【ライヴレポート】L'Arc-en-Ciel、アリーナツアー<UNDERGROUND>東京公演に無限の広がり「今がいちばんカッコいいんじゃない?」

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L'Arc-en-Cielが東京 国立代々木競技場 第一体育館のファンクラブ会員限定公演を皮切りに、2月8日より<ARENA TOUR 2024 UNDERGROUND>を開催した。その後、大阪城ホールから再び国立代々木競技場 第一体育館を経て、マリンメッセ福岡、ポートメッセなごや、さいたまスーパーアリーナ、横浜アリーナと続いた2年2ヶ月ぶりの全国ツアーが、大盛況のうちに幕を閉じた。

◆L'Arc-en-Ciel 画像

“これまで披露の機会が少なかった楽曲群にスポットを当てる”と事前に宣言されていたとおり、セットリストには20年以上の時を経て演奏された楽曲も並ぶ。いわゆるベストセレクションではないからこそ体感できた時代を越えて唯一無二であり続けるL'Arc-en-Cielの世界の深淵。ツアー中盤となる3月7日の国立代々木競技場 第一体育館公演のレポートをお送りする。


会場に足を踏み入れると、センターステージと十字に伸びたランウェイが目に飛びこんできた。360度型の円形センターステージは2021年の<30th L'Anniversary TOUR>でも採用されていたが、改めて客席とステージの距離が近いと感じある。ランウェイ先端の席などは、ライヴハウスに匹敵する至近距離だ。その近さゆえか、開演を待つ客席には興奮と緊張が滲み、早くも熱気が漂っている。一方、BGMとして冷たい雨音と雷鳴が響く会場は、<UNDERGROUND>のタイトルにふさわしくダークな雰囲気。そのままゆっくりと暗転し、ホラー映画のようなオープニング映像とともに<ARENA TOUR 2024 UNDERGROUND>の7公演目が幕を開けた。

センターステージ上段を覆う八方に設置されたLEDヴィジョンに映された黒いフードを被ったメンバー4人が儀式を行う映像に目を奪われていると、いつの間にか紗幕に覆われた実際のステージにhyde、ken、tetsuya、yukihiroの姿が。直後、鋭いピアノの旋律で始まったのは11thアルバム『KISS』収録曲「THE BLACK ROSE」だ。kenがザクザクと刻むヘヴィなリフパートから、ジャズ風のアレンジを挟み、hydeは激しく頭を振り乱しながらシャウト。アグレッシヴかつ艶やかなL'Arc-en-Cielの色が会場を染め上げていく。大歓声の中で紗幕が落ち、「EXISTENCE」「THE NEPENTHES」とヘヴィなリフを軸とした攻めの楽曲を連投。「THE NEPENTHES」のtetsuyaのスラップやyukihiroのタイトかつ正確無比なドラミングが昂揚感を煽り、炎の特効も相まってロックバンドL'Arc-en-Cielが強烈な存在感を放つ。





一瞬の間を置き、kenの澄んだギターストロークからの「砂時計」で空気が一変。先ほどまでの地を這うヘヴィさから、浮遊感たっぷりのサウンドとメロディが降り注いだ。続くバラード「a silent letter」では、儚い祈りのようなhydeの美しいファルセットに、kenのアルペジオとtetsuyaのベースラインが寄り添い、yukihiroが温かいビートでそっと背中を押す。ゆっくり回転するステージの背景に広がるL'ライト(ペンライト)の光が、瞬く星空に見えた。

場内に赤い照明が妖しく輝き、hydeが奏でるサックスの音色が印象的な「Ophelia」へ。ステージが深い夜のムードに染まると、tetsuyaのベースソロからインディーズ時代の楽曲「Taste of love」になだれ込んだ。初期L'Arc-en-Cielらしいニューウェイヴ/ポストパンクの耽美な要素が、今の彼らの洗練されたアンサンブルと絡み合って令和に覚醒。hydeは当時を彷彿させる節回しと鍛え抜かれた歌唱力を融合させ、退廃的な歌詞を妖艶に歌い上げる。軍服風の衣装を着こなしたhydeを足下の金網越しに捉える映像も刺激的だ。オープニングからここまでノンストップで7曲を畳みかけた4人。まさしくL'Arc-en-CielのUNDERGROUND感満載のパフォーマンスに圧倒され続けた。

