021.05.29@幕張メッセ国際展示場1-3ホール
「三十路ってことで、大人っぽいL'Arc-en-Cielを見せようかなと思っています」と披露されたエロティックな「metropolis」から「DAYBREAK'S BELL」へ繋いだダークな流れ。また、ライヴでは定番のアグレッシヴな「REVELATION」から、一気に宙へ解き放たれるような「NEO UNIVERSE」の爽快感。生み出された時代はバラバラなのに、不思議なほど共鳴し合うのは、L'Arc-en-Cielの楽曲ならではのマジックと言っていい。
「NEO UNIVERSE」のサイバーな側面を引き継ぎ、怪しげな空気に塗り替えた「get out from the shell」、さらに、ステージ上の炎とともに情念が燃え上がる「花葬」から、インダストリアルなトラックで繋がった「EVERLASTING」のシンクロ具合には息を呑んだ。そこから雷雨の音のなかでkenが悲愴なギターソロを奏で、雨が上がる演出と同時に「MY HEART DRAWS A DREAM」の浄化されるような名フレーズが響き渡る展開は、まるでひとつの映画のよう。闇から光へ、激しさから儚さへ──hydeは時にシャウトし、時に神々しいファルセットを響かせながら、驚くほど幅広い音域の声を操って、さまざまな感情が宿る楽曲を表現していく。tetsuyaのコーラスワークがその歌に寄り添って盛り上げ、kenのメロディアスなギターも華を添える。yukihiroのドラミングは、どんなアレンジの楽曲でも一分の隙もない。4人それぞれの個性と進化が重なり合うことで、L'Arc-en-Cielの無二の存在感がますます研ぎ澄まされているのを感じた。
オーディエンスもまた、楽曲ごとにバットマラカスライトの色を変えるなど、重要な一員としてバンドとともに世界観を作り上げていく。いつもならば、“夢を描くよ”とシンガロングが巻き起こる「MY HEART DRAWS A DREAM」では共に大きな声を上げて歌うことはできなかったが、明るく照らされた会場を温かい眼差しで見つめるメンバーの姿が感動的なワンシーンとなった。
後半戦は「Driver's High」「HONEY」とキラーチューンを連打。hydeがtetsuyaと肩を組んだり、kenが花道でソロを掻き鳴らしたりとパフォーマンスも加熱する一方のなか、hydeが「すげえの見せてくれよ! 俺たちのお祝いをしてくれよ!」と煽って「READY STEADY GO」が炸裂。オーディエンスの満場のジャンプで応え、会場を揺らせてみせた。
▲2021.05.30@幕張メッセ国際展示場1-3ホール
長いインターバルを挟んだあと、LEDビジョンに映し出されたのは、海外公演も含めた歴代のライヴから「あなた」のシンガロングシーンだ。世界中の人々が歌い繋いできたあのメロディが会場に流れ、今の映像に繋がったところで「あなた」がスタートする演出に、思わず涙腺が緩んだ。このライヴも、歴史のなかの1ページとなっていくはず。そしていつか、またみんなで歌う日がきっと来る──そんな熱い想いを受け取ったhydeが、「気持ちは伝わってきた。嬉しいね」と会場を見渡して微笑んだ。
続いて、「30周年に合わせてつくった曲をやります。これからもみんなで未来をつくっていきましょう」と披露されたのが、約4年半ぶりの新曲「ミライ」だ。シンフォニックなアレンジに乗せて、いつになくストレートな歌詞から、未来を目指す意志がダイレクトに伝わってくる。30周年の節目に、歴史を顧みるのではなく未来を見つめたL'Arc-en-Ciel。hydeが歌いながらまっすぐ手を伸ばした先に、4人がこれから開く新しい扉が見えている気がした。
最新曲から一転して、原点を確かめるようにインディーズ時代の名曲「Dune」が放たれたあと、疾走感溢れる「GOOD LUCK MY WAY」へ。hydeが花道の端で身を乗り出して煽り、荒々しい歌声を聴かせる。誰にも止められない熱狂が渦巻くまま、ラストスパートを駆け抜けた。
▲2021.05.30@幕張メッセ国際展示場1-3ホール
「いろんな気持ちでここに集まってくれたと思います。長い間、俺たちを想ってくれて、ほんとに嬉しい。いつ観れるかわからないようなバンドに、よくぞついてきてくれたと思います。年取って丸くなるバンドもいると思いますが、僕らはこれからも尖っていくと思うので、よろしくお願いします(笑)。よい作品をこれからも作って……届けられたらいいなと思ってます」──hyde
アニバーサリーライヴのたびに繰り返し感謝を伝えてきたhydeだが、今回は感謝に加えて、“その先”を感じさせてくれるものだったように思う。そして、ラストに贈られた「虹」の力強い不朽のメロディが、バンドとオーディエンスを繋ぐ架け橋、過去から未来へ繋がる架け橋となって心に染み渡る。アウトロに「♪HAPPY BIRTHDAY」のフレーズを入れ込む粋なアレンジもあいまって、会場中をポジティヴな七色の光が満たす圧巻のフィナーレだった。
ステージの隅々まで歩いたあとhydeとハイタッチを交わしたtetsuyaは、笑顔で「またねー!!」と叫んでステージを降りた。終演後、LEDビジョンにも“SEE YOU NEXT”の文字が輝く。改めてタイトルを見ると、<30th L'Anniversary Starting Live>とある。まだ30周年は始まったばかりということだ。今夜の眩しい思い出を胸に刻み、また4人に再会できる時を心待ちにしている。
取材・文◎後藤寛子
撮影◎岡田貴之/石川浩章/河本悠貴
■<30th L'Anniversary Starting Live “L'APPY BIRTHDAY!”>2021年5月29日(土)/30日(日)@幕張メッセ国際展示場1-3ホール SETLIST
02. Caress of Venus
03. CHASE
04. winter fall
05. flower
06. metropolis
07. DAYBREAK'S BELL
08. REVELATION
09. NEO UNIVERSE
10. get out from the shell
11. 花葬
12. EVERLASTING
13. MY HEART DRAWS A DREAM
14. Driver's High
15. HONEY
16. READY STEADY GO
17. あなた
18. ミライ
19. Dune
20. GOOD LUCK MY WAY
21. 虹
<30th L'Anniversary Starting Live"L'APPY BIRTHDAY!">ライヴ配信
※詳細は後日発表
■新曲「ミライ」
ダウンロード/ストリーミング: https://kmu.lnk.to/LArc-Mirai
※PC向けオンラインゲームタイトル『BLUE PROTOCOL』のオープニングムービー・テーマソング
『BLUE PROTOCOL』作品情報
ジャンル:オンラインアクションRPG
公式サイト:https://blue-protocol.com
公式Twitterアカウント:https://twitter.com/blueprotocol_jp?lang=ja
YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCQitQB5ISPu10a-DW5usIfg
※本ゲームは開発中につきサービス開始前になります。
運営・プロデュース:株式会社バンダイナムコオンライン
開発:株式会社バンダイナムコスタジオ
(C)BANDAI NAMCO Online Inc. (C)BANDAI NAMCO Studios Inc.
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