【対談】一聖(BugLug) ×ダイナマイト・トミー「やりたければやる。それがロック」
■「自分って誰だっけ?」ってみたいになりました(一聖)
──トミーさんはもともとBugLugをどういうバンドとして捉えていますか?
トミー:一聖の声が刺さりますよね。もちろんライブもカッコいい。でも一番いいところは見た目がカッコいいところかな(笑)。
一聖:はははは。
トミー:でもその見た目で彼らは損してるっていうか、それだけで判断されてしまうことがあるんで。実はBugLugってわがままなところがあるし、「こんなエゴを言っちゃうの?」って思うこともあって、そういう見た目とは違う危なっかしい感じとか、ハラハラする感じがあって。そこが魅力ですね。
──意外と不器用なバンドですよね。周りの言うことに耳を貸さず、自分の主観だけでやりきろうとするところもあって。
トミー:そういうところもいいですね。不安定なところというか。むしろ僕は、ロックバンドなのに安定を求めたり、ちゃんとしようとする方が嫌かな。だからBugLugは不安定がゆえに調子がいいときと悪いときがあって、「それじゃ伝わらないだろう」って思うこともあるんだけど、そこで僕が余計なことを言っちゃダメなんですよ。
──立場的には一番言うべき人だと思いますけど。「もっとこうしたら?」とか。
トミー:彼らは頑張ってるんで言わないです。頑張ってなかったら言いますけど、あくまでバンドをやるのは僕じゃなくて、ステージに立ってる彼らなんで。わがまま言っても不安定であっても責任を取るのは本人たちだし。だから僕は抽象的なことくらいしか言わない。何か言うとしたら、言ってることとかやってることがブレてると思ったときかな。あとは周りを気にしてやりたいことをやれないでいるときぐらい。
一聖:ありがとうございます。いつもわがまま聞いてもらってすいません。子どもと親みたいですね(笑)。でも俺、今トミーさんに言われたみたいに、少し前に周りの目を気にするモードみたいなのが出てきちゃって。それで自分がブレそうになるというか、「自分の正解ってなんだっけな」ってなっちゃうこともあって。あと、いろんなものを見て「俺もこうしてみようかな」ってつられちゃうこともあるし。
トミー:それはダメだよ。
一聖:ですよね。それもわかってるんで、だから今、中途半端な感じっていうか。曲を書いたりライブをしてるときはいいんですけど、今みたいに考える時間ができちゃうと、迷いに迷って迷路に入っちゃう。
──そういう自分を鼓舞するために、今回の作品があるのかもしれないですね。
一聖:そうですね。だから「Rock Band Is Not Dead」という曲を通して、自分の中でひとつ答えが見えたかもしれないです。あとはライブを重ねていけば、どんどんブレない自分に変わっていけるんじゃないかと。
──これだけライブができない期間が長いと、自分って何者だっけ?みたいな気持ちにもなるだろうし。アイデンティティクライシスというか。
一聖:そうっすね。「自分って誰だっけ?」ってみたいにはなりました。俺、中二からバンド一直線で生きてきたし、それ以外のことで楽しめることとか自分の存在価値を実感できるものがないんですよ。しかもそれを一番リアルに味わえるのがライブなんで。
──だからこそ、毎日配信をしているうちにモヤモヤした気持ちになったと。
一聖:そうなんですよね。とはいえ“絆プロジェクト”をやったおかげで「BugLugは生きてるんだよ」っていうことをファンに提示できたと思うし、喜んでもらえたとも思うし。あと、俺自身がファンに支えられてるんだってことを実感できたんで、やって良かったと思います。
──そんな中で新しいドラマー・悠介くんが加入するというニュースもありました。
一聖:本来であれば5月9日に渋谷公会堂で行う予定だった10周年記念ワンマンでサプライズ発表したかったんですけど、公演中止になっちゃって。俺ら自身もどうしたらいいんだろうと迷っていたんですけど、BugLugにとって大事な8月9日(バグの日)に発表することになったんです。
──そもそも新メンバーを入れるということについては、どう考えていましたか?
