【インタビュー】YOSHIKI EZAKIの美学「すべてにおいて、とらわれずに」

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2001年生まれのソロアーティスト・YOSHIKI EZAKIが2020年12月に1stフルアルバム『sweet room』をリリースした。2017年にMCバトルで頭角を現し、2018年には主宰ライブなどのライブ活動だけでなくサブスクリプションサービスでのリリースも精力的に行い、2019年にはセルフタイトルEPをリリースするなど、彼は高校生活と両立しながら本格的な音楽活動を続けてきた。今作は、その時間をほぼ音楽へと費やせたからこそ生まれたディープな1枚と言っていいだろう。19歳の彼が思う美学やリアルがダイレクトに詰まった1stフルアルバムの背景を探るべく、彼の脳内を覗いてみた。

  ◆  ◆  ◆

■やりたいことで稼げたらベスト

──EZAKIさんは今年(※取材日は2020年12月)高校を卒業なさったんですよね。

YOSHIKI EZAKI:そうです。3月に。

──となると生活がだいぶ変わった1年になったのではないでしょうか?

YOSHIKI EZAKI:小・中・高とちゃんと学校に通ってたんで、だいぶ変わりましたね。昼に自由に動けるようになるなんて人生で初めてだし、昼まで寝られるのが幸せすぎて(笑)。

──ははは。夜型人間さんなのかしら。リリックも眠りに関するワードが多いです。

YOSHIKI EZAKI:今年はいっぱい寝たからかな(笑)。夜アイデアが降ってくることが多いので、自然と夜型になっちゃってますね。高校卒業までは学校に行くとか、やることを決められているなかで生活していたけど、それを自分で自由に決められるし、決めていかなければいけない環境になったので、自分の行動に責任も伴うようになって──それがなんか、“ああ〜人生してんな”って思うんです(笑)。だから俺的にはめちゃめちゃ楽しい1年でした。

──EZAKIさんが音楽の世界に足を踏み入れたきっかけは、フリースタイルからだそうですね。そして2017年、ラップ歴数ヶ月でMCバトルイベントに出演する。

YOSHIKI EZAKI:高校生ラップ選手権の映像を観て、ラップはただなんとなく聞いていても、リズムが気持ち良かったんですよね。聴き心地が良かった。それでなんとなくやり始めて……その頃は音楽をちゃんとやるつもりがなかったので、サッカーの帰り道にフリースタイルやって遊ぶ、みたいな。バトルよりはビートを流してラップするのが好きだったんです。ラップは表現が複雑じゃないというか、思ったことをそのまま直で言葉にしていくところも良かったんですよね。でも曲を作り始めてから、いろいろ難しさを感じてます(笑)。

──EZAKIさんはフリースタイルでステージに立つなかで、自分の曲を持ちたいと思うようになる。その心情の変化の理由とは?

YOSHIKI EZAKI:もちろん(アーティスト活動が)楽しそうだからというのがいちばんの理由なんですけど……あと、お金を稼ぎたかったんですよね(笑)。

──へええ。お金ですか。

YOSHIKI EZAKI:やっぱ高校在学中に、卒業後のこととか考えるじゃないですか。稼がなきゃ生きていけないけど働きたくもないし、かといって勉強を努力してきたわけでもないし、サッカーのプロになる道もないし、このままじゃやべえなって。フリースタイルとバトルって、優勝しないと収入がないんですよ。だからバトルに出てた時は1円も稼いでなくって、じゃあ曲を作ればそれを売ってお金にできるなと思ったんです。今やりたいことは音楽だし、やりたいことで稼げたらベストだし、この道に賭けてみようって。

──ああ、なるほど。“生活する手段”も“夢”も同じものということですね。

YOSHIKI EZAKI:そうです、そうです。あとそこに“やりたいこと”を加えた、この3つが全部音楽だったんです。

──その“お金を稼ぐ”というのは大金持ちになりたいということですか?