しかし、<UNDERGROUND>は、ただ刺激的でヘヴィな世界というわけではない。レトロフューチャーテイストの映像を挟んだ後半は、前半とはまったく違う光景が待っていた。そのオープニングは、1stアルバム『DUNE』収録曲「Voice」から。風が吹き抜けるようなイントロに揺られ、hydeが丁寧にメロディを届けていく。そのあとの「Vivid Colors」「flower」で、この夜初めてのシングルナンバーが登場。ポップながらも、メランコリックな切なさを孕む2曲を選ぶところが<UNDERGROUND>ならではだ。一層盛り上がる会場を見渡して、メンバーの表情にも笑顔が浮かぶ。「flower」では、花道に歩み出たtetsuyaに、その背後からhydeが近づいて肩を組むというショットに会場から嬌声が飛んだ。


「L'Arc-en-Cielです! 会いたかった? 声を出せるようになって良かったね。やっぱりグッと来るよね、声って。センターステージはみんなが近くて、端まで全部見えてるから。いっぱい可愛がってやるよ。今日はあの頃の分も取り返そうぜ!」──hyde

回転する円形センターステージの上で「これ、一番声援が大きいところで止まるシステムだから(笑)」と煽り、「もっと!」と求めるhyde。このツアーから声出しが解禁されたとあって、喜びもひとしおだ。熱狂を高めたまま「It’s the end」へ。LEDヴィジョンに荒野の映像が流れ、サウンドが乾いた疾走感を纏う。

続く「Cureless」では映像が不穏なブラウン管テレビに切り替わり、一転して閉ざされた空虚さに心が掴まれる。kenがアコギを掻き鳴らす「Blame」で静かに脈打つのは、ノスタルジーと愁傷に満ちた激情。1曲ごとに歌とサウンドが色を変えていくさまに何度も驚かされた。hydeは、時に寄り添うように、時に突き放すように歌の温度を操り、kenとtetsuyaの繊細なフレージングとyukihiroが司るグルーヴがその声に輪郭を描く。L'Arc-en-Cielのライヴは、絵画などの芸術作品を観ている気持ちになる瞬間が多々あるが、後半のセットリストはまさにそうだった。


没入感が極まったのが「Blame」のアウトロでtetsuyaのベースが華やかに躍った余韻の中、荘厳なストリングスで始まった「叙情詩」だ。宮殿風に演出されたステージで、hydeがひとつひとつの言葉を大切に噛み締めて歌う。“♪季節は色を変えて 幾度巡ろうとも この気持ちは枯れない”──さまざまな心象風景を旅するような楽曲たちを経て、珠玉のメロディがそのすべてを肯定していく。痛みも哀しみも越え、たくさんの季節を越えて辿り着いたこの場所で、L'Arc-en-Cielの奏でる祝福に包み込まれた。

L'Arc-en-Cielにまつわるクイズ大会『THE L’ArQuiz』に客席が盛り上がったインターバルを経て、ラストブロックに突入。

雨が上がって青空が広がる映像が、<UNDERGROUND>からの旅立ちを予感させる。最後に虹が架かったところで、勢いよく「GOOD LUCK MY WAY」のきらめくイントロがスタートした。手拍子が迎える中、メンバー4人がそれぞれ花道の先端に突如登場するというサプライズに大歓声が湧く。ファーをあしらった衣装が目を引くhydeが「東京!」と煽り、tetsuyaはなんと花道を降りてフロアへ。オーディエンスと同じ目線でプレイする姿に会場全体の一体感がどんどん高まっていく。





改めて楽曲の振り幅の広さが凄まじく、誰しもを笑顔にさせる揺るぎないポップネスもまたL'Arc-en-Cielの顔のひとつだ。yukihiroの力強いビートが先陣を切る「Killing Me」から、「NEXUS 4」ではhydeがkenに接近すると、照れて逃げるkenを追いかけるhydeという微笑ましいシーンも。ライヴのクライマックスに向けて、ピースフルなムードに溢れていた。そして、そのままMCに入ったが、このフリートークがステージと客席との距離感を一層近づける。

そのフリートークでhydeがkenに「俺、可愛いでしょ?」と冗談めかして訊いたのをきっかけに、メンバー同士で「可愛い」と言い合う笑いと癒しが詰まった時間が流れる。当然、このユルさもL'Arc-en-Cielの魅力。ちなみに、今回のツアーはAIによるリアルタイム翻訳が採用されており、メンバーのトークが英訳されてLEDヴィジョンに表示される仕様になっていた。すべて正確な翻訳というわけではなかったが、外国人のファンの姿も多く見かけるライヴにおいて効果的だったはず。同時に、kenが「ChatGPTとは違うの?」と質問を投げかけるも翻訳ゆえ返答機能がないなど、トークのネタとしても一役買っていた。そしてライヴは後半戦へ。