一聖:みんなは悠介を入れることに賛成していたんですけど、俺はめっちゃ悩みました。10年もやってきたバンドだから、そこに新しいメンバーが急に入ったらどうなるんだろう?って。ドラムが上手いか下手かはどうでもよくて、とにかく人間関係をちゃんと築けるかどうかが俺にとっては大事なんですけど、ライブもできない中、そこまでの関係が至ってなかったんで。だからサシで何度も飯を食いに行って、「こういうやつなんだ」ってわかってからは、逆に感謝っていうか。「こんな状況なのに来てくれてありがとう」って思ってます。10年やってるバンドに入り込むって、めちゃめちゃチャレンジャーだし。
──メンバーが脱退することや、ライブができない状態のときに新メンバーが加入するっていう事態もなかなかレアというか、普通のマネージメントだったら止めるんじゃないかと。
トミー:そこは「しゃーないな」って、それだけですね(笑)。好きにやればいい、が僕の基本方針なんで、メンバーが変わることにもそのタイミングにも口出しはしないというか。やっぱりバンドはどんな目にあっても続いて欲しいんで。
──バンドをやるのは自分たちなんだから、やりたいように好きにやれ、がトミーさんの信条だと思いますが、一聖くんもやりたいことを好きにやるタイプで。けど、もっと自分がやってることを相対化したり客観視したいっていう気持ちもあるんですよね?
一聖:そうなんですけど、そうやっていろいろ考えすぎたライブはダメなんですよね。むしろ余計なことを考えることが出来ないぐらいに自分が追い込まれたときの方がいいライブになるっていうか。この前、お客さんがいない状態でオンラインライブをやったんですよ。そもそもお客さんがいないことに「何なんだ?」って思いつつ、それでもしっかりライブを届けようと思ったのに、回線の不調で何回もシャットダウンされちゃったり……そこでイライラがピークに達したんですけど。
──ブチギレしたらしいですね。
一聖:はい。でもそのイライラのおかげで自分が解放されて、結果的にいいライブが出来たんですよ。だから改めて「俺、考えちゃダメなんだな」と思いました。
トミー:好きにやったらいいんだよ。ライブもそう。やりたいんだったらもっとやっちゃえばいいんじゃない?
──世間の目とか空気とか気にせず、やりたいと思ったらやればいいと。
トミー:そもそもロックバンドってそういうものじゃないですか。反権力とか反体制、あとは自由を求めるもので。だから今コロナで世の中は大変だけど、それでも自分がやりたいと思ったらライブだってやればいいんですよ。もちろんそれで何かあったら責任は自分たちにあるんだけど、やりたいと思ってるのに世間の目を気にしてやらないでいるのはどうなんだろう?って。僕だったらやりたいと思ったら、コロナで死ぬ可能性があるとしても、やると思いますよ。この世に未練が無く、明日死んでもいい人達だけを集めて。
──自分はどうしたいか、という気持ちが大事だと。
トミー:別に世間や政治家に反発するためにライブをやれ、と言ってるわけじゃなくて。一聖みたいに自分がやりたいとかこうしたいって思ったことは、自分の場合だったら周りを気にせずやるんですよ。ライブもそうだし自分たちがやることを、自分たちで決めればいい。それを誰かに言われたり、やらされたり、みんなやってるからとか、はじめから結果を求めたりするのは違うんじゃないかなって。
──それってコロナ云々ではなく、当たり前の話ですよね。バンドがどうしたいのか、何をやりたいのか。その意思を明確にするというか。
トミー:そう。で、そういうバンドの意思が何かの圧力によって曲げられることがダメだと思うんで。
──でも、「ライブはやりたいけど、周りの人の迷惑をかけたくないからやらない」というバンドもたくさんいます。その一方で「ライブハウスを支援したいから」という思いで、赤字覚悟でガイドラインを守ってライブをするバンドもいます。
トミー:「人に迷惑かけたくない」という思いでやらないのは別にいいと思います。でも「ライブハウスを支援したいからライブをする」というのは、僕は違うかな。でもそれがそのバンドにとって「やりたい」ことなら仕方ないけど、ウチには支援できる余裕のあるバンドはいないですね。
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