YOSHIKI EZAKI:そうです(笑)。それのみ(笑)。サッカーをやっていたのも楽しいし、名選手になればとんでもない額を稼げるからだったんです。でもサッカーの道はめちゃくちゃ厳しくて。


──そんなときにフリースタイルという表現に出会ったと。10代はほとんどの人が“苦しくても夢を追う”か“堅実な道を選ぶ”のどちらかで迷うなか、なぜEZAKIさんは一獲千金を狙うマインドになったのでしょう。

YOSHIKI EZAKI:小さい頃からずっと目立ちたがり屋で、スターになりたいという願望もうっすらあって。そんなときに“世界の0.1%がお金持ち。この0.1%の人たちでほぼこの世界は回っている”という話を聞いて、そこに行きたいなと思ったんですよね。ここに行ったら目立てるし(笑)。

──スケールの大きな目立ちたがり屋さんですね(笑)。

YOSHIKI EZAKI:(笑)。曲作りも何もかも、全部が直感なんです。深く考えてないから確信はないけど、それが根源にあるのかなって気はしてますね。

──実際に自分の楽曲を制作して立つステージは、フリースタイルとは違いましたか?

YOSHIKI EZAKI:フリースタイルはそんなに自信なかったけど、自分の曲でステージに立っていくうちにファンが増えていって、俺以外の人が俺の曲を聴いてくれてるのがすごく新鮮で、うれしくて。それが自信につながっていきました。だからステージでも堂々とできるようにもなったんですよね。

──フリースタイルはその瞬間を刻む言葉だけど、楽曲は残っていくものという性質の違いがもたらしてくれたものというか。

YOSHIKI EZAKI:そうなんです、根本的に違うもので。だからフリースタイルでステージに立つ時とは全然感覚も違うんですよね。そういうなかでじょじょに音楽の道を真剣に目指していくようになりました。

──2018年に主宰イベントを行い、楽曲をリリースするようになる。2019年にはEP『YOSHIKI EZAKI』をリリース。これだけの活動と高校生活を両立なさっていたのは、かなりのバイタリティでは。

YOSHIKI EZAKI:高校もすげえ楽しかったんですよ。音楽周りの同世代は高校行ってないやつが多かったから、俺が高校に行ってることに対して“すごくない!?”とか言われて。高校に通ってることがキャラみたいになってました(笑)。

──ははは。素晴らしいバランス感覚です。今作『sweet room』は、2020年3月から6月の間にリリースしたデジタルシングル5作のあとに制作したということですよね。

YOSHIKI EZAKI:そうです。7月から夏の間に3ヶ月でバッと。「TOKYO MIND」と「King Size Bed」は前々からあったアイデアをようやく今回完成させました。1stアルバムは長く聴かれるものになるし、聴き手に強く印象づけるものでもあるので、アーティスト人生においてすごく大事だと思うんです。だからこれまでとは別のまったく新しいものを見せたくて、ラップやヒップホップだけじゃなくいろんなジャンルを詰め込んで、クオリティの高いものを作りたくて。

──カニエ・ウェストなどを手掛けるUSのEy3zlowBeatzや、Yung Xansei、TEEZR、Tigaoneといった錚々たる面々がビートを提供しています。

YOSHIKI EZAKI:もらったビートに対して“もう少しこういう音を足してほしい”とか“もうちょっとポップめにしてほしい”みたいにオーダーしながら制作していきました。ビートを聴いて頭のなかに直感的に浮かんだワードを軸にして歌詞のイメージを膨らませて、ざっとフリースタイルで録ってみて、そこから組み直して作っていくことが多いですね。



──『sweet room』はトラックの印象も相まって、頭からラストまでずっと目覚める前を漂っている感覚がありました。先ほど夜にアイデアが生まれるともおっしゃっていましたが、特に眠る前にいろいろ考えを巡らせる方なのかなと。

YOSHIKI EZAKI:眠る前はよく考え事をしますね。これからのこととか、どういう曲を作ればいいのかとか──それがさっき言った“夜にアイデアが生まれる”ですね。思いついたらすぐ家でレコーディングしちゃうんです。「Sleeping」とか「Aura」はまさにそういう作り方でした。

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