ロマンチックな「Bye Bye」で別れの時間が近づいていることを優しく仄めかしたあと、hydeがステージの中央の高台に立って贈られたのは「ミライ」だった。30周年のタイミングで生まれ、<30th L'Anniversary TOUR>ではいつか全員で合唱できる時を夢見て披露されていた楽曲だ。伸びやかなロングトーンで魅了したhydeが、同曲後半でコンダクターのように手を振り、オーディエンスのシンガロングを導いていく。L'ライトの光とともに声を届ける観客もまた、たくさんの想いをメロディに重ねたはずだ。そのラストは虹色のレーザーと照明が会場を照らし、祝祭空間を作り上げた。さらに、アッパーな「Link」で多幸感を高め、ついに訪れた最後の1曲を前にhydeがこう語った。

「懐かしい曲を演奏しながら……当時のCDを聴いたりすると、ちょっと恥ずかしいんですけど(笑)。みんなこの曲が聴きたいんじゃないかなとか、今ならもっとうまく歌えるんじゃないかな、おもしろい表現ができるかなって思いながら練習してました。バンドは33年くらい経ちますが、まだまだ進化することはできる。今がいちばんカッコいいんじゃない? また、こうやって古い曲を演奏したりすることがあるといいなと思いますので、楽しみにしていてください」──hyde

会場を愛おしげに見渡しながら語ったhydeが「それでは、最後の曲をみんなで一緒に歌いましょう」と告げ、「MY HEART DRAWS A DREAM」へ。L'Arc-en-Cielのライヴを何度も彩ってきた“♪夢を描くよ”の大合唱が響き渡り、目映いフィナーレを迎えた。


<UNDERGROUND>を覗き込むことで、レジェンドバンドや稀代のヒットメーカーといった側面だけではないL'Arc-en-Cielの真髄をじっくり堪能できたスペシャルなライヴ。メンバー自身も、長らく演奏していなかった楽曲に今の4人で向き合うという刺激を楽しんでいたように見受けられた。この国立代々木競技場 第一体育館から続くツアーを走り抜けたあとのL'Arc-en-Cielは、どんな進化を遂げているのだろう。その先にどんなミライが待っているのだろう。彼らが描く夢は、これからも無限に広がっていくことを感じた一夜だった。

取材・文◎後藤寛子
撮影◎Hideaki Imamoto/Takayuki Okada/Yuki Kawamoto/Hiroaki Ishikawa/Tomohide Sodeyama/Viola Kam

■<L'Arc-en-Ciel ARENA TOUR 2024 UNDERGROUND>3月7日@国立代々木競技場第一体育館 SETLIST

01. THE BLACK ROSE
02. EXISTENCE
03. THE NEPENTHES
04. 砂時計
05. a silent letter
06. Ophelia
07. Taste of love
08. Voice
09. Vivid Colors
10. It's the end
12. Cureless
13. Blame
14. 叙情詩
15. GOOD LUCK MY WAY
16. Killing Me
17. NEXUS 4
18. Bye Bye
19. ミライ
20. Link
21. MY HEART DRAWS A DREAM

■『L'Arc-en-Ciel ARENA TOUR 2024 UNDERGROUND LIVE 写真集(仮)』

価格:¥7,000(税込)
サイズ:A4変型(W 約22.8cm × H 約30cm)
商品詳細:本文256ページ予定
第1弾申込受付期間:5月24日(金)18:00~6月30日(日)23:59
※8月上旬〜中旬以降順次発送予定
※L'Arc-en-Ciel OFFICIAL GOODS STORE購入特典:希望名(アルファベットのみ)をプリントしたオリジナルツアーレプリカパス
L'Arc-en-Ciel OFFICIAL GOODS STORE:https://official-goods-store.jp/larc-en-ciel/v2/product/detail/LEC249


■番組『L'Arc~en~Ciel<ARENA TOUR 2024 UNDERGROUND>』

2024年7月放送&配信予定
収録日:2024年4月6日および7日
収録場所:埼玉・さいたまスーパーアリーナ
番組ホームページ:https://www.wowow.co.jp/music/larc/
【WOWOW加入者限定プレゼント】
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応募締切:7月31日(水)23:59まで
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