【インタビュー】川崎鷹也、恋する人の背中押す「サクラウサギ」

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■同じ後悔なら

──楽曲が生まれて数年を経て新録なさって、過去の自分からの変化を感じる部分はありますか?

川崎:今回レコーディングするにあたって、歌詞とメロディは変えたいと思った箇所がひとつもなかったんです。当時と比べてギターの技術は上がっているので、ギターアレンジは新しい表現を使ってますけど、歌い方とか歌に対する熱量や考え方、表現は当時も今もまったく変わってないですね。5年経った今の僕ができる歌い方、みたいなものは正直「サクラウサギ」にはないんですよ。「魔法の絨毯」と真逆なんですよね。

──「魔法の絨毯」には“今の川崎鷹也”が反映されるけれど、「サクラウサギ」はあくまでサクラウサギちゃんの気持ちが主軸にあるということでしょうか。

川崎:ああ、そうかもしれない。「サクラウサギ」の主人公は僕じゃなくて、あくまで自分の頭のなかでパッケージされたストーリーのなかに生きている女の子だし、その女の子を変えたいとは思わないし。物語に対する僕の気持ちの入れ方は、当時からまったく変わってないですね。サクラウサギちゃんの代弁者というか、サクラウサギちゃんになりきって歌っているというか。この曲を聴いた人が“わたしはサクラウサギちゃんではなく、好きって言おう!”みたいに勇気が出たり、一歩前に進んでくれる人がいてくれたらうれしいな。

──“あなたはサクラウサギちゃんにはならないでね”という気持ちが含まれていると。

川崎:気持ちを伝えて後悔するのか、気持ちを伝えないで後悔するのか……同じ後悔なら想いを伝えたらいいんじゃないかなって。それをそのまま曲にするのではなく、聴いた人に感じてもらいたかったんです。

薄井:鷹也は高校時代からそう言ってたんですよ。僕が告白しようか悩んでるとき、男はあんまり相談しないんですけど、鷹也に相談したら今言ったことと同じことを言って、背中を押してくれて。だから僕が高校時代に告白ができたのは彼のおかげなんです。

川崎:で、結果はどうだったんだっけ?

薄井:めちゃくちゃフラレた。

川崎:(笑)。これ見出しだね。でもそんなアドバイスをしてる俺も、当時奥さんに想いは伝えられてなかったんですけどね。

──でも時を経て、想いを伝えてお付き合いすることになったんですから。「サクラウサギ」という曲は川崎さんを鼓舞するために生まれてくれたのかもしれませんね。

川崎:ははは。結果論ですけどね。曲を書いてしばらくしてから“ああ、この曲はそういうことだったんだな”と思うことは多い気がします。頭のなかから自然と同時に出てきた言葉とメロディで作っているし、それがいちばんだと思っているので、メロディと歌詞のどちらか一方だけ出てきて“ここにこの歌詞当てはまらないな”と思ったらそれはもう曲にしないんです。

──だからかもしれないですけど、川崎さんの楽曲はどれも、歌詞に描かれている主人公の気持ちや情景を、メロディがしっかりとキャッチしているんですよね。「サクラウサギ」なら気持ちが昂っているときにメロディは上昇するし、ひらひらと散っていくところは下がっていくし、気持ちが溢れてしまう瞬間はファルセットになって。

川崎:いろんな作詞作曲の仕方があるので正解はないんですけど、僕のなかでは歌詞とメロディが一発で合わないことを良しとしない。自分の頭のなかからなんとなく湧き上がった言葉とメロディにするので、なんとなくそんなふうに着地してるのかもしれないですね(笑)。一緒にステージに立ってたやつらは歌もうまくて、オリジナル曲もかっこよくて──僕のエネルギーはそういう悔しさから生まれているから。彼らに感化されて“俺ももっといい曲書きたい! 誰かの心を掴む曲を書きたい”と思ったんですよね。その気持ちが楽曲制作につながっている気がしますね。

──川崎さんが音楽を志す前に思っていた“ビッグになりたい”というものの答えが、“誰かの心を掴む曲を書きたい”だったのかもしれないですね。

川崎:うん、そうですね。だから聴いてくださる方々が増えてくださるのは本当にありがたくて。シンガーソングライターのやっていることは自己満足だと思うんです。自分の書きたいことを書きたいように、言いたいことを言いたいように言って、そういうものにこれだけの人の感情が動いてくれて、心に残ってくれるなんて、こんなにうれしいことはないですね。自分にとっての天職だなと思います。



──今の川崎さんは、サクラウサギちゃんみたいに伝えられない思いを抱えていますか?

川崎:いやあ、それはひとつだけありまして……。マネージャーに対して感謝の気持ちを伝えられないっていう(笑)。

薄井:ええ〜! そんなことないよ! 感謝してもらってるよ!

──ははは。仲いいなあ(笑)。

川崎:仲が良すぎて、この顔見て面と向かって“いつもありがとう”とは言えないですね(笑)。「サクラウサギ」を聴きながら賢也にも感謝したいと思います(笑)。

──(笑)。では最後に。アーティスト・川崎鷹也も「魔法の絨毯」も、SNSを超えてより広い場所へと届き続けている今日この頃ですが、現在の川崎さんの心境とは?

川崎:緊張する時間もないくらい怒涛で、充実した毎日を過ごさせてもらっています。コロナ禍ゆえに歌を伝えられる場が少なくなっているなかで、TVやラジオ、こういうインタビューも含めて、自分の表現を認めてくれる場が多いことはすごくありがたいことですし、この環境をずっと続けられたらなと思っていますね。

取材・文◎沖さやこ

リリース情報

配信シングル「サクラウサギ」
2021年1月15日(金)リリース

ライブ情報

<川崎鷹也 Acoustic LIVE 〜出会いと別れのひとり唄〜>
2021年3月28日(日)東京・品川インターシティホール
OPEN 16:00 / START 16:30
https://kawasaki-takaya.com/live/message.html

[問]TEL:050-5533-0888(平日12:00-15:00)
※新型コロナウイルス緊急事態宣言を受け休業中の期間があります。
詳しくは下記URLをご確認ください。
https://diskgarage.com/

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